ビタミンCとビタミンD、そして免疫の話 ~「足りない不安」と「取りすぎの心配」のちょうど真ん中へ~

ビタミンC・ビタミンDの黄色い錠剤サプリがテーブルにこぼれている様子と「ビタミンCとビタミンD、そして免疫の話」というタイトルテキストの入ったアイキャッチ画像
目次

1. はじめに

風邪やインフルエンザが流行りはじめる季節になると、ドラッグストアのビタミンコーナーが急ににぎやかになりますよね。

「免疫力アップ」「風邪予防」「ビタミンC高配合」「ビタミンDで守る」
そんな文字を見ると、つい足を止めてしまう…私も例外ではありません。

リハビリの現場でも、

  • 「ビタミンCって、どこまで飲んでいいんですか?」
  • 「ビタミンDが日本人は不足しがちって聞いたんですけど…」
  • 「サプリで免疫って本当に上がるんですか?」

といった相談を受けることが増えてきました。

一方で、SNSやネットでは

  • 「ビタミンCの取りすぎは副作用が怖い」
  • 「ビタミンDサプリは危険性がある」
  • 「日本人のビタミンD不足は深刻」

など、少し不安になる情報も次々と目に入ってきます。

今回のテーマは、そんな揺れ動く情報の中であらためて整理したい
ビタミンCとビタミンD、それぞれの役割と免疫との関係です。

  • どれくらい摂ればいいのか
  • 「足りない」と「取りすぎ」の境目はどこなのか
  • サプリと食事・日光をどうバランスさせればいいのか

を、からだの中で起きていることと合わせて、やさしくほどいていきます。
読み終わる頃には、**「じゃあ、私はこれだけ意識しておけばいいかな」**というラインが、少しハッキリしてくるはずです。


2. いま話題の「ビタミンC・Dと免疫」って、結局なんなのか?

まず、世の中で言われている「ビタミンC D 免疫」のイメージを、ざっくり整理してみます。

  • ビタミンC
    → 抗酸化作用・風邪予防・美肌・疲労回復
  • ビタミンD
    → 骨を強くする・日光でつくられる・不足しやすい・免疫にも大事

どちらも「免疫」「風邪」「インフルエンザ」とセットで語られることが多く、
「足りないと風邪をひきやすくなる」「たくさん取れば病気を防げる」といったイメージが広がっています。

ただ、医療・栄養の世界での整理は、もう少し落ち着いています。

推奨量と「上限」のざっくり整理

一般的な成人の目安量と、取りすぎのラインのイメージを、いったん表にするとこんな感じです。

栄養素成人の1日の目安量の一例上限の目安(国際的な指標など)ポイント
ビタミンC100mg前後(日本の食事摂取基準では成人の推奨量は100mg)healthy-food-navi.jp+12000mg/日程度が「耐容上限量」とされることが多い(それ以上は下痢などのリスクが増えるため)サイエンスダイレクト+1水溶性で余分は尿から排泄されやすいが、大量摂取はお腹を壊すことがある
ビタミンD日本の食事摂取基準では18歳以上男女とも8.5μg/日が目安量(食事+日光)グリコ+1多くの国で100μg/日(約4000IU)が耐容上限量の目安とされるmedical.med.tokushima-u.ac.jp脂溶性で体内に蓄積されやすく、「少し足りない」が続きやすい一方、「取りすぎ」には注意が必要

ここで大事なのは、

  • 不足を避けるライン
  • 取りすぎを避けるライン

のあいだに、かなり広い「安全・ゆとりゾーン」がある、ということです。

「不足している人が多い」のは本当?

ビタミンDについては「日本人は不足しがち」と言われることが多いです。
実際、日本の都市部の成人を対象とした研究では、血液中のビタミンD(25(OH)D)の値が不足〜欠乏レベルにある人が、夏でも約半数、冬には8割以上いた、という報告があります。MDPI

  • 夏の不足・欠乏:47.7%
  • 冬の不足・欠乏:82.2%
  • 都市部では、1日の平均日光曝露時間が10〜15分程度と短い

というデータで、「日光にあまり当たらない生活」がビタミンD不足の背景にあることが示されています。MDPI

一方、ビタミンCについては、野菜や果物、加工食品に含まれることもあって、重い欠乏症(壊血病など)は現代日本ではかなりまれです。ただし、喫煙者やストレスが多い人は必要量が増えることが知られていて、海外の指針では「喫煙者は非喫煙者より1日35mg多く必要」といった記載もあります。栄養補助食品局 (ODS)

「ビタミンだけで免疫が決まる」わけではない

ここで強調したいのは、ビタミンC・Dが大事なのは確かですが、

免疫=ビタミンC・Dだけで決まる、という単純な話ではない

ということです。

  • 睡眠
  • ストレス
  • 運動
  • 食事全体のバランス
  • 腸内環境

こうした要素と一緒になって、「からだ全体のコンディション」が整うことで、結果として免疫が働きやすくなります。

ビタミンC・Dは、その中で**「細胞やホルモンが本来の仕事をしやすくするためのサポーター」**だとイメージしておくと、ちょうど良いバランス感になると思います。

ちなみに「風邪の症状が今年はちょっと違う?」と感じている方は、こちらの記事も参考になるかもしれません。


3. からだの中で起きていること

ここから少し、からだの中の話をしていきます。
骨や筋肉、神経や感覚の動きと絡めてイメージしてみてください。

ビタミンC:細胞の“壁”を守る、現場のサポーター

ビタミンCには、よく知られているように抗酸化作用があります。
これは、からだの中で発生する「サビのようなストレス(活性酸素)」から、細胞の膜や中身を守る役割です。

  • 血管の内側
  • 皮膚や粘膜
  • 白血球などの免疫細胞

こうした場所で、ビタミンCは構造を保つ材料(コラーゲン合成)であり、
同時に攻撃を受けたときの盾役(抗酸化)として働いています。

風邪との関係については、コクランレビューという質の高い研究のまとめがあり、

  • 一般の人が毎日ビタミンCを飲むと、風邪の「かかりにくさ」そのものは大きくは変わらない
  • 風邪をひいたときの期間は、成人で約8%、子どもで約14%短くなった

という結果が示されています。Cochrane

「劇的に守ってくれる魔法の薬」ではないけれど、
“むだに長引かせない”方向に、そっと背中を押してくれる存在と言えそうです。

「ビタミンC不足 症状」はどんなもの?

重い不足(壊血病)はまれですが、軽めの不足〜偏りでは

  • 皮膚の乾燥・ざらつき
  • あざができやすい
  • 歯ぐきからの出血
  • 疲れやすさ

といったサインが出ることがあります。国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所+1

ここまで行かなくても、野菜や果物が極端に少ない食生活が続いていると、「守る力の貯金」が薄くなるイメージです。

「ビタミンC 取りすぎ 副作用」は?

一方で、サプリで1日1000〜2000mgを超えてとっていくと、

  • 下痢
  • お腹の張り
  • 吐き気

といった胃腸のトラブルが出やすくなることが報告されています。
多くの国の指針では、1日2000mgを耐容上限量として、それ以上は避けることがすすめられています。サイエンスダイレクト+1

水溶性なので多少の「飲み過ぎ」がすぐ問題になるわけではありませんが、
「たくさん飲めば飲むほどいい」というものでもありません。


ビタミンD:骨と筋肉、そして免疫をつなぐ“裏方監督”

ビタミンDは、骨のイメージが強いかもしれません。
実際、カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫に保つ働きはとても重要です。グリコ+1

ただ、ここ10〜20年でわかってきたのは、

  • 免疫細胞
  • 筋肉
  • 脳や神経

など、全身のさまざまな細胞にビタミンDの受け皿(受容体)があるということです。PubMed

つまりビタミンDは、

骨だけでなく、「からだ全体のセンサーとスイッチ」を微調整している存在

と考えられています。

ビタミンDと風邪・インフルエンザ

「ビタミンDサプリで風邪やインフルエンザを防げるか?」というテーマでは、多くの研究が行われてきました。

2017年の大規模な解析(25のランダム化比較試験、約1万人)では、

  • ビタミンDサプリをとっていたグループは
    急性の呼吸器感染症(風邪や気管支炎など)のリスクが、全体で約12%低かった

という結果が示されています。PubMed+1

ただし、

  • 効果の大きさは「小〜中程度」
  • 毎日少量(400〜1000IU/10〜25μg)を続けた場合に効果が見えやすい
  • 研究ごとのバラつきも大きい

といった点もあり、最近の追加解析では、**全体としての予防効果は「あるとしても小さい」**という見方も出ています。ランセット+1

ここから言えるのは、

ビタミンDサプリだけで風邪やインフルエンザを完全に防げるわけではない。
でも、足りていない人が補うことで、「底上げ」の一助になる可能性はある。

という、ほどほどに現実的な結論です。

「ビタミンD 不足 日本人」と日光浴びる時間

先ほどふれた日本の研究では、都市部の大人で、

  • 夏でも約半数、冬は8割以上がビタミンD不足〜欠乏
  • 都市部では日光に当たる時間が、夏で平均約12分、冬で約15分程度と短い

というデータが示されています。MDPI

「ビタミンD 日光 浴びる 時間」は体格や肌の色、季節でも変わりますが、
日本の緯度だと、顔と手や腕に10〜30分ほど日光が当たる生活が、ひとつの目安になります。

もちろん、

  • 日焼け止め
  • 皮膚がんリスク
  • シミ・しわの予防

とのバランスも大切なので、「真夏の正午に長時間」というより、

朝や夕方に短めの散歩を取り入れる
ベランダで数分だけ日を浴びる

といった**“ちょっとした光の時間”を足していく発想**が、現実的で安全です。

「ビタミンD 取りすぎ 危険性」は?

脂溶性で体内に蓄積しやすいビタミンDは、
サプリで長期間、上限を超えてとり続けると、

  • 血中カルシウムが上がりすぎる(高カルシウム血症)
  • 吐き気、食欲低下、だるさ
  • ひどい場合は腎障害

などの健康被害につながることが報告されています。medical.med.tokushima-u.ac.jp

多くのガイドラインでは、

  • 400〜1000IU/日(10〜25μg)は、安全かつ不足を補う範囲
  • 4000IU/日(100μg)を超えないようにする

といったラインが示されています。medical.med.tokushima-u.ac.jp+1

**「ビタミンD サプリ 目安摂取量」**としては、

  • 食事と日光である程度とれている人 → 10μg前後
  • 日光にほとんど当たらない・血液検査で不足と言われた人 → 医師の指導のもとで量を決める

くらいのイメージを持っておくと安心です。


4. 日常のクセと「ビタミンC・Dと免疫」の関係

ここからは、からだの中の話を、日常のクセと結びつけてみます。

① 朝食を抜きがち・野菜と果物が少ない

  • 朝はコーヒーだけ
  • 昼はパン+コーヒー
  • 夜は炭水化物メインでさっと済ませる

こうしたパターンが続くと、「ビタミンC 不足 症状」まではいかなくても、

  • 口内炎ができやすい
  • なんとなく疲れが抜けにくい
  • 肌トラブルが増えた気がする

といった小さなサインが積み重なりやすくなります。

免疫の視点で見ると、

  • 粘膜のバリア(鼻・喉・腸など)を保つ材料が足りない
  • 抗酸化の“消火器”の数が少なめ

という状態なので、風邪をひいたときに「こじらせやすい地盤」になりやすい、と考えることができます。

ここでの一歩は、「サプリ大容量」ではなく、

一日に果物を1つ+色の濃い野菜を一皿
(例:みかん+ブロッコリー、キウイ+ピーマン入りの炒めものなど)

といった “食事の中のビタミンCを少し増やす” ことです。healthy-food-navi.jp+1

そのうえで、風邪が流行る時期だけサプリでプラス500mg前後を足す、くらいでも十分「底上げ」になります。

② 室内中心・日光にほとんど当たらない生活

  • デスクワーク中心で、通勤も車
  • 家にいる時間はカーテンを閉めがち
  • 日焼けが嫌で、肌をできるだけ隠している

こうした生活スタイルでは、先ほど触れたようなビタミンD不足〜欠乏に入りやすくなります。MDPI+1

ビタミンDが足りないと、

  • 骨がもろくなりやすい
  • 筋力低下や転倒リスクの増加
  • 慢性的なだるさ

などにつながる可能性が報告されています。PubMed+1

免疫の観点では、「風邪やインフルエンザに絶対かかる」という話ではなく、

からだ全体の“地盤”が少し弱くなり、
回復力や疲労の回復に影響しうる

というイメージが近いです。

ここでの一歩は、いきなり「毎日30分ジョギング」ではなく、

  • 昼休みに5〜10分、外を歩いてみる
  • ベランダで数分、日光を浴びながら深呼吸する

など、**“光に当たる時間を1〜2割増やす”**ことです。MDPI+1

それでも難しい場合は、魚(サバや鮭など)や卵を意識的に食事に足しつつ、
必要に応じて10〜20μg程度のビタミンDサプリを追加するという選択肢もあります。

③ 「サプリがメイン」で、食事と生活が置き去りになっている

  • マルチビタミン+ビタミンC高用量+ビタミンDサプリ…
  • 一方で、睡眠は毎日5時間、食事はコンビニ中心、運動ほぼゼロ

というケースも、現場では意外とよく出会います。

この場合、

ビタミンの数値だけは足りていても、
からだの“回路”や“配線”が疲れ切っている

という状態になりやすいです。

免疫の働きは、

  • 自律神経のバランス
  • 睡眠中のホルモン分泌
  • 筋肉や骨からのメッセージ

など、からだ全体の「情報ネットワーク」と強くつながっています。

ビタミンC・Dはそのネットワークの潤滑油のような役割。
ネットワーク自体が乱れていると、潤滑油だけ増やしても大きな変化は期待しづらいのです。

ここでは、

  • 寝る時間を30分だけ前倒しする
  • 日中に数分でも“体を伸ばす時間”を入れる
  • 食事で**「たんぱく質+野菜+主食」**のセットを意識する

といった、シンプルな生活の土台を整えることの方が、免疫の底上げには強く効いてきます。


5. おわりに ーー「全部じゃなくて、ひとつだけ」でいい

ここまで、

  • ビタミンC・Dと免疫の関係
  • 不足と取りすぎ、それぞれのサイン
  • 日常のクセとのつながり

をお話してきました。

最後に、今日からできる「小さな一歩」を3つに整理してみます。

行動のヒントイメージ
果物1つ+色の濃い野菜1皿を足すみかん+ブロッコリー、キウイ+ピーマンなどで、ビタミンCの“地盤”づくり
日中に5〜10分だけ外に出る時間をつくるコンビニまで少し遠回り、昼休みに外の空気を吸いに出る、ベランダで深呼吸など
サプリは「足りないと感じるときの補助」と考えるビタミンCは500mg前後+食事、ビタミンDは10〜20μg程度を目安に、“飲み過ぎ”にならないように

全部やろうとすると、かえって疲れてしまいます。
この中から、今の自分にしっくりくるものをひとつだけ選ぶだけでも、からだは少しずつ変わっていきます。

ビタミンC D 免疫というキーワードは、どうしても「不安」とセットで語られがちです。
でも、本来は

からだが自分で立ち直る力を発揮しやすくするための、小さなサポート役

にすぎません。

「サプリを飲まなきゃ」ではなく、
ちょっとだけからだに優しい選択を足してみよう」くらいの気持ちで、
今日の一歩を決めてあげてください。

その小さな積み重ねが、
気づけば「風邪をひいても長引かなくなった」「冬のだるさが少しラクになった」
と感じる土台になっていきます。

頑張りすぎなくて大丈夫です。
からだは、思っているよりもちゃんと“変化のサイン”を出してくれるので、
それを少しずつキャッチしていきましょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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