帯状疱疹が増えていると言われる理由~ストレス・免疫・年齢の関係~

帯状疱疹が増えていると言われる理由というタイトルと「帯状疱疹」の文字ブロックが並んだアイキャッチ画像
目次

1. はじめに

「最近、帯状疱疹が増えているらしい」「身近でも何人かかかった」──そんな声を、ここ数年よく耳にするようになりました。ニュースやSNSでも話題になることが増え、「自分もそのうちなるんじゃないか」と不安を抱えている方も多いと思います。

臨床の場でも、問診票の「既往歴」の欄に「帯状疱疹」と書いている方が以前より明らかに増えました。
「親が最近帯状疱疹になって…」「仕事のストレスが強くて、自分も免疫が落ちている気がして心配です」
そんな相談も珍しくありません。

ただ、「帯状疱疹は3人に1人がなる」「年をとると増える」といった断片的な情報だけが独り歩きすると、必要以上に怖くなってしまいます。「どうして増えていると言われるのか」「どんな人がなりやすいのか」「日常生活でできる予防はあるのか」が分かると、不安は少し落ち着きやすくなります。

この記事では、帯状疱疹が“増えている”背景を、からだの中で起きていることと生活習慣の両面から整理しながら、日常で意識しやすい「小さな予防のヒント」もお伝えしていきます。
「怖がるため」ではなく、「うまく付き合うための知識」として受け取ってもらえたら嬉しいです。


2. いま話題の「帯状疱疹が増えている」って、結局なんなのか?

帯状疱疹ってどんな病気?

帯状疱疹は、子どもの頃の「水ぼうそう」の原因である**水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)**が、からだの中で再び活動を始めることで起こる病気です。
一度水ぼうそうにかかると、ウイルスは完全にいなくなるわけではなく、**神経の根元(神経節)**にひっそり潜んだまま、何十年も眠っています。免疫がしっかりしている間は静かにしていますが、加齢やストレス、病気などで免疫が弱ったタイミングで再び動き出し、神経に沿って「ピリピリ」「ヒリヒリ」する痛みと水ぶくれをつくります。医療法人清幸会 三原城町病院+1

よく混同される用語を、いったん整理してみます。

用語ざっくりした意味主に起こる年代のイメージ
水ぼうそう(水痘)子どもの頃にかかる全身の発疹・発熱主に小児期
帯状疱疹潜んでいたウイルスが再活性化し、体の片側に帯状に痛みと発疹が出る50歳以降が多いが、若い世代にも起こる
帯状疱疹後神経痛(PHN)発疹が治った後も、神経の痛みだけ長く残ってしまった状態高齢になるほど起こりやすい

「帯状疱疹 後遺症 神経痛」として話題になるのは、この帯状疱疹後神経痛のことが多く、「治ったはずなのに何か月も痛みが続く」という、生活の質に大きく影響する合併症です。帯状疱疹になった人のうち、3か月後で7〜25%、6か月後でも**5〜13%**の方に神経痛が残るという報告もあります。Toutsu

「3人に1人がかかる」「発症率が増えている」の意味

日本では、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を経験するといわれています。患者さん全体の約7割は50歳以上ですが、残りの3割には20〜30代も含まれており、「高齢者だけの病気」とは言い切れません。帯状疱疹.jp+1

さらに、60歳以上の年齢層では、1990年代後半から2010年代にかけての約20年間で発症率が1.5倍程度に増加しているという国内データもあります。帯状疱疹.jp+1

ここから分かるのは、

  • 高齢になるほど帯状疱疹になりやすい
  • 高齢者人口そのものが増えている
  • 1人あたりの発症率もじわじわ上がっている

という「二重の理由」で、**『帯状疱疹の患者数が増えている』と言われやすい状況になっている、ということです。

必要以上に怖がらなくてよいポイント

一方で、あまり知られていないのが、「きちんと治療すれば多くの方は数週間〜数か月で落ち着く」という側面です。
すべての人に後遺症の神経痛が残るわけではありませんし、帯状疱疹後神経痛の発症率は若い世代(30〜40代)では数%程度
にとどまるという報告もあります。医療法人社団 宗仁会 -+1

「帯状疱疹 再発 何回も」というキーワードもよく見かけますが、再発率は概ね**数%(4〜6%前後)**とされ、多くの人は一生に一度か、なっても数回までと言われています。同友会グループ+1

大切なのは、「絶対に避けられない恐ろしい病気」と捉えすぎず、
・なぜ増えているのか
・どんな人がリスクが高いのか
・自分にできる対策は何か

を落ち着いて知っておくことです。


3. からだの中で起きていること

ここからは、少しからだの中にカメラを入れたイメージで、「なぜ帯状疱疹が増えているのか」を見ていきます。

① 免疫の“見張り番”がゆるむタイミング

帯状疱疹の原因となるウイルスは、水ぼうそうが治った後も神経節の中でひそんでいます。
ふだんは免疫細胞が見張りをしていて、ウイルスが顔を出そうとするとすぐに押さえ込んでくれています。このとき主役になるのは、ウイルス感染細胞を直接攻撃する**「細胞性免疫」**と呼ばれる仕組みです。厚生労働省

加齢や大きなストレス、病気・薬による免疫抑制があると、この細胞性免疫の働きが弱まり、「見張り番の人数」や「反応の素早さ」が落ちてきます。すると、神経節で静かにしていたVZVが「今だ」とばかりに増え、神経に沿って皮膚まで移動し、帯状疱疹として姿を現します。

国内外の研究では、帯状疱疹の発症率は50歳ごろから上がり始め、70〜80代でピークになることが示されています。欧州のデータでは、50歳未満では年間1000人あたり2〜4人だったものが、50歳以上では7〜8人、80歳以上では10人程度まで増えるという報告もあります。MDPI+1

この「年齢とともに免疫の見張り番が減っていく」という流れが、帯状疱疹 年齢 何歳からという疑問の根っこにあるイメージです。

② ストレスと自律神経のブレーキ

もうひとつ重要なのが、ストレスと自律神経の関係です。

強いストレスや不安が長く続くと、交感神経(からだを戦闘モードにするスイッチ)が優位な状態が続き、睡眠も浅くなりがちです。こうした状態が積み重なると、免疫細胞の働きを調整するホルモンのバランスが崩れ、感染症全般にかかりやすくなることが多くの研究で示されています。ScienceDirect+1

近年の研究でも、うつ病や不安障害などの精神的な負担を抱える人では、帯状疱疹の発症リスクが高くなっているという報告があります。MDPI+1

「帯状疱疹 ストレス」という検索ワードが増えている背景には、こうしたストレスと免疫低下のつながりへの関心が高まっていることがあると考えられます。

③ 病気や薬による“免疫の揺らぎ”

高血圧・糖尿病・リウマチ・腎不全といった基礎疾患がある人、がん治療や免疫を弱める薬(ステロイド・生物学的製剤など)を使っている人では、帯状疱疹の発症リスクが高くなることが報告されています。たとえば、ある報告では、高血圧の人はそうでない人に比べて帯状疱疹のリスクが約1.9倍、糖尿病の人は約2.4倍に増えていたというデータもあります。CareNet.com+1

医療の進歩によって、以前なら重症化していた病気も長く付き合いながら生活できるようになりました。そのぶん、免疫を部分的に弱める治療を受ける人も増えているため、「帯状疱疹が増えている」と感じやすい側面もあります。

④ 帯状疱疹後神経痛はなぜ残るのか?

帯状疱疹の発疹自体は、多くの場合2〜4週間ほどでかさぶたになって落ち着きます。問題になるのは、その後も続く帯状疱疹後神経痛です。

ウイルスが増えるとき、神経そのものにも炎症が起こります。炎症が強く長く続くと、

  • 神経の「配線」が傷つく
  • 本来は痛みを感じない刺激にも、過敏に反応するようになる

といった変化が起こりやすくなります。その結果、「触れるだけで痛い」「ずっと焼けるように痛む」といった状態が続いてしまうのです。

帯状疱疹後神経痛のリスクは、年齢が上がるほど高くなり、ある報告では、
30〜40代では3〜4%程度だったものが、60代で約21%、70代で約29%、80歳以上では3割を超えるとされています。医療法人社団 宗仁会 -+1

この数字だけを見ると怖く感じますが、早めの診断・治療、痛みを抑える薬の併用などでリスクを減らせる可能性も示されています。「痛みが出たら我慢せず、早めに受診すること」が大切な理由のひとつです。

⑤ ワクチンという“もうひとつの防波堤”

「帯状疱疹 ワクチン 効果」も、近年よく検索されるテーマです。

現在、日本で使われている帯状疱疹ワクチンには、

  • 子どもの水ぼうそう予防にも使われる生ワクチン(弱毒生水痘ワクチン)
  • より新しいタイプの不活化ワクチン(組換え帯状疱疹ワクチン:シングリックス®など)

の2種類があります。どちらも50歳以上が主な対象で、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛のリスクを下げる目的で用いられます。環境感染.org+2厚生労働省+2

国立感染症研究所のファクトシートなどによると、組換え帯状疱疹ワクチンは、50歳以上では約90〜97%、70歳以上でも約90%前後の発症予防効果が報告されており、神経痛の予防効果も高いとされています。厚生労働省+2ワクチン4すべて+2

ただし、どちらのワクチンにも長所・短所がありますし、費用や副反応、基礎疾患との関係も含めて**「自分にとってのメリット・デメリット」を主治医と相談して決める**ことが大切です。


4. 日常のクセと「帯状疱疹が増えている」の関係

ここからは、もう少し生活に近い話に降りてみます。

帯状疱疹そのものは“ウイルスの再活性化”という医学的な話ですが、その背景には、**日々の暮らし方やからだの使い方が積み重なった「免疫の揺らぎ」**があります。

「がんばり続ける」が当たり前になっていないか

  • いつも仕事で頭がフル回転
  • 帰宅してもスマホを手放せず、寝る直前まで画面を見ている
  • 休みの日も「やることリスト」でいっぱいで、気づけばクタクタ

こんな生活が続くと、自律神経はどうしても交感神経寄りになり、からだは**「ずっと軽く走り続けている」**ような状態になります。

睡眠時間が短くなったり、質が落ちたりすると、免疫細胞の働きを整えるホルモンのリズムも乱れやすくなることが分かっています。帯状疱疹に限らず、風邪や他の感染症にもかかりやすくなるイメージです。ScienceDirect+1

私自身も、つい仕事に夢中になって夜更かしが続いてしまうことがありますが、そんな時期ほど、肩こりや肌荒れなど「小さなサイン」が出ていると感じます。「帯状疱疹 免疫 低下」と検索したくなるような生活になっていないか、一度振り返ってみても良いかもしれません。

からだを動かさないことによる“めぐり”の低下

デスクワーク中心でほとんど歩かない、運動らしい運動はゼロに近い、という方も今は少なくありません。

  • 筋肉を使わない
  • 呼吸が浅くなりやすい
  • 血流が落ちやすい

こうした状態が続くと、免疫細胞が全身をパトロールする効率も落ちやすくなります。心身のストレスに対してもクッションが効きにくくなり、ちょっとしたきっかけで体調を崩しやすくなります。

直接「運動不足=帯状疱疹」という単純な因果ではありませんが、生活習慣と帯状疱疹リスクの関係を調べた研究では、身体活動量が少ない人ほど帯状疱疹のリスクが高い傾向が示唆されています。PMC+1

基礎疾患と生活習慣の“ダブルパンチ”

高血圧や糖尿病、リウマチなどの持病がある場合、もともと免疫や血管のコンディションが揺らぎやすい土台があります。そこに、

  • 寝不足
  • 過労
  • 偏った食事
  • 喫煙や過度の飲酒

といった生活習慣が重なると、帯状疱疹だけでなくさまざまな病気のリスクが上がってしまいます。前述のように、糖尿病や高血圧のある人では、帯状疱疹の発症リスクが2倍前後に増えていたというデータもあります。CareNet.com+1

「完璧な生活にしなきゃ」と考えると苦しくなりますが、今より1〜2割だけ負担を減らすイメージで考えてみるのが現実的です。


Q&A:帯状疱疹についてよくある疑問

Q1. 若い世代でも帯状疱疹は増えているのですか?

答えは「若い世代でもゼロではなく、少しずつ増えている」です。

帯状疱疹は、患者さん全体のうち約7割が50歳以上ですが、残りの3割に20〜30代も含まれています。さらに、日本の調査では、10〜50代の帯状疱疹発症率が、ここ20年ほどで緩やかに上昇していることも報告されています。帯状疱疹.jp+1

背景として、

  • 過労や慢性的なストレス
  • 睡眠不足
  • 精神的な負担(不安・うつ状態など)
  • 免疫を弱める薬の使用

などが重なり、「加齢ほど分かりやすくはないけれど、免疫の揺らぎが若い世代にも起きやすくなっている」可能性があります。

最近は睡眠負債を抱える若年者も増えています。睡眠負債については以下の記事で詳しく説明しています。

20〜30代で帯状疱疹になったとしても、適切な治療を受ければ多くはしっかり回復します。気になる症状があれば、年齢に関係なく早めに受診して相談してみてください。


Q2. 帯状疱疹ワクチンは何歳から考えればいいでしょうか?

帯状疱疹ワクチンは、現時点では50歳以上が主な対象とされています。一部、帯状疱疹にかかるリスクが高いと考えられる18歳以上にも、不活化ワクチン(組換えワクチン)が使えることになっています。環境感染.org+2東京メトロポリタン保険医療+2

大まかなイメージとしては、

  • 50歳を過ぎたら:「帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛をどこまで予防したいか」を含めて、かかりつけ医と相談する
  • 基礎疾患や免疫を下げる治療がある人:年齢に関わらず、ワクチンのメリット・リスクを専門医とよく相談する

という考え方が多くのガイドラインで紹介されています。

組換え帯状疱疹ワクチンは、50歳以上では90〜97%前後の発症予防効果があり、少なくとも10年程度は効果が持続するとされています。一方、生ワクチンは発症予防効果はやや控えめですが、1回接種で済む、といった特徴があります。厚生労働省+2米沢市の消化器・内視鏡内科なら、きだ内科クリニック+2

どちらを選ぶか、そもそも接種するかどうかも含めて、「年齢」「持病」「費用」「副反応への考え方」などを総合して決めるのが現実的です。


Q3. 一度かかったら、もう二度とかからないのですか?

「帯状疱疹は一生に一度」というイメージを持っている方も多いのですが、実際には再発する人もいます

国内外のデータでは、帯状疱疹の再発率はおおよそ2〜6%前後とされており、多くの人は1回で済みますが、少数ながら2回以上経験する方もいることが分かっています。同友会グループ+1

再発しやすい人の特徴として、

  • 高齢である
  • 免疫を弱める病気や治療がある
  • 強いストレスが続いている

といった点が挙げられます。

一度かかったことがある方でも、「再発の予防」という目的でワクチンを検討するケースもあります。年齢や体調、前回の発症からの期間などによって判断が変わるので、こちらも医師と相談するのがおすすめです。


5. おわりに

ここまで、「帯状疱疹が増えている」と言われる背景を、年齢・免疫・ストレス・生活習慣・ワクチンといった視点からざっくり整理してきました。

最後に、今日からできそうな小さな一歩をいくつかまとめておきます。

行動のヒントからだのイメージ
寝る時間をいつもより30分だけ早くしてみる免疫の「見張り番」が夜のうちにしっかり整列してくれる
平日1日10分だけでも歩く・伸びる時間をつくる血流が良くなり、免疫細胞のパトロールがしやすくなる
「今日はがんばりすぎたな」と感じた日は、スマホをいつもより早く手放す自律神経のブレーキが少し早めに働き、からだが休みモードに入りやすくなる
50歳を過ぎたら、一度は帯状疱疹とワクチンについて医師に相談してみる自分のリスクや選択肢を知ることで、不安が「具体的な対策」に変わる

全部を一気にやる必要はありません。
この中から「これならできそうだな」と思えるものを、いくつか選んでみましょう。

最後に、この記事のポイントを3つだけまとめると、

  1. 帯状疱疹は、80歳までに約3人に1人が経験する身近な病気で、年齢とともに発症率が高まり、患者数も増えている。帯状疱疹.jp+1
  2. 加齢だけでなく、ストレスや睡眠不足、基礎疾患や治療による免疫の揺らぎが重なることで、「帯状疱疹が増えている」状況が生まれている。MDPI+1
  3. ワクチンや生活習慣の見直しによって、リスクを下げたり、重症化を防いだりする手段もある。完璧を目指すのではなく、「自分にできる一歩」を選ぶことが大切。

帯状疱疹という言葉を聞くと、不安が先に立ってしまうかもしれません。
でも、からだの仕組みと生活とのつながりを知ることで、「怖いだけの存在」から「少し気をつけて付き合っていく相手」に変わっていきます。

もし「これ、自分のことかも」と感じるところがあったら、
・生活を1〜2割だけゆるめてみる
・気になる症状があれば早めに医療機関に相談する
そのあたりから、すこしずつ整えていきましょう 🌿

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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