マンジャロと睡眠・いびきの関係 やせ薬GLP-1時代の「よく眠れるから大丈夫?」を整理する

ベッドで眠る中年男性といびきのイメージイラスト。マンジャロと睡眠・いびきの関係や睡眠時無呼吸を解説する健康情報記事のアイキャッチ画像。
目次

1. はじめに

ここ数年、「やせ薬」「GLP-1」という言葉がネットやSNSでよく飛び交うようになりました。
その中でもマンジャロ(チルゼパチド)や、そのダイエット薬としてのブランド名であるゼップバウンドをきっかけに、「体重が減った」「血糖値が下がった」といった声と同じくらい、

  • いびきが減った気がする
  • 寝起きのだるさが変わった
  • 逆に、眠気が強くなった気がする

といった睡眠まわりの変化の相談も増えてきました。

肥満や血糖コントロールと睡眠の質・睡眠時無呼吸は、もともと密接につながっています。そこに「GIP/GLP-1の発展型」といわれる新しいタイプの薬が加わったことで、からだの中では少し複雑な変化が起きています。

この記事では、「マンジャロ 睡眠 いびき」という組み合わせで心配や期待を抱いている方に向けて、

  • マンジャロ・ゼップバウンドがどんな薬なのか
  • いびき・睡眠時無呼吸とどんな関係がありそうなのか
  • 副作用としての眠気・だるさとどう付き合うか
  • 「薬だけに頼らない」睡眠ケアの現実的な一歩

を、できるだけ生活のイメージが湧く形で整理していきます。

ちなみに、GLP-1については以下の記事でも詳しく解説しています。

2. いま話題の「マンジャロ 睡眠 いびき」って、結局なんなのか?

まずは、名前の整理からいきましょう。

  • マンジャロ(Mounjaro)
    有効成分はチルゼパチド。元々は2型糖尿病の治療薬として使われている注射薬です。GIPとGLP-1という2つのホルモンの受容体を刺激して、血糖を下げたり、食欲を抑えたりします。Mayo Clinic
  • ゼップバウンド(Zepbound)
    同じチルゼパチドを成分とした「肥満治療薬」としての名前です。食事・運動療法と合わせて体重を減らす薬として承認され、中等症〜重症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を合併した肥満の人に対しても使用が認められています。FDA Access Data+2New England Journal of Medicine Japan+2
  • 「やせ薬」「GLP-1ダイエット」
    元々糖尿病治療薬だったGLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)が、体重減少にも効果があることから「やせ薬」として脚光を浴びました。チルゼパチドは**GLP-1にGIPも足した“発展型”**と捉えられることが多く、「GLP-1の進化版のやせ薬」といった文脈で語られることがあります。

ここで一度、ざっくり整理してみます。

名称有効成分主なカテゴリ主な目的・特徴
マンジャロチルゼパチド糖尿病治療薬週1回注射で血糖コントロール・体重減少
ゼップバウンドチルゼパチド肥満治療薬・OSA治療薬肥満改善+睡眠時無呼吸の改善効果が認められた
一般的なGLP-1薬セマグルチドなど糖尿病・肥満治療薬食欲抑制・体重減少・心血管リスクの低下など

ポイントは、

  • 睡眠薬ではない
  • 直接「いびきを止める薬」でもない

ということです。

それでも「マンジャロを打ち始めてから、睡眠やいびきが変わった気がする」という声が出てくるのは、

  • 体重や脂肪分布が変わる → 気道(のどまわり)の構造が変わる
  • 血糖やホルモン、自律神経のバランスが変わる → 眠気の感じ方や睡眠の質が変わる

という、**からだ全体の変化の“連鎖”**が起きるからだと考えられます。

一方で、ゼップバウンドの添付文書を見ると、主な副作用は吐き気・下痢などの消化器症状で、「疲労・倦怠感(だるさ)」も数%で見られることが報告されています。FDA Access Data+1

「マンジャロ 睡眠 いびき」を考えるとき、良い変化もあれば、ちょっと困る変化もあり得る、という前提を持っておくことが大切です。

以下の記事では、睡眠負債について詳しく解説しているので、良かったら合わせてごらんください。

3. からだの中で起きていること

ここからは、からだの中で何が起きているのかを、

  • 構造(どんな形・位置関係か)
  • 神経(自律神経やホルモンのバランス)
  • 感覚(眠気・だるさ・息苦しさをどう感じるか)

という3つのレイヤーを意識しながら、できるだけイメージしやすい形で追いかけていきます。

3-1. 「太るといびきが増える」の、構造的な理由

肥満といびき・睡眠時無呼吸(OSA)の関係は昔からよく知られていて、首まわりや舌の付け根、上気道の周囲に脂肪がついてくることで、寝ているあいだに気道が狭くなりやすくなると言われています。

研究のまとめでは、体重を減らすと無呼吸低呼吸指数(AHI:1時間あたりの呼吸停止・低呼吸の回数)が下がることが報告されています。例えば、肥満でOSAのある人が体重(BMI)を約20%減らすと、AHIが約57%減るという解析もあります。PubMed+1

これは言い換えると、

「のどの通り道の周りについていた余分な荷物(脂肪)が減ると、空気の通りがよくなる」

という、非常にシンプルな構造の話でもあります。

3-2. マンジャロ(ゼップバウンド)がOSAに効く、というエビデンス

2024年には、チルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)が中等症〜重症のOSAに対して効果があることを示した「SURMOUNT-OSA試験」の結果が、NEJMという医学雑誌に掲載されました。New England Journal of Medicine+2New England Journal of Medicine Japan+2

ざっくり要約すると、

  • 肥満+中等症〜重症OSAの人に、チルゼパチドとプラセボ(偽薬)を約1年投与して比較
  • チルゼパチド群では、
    • 体重が大きく減少
    • AHI(無呼吸低呼吸指数)が有意に低下
    • 低酸素状態の負担や炎症マーカー、血圧なども改善
    • 睡眠の自覚的な質も良くなった

という結果が出ています。

また、GLP-1受容体作動薬全体をまとめたメタ解析でも、肥満や2型糖尿病を持つ患者のOSAの重症度(AHI)が、GLP-1薬によって有意に改善するという報告が増えてきました。PubMed+2SpringerLink+2

ここから見えてくるのは、

  • 体重減少そのものが、いびき・OSA改善の強い武器になる
  • GLP-1系やチルゼパチドは、その体重減少を後押しすることで、結果として睡眠時無呼吸を軽くする可能性がある

という流れです。

「マンジャロ いびき 改善」「ゼップバウンド 睡眠時無呼吸」といった検索ワードの背景には、こうしたエビデンスへの期待感があると考えられます。

3-3. 自律神経とホルモンから見た、眠気・だるさ

一方で、チルゼパチドやGLP-1系の薬を使い始めると、

  • 食欲が大きく変わる
  • 吐き気・胃もたれ・下痢・便秘など、胃腸の動きがガラッと変わる
  • 血糖値の上下動が今までと違うパターンになる

など、内臓や自律神経にはかなり大きな揺さぶりがかかります。

ゼップバウンドの臨床試験では、主な副作用として消化器症状が多く報告されているほか、「疲労・倦怠感(だるさ、レベルダウンしたような感覚)」が5〜7%程度で見られたとされています。これは「眠気そのもの」とは少し違いますが、からだが常に節約モードになっているような感覚につながることがあります。FDA Access Data+1

さらに、睡眠時無呼吸そのものが、

  • 夜間に何度も呼吸が止まり、
  • 脳とからだが「息できてる?大丈夫?」と警戒し続ける

状態をつくるため、交感神経(緊張側)が優位になりがちです。Health

そこに体重減少や血糖コントロールの変化が加わると、

  • 良い方向の変化
    • 夜間の低酸素が減る → 交感神経の過剰な興奮が少し落ち着く
    • 心臓や血管への負担が減る → 朝の頭痛・だるさが軽くなる
  • 一時的にしんどい変化
    • 食事量や血糖の変化に慣れるまで、からだが「省エネモード」になり、日中のだるさ・眠気を感じやすい
    • 胃腸症状で寝つきが悪くなる、夜中に目が覚めやすくなる

という、プラスとマイナスが混在した状態になることがあります。

3-4. 感覚としての「よく眠れた気がする/ボーッとする気がする」

実際、GLP-1やマンジャロを使っている方からは、

  • 「いびきアプリで見たら、いびきの時間が減った」
  • 「日中の眠気が少なくなった」
  • 「逆に、日中ボーッとして集中しづらい」

といった、感覚レベルの変化がよく聞かれます。

ここで大切なのは、

よく眠れた“気がする”」と「睡眠時無呼吸そのものが医学的に改善している」は別物

だという点です。

実際の無呼吸の程度は、

  • 検査(睡眠ポリグラフや簡易検査)で測るAHI
  • 血中酸素飽和度
    などを見ないと分かりません。

一方で、「からだがどう感じているか」も無視できない情報です。
眠気・だるさ・息苦しさ・頭痛・目覚めのスッキリ感など、感覚の変化を丁寧に記録しておくことは、主治医と相談するうえで、とても役に立ちます。

4. 日常のクセと「マンジャロ 睡眠 いびき」の関係

ここからは、「薬」と「生活のクセ」がどう絡み合って、睡眠やいびきに影響しているのかを見ていきます。

4-1. ありがちな生活パターン

例えば、こんな流れはないでしょうか。

  • 夜遅くまでスマホや仕事 → 就寝時間が後ろにズレる
  • 寝る直前に軽くつまむ(もしくは、甘い飲み物でカロリーを補ってしまう)
  • お酒で「寝つきを良くしよう」としている
  • マンジャロ(ゼップバウンド)の消化器症状が怖くて、食べるタイミングと注射のタイミングがいつもバラバラ
  • 「やせ薬を打っているから、少しぐらいいいか」と、運動や睡眠リズムの優先順位が下がる

このような状況だと、たとえ薬が体重を減らしてくれていたとしても、

  • 胃腸が夜まで動き続ける → 横になると胃もたれ・逆流感 → いびき悪化
  • アルコールで筋肉(とくにのどまわり)がゆるみ、気道がつぶれやすくなる
  • 睡眠時間そのものが短くなることで、睡眠の質を感じづらくなる

といった形で、**「せっかくのプラスを、生活習慣側が打ち消してしまう」**ことがあります。

4-2. 少し視点を変えるだけで変わるポイント

全部を完璧に変える必要はありません。
「1〜2割だけ、からだに優しい選択に寄せる」と考えた方が現実的です。

例えば、

  • 注射のタイミングを、なるべく毎週同じ曜日・同じ時間帯にする
    • 自律神経は「リズム」が大好きです。体内時計が狂いにくくなります。
  • 寝る2〜3時間前以降は、できるだけ固形物を食べない
    • 胃腸が少し落ち着いた状態で横になれるので、逆流・胃もたれ由来のいびき悪化を防ぎやすくなります。
  • 「とりあえず横向きで寝てみる」をベースにする
    • 仰向けよりも気道がつぶれにくくなる人が多く、いびき軽減につながることがあります。

こうした“小さなクセの修正”でも、マンジャロやゼップバウンドのプラス効果を生かしやすい土台が整っていきます。

4-3. 「睡眠時無呼吸がある人」の特別ルール

すでに睡眠時無呼吸症候群と診断されている方、あるいは

  • パートナーや家族から「息が止まっている」と言われる
  • 起きたときに頭痛・のどの渇き・強いだるさが続く
  • 日中の強い眠気で困っている

といった自覚がある方は、マンジャロやゼップバウンドを使っている・いないに関わらず、一度は専門医に相談しておくのがおすすめです。

理由は、

  • 薬で体重が減ることでOSAが改善する人もいれば、構造的な問題(顎の形、鼻・扁桃の状態など)がメインで、体重だけではあまり変わらない人もいるため
  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)などの治療を中断すると、心血管リスクが高まることが知られているため
  • マンジャロ・ゼップバウンドのような薬は、体重・睡眠・血糖・血圧など、多くのパラメータを同時に動かすため、医療的なモニタリングが重要だからです。New England Journal of Medicine+1

4-4. よくある疑問Q&A

ここで、読者の方から実際に聞かれそうな質問を、3つほど整理しておきます。

Q1. マンジャロを始めてからいびきが減った気がします。薬のおかげと考えていいですか?

A.「その可能性はあるが、検査なしに断定はできない」が現実的な答えです。

体重が減って首まわりや腹部の脂肪が減れば、いびきや無呼吸が軽くなることは十分にあり得ます。実際に、チルゼパチドやGLP-1受容体作動薬で体重が大きく減ると、AHIが改善したという報告も増えています。New England Journal of Medicine+2PubMed+2

ただし、

  • いびきアプリのグラフ
  • 家族から見た「なんとなく静かになった」印象

だけでは、医学的に十分かどうかは判断できません
可能であれば、主治医と相談しつつ、必要に応じて**再評価(簡易検査や睡眠検査)**を受けると安心です。

Q2. 打ち始めてから日中の眠気・だるさが強いです。続けても大丈夫でしょうか?

A.「よくある副作用パターンの可能性」もありますが、自己判断で放置はおすすめできません。

ゼップバウンドの試験では、疲労・倦怠感(だるさ)が数%で報告されており、消化器症状や低血糖、血圧低下などと絡み合っている場合もあります。FDA Access Data+1

  • 吐き気・下痢・食欲低下が強い
  • 食事量が急に減っている
  • 糖尿病治療薬(インスリンやSU薬など)と併用している

といった場合は、低血糖や脱水なども疑いながら、早めに主治医に相談するのが安心です。

一時的なだるさの場合は、

  • 投与量が安定してくる
  • 食事パターンが整ってくる

とともに落ち着いていくケースも少なくありませんが、「ただ我慢する」方向にはいかないように気を付けてください。

Q3. 睡眠時無呼吸があるのですが、マンジャロ(ゼップバウンド)で体重が減ったらCPAPをやめてもいいですか?

A. 自己判断での中止はNGです。

SURMOUNT-OSA試験でも、PAP療法を使っている群・使っていない群の両方でチルゼパチドの効果が検討されていますが、CPAPの中止は医師の判断のもと、検査結果を踏まえて慎重に行うべきとされています。New England Journal of Medicine+2New England Journal of Medicine Japan+2

  • 体重が減って症状が軽くなったとしても、
  • 再検査でAHIが十分に改善していることを確認し、
  • 医師と相談しながら段階的に調整していく

というステップを踏むことで、リスクを最小限にしながら治療の見直しができます。

5. おわりに ― 薬の力を借りつつ、「眠りの土台」を整える

最後に、「マンジャロ 睡眠 いびき」に関して、今日からできる小さな一歩を整理しておきます。

行動のヒントイメージ・ポイント
注射の曜日と時間をだいたい固定する自律神経と体内時計に「リズム」を教えてあげる
就寝の2〜3時間前からは固形物を控える胃腸を少し休ませてから寝る → 逆流・胃もたれ予防
できる範囲で横向き寝を試してみる気道がつぶれにくい姿勢をからだに覚えさせる
いびき・眠気・だるさをメモしておく感覚の変化を記録し、診察時の材料にする

全部を完璧にやる必要はありません。
この中から**「これならできそうだな」**と感じたものを、ひとつだけでも選んでみてください。

この記事の要点を3つにまとめると、

  1. マンジャロ/ゼップバウンドは「睡眠薬」ではないが、体重や代謝を通じて、いびき・睡眠時無呼吸に良い影響を与える可能性がある。
  2. 一方で、消化器症状やだるさ・疲労感などの副作用が、睡眠の質に影響することもあるため、「良い変化」と「ちょっと困る変化」の両方を観察することが大切。
  3. 薬だけに任せず、生活リズム・寝る前の過ごし方・体位などの“睡眠の土台”を整えることで、マンジャロのプラス効果を生かしやすくなる。

もし今、

  • 「やせ薬マンジャロに興味があるけれど、睡眠やいびきが心配」
  • 「すでに使っているけれど、だるさや眠気との付き合い方に迷っている」

という状態であれば、どうか一人で抱え込まず、担当の医師や睡眠の専門家と一緒に「ちょうどいい落としどころ」を探してみてください。

読み終えた今、あなたの中で「ここだけは意識してみようかな」と思えるポイントがひとつでも見つかっていたら嬉しいです。🌙

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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