1. はじめに
「布団に入ってから1時間たっても眠れない」「気づくと毎晩3時ごろに目が覚めてしまう」
そんな夜が続くと、朝から体も心もずっしり重くなりますよね。
最近は、ドラッグストアやネットで「睡眠サポート」のサプリをよく見かけます。
その中でもグリシンやGABA(ギャバ)はかなりメジャーな存在で、「なんとなく良さそうだけど、グリシンとGABAの違いがよく分からない」「自分にはどっちが合うんだろう?」という声をよく聞きます。
実際の相談でも、
- 寝つきが悪くて布団に入ってから長い
- 途中で目が覚めてしまい、そのあと浅い眠りが続く
この2パターンのどちらか、もしくは両方を抱えている方が多い印象です。
ここでは、グリシンとGABAの違いを整理しつつ、
- 「寝つきが悪いタイプ(入眠困難寄り)」
- 「途中で目が覚めるタイプ(中途覚醒寄り)」
それぞれの方が、サプリを選ぶときに何を目安にすると良いかを、なるべく分かりやすくお伝えしていきます。
完璧を目指す必要はありません。
読み終わったあとに「じゃあ、今日からこれだけ意識してみようかな」と思える、小さなヒントを持ち帰ってもらえたらうれしいです。

2. いま話題の「グリシンとGABAの違い」って、結局なんなのか?
まずざっくり言うと、
- グリシン:体温の調整や深い眠りをサポートしやすいアミノ酸
- GABA:脳や神経の「ブレーキ役」として働く、抑制系の神経伝達物質
というイメージを持ってもらえると、だいぶ整理しやすくなります。
グリシンとGABAをざっくり比較
| 項目 | グリシン | GABA(γ-アミノ酪酸) |
|---|---|---|
| 何者か | たんぱく質をつくるアミノ酸の一種 | 脳や神経で働く抑制系の神経伝達物質 |
| 主な狙い | 深部体温を下げて眠りに入りやすくし、翌朝のだるさ軽減をねらう | 神経の興奮をしずめて、リラックス感や入眠サポートをねらう |
| 睡眠関連の研究でよく使われる量の目安 | 就寝前に約3 gのグリシンで、睡眠の質や日中の疲労感が改善した報告がある Wiley Online Library+1 | 100〜300 mg程度のGABAを数週間続けて、入眠までの時間短縮などが報告されているが、エビデンスはまだ限定的とされる Sleep Foundation+1 |
| 特徴的なポイント | 眠りのリズムや深さ、翌日の「すっきり感」に関わりやすい | 「緊張しやすい」「頭が冴えすぎて眠れない」といった状態に関わりやすい |
| イメージ上向きそうなタイプ | 夜中に何度も目が覚める、朝起きても疲れが抜けていない | 布団に入ると考えごとが止まらず、寝つきが悪い |
もちろん、これはあくまで「傾向」の話で、誰にでも当てはまるものではありません。
ただ、グリシンとGABAの違いをイメージするうえでは、上の表くらいのざっくり感がちょうど良いと思います。
「効果がすごい魔法の薬」ではない
もうひとつ大事なのは、どちらも医薬品の睡眠薬ではなく、あくまで“サポート役”であるという点です。
- グリシン:睡眠薬のように脳を強く「眠らせる」わけではなく、深部体温や睡眠リズムに働きかけて、自然な眠りを後押しするというイメージです。SpringerLink+1
- GABA:もともと脳内で働いている「落ち着かせる信号」を補うような形で、リラックスや入眠を助ける可能性があると考えられています。ただし、口から摂ったGABAがどの程度脳まで届くのかは、まだ議論があるところです。Frontiers+1
つまり、「グリシン GABA 違い」と検索すると、どちらが“強いか”を比べるような情報も出てきますが、
現実には体質・生活リズム・悩んでいる睡眠のタイプによって「合う・合わない」が変わりやすい、というのが正直なところです。
3. からだの中で起きていること
ここから少しだけ、中の仕組みをのぞいてみましょう。
専門用語はさらっとにして、イメージしやすい形でお話しします。
3-1. グリシン:体を「眠れるモード」に整えるアミノ酸
グリシンは、筋肉や皮膚、コラーゲンなどをつくる材料でもあり、脊髄や脳幹では「抑制系」の神経伝達物質としても働きます。
睡眠に関しては、人の研究で
- 就寝前にグリシン3 gを飲んでもらうと、
- 主観的な睡眠の質が良くなった
- 深い眠り(徐波睡眠)に入るまでの時間が短くなった
- 日中の眠気や疲労感が減った
といった結果が報告されています。Wiley Online Library+1
仕組みとしては、
- 深部体温(体の内側の温度)をほんの少しだけ下げる
- 体内時計がある中枢(視交叉上核)の働きを整える
といった経路が関係していると考えられています。PMC+1
「お風呂で一度あたたまってから、じわっと体温が下がると眠くなる」という経験はありませんか?
グリシンは、その“体温が落ち着いていく流れ”を軽く後押しするようなイメージです。
3-2. GABA:神経のブレーキをやさしくサポート
GABAは、脳で最も代表的な「抑制系」の神経伝達物質です。
日中に頑張って働いている神経に対して、
「そろそろブレーキ踏んで、休んでもいいよ」
と声をかける役割だと思ってください。
睡眠との関係については、
- 100〜300 mg程度のGABAを就寝前に数週間とってもらうと、
- 入眠までの時間が短くなる傾向
- 自覚的な睡眠の質やストレス感の改善
などを報告した小規模な研究がありますが、
全体としては「エビデンスはまだ限定的」という評価が多いのが現状です。Sleep Foundation+2Frontiers+2
また、GABAは口から摂っても脳にどのくらい届くかがはっきりしていないため、
- 末梢神経(自律神経を含む)や
- 腸と脳をつなぐ「腸–脳軸」
を通じて間接的に影響している可能性も議論されています。PMC+1
とはいえ、「考えごとが止まらない」「緊張しやすい」というタイプの方が、
GABAを含むサプリをリラックスのきっかけづくりとして使っているケースは、実際の生活の中でもよく見られます。
3-3. 安全性と“量”の話
どちらも、健康な成人が一般的な量を守って使用する範囲では、比較的安全性が高いとされています。
- グリシン:睡眠研究で使われる3 g前後の摂取で、大きな副作用は報告されていません。Wiley Online Library+1
- GABA:アメリカ薬局方(USP)の安全性レビューでは、
- 120 mg/日を12週間
- 18 g/日を4日間
などの摂取で、重篤な有害事象は報告されなかったとされています。PMC+1
もちろん、「多ければ多いほど効く」というものではありません。
- 少ない量から試す
- 体調の変化をよく観察する
- 持病や薬がある場合は、必ず医師・薬剤師に相談する
この3つは、サプリを使ううえでの共通ルールとして大切にしたいところです。
3-4. 「構造」「神経」「感覚」の重なり合い
少し視点を変えると、グリシンとGABAは次のようにからだに関わってきます。
- 構造の面
グリシンはコラーゲンの材料でもあり、筋肉や皮膚、関節をつくる“構造の一部”です。
体そのものが健康であることが、結果として睡眠の土台になります。 - 神経の面
両者とも「抑制系」の神経に関わり、
日中モードから夜モードへの切り替えをサポートします。 - 感覚の面
・体がぽかぽかから“ふわっと”クールダウンしていく感覚
・頭の中の雑音が少し静かになる感覚
こうした小さな変化の積み重ねが、「眠りにつきやすい」「途中で目覚めにくい」という体験につながっていきます。
サプリだけで劇的に変えるというより、
生活リズムと合わせて「からだのスイッチの切り替え」を支えるピースのひとつ、
くらいに捉えておくと、ちょうど良い距離感になります。
4. 日常のクセとグリシン・GABAの関係
ここからは、もう少し“あるあるの生活パターン”とつなげてみます。
4-1. 入眠に時間がかかるタイプ(入眠困難寄り)
- ベッドに入ってもスマホや動画を見続けてしまう
- 仕事や家事のことを考え始めると止まらない
- 「明日も眠れなかったらどうしよう」と不安になる
こうした状態では、交感神経が優位なまま夜を迎えていることが多く、
寝るべき時間なのに、からだの中は「日中モード」のスイッチが切れていません。
研究でも、就寝前のカフェインやブルーライト、強いストレスがあると、
入眠までの時間が長くなり、睡眠時間が短くなる傾向が報告されています。PMC+1
こういうタイプの方は、
- 夜のスマホ・PCは寝る1時間前からオフにする
- カフェインは寝る6〜8時間前までに切る
- ぬるめの入浴・軽いストレッチ・深呼吸などで、「もう仕事は終わり」という合図を出す
といった**生活習慣の調整が“土台”**になります。
そのうえで、
- 「頭が冴えすぎて眠れない」「緊張しやすい」
というタイプには、
GABAを少量から試すという選択肢が相性が良いことがあります。
GABAサプリは、100〜300 mg程度を就寝前にとる研究が多く、
この範囲であれば比較的安全に使えるとされています。Sleep Foundation+2Examine+2
もちろん、サプリだけで「考えごとゼロ」にはなりません。
ただ、「自分なりのリラックスタイム+少量のGABA」で、
ブレーキを踏みやすくする“きっかけ”にするイメージです。
4-2. 途中で何度も目が覚めるタイプ(中途覚醒寄り)
- 寝つきはそこまで悪くないのに、2〜3時間ごとに目が覚める
- 夜中にトイレに何度も行ってしまう
- 朝起きたときに「寝た気がしない」
このタイプは、
- 深い眠り(徐波睡眠)が少ない
- 体温のリズムが乱れている
- アルコール・夜食・夜更かしなどで睡眠が分断されている
といった背景が重なっていることが多いです。
日本の睡眠ガイドラインでも、成人は6〜8時間程度の睡眠を目安にし、
質の良い睡眠をとることが健康維持に重要とされています。merxwire.com+1
ところが、眠りの途中で何度も起きてしまうと、「時間は寝ているのに質が低い」という状態になりやすくなります。
このようなタイプの方には、
- 就寝3〜4時間前までに食事を済ませる
- アルコールは「寝酒」にしない(むしろ浅い眠りを増やします)Health+1
- 寝室を少し涼しめに保つ
といった工夫が、深い眠りを増やす土台になります。
そのうえで、
- 夜中の覚醒が多い
- 朝のだるさが強い
という方は、グリシン3 g前後を就寝前にとることで、
- 深い睡眠への移行がスムーズになる
- 日中の疲労感や眠気が軽くなる
といった効果が期待できる可能性があります。Wiley Online Library+2PMC+2
グリシンは“体温のクールダウン”や“睡眠の質”に関わるため、
「寝つきよりも、途中で目が覚める」「朝がつらい」という方との相性が良いことが多い印象です。
4-3. どちらともいえない・日中だるいタイプ
- 寝つきもそこそこ、夜中もそこそこ…だけど常に眠い
- 「寝ているつもり」なのに、日中の集中力が続かない
このタイプは、
- 睡眠時間そのものが足りていない
- 生活リズム(寝る時間・起きる時間)がバラバラ
- 日中の光を浴びる時間が少ない
といった要素が絡み合っていることが多いです。
日本のガイドラインでは、成人の平均的な睡眠時間として6〜8時間が推奨されていますが、
実際にはそれ以下しか寝られていない方も少なくありません。merxwire.com+1
この場合、サプリを選ぶ前に、
- 起床・就寝時間をなるべく揃える
- 朝〜昼にしっかり自然光を浴びる
- 日中の軽い運動を習慣にする
といった**睡眠リズムの“再調整”**が最優先になります。
サプリでいうと、
- 夜中の目覚めが気になる → グリシン寄り
- 寝る前の緊張・ストレスが強い → GABA寄り
と、“悩みの主役”に合わせて選んでみるのがおすすめです。
4-4. よくある疑問Q&A
### Q1. グリシンとGABAを一緒に飲んでも大丈夫?
結論から言うと、健康な成人が一般的な量で併用する場合、大きな問題が報告されているわけではありません。
グリシンとGABAは、作用する仕組みが少し違うため、サプリとして併用している方もいます。
ただし、
- 眠気が強くなりすぎる
- 頭が重い・だるさが増す
といった体感が出る場合もあり得ます。
特に車の運転や危険作業をする前に飲むのは避けた方が安心です。
持病がある方や、抗不安薬・抗うつ薬など中枢神経に作用する薬を服用中の方は、必ず主治医や薬剤師に相談してから使うようにしてください。
### Q2. 飲んでもあまり変化を感じません。やめた方がいい?
サプリは、薬と比べるとどうしても**「効き目がマイルド」**です。
1〜2日で劇的な変化を期待するものではなく、2〜4週間ほどかけて“傾向”を見るイメージに近いです。Sleep Foundation+1
それでも、
- 生活習慣も軽く整えつつ
- 3〜4週間試してみてもまったく体感がない
という場合は、一度やめてみても良いと思います。
そのうえで、
- 就寝前のスマホやカフェイン
- 仕事量・ストレス・運動不足
といった**「土台の部分」**を少しずつ整えていった方が、
結果として睡眠が良くなるケースは多いです。
### Q3. 持病や薬があるけれど、グリシン・GABAを試しても大丈夫?
ここは慎重にいきたいところです。
- 妊娠中・授乳中
- 腎臓や肝臓の持病がある
- 睡眠薬・抗不安薬・てんかん薬などを飲んでいる
といった場合、グリシンやGABAが薬の効き方に影響する可能性や、
臓器への負担が増える可能性を完全には否定できません。
大規模な長期研究はまだ十分とはいえないため、
自己判断での使用はおすすめしません。
「どうしても気になる」「それでも試す価値があるのか知りたい」という場合は、
- かかりつけ医
- 睡眠外来
- 薬剤師
などに相談して、あなたの病歴や服薬状況をふまえたうえでの判断をもらうのが安全です。
5. おわりに 〜今日からできる“小さな一歩”〜
最後に、今日からできる現実的な一歩を、少しだけ整理しておきます。
| 行動のヒント | イメージ |
|---|---|
| 寝る1時間前にスマホを手放す | 「ここから先は、からだを夜モードに戻す時間」と決めて、照明も少し落とす |
| カフェインは寝る6〜8時間前まで | コーヒーやエナジードリンクの「夕方以降の一杯」を、別の飲み物に変えてみる PMC+1 |
| 就寝前のルーティンを1つ決める | 軽いストレッチ、ぬるめのお風呂、深呼吸など、自分なりの「一日の区切り」を作る |
| サプリは少量+数週間単位で様子を見る | 体調をメモしながら、「なんとなく良い方向に傾いているか」をゆっくり観察する |
全部やる必要はありません。
この中から**「これならできそう」**と思えたものを、ひとつだけ選んでみてください。
グリシンとGABAの違いは、
- 体温や睡眠の深さを整えるサポート(グリシン)
- 神経の興奮をしずめてリラックスを促すサポート(GABA)
という“役どころ”の違いとして捉えると、少し見え方が変わってきます。
- 寝つきが悪い・頭が冴えてしまう → 生活リズムの調整+GABA寄り
- 夜中によく目が覚める・朝のだるさが強い → 睡眠環境の見直し+グリシン寄り
こんなふうに、「自分のパターン」に合わせて選んでいくと、
サプリとの付き合い方も、もう少しラクになるはずです。
眠りは、人生のかなりの時間を占める大事な営みです。
完璧な睡眠を目指す必要はありません。
今の自分のリズムを少しだけ見直して、
**“昨日よりも1ミリだけ整った眠り”**を重ねていくことが、からだにも心にもやさしい道だと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
