どこまでセルフケアで様子を見てよくて、どこから医療機関に相談すべきか~“我慢しすぎ”と“受診しすぎ”のあいだのセルフケアと受診の目安~

セルフケアで様子を見るか病院を受診するか迷う男女と、その判断の目安を示すイラスト
目次

1. はじめに

「この頭痛、まだ様子見でいいのかな」「発熱が続いているけど、病院を受診するべきか迷う」
そんな相談を、日常的によく受けます。

ネットで調べると、「すぐ受診!」と書いてある記事もあれば、「様子を見ましょう」と書いてある記事もあって、かえって不安になることも多いと思います。
受診を控えすぎて重症化してしまうのも困りますし、逆に毎回すぐ病院に駆け込むのも、体力的にも時間的にも大変です。

この記事では、

  • どこまでならセルフケアで様子を見てよいのか
  • どのラインを超えたら「医療機関に相談した方がいい」のか

という「セルフケアと受診の目安」を、できるだけ中立な立場から整理していきます。

読み終わったときに、

「とりあえず、こういうときは受診しよう」「この程度なら、一度生活やセルフケアを見直してみよう」

と、自分なりのコンパスが少し整ってくることを目指しています。


2. 「セルフケアと受診の目安」って、結局なんなのか?

ここ数年、「救急車の適正利用」「受診控え」という言葉がニュースに出ることが増えました。
医療機関が混み合う中で、「病院 受診の目安」を知りたい人が一気に増えた印象があります。

ただ、この「受診の目安」は、

  • 年齢
  • 持病の有無
  • 妊娠中かどうか
  • そのとき流行している病気(インフルエンザ、コロナ、胃腸炎など)

によっても変わるため、「○度の発熱なら必ず受診」「○日続いたら危険」と一律に線を引くことはできません。

厚生労働省や消防庁などは、「救急車を呼ぶか」「今すぐ病院に行くか」迷ったときの相談窓口として、**#7119(救急安心センター)**の活用を勧めています。看護師などが電話で症状を聞き取り、緊急性や受診のタイミングを一緒に考えてくれる仕組みです。kakarikata.mhlw.go.jp+1

つまり、本来の「受診の目安」は、

  1. 生命に関わる危険サインがあるかどうか(救急レベル)
  2. すぐに受診した方がよい“赤信号”の症状があるか
  3. セルフケアと様子見を中心にしてよい“黄色〜青信号”か

という三層で考えるのが現実的です。

ざっくり言うと:

  • 明らかな危険サイン(意識がぼんやり、息苦しい、胸の強い痛みなど)があれば、迷わず救急受診レベル
  • 高熱が続く、強い頭痛やめまい・胸痛・倦怠感が長引くときは、早めに医療機関へ相談
  • 軽い頭痛やだるさ、軽い咳や鼻水などだけなら、まずはセルフケア&生活習慣の見直しをしながら経過を見る

というイメージです。
このあと、もう少し身体の中で何が起きているのかを眺めながら、「セルフケアの限界ライン」を考えていきます。


3. からだの中で起きていること

からだの不調は、ざっくりと

  • 構造のトラブル(関節・筋肉・姿勢など)
  • 神経やホルモンのバランス(自律神経、ストレス反応など)
  • 感覚のズレ(だるさ・痛みをどう感じているか)

が重なり合って出てきます。

「だるい・頭が重い」は、からだの“防御反応”でもある

感染症や炎症が起きるとき、身体は「なるべく動かさないで回復に集中したい」と判断します。
そのサインの一つが倦怠感(だるさ)や眠気です。

厚生労働省の新型コロナ関連の資料でも、「発熱やのどの痛み、咳に加えて、強いだるさを訴える人が多い」とされており、だるさは身体がウイルスと戦っているサインとして扱われます。厚生労働省

軽いだるさで、食事や水分がとれて日常生活がある程度送れている範囲なら、セルフケア(睡眠・水分・栄養・安静)の出番が大きいところです。
一方で、

  • 立っているのもしんどい
  • 水分がほとんどとれない
  • 尿の量が極端に減っている

といった状態になってくると、脱水や重い感染症の可能性も出てくるため、自宅だけで様子を見るのは危険になってきます。内科医監修の記事でも、高熱が数日続く+強いだるさ+呼吸の苦しさや胸の痛みがある場合は、早急な受診が勧められています。仁川診療所+1

「痛み」は、場所と質で危険度が変わる

痛みも同じで、すべてが「すぐ受診」ではありません。
ただし、

  • 胸の強い痛みや締め付け感が30分以上続く
  • 突然の激しい頭痛(今まで経験したことのないような痛み)
  • 腰や背中の激痛に冷汗や息苦しさを伴う

といったサインは、心筋梗塞や大動脈解離など命に関わる病気のサインとして、救急ガイドラインでも「緊急受診を要する症状」に挙げられています。消防庁+1

逆に、

  • 同じ姿勢が続いたあとに出る肩こりや腰痛
  • 目を酷使したあとに出る頭の重さ

などは、筋肉や姿勢の問題、自律神経の緊張によることが多く、まずはストレッチや休息などのセルフケアの比重が大きい領域です。

「自律神経の疲れ」はグラデーションで進む

睡眠不足、ストレス過多、長時間のデスクワークなどが続くと、自律神経が休むタイミングを失い、

  • 寝ても疲れが取れない
  • めまいっぽいふらつき
  • 動悸や息切れ
  • 胃腸の違和感

といった「なんとなく不調」がにじみ出てきます。

こうした症状も、急に悪化した場合胸痛・息苦しさ・麻痺・強い頭痛を伴う場合には、脳や心臓の病気が隠れている可能性があるため、セルフケアだけで判断するのは危険です。高血圧とめまいの解説でも、180/120mmHg以上の超高血圧+頭痛や胸痛・息切れ・神経症状がそろう場合は、119番や救急外来の検討が勧められています。myc-hondaiin.com

いっぽうで、

  • 検査で大きな異常はない
  • だるさや眠りの浅さ、軽い頭痛などが続いている

というパターンでは、生活習慣やストレス対策、姿勢や運動の見直しといったセルフケアが中心になる段階も多くあります。

このように、「構造」「神経」「感覚」がそれぞれどのくらい乱れているかで、セルフケアで済むか、受診すべきかのラインが少しずつ変わってきます。


4. 日常のクセと「セルフケアと受診の目安」の関係

ここからは、日常でよくあるパターン別に、「どこまでセルフケア」「どこから受診」の目安を考えてみます。
※あくまで一般的な目安なので、少しでも不安が強いときは、ためらわず医療機関や電話相談(#7119など)を使ってください。長野県ホームページ+1

4-1. 「軽い頭痛・肩こり・だるさ」が続くとき

デスクワークやスマホ時間が長い方に多いのが、首肩こり+頭の重さ+だるさのセットです。

  • 痛みが軽〜中等度
  • 発熱はない、または微熱程度
  • 吐き気やろれつの回らなさ、手足の麻痺、視野の異常はない

この範囲なら、

  • こまめな休憩
  • 画面を見る時間を少し減らす
  • 首・肩・背中のストレッチ
  • 睡眠時間の確保
  • カフェインの摂りすぎを見直す

などのセルフケアで様子を見る余地が大きいゾーンです。

ただし、
**「今まで経験したことのない激しい頭痛」「突然の麻痺やしびれ・ろれつ不良・視野の異常を伴う頭痛」**は、脳卒中などの可能性があり、セルフケアの範囲を超えています。こうしたサインが出たときは、迷わず救急要請を検討するレベルです。

4-2. 発熱や咳が出たとき

感染症シーズンには、

  • 37〜38℃台の発熱
  • のどの痛み
  • 咳・鼻水
  • 軽い全身のだるさ

がよく見られます。

一般的な風邪であれば、十分な水分摂取・休養・解熱鎮痛薬の適切な使用で改善していくことが多く、「様子見+セルフケア」が基本になります。
一方で、いくつかのサインがある場合は「早めの受診」が勧められています。例えば内科クリニックの解説では、仁川診療所+1

  • 38℃以上の高熱が数日続く
  • 呼吸が苦しい、胸が痛い
  • 強いだるさで動くのがつらい
  • 水分がとれず、尿の減少など脱水が疑われる
  • のどの痛みが強く、飲み込みが難しい

といった状態は、細菌感染や肺炎、重いインフルエンザなどの可能性もあり、「セルフケアの限界」を超えているサインとして扱われます。

4-3. 「なんとなく不調が続く」場合

検査で大きな異常は見つからなかったけれど、

  • なんとなく疲れが抜けない
  • 睡眠の質が悪い
  • 胃腸の調子が整わない
  • メンタルの浮き沈みが大きい

という状態は、自律神経や生活リズムの乱れが背景にあることが多いです。

このゾーンでは、

  • 睡眠リズムを整える(就寝・起床時間をそろえる)
  • 食事のリズムと内容を見直す
  • 軽い運動やストレッチを習慣にする
  • 休憩のタイミングを意図的につくる
  • スマホやPCとの距離を一日のどこかで置く

といったセルフケアが主役になります。

ただし、

  • 体重が急に減る/増える
  • 2週間以上、日常生活に支障が出るレベルのだるさや気分の落ち込みが続く
  • 強い不安感や動悸、息苦しさが頻繁に起こる

といった場合は、心身症やうつ病、ホルモンの問題などが隠れていることもあり、かかりつけ医や心療内科などへの相談が選択肢に入ります。


Q1. どれくらいの期間「様子見」してよいのでしょうか?

症状の種類によって変わりますが、目安としては:

  • 軽い頭痛・肩こり・だるさ → 数日〜1週間程度の様子見は許容範囲
  • 37〜38℃台の発熱を伴う風邪症状 → 2〜3日様子を見て、改善傾向がない・悪化するなら受診を検討
  • 咳が長引く場合 → 1週間以上続く/悪化する場合は一度医療機関へ

を一つのラインと考えてよいと思います。
もちろん、基礎疾患がある方や高齢者、妊娠中の方は、もう少し早めに相談してよいゾーンです。

Q2. 「頭痛 受診の目安」はどう考えればいいですか?

ポイントは、

  • いつもと同じタイプの頭痛かどうか
  • 発症の仕方(じわじわ or 突然)
  • ほかの症状(麻痺・ろれつ不良・視野の異常・発熱など)の有無

です。

  • 仕事やスマホのあとに出る、いつもの肩こり頭痛 → セルフケア+生活習慣の見直しで様子見
  • 今まで経験したことのない強い頭痛/突然ピークに達した頭痛 → 救急受診レベル
  • 頭痛+発熱+首のこわばり/意識の混濁/けいれんなど → 迷わず救急要請を検討

少しでも「これはいつもと違う」と感じたら、自己判断にこだわらず医療機関に相談して大丈夫です。

Q3. 救急車を呼ぶ目安がわかりません

厚生労働省や消防庁は、「救急車を呼ぶか迷ったら家族や電話相談、かかりつけ医に相談する」ことを勧めています。kakarikata.mhlw.go.jp+1

ざっくりとした危険サインとしては:

  • 意識がもうろうとしている、反応が乏しい
  • 息が苦しくて会話が続かない
  • 胸の強い痛みや締め付け感が続く
  • 強い頭痛や、麻痺・しびれ・ろれつ不良などの神経症状
  • 大量の出血、止血が難しいケガ

などが挙げられます。
迷ったときは、**#7119(救急安心センター)**に電話して相談するのも、セルフケアと受診のあいだをつなぐ大切な選択肢です。

私自身、「これって救急車?」と家族の症状で迷ったとき、#7119にお世話になったことがあります。電話口で状況を整理してもらえるだけでも、かなり気持ちが落ち着きます。


5. おわりに

最後に、「セルフケアと受診の目安」を、小さな行動レベルに落とし込んでみます。

行動のヒントこんなイメージで試してみる
危険サインの把握「意識・呼吸・胸痛・激しい頭痛」は、迷わず救急レベルの候補と覚えておく
様子見のラインを決める「風邪っぽい症状は2〜3日」「軽い頭痛やだるさは数日〜1週間」など、自分なりの基準を持つ
セルフケアの優先順位睡眠・水分・食事・ストレス発散・軽い運動を、“薬より先に整える土台”として意識する
相談先を準備しておくかかりつけ医・#7119・健康相談窓口など、困ったときに頼れる連絡先をメモしておく

全部やろうとしなくて大丈夫です。
この表の中から、「これならできそう」というものを1つだけ選んでみるところからで十分です。

  • 「危険サインだけ、今日覚えなおしておこう」
  • 「次に体調を崩したときは、とりあえず2〜3日セルフケアを意識しながら経過を見てみよう」
  • 「#7119をスマホに登録しておこう」

そんな小さな一歩でも、「自分のからだを自分で守る力」をじわっと底上げしてくれます。

受診するかどうか迷う時間は、不安で長く感じられるものです。
その不安をすべて消すことはできませんが、ざっくりとしたコンパスを一つ持っておくことで、「とりあえず、今日はここまでやってみよう」と思える余白が生まれてきます。

がんばりすぎて我慢しすぎるでもなく、何かあるたびに不安で動けなくなるでもなく。
そのあいだの、ちょうどいいところを一緒に探していけたらと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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