病み上がりのだるさが続くのはなぜ?~感染症後の自律神経・炎症・睡眠の関係~

病み上がりのだるさと感染症後の自律神経・炎症・睡眠の関係をわかりやすく解説するイメージイラスト
目次

1. はじめに

熱が下がって、咳も落ち着いてきた。
検査でも「もう陰性ですね」と言われた。

それなのに――
からだがやたら重い、仕事に戻っても集中できない、ふとした拍子にソファから立ち上がるだけでぐったりする。

今年(2025年冬)は、インフルエンザ・コロナ・RSウイルス・マイコプラズマなど、呼吸器系の感染症が一気に流行している時期です。
私のところにも「病み上がりのだるさが抜けない」「風邪は治ったのにずっと疲れている」という相談が増えています。

SNSで調べると
「病み上がり だるい 原因」
といったワードがたくさん出てきて、
・後遺症なの?
・自律神経のせい?
・いつまで続くの?
と不安になる方も多いと思います。

この記事では、
「なぜ熱が下がってからのほうがしんどく感じるのか」
「どこまでが“よくある範囲”で、どこからは受診を考えた方がいいのか」
「今日からできる小さな整え方」
を、自律神経・炎症・睡眠の視点から、できるだけやさしく整理していきます。

読み終わる頃には、
「今のだるさにはちゃんと意味があるんだ」
と、少しだけ安心してもらえたらうれしいです。


2. いま話題の「病み上がり だるい 原因」って、結局なんなのか?

ネットで「病み上がり だるい 原因」と検索すると、いろいろな情報が出てきますが、大きく分けると次の2つが混ざっています。

  1. からだが回復するための“正常な反応”としてのだるさ
  2. 何らかのトラブルのサインとしての、長引く・強すぎるだるさ

「ポストウイルス疲労」という考え方

イギリスの医療機関などでは、風邪やインフルエンザなどウイルス感染のあとに続く疲労を「ポストウイルス疲労(post-viral fatigue)」と呼び、感染が治ったあともだるさが続くのはめずらしくないと説明しています。North Bristol NHS Trust

多くの場合は、
・数日〜数週間のあいだに少しずつ改善していく
・睡眠や休養で回復しやすい
・日によって波がある
といった特徴があります。

一方で、新型コロナ感染後の長引く倦怠感(いわゆる「コロナ 後 倦怠感」)については、
6か月時点で約半数以上に疲労や筋力低下が残っていたという大規模な追跡研究もあります。Nature+1
時間とともに改善していく傾向はあるものの、一部の人では長期化することもわかってきました。

つまり、

  • 風邪 治ったのに だるい
  • インフルエンザ 回復期 疲れ
  • コロナ 後 倦怠感

これらは「ちょっと特殊なこと」ではなく、**世界中で報告されている“よくある現象”**でもあります。

どこまでが「よくある範囲」なのか?

ざっくり整理すると、次のようなイメージです。

状態よくある病み上がりのだるさ受診の相談を考えたいサイン
期間数日〜2週間くらいで少しずつ軽くなる3週間以上ほとんど変わらない/悪化している
だるさの質休むと多少ラク、日によって波がある息切れ・胸痛・強い動悸・起き上がれないレベル
生活への影響家事や仕事はペースを落とせばなんとかこなせるトイレや食事のために立つのもつらい
他の症状軽い咳やのどの違和感が残る程度高熱がぶり返す、呼吸困難、脱水の疑いなど

もちろん個人差はありますが、
「風邪は治ったのに だるい」が2週間以上つづく/日常生活が明らかに困難といった場合は、かかりつけ医などに相談しておくと安心です。

ここからは、からだの中で何が起きているのかを、少し深掘りしていきます。


3. からだの中で起きていること

病み上がりのだるさには、大きく3つの要素が絡み合っています。

  1. 炎症と免疫の“後片づけ”
  2. 自律神経のバランスの崩れ
  3. 睡眠リズム・体内時計の乱れ

それぞれを、生活のイメージと結びつけながら見てみます。

3-1. 炎症の“消し炭”が残っている

感染症と戦うあいだ、からだの中では免疫細胞がフル稼働し、炎症物質(サイトカインなど)が多く放出されます。
これは悪いことではなく、**ウイルスや細菌と戦うための「必要な火事」**のようなものです。

ところが、熱が下がってもすぐに元通りになるわけではありません。
最近の研究では、感染が落ち着いたあとも、弱い炎症状態がしばらく残ることが示されています。ランセット+1

炎症が少し残っていると、

  • からだが重い
  • 筋肉痛のようなだるさ
  • 頭がぼんやりする

といった感覚が続きやすくなります。

イメージとしては、
大きなバーベキューのあとに、火は消えているけれど炭がまだくすぶっている状態
表面上は片づいたように見えても、内側ではまだ後始末が続いているのです。

3-2. 自律神経の“戦闘モード”が抜けきらない

感染と戦うあいだ、からだは「緊急モード」に切り替わります。
心拍数が上がり、呼吸が浅く早くなり、交感神経(アクセル側)が優位になる。
これは生き延びるための、合理的な反応です。

ところが、最近の研究では、感染が落ち着いてからも、自律神経のバランスがなかなか戻らない人がいることがわかってきました。MDPI+1

  • 立ち上がると動悸や立ちくらみがする
  • ちょっと動いただけで心拍が早くなる
  • からだが常にソワソワして落ち着かない

こうした症状は、自律神経の不安定さ(自律神経の乱れ)と関係している可能性があります。
新型コロナ後の長期的な不調(Long COVID)でも、**自律神経の機能不全(dysautonomia)**が重要な要素のひとつとして取り上げられています。サイエンスダイレクト+1

「感染症 自律神経 乱れ」というキーワードが注目されている背景には、こうした研究の蓄積があります。

3-3. 睡眠と体内時計のぐちゃぐちゃ感

「病気のあいだはよく寝ていたはずなのに、治ってからも眠いしスッキリしない」
これもよく聞く声です。

疲労や倦怠感に関する最近のレビューでは、
炎症・自律神経の乱れ・睡眠リズムの崩れがセットで起きることが、長引く疲労の大きな要因ではないかと考えられています。www.elsevier.com+1

  • 熱があるあいだに昼夜逆転ぎみになる
  • 夜中に咳や鼻づまりで何度も目が覚める
  • 解熱後も、なんとなく夜ふかしが続く

こうしたことが積み重なると、脳の「体内時計」がずれてしまいます。
結果として、いくら寝ても“熟睡した感覚”が得られず、だるさが抜けにくい状態になりがちです。

3-4. 他のウイルスでも「後に残る疲れ」はよくある

長引くだるさというとコロナのイメージが強いですが、インフルエンザやRSウイルスなどでも、咳や疲労が数週間続くことは以前から報告されています。NCBI+1

つまり、

「病み上がりのだるさ」は、
からだがサボっているのではなく、
全力で戦ったあとに“修復モード”に入っているサイン

と捉えることもできます。

ただし、そこに生活習慣や「無理の再開」が重なると、だるさが長引いてしまうことがあります。
次の章では、そのあたりをもう少し現実的な日常の場面に落としていきます。


4. 日常のクセと「病み上がりのだるさ」の関係

ここでは、よくある生活のパターンをいくつか取り上げて、
「こういう過ごし方が続くと、だるさが残りやすい」
というポイントを整理します。

4-1. いきなり“元のペース”に戻そうとする

真面目な人ほどやりがちなのが、「熱が下がった=フル稼働再開OK」と思ってしまうこと。

  • 仕事を初日から全力でこなそうとする
  • 家事も一気に取り戻そうとする
  • 休んだ罪悪感から、むしろ残業や無理をしがち

国際的なガイドラインやアスリートのデータでも、感染症後の運動再開は段階的に行うべきとされています。ResearchGate+1

一般の生活でも、

  • 「治った翌週は、元の7〜8割の負荷」を目安にする
  • とくに「病み上がり 運動 いつから」が気になる人は、息切れや動悸をチェックしながら負荷を調整する

といった「ゆるやかな坂道スタート」が、結果的には回復の近道になります。

4-2. ベッドとソファにいすぎて、からだのセンサーが鈍る

休養はとても大切ですが、「ほぼ一日中ベッドとソファ」という状態が長く続くと、

  • 筋力・持久力の低下
  • 血流の悪化
  • 自律神経の“オン・オフ”がつきにくくなる

といった別の問題も出てきます。

とくに高齢の方では、「ちょっと動くだけでぐったりする → ますます動かない → さらに体力が落ちる」というループに入りやすいので注意が必要です。

理想は、

  • 午前・午後に数回だけでも立ち上がって歩く
  • 部屋の中でいいので、1〜2分の“お散歩”をこまめに挟む

というように、からだのセンサー(関節や筋肉、皮膚の感覚)を少しずつ再起動させていくことです。

4-3. 食事と水分が「ちょっと足りない」

病気の間は食欲が落ちるのが普通ですが、その流れのまま

  • 食事量がずっと少なめ
  • 水分も「のどが渇いたときだけ」

という状態が続くと、エネルギー不足のだるさが上乗せされます。

とくに、
・朝はコーヒーだけで済ませてしまう
・昼は菓子パンやおにぎりだけ
・夜も小食 or そうめんだけ
といったパターンだと、筋肉の回復に必要なたんぱく質や鉄分、ビタミン類が不足しやすくなります。

病み上がりの1〜2週間は、

  • 「完璧な健康食」よりも、消化にやさしくバランスが取りやすいもの
  • こまめな水分と、少量でもいいので主食+たんぱく質(卵・魚・豆腐など)を意識する

くらいを目標にできると十分です。

4-4. スマホと夜ふかしで、自律神経のリズムが戻らない

熱があるあいだは、横になりながらスマホや動画を見る時間が増えがちです。
その延長で、病み上がり後も

  • 夜遅くまでSNSや動画を見続ける
  • ついベッドの中でスマホを握りしめたまま寝落ちする

という流れが続くと、睡眠の質が落ち、自律神経の整うチャンスが減ってしまいます。

睡眠不足や質の低下が続くと、低度な炎症や自律神経の乱れと関連するという報告もあります。ランセット+1

「スマホ断ちを完璧に!」と構える必要はありませんが、

  • 寝る1時間前からは画面をオフにする時間をつくる
  • ベッドの中ではスマホをいじらないよう、充電場所をベッドから離す

など、小さな工夫だけでも、回復しやすい土台づくりになります。


Q&Aコーナー(よくある疑問)

### Q1. 風邪が治って1〜2週間たってもだるい。どこまで様子を見ていい?

目安としては「少しずつ良くなっているかどうか」が大事です。

  • 日によって波はありつつ、トータルでは「先週よりはマシかな」と感じられる
  • 休めばなんとか仕事や家事がこなせる

といった場合は、もう少し様子を見てもよいことが多いです。

一方で、

  • 3週間以上ほぼ変化がない、または悪化している
  • 息切れ・胸の痛み・強い動悸・起き上がれないほどの倦怠感がある
  • 高熱がぶり返す、呼吸が苦しい、脱水が心配

といった場合は、早めに医療機関に相談してください。
「大したことないかも」と感じていても、自己判断せず確認しておくと安心です。

### Q2. 病み上がり 運動 いつから再開していい?

「病み上がり 運動 いつから」が気になる方は、多いと思います。

一般的には、

  • 熱が下がってから少なくとも数日は、日常生活レベルの動きで様子を見る
  • そのうえで、息切れや動悸がひどくないことを確認しながら、軽い散歩やストレッチから再開する

という段階的なステップが勧められます。

スポーツ選手のデータでも、感染症からの復帰は段階的な「戻し」が安全とされているので、日常生活でも同じように「急に全力」は避けた方が無難です。ResearchGate

不安な場合は、かかりつけ医に「このくらいの運動ならいいですか?」と相談しておくと安心感が違います。

### Q3. たくさん寝ているのにだるいままなのはなぜ?

「睡眠時間は足りているのに、まるで電池が充電されない感じがする」という声もよく聞きます。

これは、

  • 夜中に何度も目が覚めている
  • 昼夜逆転ぎみになっている
  • 寝る直前までスマホやPCを見ている

といったことで、“睡眠の質”が下がっている可能性があります。

炎症や自律神経の乱れがあると、そもそも睡眠が浅くなりやすいという研究もありますし、逆に睡眠の乱れが炎症や疲労を長引かせるという指摘もあります。www.elsevier.com+1

「何時間寝たか」だけでなく、

  • 毎日なるべく同じ時間に寝て起きる
  • 寝る前1時間は、画面を見ない・強い光を浴びない

など、体内時計を整える工夫も意識してみてください。


5. おわりに

病み上がりのだるさは、決して「気のせい」でも「弱さ」でもなく、
からだが必死に戦い、そのあと片づけと修復を続けている証拠でもあります。

ただ、その過程で

  • 無理な復帰
  • 動かなすぎ
  • 食事・水分不足
  • 夜ふかし・スマホ長時間

といった「日常のクセ」が重なると、どうしても長引きがちです。

最後に、今日からでも試しやすい“小さな一歩”を、表にまとめてみます。

行動のヒントイメージ・ポイント
① ペースを「7〜8割」に落としてみる仕事や家事を全部こなそうとせず、「今日はここまで」と決めて区切る
② 1〜2分の“家の中散歩”を何回か入れるトイレついでに少し遠回りする、部屋を一周するなど、からだのセンサーの再起動
③ 食事でたんぱく質をひとつ足す卵・豆腐・ヨーグルト・魚などを、どこかの食事に1品プラスするイメージ
④ 寝る1時間前から「画面オフタイム」をつくる本を読む、音楽を聴く、ぼーっとする時間をあえて確保する

全部をいきなりやる必要はありません。
**「この中から1つだけやってみようかな」**くらいで十分です。

病み上がりの時期は、どうしても不安になりやすいですが、
からだにはもともと「戻る力」が備わっています。

その力が働きやすいように、
少しだけペースをゆるめて、
自分にやさしい生活リズムを許してあげてください。

今のだるさが、ちゃんと意味のあるプロセスなんだと知るだけでも、
心とからだの重たさは、ほんの少し軽くなるはずです。

無理のない範囲で、できそうなところから試してみてくださいね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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