1. はじめに
在宅勤務が当たり前になってきてから、
- 「ずっと座っているから、肩こりと頭痛がひどくなった」
- 「仕事が終わってもPCの前から離れられず、夜になっても脳が休まらない」
- 「休日なのに疲れが抜けず、常にだるい」
こんな声をよく聞くようになりました。
リモートワークは通勤がなくなり、時間の自由度も増えますが、その一方で「在宅勤務 デスクワーク 不調」というセットでからだが悲鳴をあげやすい働き方でもあります。
特に多いのが、
- 首こり・肩こり・腰痛・眼精疲労
- なんとなく続くだるさ
- 寝つきが悪い、眠りが浅い
- 理由のはっきりしないメンタル不調
といった“グレーゾーン”の症状です。
検査をしても大きな異常は見つからないけれど、確かにしんどい。その背景には、自律神経のバランスや血流、そして脳の疲れ方の変化が、静かに積み重なっています。
ここでは、在宅勤務のデスクワークで起こりやすい不調を、「からだの中で何が起きているのか」という視点から整理しつつ、今日からできる小さな工夫まで一緒にたどっていきます。
私も文章仕事の日は、気を抜くと午前中ずっと座りっぱなし…なんてことがあるので、自分への戒めも込めてお届けします。



2. いま話題の在宅勤務・デスクワーク不調って、結局なんなのか?
「在宅勤務になってから体調が悪い気がする」と感じる方は少なくありません。
日本の研究でも、テレワークをしている人は、出社している人と比べて仕事中の座位時間が長く、身体活動量が少ない傾向がはっきり出ています。J-Stage+1
この「座りっぱなし+運動不足+画面時間の増加」のセットが、在宅勤務特有の不調を生みやすくしています。
イメージをつかみやすくするために、出社と在宅勤務の違いをざっくり並べてみます。
| 出社勤務の日 | 在宅勤務の日 | |
|---|---|---|
| 通勤 | 歩く・階段を使う・自転車などで自然に活動量↑ | ベッドからデスクまで数歩で完結しがち |
| 座る時間 | 会議以外は意外と立ち歩きも多い | 朝から夕方までほぼ座りっぱなしになりやすい |
| 休憩 | 同僚と雑談・席を立ってコーヒーを入れに行く | キッチンも数歩で行けて、かえって立たない |
| 人との会話 | 生の会話・表情から情報を得られる | 画面越しの会議か、チャット中心 |
| 仕事の区切り | 出退勤でメリハリがつきやすい | PCを閉じるタイミングがあいまいになりやすい |
こうした違いが積み重なることで、
- 在宅勤務 自律神経が乱れやすくなる
- 在宅勤務 不調 原因が見えにくい
- テレワーク 体調不良が長引く
という状態になっていきます。
「病気」ではないけれど、からだのコンディションが低空飛行のまま続く状態。
私はこれを、よく「自律神経と血流のガス欠状態」と表現しています。
- 眼精疲労
- 首こり・肩こり
- 脳疲労
- 睡眠負債
といった症状は、そのガス欠サインの一部にすぎません。
次の章では、座りっぱなしのデスクワーク中に、からだの中で何が起きているのかを、少しだけ深く見ていきます。
3. からだの中で起きていること
3-1. 座りっぱなしで血流が滞る
長時間のデスクワークでは、股関節を曲げたまま・膝も曲げたままの姿勢が続きます。
この姿勢が続くと、
- 太ももの付け根で血管が軽く圧迫される
- 下半身の筋肉がほとんど動かず、血液を押し戻す「ポンプ機能」が働きにくい
- お尻・腰回りの筋肉が固まり、腰痛や坐骨神経の違和感につながる
といったことが起こります。
世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、座位時間が長いほど、心血管疾患や全死亡リスクが高まることが示されており、すべての成人に対して「座りっぱなしの時間を減らすこと」が推奨されています。世界保健機関+1
また、最新のレビュー研究では、「一日の中で座っている時間が長い人は、そうでない人に比べて心血管疾患のリスクが約3割増える」といった報告もあります。サイエンスダイレクト
もちろん、すぐに病気になるわけではありませんが、
「夕方になると脚が重い・むくむ」
「なんとなく頭がぼーっとして集中しづらい」
といった軽いサインは、血流低下の影響がじわじわ表面化している状態と考えられます。
3-2. 自律神経が“張りっぱなし”になる
在宅勤務は、
- 通勤や移動のメリハリが少ない
- 1日の中で「オン・オフの切り替え」が曖昧
- 常にメールやチャットの通知が飛んでくる
という特徴があります。
これらはすべて、自律神経のうち「アクセル役」である交感神経をじわじわ刺激し続ける要因です。
一方で、からだをゆるめる役割の副交感神経を高める要素(軽い運動・深い呼吸・リラックスの時間)が減りがち。
その結果、
- 休んでいるつもりでも実は“頭だけ働き続けている”
- 心拍数や血圧、筋肉の緊張が微妙に高い状態が続く
- 在宅勤務 メンタル不調(イライラ・不安感・落ち込み)が増えやすい
という状況になっていきます。
座位時間とメンタルの関係を調べた研究では、座りっぱなしの時間が長い人ほど、抑うつ症状や不安のスコアが高くなりやすいことが報告されています。PMC+1
「動かないこと」は、体力だけでなく心のスタミナもじわじわ削っていく、ということですね。
3-3. 眼精疲労と脳疲労、そして睡眠負債
モニターを長時間見続けるデスクワークでは、
- ピント調節をする筋肉が疲れる
- 瞬きの回数が減り、乾燥しやすい
- 画面の明るさやブルーライトが、夜の睡眠リズムに影響する
といったことが起こります。
デジタルデバイスによる**デジタルアイストレイン(デジタル眼精疲労)**については、
「乾燥感・ぼやけ・頭痛などの症状を訴える人が増えているが、画面との距離や休憩の取り方を工夫することで多くは軽減できる」と報告されています。Verywell Health
また、夜遅くまでPCやスマホを見続けると、ブルーライトの影響で睡眠ホルモンのメラトニン分泌が抑えられ、体内時計が後ろにずれることが実験で示されています。PNAS+1
睡眠時間が少しずつ削られたり、質が落ちたりすると、
- 朝起きても疲れが取れない
- 日中の集中力が下がる
- 些細なことでイライラしやすくなる
といった「睡眠負債」が蓄積し、脳疲労が溜まったまま在宅勤務を続けるという状態に拍車をかけます。
つまり在宅勤務のデスクワーク不調は、
- 血流の滞り(筋肉と血管の問題)
- 自律神経のバランスの崩れ(アクセル踏みっぱなし)
- 感覚器と脳の疲れ(眼精疲労・脳疲労・睡眠負債)
この3つが絡み合って起きている、と考えるとイメージしやすいはずです。

4. 日常のクセと在宅勤務不調の関係
ここからは、ありがちな在宅勤務の1日と、「どこで不調スイッチが入りやすいか」を見ていきます。
4-1. 朝イチから座りっぱなしでスタート
在宅勤務だと、
- 起床 → そのままPC前へ
- 朝食もデスクで済ませる
- 気づいたらお昼まで椅子から立っていない
という流れになりがちです。
朝イチから在宅勤務で座りっぱなしが続くことで、
- 下半身の血流がにぶり、冷えやむくみが出やすい
- 脳への血流もやや落ち、午前中から集中力が続きにくい
- すでに首・肩・腰に負担がのしかかっている状態で午後を迎える
という「じわじわ体力消耗モード」で1日が進んでしまいます。
4-2. 昼も画面を見ながら“ながら食べ”
お昼休憩も、
- YouTubeを見ながら食事
- スマホでSNSをチェックしながら一人ランチ
- 「仕事のメールだけ軽く確認」のつもりが、そのまま再び作業へ
となると、からだも目も脳も、休憩時間にほとんど休めていない状態になります。
肩こり 頭痛 首こり 眼精疲労が一気に悪化しやすいのが、このあたりの時間帯です。
4-3. 夕方の“ラストスパート”で完全にガス欠
夕方になると、締め切りやミーティングの準備で、「もうひと踏ん張り」したくなる時間帯。
しかし、
- ここまでほぼ座りっぱなし
- 水分もあまりとっていない
- 休憩も「トイレ+キッチンに行っただけ」
という状態でラストスパートをかけると、
夜になってから頭痛・めまい・吐き気に近いだるさが出る
日をまたいでも疲れが残る
といった不調が強く出てきます。
職場の座位時間と健康リスクを調べた大規模研究では、仕事中ほぼ座っている人は、立ち仕事が多い人と比べて全死亡リスクが約1.2〜1.3倍高いというデータも報告されています。ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション
これは決して脅しではなく、「ちょっと立つ」「少し歩く」という小さな工夫に意味がある、という裏付けにもなります。
4-4. 夜の「ついついスマホ」で睡眠負債へ
仕事が終わったあと、
- ベッドやソファでスマホをだらだら眺める
- SNSや動画を見ているうちに、気づけば日付が変わっている
こんな夜が続くと、「在宅勤務を続けていたら眠れない」「テレワークで睡眠負債が溜まっていく」という状態に近づいていきます。
ブルーライトだけが悪者ではありませんが、
寝る直前まで画面を見ていると、脳が「まだ昼間だ」と勘違いし、寝つきが悪くなる人がいることは複数の研究で示されています。chronobiologyinmedicine.org+1
「眠りが浅い → 日中ぼーっとする → 仕事が進まず残業 → さらに夜更かし」
という、軽い悪循環に入りやすくなるわけです。
ここで、よく聞かれる質問にも触れておきます。
Q1. 在宅勤務の日は、どのくらいの頻度で立ち上がればいいですか?
「◯分ごとに必ず○分立ちましょう」といった“完璧ルール”は、現実的には続きません。
研究では、長時間座りっぱなしを「ちょこちょこ中断する」だけでも、メンタルや身体面の指標が改善しやすいことが示されています。PMC+1
目安としては、
- 30〜60分に1回、1〜2分でいいので立ち上がる
- 席を立ったついでに、水を一杯飲む・軽く背伸びをする
このくらいでも十分意味があります。
Q2. スタンディングデスクがなくても、何かできることはありますか?
もちろんあります。例えば、
- ノートPCなら、キッチンカウンターや本を重ねた台の上に一時的に置いて、メール返信だけ立って行う
- 電話やオンライン会議の一部を、意識して「立って参加する時間」にする
- 印刷物や紙の資料を見る作業は、あえて立って行う
など、「立てる仕事を立ってやる」という発想に切り替えるだけでも、
在宅勤務による運動不足解消への一歩になります。
Q3. 仕事が忙しくて、休憩をほとんど取れません…
そんなときは、「からだ全部を休める」発想ではなく、どこか一つだけでもリセットする意識がおすすめです。
- 目:20〜30分ごとに、20秒だけ窓の外や遠くを見る(いわゆる20-20-20ルール)
- 首・肩:トイレに立ったついでに、首を前後左右にゆっくり動かす
- 呼吸:メール送信前に3呼吸だけ、息を長めに吐く
デジタル眼精疲労の専門家も、画面を見る時間が長い人ほど、短時間でもこまめな視線のリセットと瞬きの意識が有効だとしています。Verywell Health
「がっつり10分休憩」ではなく、「数十秒の小休止をたくさん散りばめる」という考え方が、忙しい在宅勤務には合いやすいと思います。
5. おわりに
在宅勤務のデスクワーク不調は、特別な病気というより、
- 座りっぱなしで血流が落ちる
- 自律神経がアクセル寄りで張りっぱなし
- 眼精疲労と脳疲労が睡眠負債に変わる
といった、いくつかの小さなズレが積み重なった結果として現れます。
一度に全部を変えようとすると苦しくなるので、「これならできそう」という一歩を選ぶのがおすすめです。
イメージしやすいように、行動のヒントを表にまとめてみます。
| 小さな一歩 | どんなイメージか |
|---|---|
| 毎時0分だけ立ち上がる | メール送信やミーティング終了を“立つ合図”にする |
| 昼食だけは“ノースクリーン”にする | スマホを別の部屋に置き、食べることだけに集中してみる |
| 夜は寝る30分前から画面をオフにする | 代わりにストレッチや入浴、紙の本や音声コンテンツに切り替える |
| 会議1本は立って参加してみる | カメラオンが難しければ、オフにして耳だけ参加でもOK |
すべてを一度にやる必要はありません。
「今日は毎時1回立つことだけ意識してみよう」
「今週は寝る前30分だけ、スマホを充電器に置きっぱなしにしてみよう」
そんなふうに、在宅勤務での不調に対する対策を“実験”感覚で試してみてください。
在宅勤務やテレワークは、うまく付き合えば、からだにやさしい働き方にもなり得ます。
自律神経の整え方はさまざま。日中の工夫や、デスクワークの合間のストレッチなど簡単なものを少しずつ取り入れながら、「自分なりの働きやすい1日設計」を見つけていけると良いですね。
今日の記事が、その最初の一歩のヒントになれば嬉しいです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
C
