1. はじめに
ここ最近、「健康保険証が廃止されるって聞いたんですけど、マイナ保険証がないと病院に行けなくなるんですか?」という相談を、からだの話をしている場面でもよく耳にするようになりました。
テレビやニュースで「健康保険証は2025年12月1日で全て有効期限を迎えました」といった言葉を聞くと、「あれ、自分の保険証はもう使えない?」「マイナ保険証を持っていない家族はどうなるんだろう…」と、不安になってしまいますよね。デジタル庁ニュース
中には、不調があっても「仕組みがよく分からないから、もう少し様子をみよう…」と受診を先延ばしにしてしまう方もいます。制度の変更そのものより、「よく分からない」「窓口で困ったらどうしよう」という不安が、からだの緊張やだるさを増やしてしまうこともあります。
この記事では、
- マイナ保険証がなくても、今日、病院やクリニックにかかれるのか
- 「資格確認書」とは何か、自分や家族のところにどう届くのか
- 期限切れの健康保険証を出したとき、窓口ではどんな流れになるのか
- いざ受診するときに、「とりあえずこれだけ持っていれば大丈夫」という小さなチェックポイント
を、できるだけ専門用語をかみ砕きながら整理していきます。
制度の話はどうしても固くなりがちですが、「あ、こうなっているなら、とりあえず今日はこれをやっておけばいいか」と思えるように、できるだけ現実的な目線で書いていきますね。
「マイナ保険証がない=受診できない」ではありません。ちゃんと“逃げ道”が用意されています。そのあたりを、一緒に整えていきましょう。

2. いま話題の「マイナ保険証がないまま受診する」とは、結局なんなのか?
まず、いま起きている制度の変化を、ざっくり整理します。
● 健康保険証はどうなったのか
厚生労働省とデジタル庁の整理では、次のような流れになっています。厚生労働省+1
- 従来の健康保険証は、2024年12月2日以降、新しくは発行されない
- すでに手元にある健康保険証は、最長で2025年12月1日まで有効
- それ以降は、原則として
「マイナ保険証」か「資格確認書」を窓口に出して受診する
さらに、全国民の保険証については、2026年3月末までは暫定的に使用できる特例措置が設けられていて、医療機関側もその前提でレセプト請求(保険請求)を行えるように案内されています。全国保険医団体連合会 -+1
つまり、制度上は健康保険証が“卒業”していきますが、いきなり「来月から一切使えません!」という崖ではなく、移行のためのクッション期間が設けられている、というイメージです。
● マイナ保険証・健康保険証・資格確認書の違い
ややこしいのは、「似た名前のカードがいくつも出てくる」ことです。ここで一度、整理しておきましょう。
| 名前 | ざっくりした役割 | 誰が使う? | どう手に入る? |
|---|---|---|---|
| マイナ保険証 | マイナンバーカードに健康保険証の機能を載せたもの | マイナンバーカードを持ち、保険証利用登録した人 | 自分でマイナンバーカードを作り、「健康保険証として使う」設定をする |
| 健康保険証(従来のカード) | 今まで通りの紙またはプラスチックの保険証 | 2025年12月1日まで有効(以降は原則廃止) | すでに手元にある分のみ。新規発行は終了 |
| 資格確認書 | マイナ保険証を使わない人向けの「保険加入の証明書」 | マイナ保険証を持っていない人、使えない人 | 加入している医療保険者から原則、無償で自動的に交付される厚生労働省+2厚生労働省+2 |
ポイントは、マイナ保険証を使わない場合でも、「資格確認書」があれば、これまで通り保険診療を受けられるということです。厚労省は、「2024年12月2日以降も資格確認書でこれまでどおり医療にかかれます」と資料で明記しています。厚生労働省+1
● 資格確認書は、自分で取りに行かないといけない?
ここもよく誤解されるポイントです。
- まだマイナ保険証を使っていない人には、
今持っている健康保険証の有効期限内に、加入している医療保険者から資格確認書が無償で交付される - 多くの場合、「申請しなくても自宅に送られてくる」形がとられています厚生労働省+1
一方で、
- 高齢の方や障がいをお持ちの方など、「顔認証付きのカードリーダーが使いにくい」といった配慮が必要な場合は、申請により資格確認書を交付してもらうことも可能
- 親族や介助者などが代理申請することも認められている
といった“保険”も用意されています。厚生労働省+1
● 「資格情報のお知らせ」とは別物
ここがさらに紛らわしいのですが、郵送物の中には「資格情報のお知らせ」という紙も混ざっています。
これは「あなたはこの保険にこういう条件で加入していますよ」という事務的な通知で、窓口で提示するためのカードではありません。厚労省は、「資格確認書とは別物なので混同しないでください」と注意喚起しています。厚生労働省
ざっくりまとめると、
- マイナ保険証:マイナンバーカードを保険証として使うもの
- 資格確認書:マイナ保険証を使わない人の新しい「保険証」
- 期限切れ保険証:しばらくは特例的に使えるけれど、ゆくゆくは卒業するカード
という位置づけになります。
3. 「マイナ保険証がない」でも過度な不安は不要
ここからは、「実際の受診シーンでどうなるのか」「どんな準備をしておけばいいのか」を具体的に見ていきます。
● 「とりあえず保険証だけ財布に入れておく」時代からのアップデート
これまでは、健康保険証を財布に入れっぱなしにしておけば、多くの場面でそれで済んでいました。
今後は、
- スマホにマイナ保険証を登録する人
- プラスチックのマイナンバーカードを持ち歩く人
- 資格確認書を財布やカードケースに入れておく人
など、人によって“メインカード”が分かれてきます。
「これからは絶対マイナ保険証!」と肩に力を入れなくても大丈夫ですが、自分の受診スタイルをどれにするか一度決めておくと、それだけで不安はかなり減っていきます。
● 期限切れ保険証を出したときの窓口の流れ(イメージ)
ニュースなどでも話題になったように、特例措置として2026年3月末までは、全国民の健康保険証を暫定的に使用できる運用が案内されています。全国保険医団体連合会 -+1
実際の窓口では、次のような流れになることが多いと考えられます。
- 患者さんが、期限切れになっている健康保険証を提示する
- 医療機関側がオンライン資格確認システムで、
- 本人が今も保険に加入しているか
- 自己負担割合はいくつか
を確認する
- 資格が確認できれば、原則としてこれまでと同じ自己負担割合で受診できる
- 医療機関から「次回以降はマイナ保険証か資格確認書を持ってきてくださいね」と案内される
もちろん、細かい運用は医療機関や保険者によって違いがありますが、厚労省の資料でも「移行後も医療費が10割負担になることはありません」と、患者側の不利益が出ないようにする方針が強調されています。厚生労働省+1
大事なのは、期限が切れたからといって、いきなり全額自己負担になるわけではないという点です。
● マイナ保険証を忘れた・うまく読み取れないとき
マイナ保険証を持っていても、
- カードリーダーがうまく反応しない
- 回線トラブルでオンライン資格確認ができない
- カード自体のICチップに不具合がある
といったケースはゼロにはなりません。
こうしたときの対応も、厚労省のQ&Aで示されています。厚生労働省+1
- マイナポータルの画面や「資格情報のお知らせ」を一緒に提示してもらう
- 再診であれば、登録情報から資格を確認する
- 初診であれば、「被保険者資格申立書」に記入してもらい、後日保険者に確認する
など、「とりあえず全額自費で払ってください」という対応にならないような仕組みが用意されています。
もちろん、例外的なケースもありますが、「読み取りエラー=その場で10割負担」と決めつけてしまう必要はありません。
● 今日からできる「受診準備」の小さなチェックリスト
制度は複雑でも、やることを細かく分けると意外とシンプルです。
- 手元にあるカード(マイナンバーカード、健康保険証、資格確認書)を全部テーブルに出してみる
- 有効期限や記載内容をざっとチェックする
- 「今後のメイン」を
- マイナ保険証にするのか
- 資格確認書にするのか
自分なりに決めておく
- 財布やカードケースに、少なくともどれか1つは常に入れておく
これだけでも、「マイナ保険証がないまま受診することになっても、何とかなるだろう」という感覚が少し育ってきます。
Q&A:よくある疑問にお答えします
ここで、よく聞かれる疑問を3つ取り上げます。
Q1. マイナ保険証も資格確認書もなくて、期限切れの保険証だけ…それでも受診できますか?
完全に受診できない、ということは基本的にありません。
特例措置として、2026年3月末までは健康保険証を暫定的に使える運用が案内されており、医療機関側もオンライン資格確認システムを使って、あなたが保険に加入しているかどうかを確認できるようになっています。全国保険医団体連合会 -+1
窓口では、
- 期限切れの保険証をいったん預かる
- システムで資格を確認する
- 確認できれば、通常の自己負担で受診してもらう
という流れになるケースが多いと考えられます。
そのうえで、「次からはマイナ保険証か資格確認書を持ってきてくださいね」と案内される可能性が高いでしょう。
Q2. 本当に何も持たずに受診したら、医療費は全額払うことになりますか?
完全に身分証や保険証類を持たずに受診すると、いったん「自費扱い」となる可能性はあります。ただ、その場合でも、
- 後日、マイナ保険証や資格確認書、健康保険証などを医療機関に提示する
- あるいは、加入している医療保険者に問い合わせて手続きをする
ことで、差額分が精算される仕組みが用意されています。
また、マイナ保険証の読み取りトラブルや機器の不具合で資格確認ができない場合でも、「そのせいで10割負担になることはない」と厚労省は説明しています。厚生労働省+1
不安な場合は、受診した医療機関か、加入している健康保険の窓口(協会けんぽや健康保険組合など)に相談してみてください。
Q3. 高齢の親がマイナンバーカードを使えません。資格確認書はどうなりますか?代理で手続きできますか?
高齢の方や障がいをお持ちの方など、カードリーダーの操作が難しい場合には、配慮が必要な方として資格確認書を利用し続けることが想定されています。厚生労働省+1
基本的には、
- マイナ保険証を使っていない人には、保険者から申請なしで資格確認書が送られてくる
- 事情があってすぐに必要な場合は、加入している医療保険者に連絡し、親族や介助者が代理で申請することも可能
と案内されています。
「親がカードをなくしてしまった」「暗証番号が分からない」といった場合も、いきなり受診できなくなるわけではありません。まずは、加入している保険者に電話をして、「資格確認書をどう扱えばよいか」を相談してみてください。
4. おわりに
ここまで読んでいただいて、「思っていたより、なんとかなる仕組みが用意されているんだな」と感じてもらえたら嬉しいです。
最後に、今日からできる解決策のヒントを、簡単な表にまとめておきます。
| 小さな一歩 | 具体的にやることのイメージ |
|---|---|
| 手元のカードを確認する | マイナンバーカード、健康保険証、資格確認書を全部テーブルに出し、有効期限や名前をチェックする |
| メインの受診方法を決める | 「私は当面、資格確認書をメインに使う」「スマホのマイナ保険証を使って、紙の資格確認書は予備にする」など、自分なりの方針を決める |
| 受診セットを1か所にまとめる | 財布やカードケース、通院用のポーチなど、「ここを見れば必要なものが一式入っている」場所をつくる |
| 分からない点は、早めに聞いておく | 加入している健康保険の窓口やコールセンターに1本電話を入れて、「自分の場合はどうなりますか?」と確認しておく |
全部を一気にやる必要はありません。
この中から、「今の自分でもできそうだな」と感じたものを選んで、今週どこかのタイミングでやってみてください。
制度の変化そのものは、個人の力だけではコントロールできません。
それでも、「自分の手元のカードはどうなっているのか」「困ったらどこに相談すればいいのか」が見えてくると、不安は和らぎます。
マイナ保険証があってもなくても、必要なときに、必要な医療にちゃんとかかれる。
その感覚が持てるように、できる範囲で一緒に整えていきましょう。あなたのペースで大丈夫です。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
