春と秋がほとんどない…「二季化バテ」でしんどくなる理由~極端な暑さ・寒さと自律神経の疲れ~

気温差の激しい季節にだるさを感じている女性のイラスト。春と秋が短くなり「二季化バテ」で自律神経が疲れている様子を表現した画像。
目次

1. はじめに

「最近、春と秋をほとんど感じないうちに、いきなり真夏・真冬が来る気がする」
そんな感覚を持っている方は少なくないと思います。

ここ数年、私のところにも

  • 「季節の変わり目になると、毎回ひどくだるくなる」
  • 「春・秋だけじゃなく、一年中なんとなく不調が続いている」
  • 「気候変動のニュースを見るたびに、『体調が悪いのもそのせい?』と不安になる」

という相談が増えています。

昔は、冬の寒さが少しずつゆるみ、ゆっくり春が来て、そこからじわっと暑くなる流れがありました。
ところが今は、肌寒い日が続いたと思ったら急に真夏日、ようやく涼しくなってきたと思ったら一気に冬のような冷え込み……。からだにとっては“ジェットコースター”のような気温変化です。

こうした「春と秋がほとんどないように感じる気候」のなかで、
自律神経が疲れ、体調不良が長引いてしまう状態を、この記事では仮に「二季化バテ」と呼びます。

読み終わるころには、

  • 「二季化バテ」がどんな状態なのか
  • なぜ、気候の変化が自律神経や体調に影響しやすいのか
  • どこを少し整えると、からだがラクになりやすいのか

が、今より少しクリアに見えてくるはずです。
全部完璧にやる必要はありません。
「これならできそうかな」と思う一歩を、ひとつだけ拾ってもらえたら十分です。


2. いま話題の「二季化バテ」とは、結局なんなのか?

まず、「二季化バテ」という言葉自体は、2025年の現時点では医学用語ではありません。
ただ、ニュースやSNSでも「春と秋が短くなった」「暑さと寒さの振れ幅が大きい」といった話題が増え、その影響で体調不良を感じる人が増えていることは、いくつかの調査でも示されています。

たとえば、環境省や気象庁のデータを見ると、日本の平均気温は長期的に上昇し、猛暑日(35℃以上)の日数が増えている地域が多いと報告されています。
また、急な寒暖差や熱波が健康に影響することは、世界保健機関(WHO)や各国の公的機関でも「気候変動と健康」の重要なテーマとして挙げられています。

こうした背景の中で、私たちの暮らし方やからだの感じ方として、

  • 「季節の変わり目が短くなり、気温差が急」
  • 「極端な暑さ・寒さが長引く」
  • 「エアコンなど人工的な環境への依存時間も増える」

という状況が重なり、自律神経や体温調節の負担が増えやすいと考えられます。

「二季化バテ」が抱えがちな状態

医学的な疾患名ではないものの、「二季化バテ」と呼べる状態には、こんな特徴が重なりやすいです。

  • 季節の変わり目になると、強いだるさ・眠気が出る
  • 頭痛やめまい、肩こり、全身の重さが続きやすい
  • 急に暑くなる・寒くなるタイミングで体調を崩しやすい
  • 一年を通じて「スッキリ元気な時期」が短くなった感覚がある
  • 気候変動のニュースを見ると、「だからこんなにしんどいのかな」と不安になる

「気候変動 体調不良」というキーワードで検索してしまう方も多いかもしれません。
その不安感自体が、さらに自律神経の緊張を強め、疲れを感じやすくすることもあります。

必要以上に怖がりすぎなくてよいポイント

ここで大切なのは、

  • 「気候変動=すぐに重大な病気になる」という話ではない
  • しかし、「極端な暑さ・寒さ」「急な気温差」が、からだにストレスを与えるのは事実

という二つを分けて考えることです。

たとえば、熱波に伴う熱中症や心血管系のリスク増加については、多くの研究で指摘されていますし、特に高齢者や持病のある方では注意が必要です。
一方で、「二季化バテ」と感じるレベルの体調不良の多くは、自律神経や体温調節の疲れが前景に出ている段階であり、生活の整え方で軽くできる余地もたくさんあります。

ざっくりまとめると、

二季化バテ=
「春と秋が短く、極端な暑さ・寒さと急な気温差が続く環境の中で、
自律神経や体温調節に負担がかかり、なんとなく不調が続く状態」

とイメージしてもらえればOKです。


3. からだの中で起きていること

ここからは、「二季化バテ」の裏側で、からだの中で何が起きているのかを少しだけ覗いてみます。
難しい単語はサラッと出しますが、必ず日常のことばに言い換えていきますね。

3-1. 自律神経は“気温差の調整役”

自律神経は、ざっくり言うと「からだの自動調節システム」です。
心拍・血圧・体温・汗・消化など、私たちが意識していないところを、黙々と調整してくれています。

急に暑くなった日を思い出してみてください。

  • 皮膚の血管が広がって、熱を逃がそうとする
  • 汗をかくことで、体表から熱を奪う
  • 心拍数が少し上がり、血液をぐるぐる回す

こうした変化はすべて、自律神経の働きです。
逆に急に寒くなれば、

  • 血管をギュッとしぼって、熱を逃がしにくくする
  • からだがぶるっと震えて、熱を生み出そうとする
  • 筋肉のこわばりが強くなる

といった反応が起こります。

本来、春と秋がゆっくりやってくると、からだは少しずつこの調整に慣れていきます。
ところが「春が短く、一気に暑くなる」「秋を飛び越えて急に冷え込む」と、調整の幅が急すぎて、自律神経が働きっぱなしになりやすいのです。

3-2. 寒暖差ストレスで“交感神経の残業”が増える

自律神経には、ざっくり「アクセル役(交感神経)」と「ブレーキ役(副交感神経)」があります。

  • 暑さ・寒さ・気温差・仕事のストレス・不安
    こういった刺激が重なっていくと、アクセル役の交感神経が過剰に働き続けます。

交感神経優位の状態が長引くと、

  • 筋肉のこわばり(肩こり・首こり・背中の張り)
  • 血管の緊張(頭痛・冷え・動悸を感じやすい)
  • 消化機能の低下(胃もたれ・お腹の不調)
  • 浅い眠り・寝つきの悪さ

といった症状につながりやすくなります。

近年の研究でも、暑さや寒さなどの環境ストレスが自律神経バランスや睡眠の質に影響することが報告されています。たとえば、夜間の室温が高いと睡眠時間が短くなり、心拍数も高い状態が続くというデータがあります。

つまり、「最近ずっと疲れが抜けない」「一年中なんとなくだるい」という背景には、

気温差や湿度の変化 → 自律神経の残業が続く →
休む時間が足りないまま、翌日を迎える

というサイクルが、じわじわ積み上がっていることが多いのです。

3-3. 体温調節と血流の「小さなズレ」

二季化バテのとき、からだの中でよく起きているのが
「体温調節と血流の小さなズレ」です。

・暑く感じてエアコンを強めに入れる
・外に出たら急に暑い/急に寒い
・電車やオフィスは冷え冷え、外は蒸し暑い

こうした「外と中のギャップ」が何度も繰り返されると、

  • 手足は冷えているのに、顔だけほてる
  • 上半身は暑いのに、お腹だけ冷える
  • 寝る前に脚が冷えすぎて、なかなか寝つけない

といったアンバランスが起こりやすくなります。

血流の偏りは、筋肉のこわばりや頭痛、だるさにもつながります。
「冷え」や「のぼせ感」は、からだからの“温度調節がうまくいっていないよ”というサインとも捉えられます。

3-4. 睡眠と体内時計にも影響が出やすい

もうひとつ、見落とされがちなのが睡眠と体内時計への影響です。

人間のからだは、本来「昼は活動、夜は休息」というリズムを刻んでいますが、
暑さや寒さのストレスが強いと、夜になっても交感神経が落ち切らず、

  • 夜中に何度も目が覚める
  • 早朝に目が覚めて、そのまま眠れない
  • 起きる時間がバラバラになり、昼間もぼーっとする

といった状態になりやすくなります。

ある研究では、熱帯夜の増加に伴い、睡眠時間が短くなり、翌日のパフォーマンス低下や健康リスクの増加が懸念されると報告されています。
「ただ暑いだけ」ではなく、睡眠の質の低下を通じて、心身の疲れが積み上がっていくわけですね。


4. 日常のクセと「二季化バテ」の関係

ここからは、日々の暮らしの中で「二季化バテ」を強めやすいクセを見ていきます。
どれも“悪習慣”というより、「ついそうなりやすい流れ」なので、責める必要はありません。
自分の生活を振り返るヒントとして読んでみてください。

4-1. 服装と室温のギャップが大きい

朝晩と日中の気温差が大きい時期、
「とりあえずコートを着て出て、室内では薄着のまま過ごす」
というパターンは珍しくありません。

ただ、二季化バテの背景には、

  • 室内では冷えすぎ(エアコン・冷たい床・薄着)
  • 外では急な暑さ・日差しでオーバーヒート

という“シーソー”が何度も繰り返されていることが多いです。

からだの立場になってみると、
「さっきまで冷蔵庫みたいな部屋にいたのに、いきなりサウナみたいな場所に連れて行かれた」
という状態が一日に何度も起きているイメージです。

このギャップが、自律神経にとって大きな負担になっています。

4-2. 季節の変わり目ほど、睡眠時間が短くなりがち

「気温差が大きい=自律神経に負担がかかる時期」ほど、
仕事や家事で忙しくなり、睡眠時間が削られてしまうケースもよくあります。

  • 新生活・新学期のスタート
  • 異動や仕事の繁忙期
  • 年度末・年末進行

こうしたタイミングは、ちょうど季節の変わり目と重なることが多いですよね。

本来なら「からだを休ませたい季節」に、
「生活の変化で心もからだも緊張している」というダブルパンチになりやすいのです。

実際、睡眠時間が短い・質が悪い状態が続くと、心身の不調や生活習慣病のリスクが高まることは、数多くの研究で指摘されています。

4-3. 一年中エアコン環境で“外の季節感”を感じづらい

現代の暮らしでは、

  • 夏は冷房、冬は暖房
  • 移動中も車内・電車内で空調が効いている
  • 職場や自宅で、ほとんど外気に触れない

という環境の人も多いと思います。

これ自体は悪いことではなく、熱中症や低体温を防ぐうえで必要なことでもありますが、
「自分のからだで季節を感じる時間」が極端に減っているのも事実です。

本来、人間のからだは

  • 風の強さ
  • 日差しの角度や明るさ
  • 空気の湿り気や匂い

といった、五感からの情報を通して「今の季節」を感じ取り、それに合わせて体温や自律神経のバランスを微調整しています。

一日中、温度がほぼ一定の空間にいると、
季節の変化にからだが“置いてけぼり”になる感覚が強まり、「いざ外に出ると一気に疲れる」ということが起きやすくなります。

私自身も、長く室内で仕事をしていて、急に外に出たときの「うわ、こんなに暑かった(寒かった)のか…」というギャップに、どっと疲れを感じてしまうことがあります。

4-4. 食事・水分・運動が“季節と連動していない”

二季化バテの相談を聴いていると、
食事や水分、運動習慣が季節とあまり連動していないことも多いです。

  • 夏でも温かいものをほとんど摂らない
  • 冬でも冷たい飲み物やアイスを日常的に摂っている
  • 暑い時期ほど動くのをやめてしまい、血流が落ちる
  • 寒い時期は外出が減り、筋肉や関節が固まりやすい

もちろん、「こうすべき」という正解があるわけではありませんが、
季節とからだの感覚がズレていくほど、自律神経と体温調節の“微調整のきっかけ”が減ってしまうのです。


Q&A:二季化バテについてのよくある質問

### Q1. 「気候変動で体調が悪い気がする」のは気のせいですか?

気のせい、とは言い切れません。
急激な気温差や長引く暑さ・寒さは、実際に自律神経や心血管系に負担をかけることが、いくつかの研究で示されています。

ただ、「気候変動だから体調が悪い」と考えすぎると、不安やストレスが増え、結果的に自律神経の緊張を高めてしまうこともあります。
「環境からの負荷がいつもより大きい季節だから、少しからだを労わろう」くらいの距離感で捉えるのがおすすめです。

### Q2. 一年中なんとなく不調です。これも二季化バテと考えていいのでしょうか?

一年中続く不調には、生活リズム・睡眠・食事・運動・メンタル・持病など、さまざまな要因が絡み合っています。
そのなかの一つとして、「気温差や季節変化への適応疲れ」が乗っているケースは多いです。

ただし、

  • 体重の急激な減少
  • 強い頭痛・胸の痛み・息苦しさ
  • ふらつきがひどい、意識が遠のく感じがある

といった症状がある場合は、二季化バテと決めつけず、一度医療機関で評価を受けることをおすすめします。

### Q3. どのくらい続いたら“ただのバテ”ではなく病院に行くべきですか?

目安として、

  • だるさや頭痛が 2週間以上ほぼ毎日続く
  • 仕事や家事がこなせないほどしんどい日が増えている
  • 市販薬やセルフケアをしても改善が乏しい

といった場合は、一度かかりつけ医や内科、必要に応じて専門医への相談を検討してみてください。

一方で、「季節の変わり目の数日だけ」「寝不足が続いたときだけ」というパターンなら、
二季化バテとしての対策が有効なことも多いです。


5. おわりに ― 今日からできる“小さな二季化バテ対策”

最後に、二季化バテでしんどさを感じている方に向けて、
今日からでも試しやすい一歩をいくつか挙げてみます。

5-1. 「からだの声」を聞く時間を、1日3分だけ増やす

極端な気候の中では、「がんばって適応する」ことが当たり前になり、
自分がどれだけ疲れているかに気づきにくくなります。

  • 朝、起きたときに「今日の体調を10点満点で何点?」と軽く点数をつけてみる
  • 夜、布団に入ったときに「今日、一番からだがしんどかった瞬間」を振り返る

そうした“ミニ振り返り”を通して、からだの声を拾えるようになると、
「ここで少しペースを落とそう」「ここで温かいものを飲もう」といった選択がしやすくなります。

5-2. 季節の変わり目だけは「睡眠の優先順位」を一段上げる

二季化バテの季節は、どうしても睡眠が削られがちです。
完璧な理想睡眠を目指す必要はないので、

  • いつもより 30分だけ早く布団に入る日を週に2〜3日つくる
  • 寝る前1時間だけ、スマホやニュースから離れて、からだをゆるめる時間にする
  • 寝室の温度と湿度を、少し心地よい方向に整えてみる

といった「小さな一歩」から始めてみてください。

5-3. 外気に触れる“季節チェック”タイムをつくる

一日中室内で過ごす日ほど、

  • ベランダや玄関先で深呼吸を3回する
  • 移動中、少しだけ遠回りして外気を感じる
  • 空の明るさや風の強さを、一瞬だけでも意識してみる

といった“季節チェック”の時間をつくるのがおすすめです。
これは、からだと脳に「今はこういう季節だよ」と教えてあげる行為でもあります。

5-4. 行動のヒントを小さな表で整理

最後に、二季化バテ対策のイメージを表でまとめておきます。

状況・サイン今日からできる一歩の例
季節の変わり目に強いだるさが出るその週だけ、就寝時間を30分前倒しする日を2日つくる
室内と外の温度差でぐったりする脱ぎ着しやすい羽織りを一枚常備し、「少し暑い/寒い」を減らす
一年中なんとなく不調が続いている朝・夜に「今日の体調点数」をつけて、波を見える化してみる
冷えやのぼせ感が気になるぬるめの入浴(38〜40℃程度)を10〜15分、週2〜3回意識する
気候変動のニュースを見ると不安になる「環境の負荷が大きいからこそ、今日は自分を少し労わろう」と言葉を言い換える

全部を一度に変えようとすると、それ自体がストレスになってしまいます。
二季化バテは、“時代の気候”の影響を受けながらも、自分なりのペースでからだを守る知恵を育てていくプロセスでもあります。

「今日はこの中から1つだけやってみよう」
そんな気持ちで、ゆっくり試してみてください。
からだはちゃんと、その小さな変化を受け取ってくれます。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

目次