豆乳を飲むとお腹がゴロゴロするのはなぜ?~飲みすぎ・ホルモンバランス・腸内環境の話~

豆乳を飲んでお腹がゴロゴロしている女性と、腸内環境やホルモンバランスのイメージが重なったイラスト
目次

1. はじめに

「なんとなく健康に良さそうだから」「ダイエットに良いって聞いたから」と、牛乳の代わりに豆乳を選ぶ人が一気に増えています。
コンビニでもカフェでも、豆乳ラテやフレーバー豆乳を見かけることが多くなりましたよね。

一方で、こんな声もよく聞きます。

  • 「豆乳を飲むとお腹がゴロゴロする」
  • 「健康のために毎日飲み始めたら、なんだかお腹が張って苦しい」
  • 「生理前に豆乳を飲むと、胸が張る感じが強くなった気がする」

私のところにも、「体に良いと思って続けているのに、なんとなく不調が増えた気がする」という相談がちょこちょこ届きます。
体に良いと言われるものほど、「合う人」と「合いにくい人」の差が出やすいところが、少しややこしいところです。

この記事では、

  • 豆乳を飲むとお腹がゴロゴロする原因
  • 飲みすぎ・ホルモンバランス・腸内環境との関係
  • 「どれくらい」「どんな飲み方」なら付き合いやすいか

を、できるだけやさしい言葉で整理していきます。

全部完璧に覚える必要はありません。
読み終わったときに、「あ、じゃあ私はここだけ気をつけてみようかな」と思えるポイントが1つでも見つかったらうれしいです。


2. いま話題の「豆乳お腹ゴロゴロ問題」って、結局なんなのか?

まず整理しておきたいのは、「豆乳=体にいい」のイメージと、「飲むとお腹がゴロゴロ」「気持ち悪い」という現実とのギャップです。

世の中では、豆乳についてこんなふうに語られがちです。

  • 植物性たんぱく質がとれる
  • コレステロールがゼロ
  • 美容やダイエットに良さそう
  • 大豆イソフラボンがホルモンバランスにいいらしい

実際、大豆たんぱく質は血中コレステロールを下げる可能性があるとして、多くの研究で注目されてきましたし、日本人の食生活に大豆製品が長く根付いているのも事実です。

一方で、豆乳を飲み始めた人たちの声を聞くと、

  • 飲んだあと数時間してからお腹が張ってくる
  • ゴロゴロ音がしてガスがたまりやすい
  • 下痢まではいかないけれど、ゆるくなる
  • 生理前に豆乳を増やしたら、だるさが増した気がする

といった、「なんとなく不調」の報告も少なくありません。

ここでポイントになるのは、

  1. 豆乳そのものは“悪者”ではない
  2. それでも**「体質」「飲む量」「タイミング」によっては不調の引き金になる**

という2つです。

「牛乳でお腹を壊す人」とは少し違う

よくある誤解として、「牛乳でお腹を壊す=乳糖不耐症 → 豆乳なら大丈夫」という図式があります。
確かに、牛乳には乳糖という糖が含まれていて、それを分解する酵素が少ない人はお腹を壊しやすいというメカニズムがあります。

豆乳には乳糖が含まれていないため、乳糖不耐症の人にはメリットがある一方で、

  • 大豆たんぱく質そのもの
  • 大豆オリゴ糖や食物繊維
  • 味付けのための糖分

など、別の成分が腸にとって「負荷」になる場合があります。
つまり、「牛乳はダメだけど豆乳ならOK」とは限らないし、その逆もあり得る、ということです。

「大豆イソフラボン=ホルモンに良い」も、少し整理が必要

大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)と似た働きを一部で持つ成分として知られており、更年期症状の軽減などとの関連が研究されています。ただし、安全な摂取量にはガイドラインがあり、日本の食品安全委員会は、サプリなどを含めた特定保健用食品からの大豆イソフラボンの摂取上限を1日30mg程度とする目安を出しています。

通常の食事(味噌、豆腐、納豆など)からの摂取はそこまでシビアに制限する必要はないとされていますが、豆乳やサプリを「健康にいいから」と重ねて多く摂ると、この目安を超えやすくなります。

ここまでをざっくりまとめると、

  • 豆乳は確かに「健康に良い面」を持っている
  • ただし、お腹やホルモンの面で「合う人・合いにくい人」がいる
  • 特に、急にたくさん飲み始めた人や、もともとお腹が弱い人ホルモンバランスが揺れやすい時期の人は影響を受けやすい

というイメージを持っておくと、後の話がつながりやすくなります。


3. からだの中で起きていること

では、「豆乳を飲むとお腹がゴロゴロする」とき、体の中では何が起きているのでしょうか。
ここでは、からだを少し分解してイメージしてみます。

(1)腸内環境と“大豆たんぱく&オリゴ糖”の関係

豆乳には、大豆たんぱく質やオリゴ糖が含まれています。
これらは腸内細菌の“エサ”にもなりうる成分で、少量・ゆっくりと増やしていくなら、腸にとってプラスに働くことも多いです。

ただし、腸内環境のバランスが乱れている人や、もともとガスが溜まりやすい人の場合、急に豆乳を増やすと、

  • 腸内細菌が一気に発酵を進めてガスを多く発生させる
  • 腸の中の水分バランスが変わり、便がゆるくなりやすい

といった変化が起きやすくなります。

近年、FODMAP(発酵性のある糖質のグループ)が過敏性腸症候群などに関係しているという研究も増えています。豆乳の種類によっては、このFODMAPに含まれる糖質を比較的多く含むものもあり、お腹の敏感な人にとっては刺激になる場合があります。

専門用語を外して言い換えると、

「腸内細菌たちが、一気に“ごちそう”をもらってテンションが上がりすぎてしまい、その結果としてガスやゴロゴロ感が増える」

とイメージすると、少しわかりやすいかもしれません。

(2)自律神経と“内臓の感覚”の関係

お腹のゴロゴロ感や張りは、腸そのものだけでなく、自律神経の敏感さとも関係します。

自律神経は、心臓や肺、腸など「自分で意識して動かしていない臓器」の働きを調整している神経のネットワークです。
ストレスが強いときや、睡眠不足が続いているとき、私たちのからだは「いつもより内臓の感覚を強く感じやすい状態」になりがちです。

実際、過敏性腸症候群の人では、腸の中のガス量がそれほど多くなくても、「張って苦しい」「痛い」と感じやすいことが研究で示されています。
つまり、「豆乳そのものが悪い」というよりも、

  • 自律神経が疲れている
  • ストレスや睡眠不足で“内臓のセンサー感度”が高くなっている

こうした背景があるときに、豆乳によるガスや水分変化が加わり、不快感として強く出やすい状態になる、と考えられます。

(3)大豆イソフラボンとホルモンのゆらぎ

大豆イソフラボンは、エストロゲン様作用(女性ホルモンに似た働き)を持つことが知られており、更年期症状の軽減などとの関連が多く研究されています。
一方で、日本の食品安全委員会は、特定保健用食品などからのイソフラボン摂取量の上限を1日30mg程度とするよう目安を示し、「サプリ等での過剰摂取は避けるべき」としています。

豆乳コップ1杯(200ml)には、商品によって差はありますが、だいたい20〜40mg程度のイソフラボンが含まれるとされています。
ここにサプリや他の大豆食品(納豆・豆腐など)が重なると、気づかないうちに「多め」のゾーンに入っていることもあります。

エストロゲンは腸の動きにも影響を及ぼしうるホルモンで、生理前に便秘や下痢が増える人がいるのも、このホルモンバランスの変化と関連があると考えられています。
生理前や更年期など、「もともとホルモンが揺れやすい時期」に豆乳を急に増やすことで、

  • 胸の張り
  • だるさ
  • 気持ちの揺れ
  • お腹の不快感

が強く出やすい人もいる、とイメージしておくと良いかもしれません。

(4)“飲み方”と“量”という現実的な問題

もう一つ、忘れがちだけれど大事なのが「いつ」「どれくらい」飲んでいるか、です。

  • 起き抜けの空腹時に、冷たい豆乳を一気に飲む
  • お菓子代わりに、1日500ml〜1L近く飲んでいる
  • 加糖タイプの豆乳飲料を、ジュース感覚で飲んでいる

こういったパターンでは、たとえ健康な腸を持っている人でも、負担がかかりやすくなります。

からだの側に立って考えると、

「朝イチのまだ目覚めきっていない腸に、冷たくて濃い液体が急に流れ込んでくる」

という状況です。
自律神経の切り替えがうまくいっていない朝ほど、内臓にはゆっくり目覚めてもらったほうがやさしい、というのは何となくイメージしやすいのではないでしょうか。


4. 日常のクセと「豆乳でお腹ゴロゴロ」の関係

ここからは、もう少し生活場面に近づけて考えてみます。
「豆乳でお腹がゴロゴロしやすい人」にありがちなパターンを、いくつか取り上げてみます。

(1)“健康スイッチ”が入って、いきなり量を増やす

よくあるのが、「今日から健康的な生活をしよう」と決めたタイミングで、

  • 牛乳をすべて豆乳に置き換える
  • 1日1本だった飲料を、豆乳+ヨーグルトドリンクに増やす
  • スムージーやプロテインにも豆乳を使う

と、腸に入ってくる“発酵のエサ”が急増するパターンです。

腸内細菌は、少しずつ環境が変わる分には柔軟に適応してくれますが、急激な変化にはガスや下痢・便秘で応答しやすい、という研究報告もあります。

「昨日までそんなに大豆製品を取っていなかった人」が、「今日から毎日豆乳500ml+納豆+豆腐」といきなり変えると、腸からするとかなりの“イベント”です。

もし心当たりがある人は、

  • まずは1日100〜200ml程度から
  • 週に3〜4日くらいのペースで
  • 他の大豆食品との“合計”もざっくり意識する

このくらいの「ゆるいスタート」に切り替えるだけでも、だいぶお腹の感じが変わることがあります。

(2)ストレス・睡眠不足が続いている中で“追い打ち”になる

自律神経が疲れ気味のとき、内臓からの感覚は普段よりも強く感じられやすくなります。

  • 仕事が忙しい
  • スマホを見る時間が長くて睡眠が浅い
  • 食事の時間がバラバラ

こういった状態で、「せめて飲み物くらいは健康的に」と豆乳を取り入れた結果、
少しのガスや水分変化を「強い不快感」として感じてしまう人もいます。

これは、「あなたのからだが弱い」という話ではなく、

「からだ全体ががんばりすぎているときは、内臓も繊細になりやすい」

という、ごく自然な反応です。

この場合は、豆乳そのものの見直しに加えて、

  • 寝る前のスマホ時間を少し短くする
  • 夜ごはんの時間を大きくずらしすぎない
  • 休日に“何もしない時間”を少しだけ作る

といった、自律神経を休ませる方向の工夫もセットにしてあげると、「お腹のゴロゴロ」も落ち着きやすくなります。

(3)生理前〜生理中に“体に良さそう”な情報を見て増やしてしまう

SNSなどで、「生理前に豆乳を飲むといい」「PMS対策に豆乳」という情報を見ることがあります。
たしかに、大豆イソフラボンの一部はホルモンバランスに関わることが研究されていますが、人によっては逆に、

  • 胸の張りやむくみが強くなる
  • だるさが増す
  • 便がゆるくなる/逆に出にくくなる

といった変化が出ることもあります。

生理前はもともとホルモンが揺れやすい時期なので、そこに「急な豆乳増量」を重ねるのは、からだにとっては少し負担が大きい選択肢かもしれません。

生理前に試すなら、

  • 量は100〜150ml程度に抑える
  • 毎日ではなく、1日おきくらいから様子をみる
  • お腹の調子やむくみ具合をメモしておく

といった“観察モード”でスタートするほうが、からだの声を拾いやすくなります。


Q&A:豆乳とお腹・ホルモンに関するよくある疑問

Q1. 毎朝コップ1杯の豆乳なら、毎日続けても大丈夫?

A. 多くの人にとっては、コップ1杯(200ml)前後であれば大きな問題になる可能性は低いと考えられます。
ただし、すでに納豆・豆腐・味噌などの大豆製品を日常的に多く取っている人や、大豆イソフラボンのサプリメントを併用している人は、「合計量」が増えすぎていないか一度振り返ってみる価値があります。

お腹がゴロゴロする・胸の張りが強まるなどの変化がある場合は、
1〜2週間だけ「半量にする」「1日おきにする」といった調整をして、変化を見るのがおすすめです。

Q2. 無調整豆乳と調整豆乳、どちらがお腹に優しい?

A. 人によりますが、「どちらかといえば、少量からなら無調整豆乳のほうが様子を見やすい」ことが多い印象です。

調整豆乳や豆乳飲料は、飲みやすくするために砂糖や香料が加えられていることがあり、これが血糖値の急上昇や腸内での発酵に関わる場合もあります。
無調整豆乳は味にクセがありますが、余計なものが少ないぶん、「自分のお腹が大豆そのものにどう反応しているか」が分かりやすいメリットがあります。

最初は100mlくらいから試して、問題なさそうなら少しずつ量を増やしてみると安心です。

Q3. 豆乳でお腹がゴロゴロするのは「体質だから諦めるしかない」?

A. 完全に諦める必要はありませんが、「無理に豆乳にこだわらなくていい」のも事実です。

  • 量を減らす
  • 頻度を下げる
  • 飲むタイミングを変える(空腹時を避ける)
  • 無調整に変えてみる

といった工夫で、お腹の違和感がかなり軽くなる人も多いです。

それでも合わない場合は、無理に豆乳を続けるよりも、
他の食品からたんぱく質やカルシウムをとる方法を選べばOKです。
「豆乳じゃなきゃいけない」というルールは、実はどこにもありません。


5. おわりに

ここまで、豆乳と「お腹ゴロゴロ」「ホルモンバランス」「腸内環境」の関係についてお話してきました。

最後に、今日からできそうな小さな一歩を、いくつかだけ整理してみます。

行動のヒントイメージ
量を一度見直すいきなり毎日300〜500mlではなく、100〜200mlくらいから様子を見る
飲むタイミングを変える起きてすぐ・空腹時を避け、食事と一緒か、食後にゆっくり飲む
「合計の大豆量」を意識する納豆・豆腐・味噌・サプリなど、他の大豆製品とのバランスも眺めてみる
お腹や体調のメモを取る生理周期やストレス状況とあわせて、調子がどう変わるかを観察する

全部を一気に変える必要はありません。
まずは「量」と「タイミング」のどちらか一つだけでも、1〜2週間試してみると、からだの反応が少し見えやすくなります。

最後に、要点をコンパクトにまとめると――

  1. 豆乳は“体に良い面”もある一方で、腸内環境やホルモンバランスによっては、お腹がゴロゴロしやすくなる人もいる。
  2. 「飲む量」「急な増やし方」「自律神経の疲れ具合」「ホルモンが揺れやすいタイミング」が重なると、不調として出やすい。
  3. 量やタイミングを少し調整しても合わない場合は、無理に続けず、別の食品で栄養をとる選択肢もまったく問題ない。

豆乳ブームの波に乗るかどうかは、あなたのからだと相談して決めて大丈夫です。
「みんなが飲んでいるから」ではなく、「自分のからだがどう感じているか」を尊重してあげることが、何よりも優しい健康法だと思います。

もし今、「お腹がゴロゴロしてしんどいな」と感じているなら、
今日からできそうなところをひとつだけ、ゆるっと変えてみてくださいね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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