仕事の後の“だらだらスマホ時間”がやめられない~脳をクールダウンさせるための現実的な夜の過ごし方~

仕事終わりにソファでスマホを見ながらだらだら過ごす人と、画面を閉じてほっと一息つく人を対比させたイメージイラスト(夜のリビング、やわらかい照明、リラックスした雰囲気)
目次

1. 気づいたら深夜…「今日もまたやってしまった」のため息

一日働いて帰宅して、夕飯や家事をひと通り終えて、ふとひと息。
ソファに座ってなんとなくスマホを開いたら、気づけば数十分、いや数時間たっていて、「また寝るのが遅くなった…」と軽く自己嫌悪。

そんな相談が、ここ数年とても増えています。
動画、SNS、ニュース、漫画…「ちょっとだけ」のつもりが止まらず、頭はぼんやりしているのに、指だけはスイスイ動き続けてしまう。

「明日も仕事なのに」「本当は早く寝たいのに」と分かっていても、仕事モードの緊張感が抜けないまま、スマホの世界に逃げ込んでしまう感覚がある方も多いはずです。

この記事では、

  • だらだらスマホがやめられない背景にある“脳のしくみ”
  • 自律神経やホルモンの動きから見た「夜のスマホ」の影響
  • 「きれいさっぱりやめる」ではなく、現実的に減らしていくための工夫

を、できるだけ生活に近い言葉で整理していきます。
全部を完璧に変える必要はありません。「これならできそう」と感じるところだけ、つまみ食いしてもらえたらうれしいです。

2. 「だらだらスマホ」は、意思の弱さではなく“しくみ”の問題

「だらだらスマホをやめられない」と聞くと、
「意志が弱いからかな」「自分はだらしないのかも」と、自分を責めてしまいがちです。

ですが、医学や心理学の分野では、スマホに限らず

  • SNS
  • 動画サイト
  • オンラインゲーム

などが、人間の「報酬系」と呼ばれる脳の仕組みを強く刺激することが分かっています。
「いいね」や新しい通知、次々に流れてくる動画や情報は、小さなご褒美が途切れずに届くような構造になっています。

ざっくり言うと、

「もうやめよう」と考える前に、「もう1回だけ」と指が動いてしまいやすい設計になっている

ということです。

さらに夜のスマホには、

  • ブルーライトによる体内時計への影響
  • 仕事や人間関係の情報に再び触れてしまうことで、脳が“仕事モード”を引きずる
    という要素も重なります。

「だらだらスマホ=悪習慣」とだけ捉えてしまうと、
自分を責める方向に行きやすくなります。
しかし、実際には「人間の脳の性質」と「アプリ側の設計」が合わさった結果として起きている部分が大きい、という視点を持っておくと、少し肩の力が抜けるかもしれません。

「がんばって完全にやめる」ではなく、

脳のしくみに合わせて、“クールダウンしやすいスマホとの距離感”をつくる

これをゴールにした方が、現実的で続けやすいと感じています。

3. 仕事モードが続いた脳は、いきなり“オフ”に切り替わらない

ここからは、からだの中で何が起きているのかを、少しだけ掘り下げます。

3-1. 自律神経は「仕事モード」からゆっくり降りていく

日中、仕事をしている時間は、

  • 集中する
  • 判断する
  • 人とコミュニケーションをとる

などが続きます。
この時、からだの中では「交感神経」という、自律神経のアクセル側が強く働いています。

心拍数や血圧を少し上げ、筋肉に血流を回し、頭をシャキッとさせる方向にからだを整えてくれている状態です。

問題は、仕事が終わった瞬間に「はい、ここからリラックスモード」とスイッチを切り替えられるわけではない、という点です。
アクセルを踏み続けた車が、ペダルを離してもすぐには止まらないのと同じで、自律神経も少しずつブレーキ側(副交感神経)に傾いていきます。

そこに、刺激の強いスマホの情報が入り続けると、アクセルの踏み込みが弱まらないまま夜を迎える、という状態になりやすくなります。

3-2. ブルーライトと体内時計の関係

スマホやタブレットから出る光には、青みが強い「ブルーライト」が多く含まれます。
ブルーライト自体が「悪いもの」というわけではありませんが、夜間に強い光を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンが出にくくなることが、多くの研究で示されています。

メラトニンは、

  • 体温をゆっくり下げる
  • 脳を“おやすみモード”に導く

といった役割を持つと言われています。
寝る直前まで明るい画面を見続ける習慣があると、からだは「まだ昼間に近い」と勘違いしやすくなり、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が下がったりしやすくなります。

「そんなに長時間見ていないけど…」という場合でも、寝る“直前まで”使っているかどうかは、睡眠にとってかなり大きなポイントになります。

3-3. 報酬系と“頭のざわざわ感”

スマホで情報を追っているとき、脳の中では「ドーパミン」という物質が分泌されます。
ドーパミンは、

  • 何かを達成したときのうれしさ
  • 新しい情報を見つけたときのワクワク

に関わる物質です。

問題は、スマホの世界では「終わり」がほとんどないこと。
SNSのタイムライン、ショート動画、ニュースのおすすめ欄…
どこまでも続いていくため、脳はずっと「次は?」「もっとないかな?」と探すモードになりやすくなります。

その結果、画面を閉じたあとも

  • 頭の中に情報が残ってぐるぐるする
  • ベッドに入っても、さっき見た内容を思い出してしまう

といった“ざわざわした感じ”が続き、クールダウンしづらくなってしまいます。

私自身も、疲れている日の夜ほどSNSをだらだら見続けてしまうことがありますが、「今日は脳がクールダウンしにくい状態なんだな」と一歩引いて眺めるだけでも、少し扱いやすくなる感覚があります。

4. 「だらだらスマホ」が習慣化しやすい夜のパターン

ここからは、よくある生活パターンと、からだの感じ方を重ねてみます。

4-1. 「仕事 → 家事 → スマホで一気に脱力」パターン

多いのは、

  1. 仕事でフル回転
  2. 帰宅後、家事・育児・用事をこなす
  3. すべて終わったところで、やっと一人時間
  4. ソファに座ってスマホを開く

という流れです。

日中は、自分のための時間がほとんどなく、「やっと自分の番が来た」という瞬間にスマホを開くので、その時間を手放すのが難しくなるのは、とても自然なことです。

このパターンでは、

  • からだはクタクタなのに
  • 脳はまだ高回転で回っている

というギャップが起きやすく、そこにスマホの情報量が重なることで「疲れているのに眠れない」という状態になりやすくなります。

4-2. 「寝る直前までフルボリューム」パターン

布団に入ってからの「寝る前スマホ」も、習慣になりやすい行動のひとつです。

このとき、

  • 疲れを紛らわせるためのエンタメ系のコンテンツ
  • 仕事やニュース、人間関係に関する情報

がごちゃ混ぜで頭に流れ込んでくると、
楽しいはずなのに、寝る頃にはどっと疲れている、ということも起きやすくなります。

研究によっては、寝る1〜2時間前の強い光や刺激的なコンテンツが、睡眠の質や翌日の眠気に影響する可能性が指摘されています。

「睡眠時間は足りているのに、なぜか朝がつらい」という方は、
寝る直前まで“フルボリュームの情報”を浴びていないか、一度ふり返ってみる価値があります。

4-3. 「だらだらスマホ」によくある質問 Q&A

ここで、よくいただく質問をいくつか挟んでおきます。

Q1. 仕事のあとにスマホを見るのは、やっぱりよくないのでしょうか?

完全にやめる必要はないと考えています。
問題になりやすいのは、「時間とタイミング」と「内容」です。

・仕事モードが抜けない直後に、さらに仕事やニュースの情報を見続ける
・寝る直前まで、強い光と刺激的なコンテンツを浴び続ける

といった状況が重なると、自律神経のオンオフがうまく切り替わりづらくなります。
帰宅直後ではなく、少し落ち着いてから短時間だけ使う、寝る30〜60分前は別の過ごし方をする、といった工夫ができれば、リスクはかなり下げられます。

Q2. スマホの“ながら見”もよくないですか?

家事や食事をしながらの「ながらスマホ」は、

  • 食べた量を把握しにくくなり、食べ過ぎにつながる
  • からだの感覚(お腹いっぱい・疲れたなど)を感じにくくなる

という報告もあります。

すべてを禁止する必要はありませんが、
「ここだけはスマホを置く時間」にしてみると、からだの声に気づきやすくなります。
例えば、食事中だけは画面を見ない、湯船につかっている時間だけはスマホを持ち込まない、といった“小さなルール”からがおすすめです。

Q3. スマホを減らした方がいいのは分かるのですが、ストレス解消の手段がなくなりそうで不安です。

スマホ時間には、「現実から離れてホッとする」という役割もあります。
それ自体を否定する必要はありません。

大事なのは、

スマホ“以外”にも、少しずつ「ホッとできる選択肢」を増やしていくこと

です。

  • 好きなお茶を淹れる
  • 短いストレッチをする
  • 紙の本や漫画を読む
  • 何もせず、ぼーっとする時間をあえてつくる

など、デジタルから離れた「オフの時間」を、少しずつ育てていくイメージが近いかもしれません。

5. すべてをやめなくていい、“クールダウンしやすい夜”の作り方

最後に、今日から試せる小さな工夫をいくつかまとめてみます。
全部やる必要はありません。ピンときたものを一つ選ぶだけでも、脳のクールダウンが少ししやすくなります。

小さな工夫イメージ
スマホを使う「枠」を決める「21時〜21時30分だけSNSを見る」と時間を先に決める
寝る前30分は“画面オフ”タイムアラームだけセットして、別の部屋か棚に置いておく
一つだけ“アナログの楽しみ”を用意する紙の本、ノート、塗り絵、ストレッチなど、手で触れるもの
帰宅直後は“からだをゆるめる儀式”を入れる着替え・深呼吸・肩回しを数分だけやってからスマホに触る

研究では、寝る前のスマホ時間を短くするだけでも、

  • 寝つきが良くなる
  • 翌朝の眠気が軽くなる

といった変化を感じる人が一定数いると報告されています。

一気に「だらだらスマホ」をゼロにするのは、現実的ではありませんし、かえってストレスになることもあります。
「スマホをやめる」のではなく、

・スマホに“支配されない”時間を、少しずつ増やしていく
・脳とからだが、ゆっくり“おやすみモード”に向かえる夜をつくる

そんなイメージで、自分なりのペースで試してもらえたらと思います。

今日の夜、いつものだらだらスマホの中に、

  • 5分だけスマホを置いて肩を回す
  • 寝る前の10分だけ画面を閉じて、呼吸を感じてみる

そんな小さな実験をひとつ、混ぜてみませんか。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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