風邪やインフルが落ち着いてくると、「そろそろ動いたほうがいいのかな」「でも無理してぶり返したらイヤだな…」と、運動再開のラインで悩む方がとても多いです。この記事では、風邪明けの運動を「散歩・家事レベル → 軽い筋トレ → いつもの運動・スポーツ」と段階に分けて整理しつつ、心筋炎や肺炎などを見逃さないためのNGサインもいっしょにまとめていきます。

1. 「風邪明けだけど動いていい?」という相談が本当に多い
「熱は下がったけど、運動していいのか分からない」
「インフル明けで部活に戻りたいけれど、どこまでセーブすべき?」
「病み上がりで筋トレしたら、逆に数日ぐったりした…」
こんな声は、年齢問わずとても多く聞きます。特に最近は、日頃からウォーキングや筋トレを習慣にしている人が増えた分、「完全に休む」のがかえって不安になる方も多い印象です。
一方で、
- 熱が下がったその日に、いきなり全力で走る
- いつもの重量で筋トレを再開して、動悸と息切れが強く出る
- だるさを「気のせい」と思って無理を続け、長引かせてしまう
といったケースも少なくありません。
現場感としては、
- しっかり休むべきタイミングで頑張りすぎる人
- 本当は少し動いた方が回復しやすいのに、こわくて完全に止めてしまう人
この両極端に分かれてしまいがちです。
この記事では、その間にある「ちょうどいいライン」を探しにいきます。
完璧な正解は人それぞれですが、
- 風邪明けの運動をどう段階づけるか
- どんなサインが出たら「立ち止まる・受診する」のが安全か
を理解しておくと、自分の身体と相談しやすくなります。
私自身も、久しぶりに運動を再開するときはつい張り切りすぎるタイプなので、「ブレーキとアクセルの両方」を頭の片隅に置いておくようにしています。
2. 風邪明けの運動はどう整理すると安心?「3つのフェーズ」で考える
ここでは、「風邪明け」「インフル明け」の運動を、ざっくり次の3つのフェーズに分けてイメージしてみます。
- フェーズ0:安静+日常生活レベル(まずはふだんの家事・通勤まで)
- フェーズ1:散歩・軽いストレッチレベル
- フェーズ2:軽い筋トレ・ゆっくりジョギング
- フェーズ3:いつもの運動・スポーツに近づけていく
本当は4段階ですが、フェーズ0は「運動」というより「日常生活に戻るステップ」なので、0としておきます。
風邪・インフル明けで共通して気をつけたい軸
医療・スポーツ医学の分野では、ウイルス性の急性呼吸器感染があるあいだは運動を中止し、症状が落ち着いてから段階的に戻していくことがすすめられています。例えばアメリカ心臓協会やスポーツ心臓学の領域では、発熱や全身症状がある間は運動を控え、症状消失後にゆっくり再開することが推奨されています。PMC+1
また、日本の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、運動開始前に体調や既往歴をチェックし、安静時や日常生活・運動中の胸痛、強いめまいなどがある場合は医療機関を受診してから運動を考えるよう記されています。厚生労働省+1
こうしたガイドラインをふまえると、ざっくり次のような目安が見えてきます。
- 発熱・悪寒・関節痛・強い頭痛・吐き気などがある間は「運動はナシ」
- 解熱して24〜48時間は、日常生活レベルまで(家事・通勤など)にとどめる
- その後、全身のだるさが「いつもの7〜8割」くらいに戻ってから、散歩レベルを試す
- 暴走しがちな「いきなり全開」は、心臓や肺への負担が大きいので避ける
「風邪明け」「インフル明け」の違い
体感としては、
- 風邪明け:軽い上気道炎(のど風邪・鼻風邪)なら回復は比較的早い
- インフル明け:高熱・全身倦怠が強く、筋力や持久力の落ち方も大きいことが多い
インフルエンザ後は、解熱から数日は「熱はないけれど、動くとすぐ疲れる」「ふくらはぎが異様に重い」といった感覚が残りがちです。ここで無理に元のペースや重量に戻すと、心肺に負担がかかるだけでなく、その後数日〜1週間くらい体調を崩しやすくなります。
「症状の残りかた」でラインを決める
一つの目安として、次のように考えると整理しやすいです。
- OKよりの症状
- 軽い鼻水や、少し残るのどのイガイガ
- 動くと気づく程度の軽いだるさ
- 慎重にしたい症状
- 階段を少し上がるだけで強い息切れ
- 咳き込みが止まらない
- 胸の圧迫感・胸痛
- 動悸や不規則な脈の感じ
- めまい・ふらつき・視界が白くなる感じ
上のような「慎重にしたい症状」がある時は、まずフェーズ0(日常生活レベル)にとどめて、状態が落ち着くまで様子を見るほうが安全です。
3. 病み上がりのからだの中で起きていること
心臓・肺・筋肉・自律神経、それぞれの疲れかた
風邪明けの運動を考えるとき、「どこがどんなふうに疲れているか」をざっくりイメージしておくと、無理しすぎを防ぎやすくなります。
① 心臓:心筋炎というまれだけれど大事なリスク
ウイルス感染の一部は、心臓の筋肉(心筋)にも炎症を起こすことがあります。これを心筋炎といい、
- 胸痛・胸の締めつけ
- 息切れ
- 動悸・脈が飛ぶ感じ
- いつも以上の強いだるさ・めまい
などを引き起こすことがあります。British Heart Foundation+1
海外の心臓病学会やスポーツ心臓学のガイドラインでは、心筋炎と診断された場合、競技レベルの運動や高強度のトレーニングは少なくとも3〜6か月は中止し、その後も心エコーや心電図などで慎重にチェックしながら再開することが推奨されています。MDPI+2British Journal of Sports Medicine+2
一般の方でそこまで厳密に管理することは多くありませんが、
- 胸の痛み
- 息苦しさが強い・階段でつらい
- 安静時にもドキドキが続く
といった症状が、風邪明け〜運動再開タイミングで出ている場合は、自己判断で運動を続けず、早めに循環器内科などに相談した方が安全です。
② 肺・気道:酸素を取り込みにくい状態が続いている
咳や痰が残っているときは、気道や肺がまだ完全には落ち着いていません。肺炎や気管支炎の「なりかけ」でも、階段や坂道で息切れがいつもより早く出ることが多く、そこに運動で心拍数を一気に上げてしまうと、呼吸が追いつかず苦しく感じやすくなります。
特にインフルエンザや新型コロナ感染のあとなどは、酸素を運ぶ能力(心肺持久力)が一時的に落ちることが報告されており、同じペースでも「前よりきつい」と感じやすくなります。PMC+2Shirley Ryan AbilityLab+2
この「きつさ」は、怠けていたせいではなく、からだの修理がまだ終わっていないサインと考えた方が自然です。
③ 筋肉・体力:短いベッド安静でも意外と落ちる
少し意外かもしれませんが、数日〜10日ほどのベッド安静でも、筋力や持久力は思った以上に落ちます。
ある研究では、若い健康な人でも、5〜10日ほどのベッド安静で脚の筋力や有酸素能力(心肺持久力)が明らかに低下することが示されています。ニューカッスル整骨院+2OUP Academic+2
つまり、病み上がりで「いつものペース」「いつもの重量」に戻そうとすると、
- 筋肉にかかる負担
- 心臓・肺にかかる負担
が、病気前よりも「割高」になりやすい状態です。ここで無理をすると、
- 強い筋肉痛や関節痛
- その後の数日間のだるさ・倦怠感
- 自律神経の乱れ(動悸・寝つきの悪さ)
を招きやすくなります。
④ 自律神経・ホルモン:オンオフの切り替えがまだ下手になっている
風邪やインフルのあいだ、からだは「炎症を抑えるモード」「熱を上げてウイルスと戦うモード」に入っています。このとき、自律神経やホルモンのバランスは、休息方向(副交感神経)と戦闘モード(交感神経)が入り混じった揺れやすい状態になります。
回復期には、
- 夜に目が覚めやすい
- ちょっとしたことで動悸がする
- 汗をかきやすい・寒気を感じやすい
といった「自律神経のゆらぎ」が残ることも少なくありません。そこに急な運動負荷をかけると、心拍数の上昇や血圧の変動が激しくなり、疲れが長引く原因になることがあります。
4. 生活パターン別「運動再開ステップ」と、立ち止まるべきNGサイン
ここからは、実際の生活パターンをイメージしながら、「どのようにフェーズを上げていくか」を整理します。
パターンA:日頃から運動習慣がある人(ウォーキング・ランニング・ジムなど)
- フェーズ0(解熱〜48時間):日常生活レベルまで
- 買い物・洗濯など、ふだんの家事+短時間の外出程度にとどめる。
- 目安として、「軽く息が上がるような動き」はまだ控えめに。
- フェーズ1:ゆっくり散歩(20〜30分程度)
- 「会話ができるペース」で歩けるかどうかがポイント。
- 1日やってみて、その翌日にだるさや動悸が強くなっていないかをチェック。
- フェーズ2:軽い筋トレ・ゆるいジョグ
- いつもの半分の時間・半分の強度を目安に。
- 筋トレなら「回数や重量を50〜70%に下げる」イメージで。
- これも、翌日のからだの感覚をみて、問題なければ少しずつ時間を伸ばす。
- フェーズ3:いつもの運動に近づける
- 「3日連続で、翌日に調子の悪化がなかった」ことを一つの目安にして、
そこでようやく強度を一段上げるくらいが、安全寄りのラインです。
- 「3日連続で、翌日に調子の悪化がなかった」ことを一つの目安にして、
パターンB:普段あまり運動していないが、仕事や家事で動き回る人
この場合、仕事復帰がそのまま「運動再開」になりがちです。
- デスクワーク中心:
- 解熱から2〜3日は、こまめな休憩・昼寝を許してあげるつもりで。
- 仕事が終わったあとの追加の運動は、まずはストレッチ程度から。
- 立ち仕事・力仕事:
- 職場復帰の1日目・2日目は「フェーズ2くらいの運動」と考え、
帰宅後はあえて何もしないくらいの余白を。 - 休みの日に、少しだけ散歩や軽いストレッチを足すイメージの方が体は楽です。
- 職場復帰の1日目・2日目は「フェーズ2くらいの運動」と考え、
パターンC:部活・クラブチーム・趣味のスポーツに早く戻りたい人
競技志向の方は、とくに「心臓への負担」と「ぶり返し」のリスクを意識しておいた方が安心です。
- チーム練習にフル参加する前に、個人でフェーズ1〜2を数日試しておく
- 「みんなと同じメニューに戻す」のは、解熱後少なくとも数日は経ってから
- コーチや指導者にも、「病み上がりであること」を共有し、負荷を調整してもらう
海外のスポーツ医学の報告では、軽い症状でも急性ウイルス感染中に高強度運動をすると、心筋炎のリスクが高まる可能性が指摘されています。PMC+1
怖がりすぎる必要はありませんが、「高強度だけは少し遅らせる」という意識は持っておいて損はありません。
運動をストップして受診を検討したい「NGサイン」
次のような症状があるときは、自分で運動の調整を続けるよりも、医療機関でのチェックを優先した方が安全です。
- 安静時や軽い動作でも出る胸の痛み・締めつけ感
- いつもより明らかに強い息切れ・呼吸の苦しさ
- 動悸が止まらない・脈が飛ぶ感じが続く
- めまい・ふらつき・立ちくらみ、意識が遠のく感じ
- 高熱が3日以上続く、または一度下がった熱が再び上がる
- 血の混じった痰、強い咳込みが収まらない
これらは、心筋炎・肺炎・血栓症など、検査が必要な病気が隠れている可能性もあります。心筋炎に関する国際的なガイドラインや、CDCなどの情報でも、胸痛・呼吸苦・動悸などがあれば、心臓のトラブルを念頭に置いて評価するべきとされています。厚生労働省+3British Heart Foundation+3Cleveland Clinic+3
「運動不足だから苦しいだけかも」と思い込みすぎず、「いつもと質が違う苦しさ」があるときは、早めに受診しておきましょう。
Q&A:風邪明け・インフル明けの運動でよくある疑問
Q1. 熱は下がったけれど、咳や鼻水が残っています。運動はしても大丈夫?
咳や鼻水が「少し残る程度」で、
- 熱がなく
- 階段や歩行で強い息切れが出ず
- 夜もそれなりに眠れている
という状態なら、フェーズ1(会話できるペースの散歩)から様子を見るのは、一般的には許容範囲と考えられます。
一方で、
- 咳き込みが強くて会話が途切れる
- 横になったときも息苦しい
- 深呼吸すると胸が痛い
といった場合は、まだ気道や肺の負担が大きい状態です。運動で呼吸をさらに早くすると苦しくなりやすいので、日常生活レベルにとどめて、症状が落ち着いてから動き出す方が安全です。
なお、スポーツ医学の世界で有名な「ネックチェック(症状が首から上だけならOK、下に広がるならNG)」という考え方がありますが、最近の研究ではエビデンスは限定的と言われています。PMC+2sportni.net+2
目安にはなっても、「絶対のルール」ではないと理解しておくと良いと思います。
Q2. インフルエンザのあと、筋トレやランニングはどのくらいで再開できますか?
インフルエンザは、普通の風邪よりも全身状態へのダメージが大きいことが多く、回復にも時間がかかりやすいです。
一般的な目安としては、
- 解熱後2〜3日程度はフェーズ0〜1(日常生活+散歩レベル)
- そのあと、体のだるさが明らかに軽くなってからフェーズ2(軽い筋トレ・ゆるいジョグ)
- ランニングのペースや筋トレの重量は、「いつもの50〜70%」からスタート
ぐらいのイメージだと、無理が出にくくなります。
特に、
- 基礎疾患(心臓・肺・糖尿病など)がある方
- 40〜50代以降で、日頃あまり運動をしていない方
は、主治医の先生の意見も参考にしつつ、焦らず2週間くらいかけてゆっくり元の強度に戻すくらいのイメージでもちょうど良いことが少なくありません。
Q3. どの程度つらくなったら、運動をやめて医療機関を受診した方がいいですか?
次のような状態は、「様子見」よりも早めの受診が安全です。
- 安静時や軽い動作でも続く胸痛・胸の圧迫感
- 普段と比べて明らかに強い息切れが、数日〜1週間続く
- 心臓がバクバクして、脈が乱れる感じが何度も起きる
- 立ち上がると視界が暗くなる・倒れそうになる
- 高熱が長引いている、またはぶり返している
これらは、前述のように心筋炎・肺炎などのサインの可能性があります。心筋炎や重い心臓の合併症が疑われるときは、国際的にも高強度運動は中止し、心電図・エコーなどの評価を受けることが推奨されています。MDPI+2British Journal of Sports Medicine+2
「ちょっと心配だな」と思った段階で相談しておくと、結果的に安心して運動を再開しやすくなります。
5. 今日からできる「無理しない運動再開」のヒント
最後に、風邪・インフル明けの運動再開で使いやすい、小さなコツをいくつかまとめます。
① 「その日の調子を10段階」でメモしてみる
朝起きたときや運動前に、ざっくりで良いので
- 今日の体調:10点満点中「何点くらいか」
- だるさ・頭の重さ・咳の具合
を書き留めておくと、「調子がいいと思っていたけど、実は低空飛行だった」というズレに気づきやすくなります。
- 7点以上の日:フェーズ1〜2を試してみる
- 6点以下の日:フェーズ0〜1にとどめておく
といった簡単なマイルールを作るのも一つの方法です。
② 強度の目安は「会話ができるか」「翌日のからだの反応」
心拍計や難しい指標がなくても、
- 運動中に楽に会話できるペースか
- 翌日にだるさや動悸が強くなっていないか
この2つだけでも、かなり安全側に寄せた調整ができます。
「その日は気持ちよく動けたのに、翌日ぐったりして仕事がきつい」ようなら、強度か時間が今のからだには強すぎたサインと考えて、一段階フェーズを戻してあげるのが無難です。
③ すべてを元通りにしようとしない
病み上がりの時期は、「元のメニューに戻る」こと自体をゴールにしない方がうまくいきます。
- いつもの8割くらいの運動量で“ちょうどいい”
- 2週間くらいかけてゆっくり戻せれば上出来
- 「いまは回復期トレーニング」と割り切る
このくらいの感覚の方が、心もからだもラクです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
