朝だけ血圧が高くて、「日中の検診ではそんなに高くないのに…」とモヤモヤしている方は少なくありません。とくに更年期の年齢に差し掛かると、ホルモンバランスや睡眠の質、自律神経の揺らぎが重なりやすく、朝の血圧に「クセ」が出やすくなります。この記事では、そのしくみをやさしくほどきながら、「ここだけ押さえておこう」というポイントを一緒に整理していきます。

1. 朝の血圧だけ高い…更年期世代で増えている相談
最近、「健康診断ではそこまで高血圧とは言われないのに、家で朝測るといつも高め」という声を、更年期前後の方からよく耳にします。
朝のルーティンを聞いてみると、こんなパターンが重なっていることが多いです。
- 夜なかなか寝つけず、寝てはいるけれど睡眠が浅い感覚がある
- 夜中に何度か目が覚める・寝汗をかく
- 朝起きた瞬間から、今日の予定や家族のことが頭に浮かんで緊張してしまう
- なんとなく顔がほてる・動悸がしやすい
- それでも時間に追われて、バタバタと身支度している
こうした「ホルモンのゆらぎ」と「自律神経のフル稼働」が、ちょうど血圧が上がりやすい朝の時間帯と重なりやすいのが、更年期のむずかしいところです。
この記事では、
- 「そもそも朝方高血圧・早朝高血圧とはどんな状態か」
- 「更年期のホルモン変化や睡眠の質、自律神経とどう関係するのか」
- 「今日からできる、現実的な血圧ケアの一歩」
を、専門用語に振り回されすぎない形で整理していきます。少し長くなりますが、「自分のからだのクセ」を知るヒントとして、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
2. 「朝方高血圧」「早朝高血圧」って、どんな状態?
まず言葉の整理をしておきます。医療の世界では、朝に高くなる血圧を指して「早朝高血圧(morning hypertension)」という言葉を使うことが多いです。
早朝高血圧の目安
日本高血圧学会のガイドラインや関連文献では、
- 起床後1時間以内に家庭で測った血圧で
- 上(収縮期血圧)が135mmHg以上、または
- 下(拡張期血圧)が85mmHg以上
が続く場合を「早朝高血圧」として扱うことが推奨されています。J-STAGE+1
一方で、病院で測る「診察室血圧」は140/90mmHg以上を高血圧の目安とする、といった線引きがあり、
- 診察室ではそれほど高くない
- けれど家での朝の血圧は高い
というパターンを「仮面高血圧(とくに朝だけ高いタイプ)」と呼ぶこともあります。PMC+1
なぜ「朝の血圧」が注目されるのか
血圧は1日の中で波を描くように変動します。
- 夜は副交感神経が優位になり、血圧は自然に下がる
- 朝は起床に向けて交感神経がグッと働き、コルチゾールなどのホルモンが増えて血圧が上がる
この「朝の上がり方」が極端に大きい状態を「モーニングサージ(morning surge)」と呼び、過去の研究では心筋梗塞や脳卒中など心血管イベントのリスクと関連することが報告されています。AHA Journals+1
「検診ではそこまで高くないから大丈夫」と安心してしまうと、
- 朝だけ血圧が大きく跳ね上がる
- それが毎日のように続く
という“見えにくい負担”を見逃してしまう可能性があります。
「更年期高血圧」という言葉も
女性は閉経前後から高血圧になりやすく、
- エストロゲン低下による血管のしなやかさの低下
- 内臓脂肪や体重の変化
- 自律神経バランスの変化
などが重なって「更年期高血圧」と呼ばれる状態が注目されています。グレースメディカルクリニック+1
ここに、朝の時間帯特有のモーニングサージが重なると、
- 「更年期」
- 「高血圧リスク」
- 「早朝高血圧」
の3つがトリプルで影響し合うことになります。
3. 更年期・ホルモン・睡眠の質が、朝の血圧にどう響くのか
ここからは、からだの中で起きていることを少し深掘りしていきます。
① エストロゲン低下と血管・自律神経
更年期になると、卵巣から分泌されるエストロゲンが大きく揺れながら減っていきます。エストロゲンには、
- 血管を広げてしなやかに保つ
- 自律神経のバランスを整える
といった働きがあることが、さまざまな研究で示されています。ScienceDirect+1
エストロゲンが減ると、
- 交感神経(アクセル役)の活動が高まりやすくなる
- 血管の柔らかさが低下し、同じ血圧でも“負担感”が増す
といった変化が起きます。
朝はもともと
- 交感神経がオンになり
- 体を「活動モード」に切り替える時間帯
なので、更年期で交感神経がもともと優位になりやすい状態だと、朝の血圧の上がり方がより大きくなりやすい、というイメージを持っていただくとよいかと思います。
② 睡眠の質と「夜から朝」の切り替え
更年期の悩みとして多いのが、
- 寝つきにくい
- 途中で何度も目が覚める
- 寝汗・ほてりで目覚める
といった睡眠の質の低下です。
睡眠が浅いと、夜間にしっかり血圧が下がりきらず、
- 夜間に血圧があまり下がらない「非降圧型」
- 逆に夜に高くなってしまう「逆転型」
といったパターンになることも報告されています。taisho-kenko.com+1
夜に血圧が十分に休めないまま朝を迎えると、
- 朝のモーニングサージでさらにギュッと血圧が押し上げられ
- 「朝だけ高い」「朝だけ動悸がする」と感じやすくなります
「夜ちゃんと寝られていない感覚」と「朝の血圧」は、実は一本の線でつながっています。

③ ストレス・感情と血圧の“朝のピーク”
更年期は、体の変化だけでなく、
- 仕事・家族・親の介護などライフイベントが重なりやすい時期
でもあります。
自律神経はメンタルの状態とも密接に関わっていて、
- 不安や緊張
- イライラ
- 「今日もちゃんとこなさなきゃ」というプレッシャー
などは、交感神経を自然と高ぶらせます。
朝起きてすぐにスマホで仕事のメールやニュースを見てしまう習慣があると、頭のスイッチが一気に「戦闘モード」になり、血圧もそれに合わせてグッと上がりやすくなります。最近のレビュー研究でも、更年期女性における自律神経の変化が心血管リスクと関連しうることが指摘されています。Physiology Journals+1
④ 呼吸・筋肉・体の感覚も関係している
もう少し身体感覚の話をすると、
- 寝不足やストレスが続く
- 肩や首がガチガチにこわばる
- 呼吸が浅く、胸の上の方だけで息をしている
こうした状態も、交感神経優位な「緊張モード」を強めます。
朝、血圧を測るときに
- 肩に力が入ったまま
- 浅い呼吸のまま
- 「高かったらどうしよう」とドキドキしながら測っている
と、それだけでも血圧が数値として少し上に振れやすくなります。
「朝だけ高い」の背景には、
- ホルモン
- 自律神経
- 血管のしなやかさ
- 睡眠の質
- 心の状態
- 筋肉・呼吸のクセ
こうした要素が重なり合っている、とイメージしてもらえるとよいかなと思います。
4. こんな生活パターンは要注意?朝方高血圧とつながりやすいクセ
ここでは、具体的な生活パターンと朝の血圧の関係を整理していきます。「完璧に直す」ことが目的ではなく、「ここは少し緩めた方が良さそうだな」と気づくためのチェックとして読んでみてください。
① 夜遅いスマホ&情報インプットが習慣になっている
- ベッドに入ってから1〜2時間、スマホでSNSやニュースを眺めている
- つい仕事のメールやチャットを開いてしまう
ブルーライトによる覚醒だけでなく、「気になる情報」が頭に残ることで、寝つきが浅くなり、自律神経は休まるタイミングを逃します。結果として、
- 夜に血圧が下がりきらない
- 朝のモーニングサージが強く出やすい
という流れになりがちです。

② 塩分・お酒・夜遅い食事
- 夕食がラーメンや丼ものが多い
- 晩酌が日常化している
- 夕食が21〜22時以降になりやすい
こうしたパターンは、
- 体内の水分バランスが崩れやすい
- 夜間の血圧が高めに維持されやすい
といった影響があります。特に高血圧の人では、夜の塩分・アルコールが翌朝の血圧にまで響くことが、いくつかの研究やガイドラインで指摘されています。PMC+1
③ 朝起きてすぐ「フルスロットル」な動き方
- 目覚ましをギリギリでセットしていて、起きた瞬間からダッシュ
- トイレ・朝食の準備・身支度を一気にこなしている
- その途中で急いで血圧を測っている
心拍数も血圧も、すでにかなり高い状態で測定することになり、「朝方高血圧」を強調してしまうことがあります。
本来は、
- 起床後1〜2分はベッドの上で座って深呼吸
- トイレを済ませてから、椅子に腰かけて1〜2分休み
- その後、血圧を測る
といった流れが推奨されています。
④ 夕方以降の「考えごとタイム」が長くなりがち
更年期は、
- 仕事の役割
- 家族のこと
- 親の健康問題
など、頭を悩ませるテーマが増える時期でもあります。
夕方〜夜にかけて
- ずっと明日の段取りを考え続けてしまう
- ベッドの中でも「もし〜だったら」と考えが止まらない
こうした状態は、寝ている間も交感神経を一定程度オンにし続けます。その結果として、夜間・早朝の血圧の「底」が浅くなり、朝だけ高いパターンを作りやすくなります。
私自身も、考えごとが続いた日の翌朝は、少し血圧が高めに出ることがあり、「ああ、昨日の頭の使い方が残っているな」と感じることがあります。
Q1. 更年期で「朝だけ血圧が高い」とき、すぐに薬を増やしたほうが良いのでしょうか?
自己判断で薬を増やしたり、飲み方を変えたりするのはおすすめできません。
大切なのは、
- 朝(起床後1時間以内)と夜(就寝前)の血圧を数日〜1〜2週間ほど記録する
- その記録を持って、かかりつけ医に相談する
ことです。
朝だけ高いのか、1日中高いのか、日によってバラつきが大きいのかで、対処は変わってきます。薬の調整は、生活習慣や睡眠の状態も含めて総合的に判断してもらうのが安心です。
Q2. どのくらいの数値・期間が続いたら、医療機関に相談したほうがいいですか?
一般的には、
- 家庭で測る朝の血圧が135/85mmHg以上
- それが1〜2週間、ほぼ毎日のように続く
場合は、一度医療機関で相談しておくと安心です。J-STAGE+1
また、
- 頭痛・胸の痛み・息苦しさ・片側のしびれなどの症状を伴う
- 180/110mmHgを超えるような数値が出る
といった場合は、迷わず早めの受診を検討してください。
Q3. 血圧は1日に何回くらい測ればよいですか?
目安としては、
- 朝:起床後1時間以内、排尿後、朝食前・薬を飲む前に1〜2回
- 夜:就寝前に1〜2回
これを数日〜1〜2週間続けてみると、自分の血圧の「癖」がかなり見えてきます。「HALMEK up」50代からの女性の毎日が面白くなるサイト+1
測るたびに数値に一喜一憂するのではなく、
- 日による変動
- 朝と夜の差
を見るつもりで、ゆったりした気持ちで記録するのがおすすめです。
5. 今日からできる「朝方高血圧」との付き合い方
最後に、更年期と朝の血圧ケアについて、「ここだけでも意識してみてほしい」というポイントをまとめます。全部やろうとしなくて大丈夫です。できそうなものを1つ選ぶところからで十分です。
① 朝と夜の「同じ時間・同じ条件」で測る習慣をつくる
- 起床後1時間以内・就寝前
- 背もたれにもたれ、足を組まず、1〜2分静かに座ってから測る
たったこれだけで、
- 自分の血圧のパターンが見えやすくなる
- 医師に相談するときの材料がぐっと増える
という、大きなメリットがあります。
② 夜の「情報と光」を少しだけ減らす
- 寝る1時間前から、スマホやPCは必要最低限にする
- ベッドに入ったら、できればスマホを触らない時間をつくる
完璧にやめる必要はありませんが、「寝る直前の1時間は情報を入れない時間にする」と決めるだけでも、自律神経の切り替えがずいぶん変わってきます。
③ 首・肩・胸をゆるめる“ゆっくり呼吸タイム”を持つ
- 夜寝る前や朝の数分で構わないので、
- 肩をすくめてストンと落とす
- 胸をひらくように腕を少し後ろに引く
- 鼻からゆっくり吸って、口から細く長く吐く
こうした「体をゆるめる時間」を入れてあげると、交感神経一辺倒になっていた状態から、少しブレーキ側の神経も働きやすくなります。
④ この記事の要点を3つにぎゅっとまとめると
| ポイント | イメージ |
|---|---|
| 更年期と朝方高血圧はセットになりやすい | ホルモン・自律神経・睡眠の変化が、朝の血圧の上がり方に影響する |
| 「朝だけ高い」は見逃したくないサイン | 家庭血圧でこそ見つかる“隠れた負担”がある |
| 生活を全部変えなくてもよい | 測り方・夜の過ごし方・呼吸の質を少し整えるだけでも、からだの負担は変えられる |
更年期は、「からだの取扱説明書」を少し書き換えるタイミングでもあります。
朝の血圧のクセを知ることは、その大事な一章だと思ってもらえると良いかもしれません。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
