「とりあえず鶏むね肉」で乗り切れていた頃と比べて、スーパーの精肉コーナーに立つたびに「前より高くなったな…」と感じることが増えていないでしょうか。
家計を守りたい気持ちと、健康のためにたんぱく質はきちんと摂りたい気持ち。その板挟みで、献立を考える時間がちょっと重たくなることもありますよね。
この記事では、物価高のなかでもムリなく・現実的にたんぱく質を確保するための考え方と、今日から使えるささやかな工夫をまとめていきます。完璧を目指す話ではありません。「これなら続けられそう」というラインを、一緒に探していきましょう。


1. 「お肉も魚も高くて…」という相談が増えています
ここ数年、「前よりお肉の量を減らしてしまって」という声を聞く機会が確実に増えました。
鶏むね肉・豚こま・挽き肉など、いわゆる“家計の味方”だったラインもじわじわ値上がりし、まとめ買いもしづらい。結果として、こういう流れになりがちです。
- 主菜の肉・魚の量を減らす
- そのぶん、麺類やパン・ご飯でお腹を満たす
- 甘いおやつで空腹をごまかすことが増える
すると、「何となくだるい」「筋力が落ちてきた気がする」「疲れやすくなった」という自覚が出やすくなります。
たんぱく質は、筋肉だけでなく、血液・内臓・ホルモン・免疫など、体をつくるほとんどすべての材料です。日本の基準では、成人のたんぱく質は体重1kgあたり約0.8 g程度、1日あたりおおよそ男性で60〜65 g、女性で50 gほどが目安とされています。Jones Dairy Farm+1
「思った以上に必要量が多い」と感じる方もいるはずです。
物価高のなかでこれを満たそうとすると、「がんばらないといけない話」になりがちですが、視点を少し変えると、もう少しラクに考えられる余地もあります。
このあと、
- 世の中で言われる“たんぱく質神話”の整理
- 体の中で起きていること
- 日常のパターンと、家計と健康の折り合いのつけ方
を順番に見ていきます。
2. 「高たんぱく=正義」ではないけれど、不足もしやすい現実
SNSや健康情報を見ていると、「高たんぱく」「プロテイン」「○○gチャレンジ」など、たんぱく質が主役級で語られることが多くなりました。
ここで、よくあるイメージと、実際のところを少し整理しておきます。
| よくあるイメージ | 実際に意識しておきたいポイント |
|---|---|
| たんぱく質は多いほどいい | 年齢や活動量によって“ちょうどいいゾーン”がある |
| お肉を減らしたらすぐにたんぱく質不足 | 卵・大豆・乳製品などを組み合わせればカバーしやすい |
| 一度にどかっと食べればOK | 毎食20〜30 g前後を分けて摂ると筋肉の維持に有利という報告もある jocmr.org |
| 高たんぱくは若い人向け | 高齢期こそ、むしろ意識したい栄養素のひとつ |
世界的には、健康な成人のたんぱく質の“安全な摂取量”として、体重1kgあたり0.83 g/日くらいが目安とされています。Knowledge for policy+1
一方で、高齢者やフレイル(虚弱)が気になる世代では、筋肉や機能を維持するために1.0〜1.2 g/kg/日をすすめる専門家グループもいます。エスパン+1
つまり、ざっくりまとめると、
- 「最低限ここまでは欲しい」ライン:体重1kgあたり0.8 g前後
- 「年齢的に少し上乗せしたい」ライン:1.0〜1.2 g/kg/日
あたりを、自分の体格と相談しながら考えるイメージです。
一方で、体重1kgあたり1.8 gを超えるような“かなり高たんぱく”な食事を長期的に続けると、55歳以上では心血管イベント(心筋梗塞や心不全など)のリスクが高まったという報告もあります。EatingWell
「足りない」のも困りますが、「多ければ多いほど良い」わけでもない。
だからこそ、物価高の今はなおさら、「ちょうどいいゾーンを、家計とのバランスをとりながら目指す」という視点が大事になってきます。

3. からだの中で起きていること 〜筋肉・ホルモン・“満腹感”の三つの軸
ここからは、少しからだの中の話をしていきます。
たんぱく質が減りすぎると、何が起きやすくなるのか。ポイントを三つに絞ってみていきましょう。
3-1. 筋肉という「貯金箱」がやせていく
筋肉は、動くためだけでなく、血糖をためる場所・熱をつくる場所でもあり、「健康の貯金箱」と言われることがあります。
高齢者を対象にした研究では、筋肉量を維持するには、1日1.0〜1.2 g/kg/日ほどのたんぱく質と、適度な運動を組み合わせることが推奨されています。PMC+1
この“ちょっと高め”のラインに届かない状態が続くと、
- 階段が前よりしんどい
- 立ち上がりに「よいしょ」が増える
- つまずきやすくなる
といった変化がゆっくり進みやすくなります。
じわじわ進むので、「年齢のせいかな」で片付けられがちですが、筋肉にとっては材料不足が続いているサインのことも多いです。

3-2. ホルモン・免疫・血液の材料として
たんぱく質は、筋肉だけでなく、
- ホルモン(インスリン・甲状腺ホルモンなど)
- 酵素
- 免疫細胞
- 血液の成分
の材料にもなっています。
足りない状態が続くと、「なんとなく回復が遅い」「風邪をひくと長引きやすい」といった形で、じわじわ影響が見えることがあります。
もちろん、たんぱく質だけで説明できるわけではありませんが、「食費節約のために主菜をずっと小さくしていたら、結果的に体調も落ちてきた」というケースは、実際の現場でも珍しくありません。
3-3. “満腹感”と体重コントロールにも関わる
興味深いのは、たんぱく質が「満腹感」にも関わっている点です。
複数の研究で、たんぱく質を多めに含む食事は、炭水化物中心の食事や脂質が多い食事に比べて、少ないエネルギー量でお腹が満ちやすい、という結果が報告されています。サイエンスダイレクト+1
これは、胃から腸にかけて分泌されるホルモン(GLP-1など)や血糖値の変化が関係していると考えられています。専門的な仕組みは複雑ですが、生活レベルに落とし込むと、
- たんぱく質がそこそこ入っている食事
→ 食後の満足感が続きやすい - たんぱく質が少なく、炭水化物中心
→ 食後しばらくしてから「また何かつまみたい」気持ちが出やすい
という違いとして感じられることが多いです。
物価高で「主菜を減らして、主食とお菓子で調整」というスタイルが続くと、
「食費は抑えているはずなのに、間食が増えてトータルでは逆に出費が増えた」
という、なんとももったいないループに入りやすくなります。
4. よくある生活パターンと、“たんぱく質と家計”のすれ違い
日々の暮らしのなかで、どんなパターンが「たんぱく質不足+家計のモヤモヤ」につながりやすいか、いくつか代表例を挙げてみます。
4-1. 「メインをケチって、おやつでカロリー調整」パターン
- 夕食の肉・魚の量を減らす
- 物足りなさから、食後のお菓子やパンが増える
このパターンでは、たんぱく質は増えないのに、糖質と脂質だけ上乗せされてしまいます。腹持ちも悪く、「常に何か食べていたい」感覚につながりがちです。
4-2. 「昼は麺だけ・パンだけ」パターン
忙しい日の昼食が、
- うどんだけ
- パンとコーヒーだけ
のような形で済みがちな人も多いと思います。
1日トータルでは夕食である程度のたんぱく質がとれていても、昼に極端に少ない状態が続くと、午後のだるさや集中力の落ち込みを感じやすくなります。
4-3. 「安い加工肉に偏る」パターン
ソーセージ・ハム・ベーコンなどは便利ですが、種類によっては脂質と塩分がかなり多く、たんぱく質源としてはコスパが良くない場合もあります。
もちろん完全NGではありませんが、「主役」ではなく「たまの脇役」にしておくと、からだにも家計にもやさしいことが多いです。
Q&A:たんぱく質と家計のよくある疑問
Q1. 鶏むね肉を買えない日は、プロテインだけでも大丈夫?
「今日は肉も魚もないから、プロテインだけ飲んでおこう」という日があっても、すぐに大問題になるわけではありません。
ただ、長期的には「噛んで食べる」たんぱく質源(肉・魚・卵・大豆・乳製品など)をベースにして、サポートとしてプロテインを使うイメージの方が、満腹感や栄養バランスの面で有利です。
食費とのバランスを考えるなら、
- 卵焼き+納豆+ご飯
- 豆腐入り味噌汁+小さな魚缶詰
のような“安くて噛めるたんぱく源”も、かなり心強い味方になります。
Q2. たんぱく質を多めに意識すると、逆に体に悪くなりませんか?
年齢や体重に見合った範囲であれば、「少し意識して増やす」こと自体は、筋肉や機能維持の面でメリットが大きいとされています。PMC+1
一方で、体重1kgあたり1.8 gを超えるような“かなり高たんぱく”を長く続けると、55歳以上では心血管疾患リスクの上昇が報告されています。EatingWell
腎臓に持病がある方などは、主治医と相談しながら、必要量と安全な範囲を確認しておくと安心です。
Q3. 1日のどこかでまとめてたんぱく質をとればOK?それとも毎食必要?
1日のトータル量が足りているかどうかは大前提として大事です。
そのうえで、筋肉量や機能を保つという視点からは、「毎食20〜30 g前後の良質なたんぱく質を分けてとる方が望ましい」という報告もあります。jocmr.org
とはいえ、きっちり計算し続けるのは現実的ではありません。
「朝か昼がかなり少なめになりやすいから、そこにゆで卵やヨーグルトを足してみよう」くらいの、ゆるい調整からで十分です。
5. 今日からできる、「ムリなくたんぱく質を確保する」ための小さな工夫
最後に、物価高のなかでも続けやすい、現実的なたんぱく質の確保アイデアをいくつか挙げておきます。
全部やる必要はありません。できそうなものを1つか2つ、試してみてください。
5-1. 「主菜で稼ぐ」発想から、「1日トータルで分散」の発想へ
夕食の肉・魚だけで必要量を稼ごうとすると、どうしても量が必要になります。
そこで、
- 朝:卵1〜2個+ヨーグルト
- 昼:麺類にツナ缶やゆで卵をプラス
- 夜:肉か魚を“手のひら1枚分”くらい
といった形で、「一日全体でちょっとずつ足す」スタイルに変えていくと、家計の負担も軽くなりやすいです。
5-2. 「安くて強い」たんぱく源を、味方につける
価格のわりにたんぱく質量が多く、保存もしやすい食材は、かなり心強い存在です。
- 卵(ゆで卵・卵焼き・茶碗蒸しなどアレンジ自由)
- 豆腐・厚揚げ・油揚げ
- 納豆
- ツナ缶・サバ缶などの魚缶詰
- プレーンヨーグルト・カッテージチーズ
これらは、「頑張るぞ」という気合がいらない割に、たんぱく質の底上げに効いてきます。
私自身も、冷蔵庫に卵と豆腐だけは切らさないようにしている日が多いです。
5-3. “スープ・味噌汁”をたんぱく質の受け皿にする
スープや味噌汁は、さっと作れて、具材の自由度も高い一品です。
- 豆腐・卵・ささみ・ツナ缶・厚揚げなどを入れる
- 冷蔵庫の半端野菜も一緒に煮てしまう
といった形にすると、「汁物=ほぼ水分」から、「汁物=たんぱく質と野菜をまとめてとれる一品」に変わります。
毎食ではなくて構いません。1日どこかで“具だくさんスープ”が入るだけでも、トータルのとりやすさがグッと変わります。
5-4. 完璧を目指さず、「昨日より1割マシ」で十分
最後に大事な話です。
たんぱく質は、たしかに大事な栄養素ですが、「これが足りないからすべてダメ」といった“0か100か”の話ではありません。
- 「昼の麺類に卵を1個足せた」
- 「おやつを一回、ヨーグルトに置き換えられた」
- 「週に2回だけ、ツナ缶を常備菜にしてみた」
こうした小さな変化でも、数か月〜数年というスパンで見れば、からだにはちゃんと刻まれていきます。
物価高で不安になりやすいタイミングだからこそ、「あれもこれも」ではなく、「ここだけなら続きそう」という一歩を選んでいけると、心も少し軽くなります。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
