朝は高め、夜は低め、その次の日は逆…。
家庭血圧をつけ始めた人ほど、「この数字、どこまで気にしたらいいの?」と戸惑いやすいところです。この記事では、家庭血圧の“正しい測り方”と、数字に振り回されないための「気にしすぎライン」の考え方をまとめます。読んだあとに、少し肩の力が抜けて「これくらいの付き合い方でいいか」と思ってもらえたら嬉しいです。

1. 「測るたびに違う数字」に、疲れてしまう人
血圧計を買って、いざ自宅で測り始めると、多くの人が同じつぶやきをします。
「さっきは140だったのに、もう一回測ったら130台になった」
「日によって高かったり低かったりで、どれを信じたらいいのか分からない」
医療の現場でも、「家庭血圧をつけているけれど、数字に一喜一憂して逆にストレスになっている」という相談はとても多いです。まじめな人ほど、少し高めの数字が出るたびに「悪化したのかな」と不安になり、何度も測り直してしまいがちです。
ただ、血圧はそもそも「その瞬間の自分の状態」を映す生体反応なので、多少の揺れはあって当然です。
問題は「揺れている事実」そのものではなく、
- 測り方がそもそもバラバラ
- 1回ごとの数字に“意味以上の意味”を乗せてしまう
この2つが重なったときに、不安が大きくなります。
この記事では、
- 家庭血圧の基本的な測り方(朝・夜・姿勢・回数など)
- 「このくらいの揺れなら様子見でよい」という目安
- 逆に「これは一度、医療機関で相談してほしい」というライン
を、できるだけやわらかい言葉で整理していきます。
2. 「家庭血圧の正しい測り方」を、いったん整理してみる
まずは“測り方の土台”をそろえておくことが、とても大事です。測り方がバラバラだと、からだの変化ではなく「条件の違い」が数字に出てしまうからです。
朝と夜のタイミング
日本高血圧学会などのガイドラインでは、家庭血圧は 朝と夜に1回ずつ 測ることが基本とされています。朝は「起床後1時間以内」「排尿後」「朝の薬を飲む前」「朝食前」、夜は「就寝前」に、いずれも座って1~2分休んでから測定することが推奨されています。PubMed+1
姿勢や環境の整え方
複数の専門団体や学会の資料では、次のような共通したポイントが示されています。www.heart.org+2www.heart.org+2
- 椅子に腰かけ、背もたれにもたれて座る
- 足は床にしっかりつけ、組まない
- 測る腕は心臓の高さで、テーブルなどにゆったり乗せる
- カフは上腕につけるタイプ(手首・指タイプは誤差が出やすい)
- カフは服の上からではなく、素肌の上につける
- 測る前30分は、喫煙・カフェイン・激しい運動・飲酒を控える
- 測定前に5分ほど静かに座って休む
- 測定中は話したり動いたりしない
どれも細かいことのようですが、いくつかが崩れるだけでも、10~20mmHg程度は平気で数字が動きます。
1回だけでなく「2回測って平均」を
最近のガイドラインや解説では、「1回だけでなく、1~2分あけて2回測定し、その平均を採用する」ことがよく勧められています。RACGP+1
この「2回測って平均をとる」という習慣をつけるだけでも、「さっきは高かったのに今度は低い…」という揺れへの不安は少し落ち着きやすくなります。
「1週間の平均」で考える、という発想
診断や治療方針の目安としては、7日分(最低でも5日分)の朝・夜の家庭血圧の平均 で判断する、という考え方がよく使われます。多くのガイドラインでは、家庭血圧の平均が 135/85mmHg以上 だと高血圧の可能性が高いとされています。Wiley Online Library+3RACGP+3AHA Journals+3
つまり、「ある1日の1回の数字」ではなく、「何日かの平均」が大事、ということです。この視点を持てると、日々の数字への緊張感はかなり変わってきます。
3. 血圧はなぜ揺れる?からだの中で起きていること
ここからは、「なぜ血圧の数字がバラバラになるのか」を、からだの中のしくみから眺めてみます。難しい専門用語は、なるべく日常の言葉に置き換えていきますね。
自律神経とホルモンがつくる「血圧リズム」
血圧は、心臓のポンプの強さと、血管の“しめ具合”で決まります。これを調整しているのが、自律神経(交感神経・副交感神経)とさまざまなホルモンです。
- 朝起きる頃は、交感神経が優位になり、血圧が少し上がりやすい
- 夜寝る前は、からだが休息モードになり、血圧が下がりやすい
この「1日のリズム」は、多くの研究でも示されており、朝血圧が高くなりやすい人ほど脳・心血管疾患リスクが高いという報告もあります。AHA Journals+1
姿勢・緊張・トイレ…日常の小さな変化でも動く
血圧は、ちょっとした条件で変わる“揺れやすい数字”です。
- トイレを我慢しているとき
- 寒い場所で測ったとき
- 足を組んで姿勢が崩れているとき
- 測定の直前まで歩き回っていたとき
- 「高かったらどうしよう」とドキドキしながら測っているとき
これらはすべて、一時的に血圧を押し上げる要因になります。実際、「測定前にトイレを済ませ、5分間静かに座ってから測る」ことで、測定値のばらつきが減ることが報告されています。ハーバード健康情報+2townheadsurgery.nhs.uk+2
私自身も、血圧を測る前にスマホをいじっていたり、バタバタ動いた直後に測ってみたりして、「そりゃ上がるよね…」という数字を出してしまったことがあります。

「血圧の変動」自体にも意味がある
近年は、「平均の血圧」だけでなく、日ごとの血圧の揺れ(血圧変動) そのものが、心血管病のリスクに関係しているという研究も増えています。長期的にみた血圧変動は、平均値とは独立したリスク因子になりうる、とまとめたレビューもあります。PMC+2Lippincott Journals+2
さらに、日本の大規模研究では、「家庭での収縮期血圧の安定性スコア」が高い人ほど、心血管イベントが少ないというデータも報告されています。ish-world.com+1
とはいえ、これは「少しでも揺れていたら危険」という意味ではありません。
医療の世界では、「長い目でみたときに、大きな揺れが続いている人は注意しよう」という話であって、「今日の2回の数字が10違っただけで大ごと」という話ではないのです。
4. 「測り方」と「考え方」のクセが、不安を増やしてしまうとき
ここからは、生活の中でよく見かける“やりがちな測り方”と、“不安になりやすい考え方”をセットで整理してみます。
ケース1:高い数字が出るまで何度も測る
不安が強い人ほど、「もう少し低い数字が出るまで」と、3回・4回と繰り返し測ってしまいがちです。
けれど、血圧は測るたびに少しずつ変化します。何度も測ることで、かえって交感神経が高ぶり、「測定のストレス」で数字が上がってしまうことも珍しくありません。
目安としては、1回のタイミングで2回まで。平均値をメモする。
それ以上は、その日の情報としては「十分」と考えてしまって大丈夫です。
ケース2:1回だけ高かった数字を“すべて”とみなす
ある日、たまたま 155/95mmHg など高めの数字が出ると、「ついに自分も危険域に入ったんだ」と落ち込んでしまうことがあります。
しかし、先ほど触れたように、多くのガイドラインは「7日間(少なくとも5日間)の家庭血圧の平均」で判断することを基本にしています。RACGP+1
1回だけの高値ではなく、
- 何日か続いているか
- 朝だけ・夜だけなど、時間帯に偏りがあるか
といった“パターン”を見ることが、大切な視点になります。
ケース3:「正常値かどうか」だけで0か100かの判断をする
ニュースや広告では、「◯◯mmHg以下が正常」といったシンプルな数字がひとり歩きしがちです。
ただ、実際のガイドラインでは、年齢・合併症・服薬の有無などによって目標値は細かく分かれています。例えば、2019年の日本高血圧学会ガイドラインでは、高血圧と診断された人の家庭血圧の目標は、年齢やリスクによって <125/75mmHg または <135/85mmHg など、いくつかのレベルに分けられています。PMC+1
大事なのは、「自分にとっての目標ライン」を主治医と共有しておくことです。
Q&A:よくある疑問に答えておきます
Q1. 家庭血圧は、1日何回まで測っていいのでしょうか?
一般的には、「朝と夜にそれぞれ2回まで」が目安になります。
ガイドラインでも、朝・夜1~2回ずつ測り、その平均を用いて評価することが推奨されています。PubMed+1
それ以上何度も測ると、数字の揺れに意識が向きすぎてしまい、かえってストレスや血圧上昇の一因になることがあります。「朝・夜の平均が分かれば十分」と割り切ってしまって大丈夫です。
Q2. 1回だけすごく高かったときも、すぐ病院に行ったほうがいいですか?
上が180以上、下が120以上で、胸の痛み・息苦しさ・片側の手足の麻痺・しゃべりにくさなどの症状がある場合 は、救急受診を含め、すぐに医療機関に相談してほしい、と多くの専門機関が強く勧めています。www.heart.org
症状がなく、1回だけの高値であれば、あわてて夜間救急に駆け込む必要はないことが多いです。そのかわり、数日間家庭血圧を記録し、その結果を持ってかかりつけ医に相談すると、落ち着いて方針が決めやすくなります。
Q3. 家庭血圧をつけるほど、逆に不安になります。続けないほうがいいでしょうか?
「数字を見るたびに落ち込む」「測るのが怖くて、生活の質が落ちている」と感じる場合、いったん測定の頻度や期間を主治医と相談して調整してよいと思います。
家庭血圧は、あくまで 自分と医療者が“会話するための材料” です。
心の負担が大きいときは、たとえば
- 週に数日だけ測る
- 2~3か月に1回、数日間だけ集中的につける
など、より「ゆるい付き合い方」に変えるのも選択肢です。
5. 今日から試せる“ゆるい家庭血圧メモ”の続け方
最後に、「測るたびにバラバラな血圧」と上手に付き合うための具体的なヒントを、少しだけまとめます。
ヒント1:完璧を目指さず、「ざっくり1週間の平均」が分かればOK
- 朝・夜、それぞれ2回ずつ測り、平均をメモする
- それを5~7日分そろえたら、ひとまず1クール終了
この「1週間の平均」を、医療者と共有できれば、診断や治療の材料としては十分なことが多いです。「毎日絶対に欠かさず」「1か月分びっしり」などを目指さないだけでも、だいぶ気持ちが軽くなります。
ヒント2:数字は「良い・悪い」ではなく、「傾向のメモ」として眺める
家庭血圧を“成績表”のように見ると、どうしても一喜一憂しがちです。
そこで、次のような表現に言い換えてみるのもおすすめです。
| 見方を変える前 | 見方を変えたあと |
|---|---|
| 今日は140/90で“悪かった” | 今日はいつもより少し高めだった |
| この1週間は“ダメな数字”ばかり | この1週間は、高めの日が多かった |
| 正常値から外れたから“失敗” | これくらいが今の自分の平均ライン |
数字は、「今の自分の状態を知るメモ」くらいの距離感で扱うほうが、長く続けやすくなります。
ヒント3:不安になったら、「頻度」ではなく「相談先」を増やす
血圧が不安で、つい何度も測ってしまうとき。
そんなときほど、測定回数を増やすよりも、「相談できる人」を増やすほうが心は落ち着きやすいです。
- かかりつけ医に、「どのくらいの値が続いたら受診したらよいか」をあらかじめ聞いておく
- 看護師さんや薬剤師さんに、「家庭血圧の見方」を一度教えてもらう
- 家族にも、「高めの数字が出た日には、こんなふうに声をかけてほしい」と共有しておく
こうした“味方づくり”ができると、「ひとりで数字を見つめて不安になる時間」は少しずつ減っていきます。
血圧は、心臓や血管だけでなく、自律神経やメンタルの揺れも映し出す“こころとからだのバロメーター”です。
だからこそ、1回ごとの数字に振り回されるよりも、「だいたいこんな傾向かな」と、ちょっと引いた目で見てあげることが大切になります。
完璧な記録も、毎日の100点満点も、必要ありません。
「朝と夜に2回ずつ、1週間だけ」「1回高かったら、慌てて判断しない」
そんな“ゆるいルール”でも、十分に意味のある家庭血圧メモになります。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
