冬が深まってくると、「この前は高かったのに今日は低い」「朝だけやたら血圧が高い」など、数字に振り回される日が増えやすくなります。
ただでさえ寒さでからだがこわばる季節、毎回ちがう血圧の数字まで気にしていると、それだけで疲れてしまいますよね。
今回は、「冬になると血圧が安定しない」と感じている方向けに、からだのしくみと生活習慣の両面から、揺れやすい血圧との付き合い方を整理していきます。全部を完璧に変えなくて大丈夫です。読んだあとに「ここだけやってみようかな」と思えるヒントを拾っていきましょう。

1. 冬に「血圧が安定しない日」が増えるときの共通パターン
冬場になると、こんな声が増えてきます。
- 家庭血圧をつけ始めたら、毎日数字が違っていて不安
- 朝は高めなのに、夜は急に下がっている
- 病院ではそこまで高くないのに、家の測定では高い日と低い日の差が大きい
- 仕事や家事のストレスが強い日は、いつもより数字が跳ね上がる気がする
血圧はもともと「そのときのからだの状態」によって上下するものです。姿勢、会話しているかどうか、トイレを我慢していないか、測る直前までバタバタ動いていたか…条件が少し違うだけでも変わります。
問題は、「変動していること」そのものではなく、
- 揺れ幅が大きすぎる
- 高い状態の時間が長く続いている
- 生活のリズムが乱れていて、からだが落ち着く時間帯が少ない
このあたりが重なることです。
最近の研究では、「冬の朝の家庭血圧は、夏よりも高くなりやすい」「冬のほうが日ごとのバラつきと心血管イベントとの関連が強い」といった結果も報告されています。BMJ Open+1
つまり、「冬は血圧が安定しない」と感じるのは、気のせいではなく、からだの側にも理由があるということ。そこに生活習慣やストレスが重なると、揺れやすさはさらに増えていきます。

2. 「血圧が上がったり下がったり」の意味を整理する
血圧の数字が毎回ちがうと、「測り方が悪いのかな?」「病気が進んでいるのでは」と不安になりがちです。ここでいったん、「普通の揺れ」と「注意したい揺れ」をざっくり整理してみます。

日内変動・日ごとの変動・季節変動
血圧の変動には、いくつかのレイヤーがあります。
| 種類 | どんな揺れか | ざっくりイメージ |
|---|---|---|
| 日内変動 | 朝・昼・夜など1日の中の変化 | 朝は少し高く日中に下がり、寝るとさらに下がるのが基本パターン |
| 日ごとの変動 | 昨日と今日、数日単位の変化 | 疲れ・睡眠不足・飲酒・塩分量などで上下 |
| 季節変動 | 夏と冬など、季節をまたいだ変化 | 一般に冬は高め、夏は低めになりやすい |
このうち、「一定のリズムを保ちながらの上下」は、からだが環境に適応している証拠でもあります。
一方で、
- 朝・夜ともに高い状態が続く
- 1週間の中で、上の血圧(収縮期)が20〜30mmHg以上ギザギザと大きく揺れる日が多い
- めまい・胸の痛み・息苦しさを伴うような急な変化
こういったパターンは、ひとりで様子を見続けるよりも、医療機関で相談しておいた方が安心です。
また、近年は「血圧変動性(血圧のバラつきの大きさ)」そのものが、心臓や脳の病気のリスクと関係している、というデータも増えてきています。Nature+1
家庭血圧と目安のイメージ
日本高血圧学会のガイドラインでは、年齢やリスクによって細かい目標値は異なるものの、一般的に「家庭血圧で上が135mmHg以上が続くと高め」とされています。ResearchGate+1
- 単発で「いつもより少し高い」日は、あわてず記録
- 数日〜1週間続けて高めの日が多い場合は、主治医と相談
- 200/120mmHgのような極端な高値や、強い頭痛・しびれ・胸痛を伴うときは、ためらわず救急受診を検討
というイメージで覚えておくと、少し気持ちがラクになります。ここでは、「数字1つで一喜一憂しすぎないこと」が大切です。
3. 冬と血圧変動の関係を、からだの中から見てみる
では、なぜ冬になると血圧が「安定しにくくなる」のでしょうか。からだの中で起きていることを、いくつかの視点から見てみます。
1) 寒さで血管がキュッと締まりやすい
気温が下がると、からだは熱を逃がさないように、皮膚の近くの血管をぎゅっと縮めます。これが「血管の収縮」です。血管が細くなると、同じ量の血液を流すために、心臓はいつもより強く押し出す必要が出てきます。その結果、血圧が上がりやすくなります。
特に、
- 暖かい部屋から寒い廊下・トイレへ
- 布団から出てすぐに冷えた洗面所へ
- 熱めのお風呂と脱衣所の温度差
こうした「急な寒暖差」は、血圧の上下に強く影響します。
日本やアジアの研究でも、「冬の朝の家庭血圧は夏より数mmHg高く、その状態が心血管イベントと関連する」ことが報告されています。BMJ Open+1
2) 朝の“立ち上がりモード”が強く出やすい
目が覚めると、からだは「活動モード」への切り替えをスタートします。
- 自律神経のうち、交感神経が優位になる
- ストレスホルモン(コルチゾールなど)が分泌される
- 心拍数や血圧が少しずつ上がる
この「朝の立ち上がり」は本来自然なものですが、冬は
- 寒さでさらに交感神経が刺激されやすい
- 起きるのがつらく、ギリギリまで寝ていて一気に動き出す
- 暖房がまだ効いていない
といった要素が重なって、「モーニングサージ(朝の血圧の急上昇)」が強く出やすくなります。実験的な研究では、冬に寝室の温度を10℃から25℃に上げることで、朝の血圧の上がり方が緩やかになった、という報告もあります。J-STAGE

3) 睡眠・ストレス・アルコールの影響
冬場は、イベントごとや仕事の繁忙期も重なりやすく、
- 寝る時間が遅くなる
- 睡眠時間が短くなる
- 寝る直前までスマホ・PCを見ている
といったリズムの崩れも起きがちです。睡眠不足や睡眠の質の低下は、交感神経の緊張を高め、血圧が下がるべき夜間にも高めの状態を続けてしまうことがわかっています。EatingWell
さらに、
- 寒いから運動量が減る
- 晩酌の量が増える
- 鍋料理やラーメンなど、塩分多めのメニューが増える
こうしたパターンも、日ごとの血圧のバラつきを大きくする要因です。ある研究では、「夕方〜夜の家庭血圧のバラつきに、飲酒量と座りがちな生活が関係していた」と報告されています。PubMed
冬の血圧の“揺れやすさ”は、寒さだけで決まるものではなく、「環境の変化 × 自律神経の緊張 × 生活リズムの乱れ」が重なった結果として現れてきます。

4. 生活習慣のクセと「揺れやすい血圧」のつながり
ここからは、冬場によく見られる生活パターンをいくつか取り上げて、「どんなふうに血圧に影響しやすいか」を整理してみます。
パターン1:朝がバタバタで、測定条件が毎回ちがう
- 休みの日だけゆっくり測る
- 平日は時間がなくて、トイレも行かずに急いで測る
- スマホを見ながら、会話しながら測る
このように、測る条件が日によってバラバラだと、「血圧が安定しない」のか「測り方が安定していない」のか分からなくなります。
本来は、
- 起床後1時間以内
- トイレを済ませ、1〜2分安静に座ってから
- 椅子に座って、腕帯の高さを心臓と同じくらいに
といった条件をそろえて測ることが推奨されています。J-STAGE
毎回条件をそろえてはじめて、「からだの状態の違い」による変動が見えてきます。
パターン2:夜のだらだら飲み&スマホ時間が長い
- 晩酌しながら夜更かし
- ベッドの中で、眠くなるまでSNSやニュースを見続ける
- 気づけば寝落ち、そして翌朝はギリギリまで寝ている
こうした生活が続くと、
- 交感神経のオン・オフがうまく切り替わらない
- 寝ているあいだに血圧が十分に下がらない
- 朝の立ち上がりで、さらに血圧がグッと上がる
という「下がりきらない → さらに上がる」パターンになりがちです。
アルコールは一時的に血管を広げて血圧を下げることもありますが、その後の反動で交感神経が高まり、むしろ血圧のバラつきが大きくなることが分かっています。OUP Academic

パターン3:日中ほとんど動かず、寒さで姿勢も固まる
- 冬は散歩や運動をサボりがち
- 在宅ワークやデスクワークで、1日中イスに張り付き
- 肩や首がこわばり、呼吸も浅くなる
からだを動かさない時間が長くなると、血のめぐりは悪くなり、血管のしなやかさも落ちてきます。軽い有酸素運動やストレッチは、交感神経の過剰な緊張を和らげ、血圧を安定させる方向に働きます。
研究レベルでも、「座りがちな生活と血圧のバラつきの大きさには関連がある」と示されています。PubMed
「がっつり運動をする」よりも、「座りっぱなしの時間をこまめに切る」イメージの方が現実的かもしれません。
ここまで読んで、「あ、これ自分のことかも」と感じたパターンはあったでしょうか。
続いて、よくいただく質問にQ&A形式で触れておきます。
Q1. 家庭血圧が毎回ちがうのは、測り方が悪いからでしょうか?
血圧はそもそも「毎回まったく同じ」ということの方が珍しいです。なので、「数字が違う=測り方が悪い」とは限りません。
ただ、
- 毎回測る腕を変える
- 座ったり立ったり、姿勢がバラバラ
- 測る時間帯が日によって大きく違う
といった条件のズレが続くと、「本来のからだの変化」が見えにくくなってしまいます。
同じ腕・同じ姿勢・同じ時間帯を意識するだけでも、数字の意味がぐっと読みやすくなります。それでも気になる揺れが続く場合は、その記録を持って医療者に相談すると、より的確なアドバイスが受けやすくなります。
Q2. 高い日と低い日、どちらの数字を信じればいいですか?
「たまたま一番高かった日」や「たまたま一番低かった日」だけを見ても、判断はむずかしいです。
- 朝・夜それぞれ、1〜2週間分の平均を見る
- そのうえで、平均が高めかどうかをチェックする
という見方がおすすめです。
ガイドラインでも、「家庭血圧は複数日の平均で考える」ことが推奨されています。J-STAGE
「平均として高めなのか」「たまたま上下しているだけなのか」を分けて考えると、心配のしすぎを防ぎやすくなります。
Q3. どのくらい揺れていたら、医療機関に相談した方がいいでしょうか?
あくまで目安ですが、
- 上の血圧が135mmHg以上の日が、1〜2週間のうち半分以上ある
- 20〜30mmHg以上の大きな揺れが何度も出ている
- 頭痛・胸の痛み・息切れ・片側のしびれなどを伴う
といった場合は、早めに主治医やかかりつけ医に相談しておくと安心です。
数字だけで判断がつかないことも多いので、「こういうパターンで揺れている」という情報を、遠慮なく共有して大丈夫です。相談したからといって、すぐに強い薬が増えるとは限りません。生活習慣の見直しで整えられる部分も、たくさん残っています。
5. 今日からできる「揺れにくい血圧」のための小さな工夫
最後に、完璧を目指さずに取り入れやすい、「血圧が安定しやすい土台づくり」のヒントをまとめます。
1) 測定の“儀式”を決めてしまう
毎回同じ条件で測るために、「朝のミニ儀式」を決めてしまうのがおすすめです。
- 起きる
- トイレに行く
- コップ1杯の水を飲む
- 椅子に座って1分だけ深呼吸
- そのあと血圧を測る
この流れを「セット」にしてしまうことで、からだの状態の違いが見えやすくなり、「今日は高い・低い」の意味もつかみやすくなります。
2) 冬の“寒暖差トラップ”を減らす
血圧の急な変化を防ぐには、「温度のジェットコースター」を少し穏やかにする意識が役立ちます。
- トイレや脱衣所にも小型の暖房器具を置く
- お風呂は熱湯ではなく、ややぬるめの温度でゆっくり
- 布団から出る前に、タイマーで暖房を入れておく
これだけでも、朝のモーニングサージや入浴時の血圧の乱高下をやわらげる助けになります。J-STAGE+1
3) 「全部やる」ではなく、「ここだけは守る」を決める
生活習慣をすべて理想形にするのは、現実的ではありません。
そこで、次のような“小さなルール”から選ぶのはいかがでしょうか。
| 行動のヒント | イメージ |
|---|---|
| 平日の晩酌は「週○回まで」と決める | 血圧のジェットコースターを減らすスイッチ |
| 1時間に1回は立ち上がって体を伸ばす | 座りっぱなしで固まった血管と筋肉をほぐす |
| 夜のスマホは寝る30分前でいったん終了 | 自律神経を静めて、夜間の血圧を下げる準備 |
| 塩分が多くなりそうな日は、意識して水分と野菜を増やす | 「足し算」ではなく「引き算」と「バランス」で調整 |
この中から「これならできそう」というものを1つか2つ選んで、まずは1〜2週間続けてみてください。
血圧の数字そのものよりも、「からだが落ち着ける時間帯が増えてきたか」「朝起きたときのしんどさが少し軽くなったか」といった“感覚の変化”にも目を向けてあげると、自分なりのペースで整えやすくなります。
数字に振り回されすぎず、「冬のからだとの付き合い方」をゆっくり育てていきましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
