健診の紙に「脂肪肝」「NAFLD」「NASH」…アルファベットが並ぶと、それだけで脳が小さくフリーズします。しかも最近は「MASLD」「MASH」という新しい呼び名まで登場。混乱して当然です。今日は“呼び方の整理”をするだけで、心配の矛先が少しだけ正しい方向に向くようにまとめます。

1. 健診で「脂肪肝」なのに、名前が多すぎ問題
最近、「脂肪肝って言われたけど、NAFLD?NASH?MASLD?どれが私の話?」という相談が増えています。
からだの中で起きていること自体は、昨日今日で別物になったわけではありません。変わったのは“ラベル(呼び名)”の付け方です。
私自身も、ガイドラインや学会の資料を読むときに「同じ病気の話を、別の言葉でしている」場面に出会って、いったん深呼吸したくなることがあります。ここを落ち着いて整理できると、次に取る行動(検査や生活の立て直し)がグッと現実的になります。
2. NAFLD/NASHと、MASLD/MASHは何が違うの?
結論から言うと、NAFLD→MASLD、NASH→MASHは「別の新しい病気が生まれた」ではなく、呼び名と定義の焦点を“代謝(メタボ)側”に寄せて再設計したイメージです。国際的な肝臓関連学会が、脂肪肝の呼び方を「SLD(Steatotic Liver Disease:脂肪がたまる肝疾患の総称)」という枠組みにまとめ、その中にMASLDなどを位置づけました。 EASL-The Home of Hepatology.+1
ざっくりの対応表はこんな感じです。
| 旧称(よく見かける) | 新しい枠組み(最近の主流) | 何を強調したい呼び方? |
|---|---|---|
| NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患) | MASLD(代謝機能障害関連脂肪肝) | “お酒じゃない”より“代謝が背景”を前面に |
| NASH(非アルコール性脂肪肝炎) | MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎) | 脂肪+炎症(肝炎)まで進んだ状態 |
| (旧分類では曖昧になりやすい) | MetALD(代謝+一定量の飲酒もある) | 代謝要因も飲酒も両方関与する領域 |
| アルコール性肝障害(ALD) | ALD(Alcohol-related liver disease) | 主因が飲酒のもの |
| 原因不明扱いになりがち | cryptogenic SLD | 代謝要因も明確な原因も拾えないもの |
ポイントは2つです。
(1) MASLDは「脂肪肝+代謝リスクが1つ以上」
AASLDなどの整理では、画像などで肝臓に脂肪がある(steatosis)ことに加えて、肥満・糖代謝・脂質・血圧などの心血管代謝リスク因子のうち少なくとも1つがあればMASLDに入ります。 AASLD+1
(2) “飲酒ゼロ”か“飲酒のせい”かの二択じゃない
新枠組みでは、代謝要因がありつつ一定量の飲酒もある場合をMetALDとして別立てにしました。目安として、週あたりのアルコール量が女性140g、男性210gを超えるあたりがひとつの区切りとして示されています。 AASLD+1
(ここは「自分はどっち?」の判断が難しいゾーンなので、後半で現実的な見方も書きます。)
3. 呼び名が変わった背景:からだの中身は“代謝の話”だから
脂肪肝は、世界的にかなり多いです。報告によって幅はありますが、成人の約3割前後という推計が示されています。 肝臓病学ジャーナル+1
そして厄介なのは、肝臓がわりと我慢強い臓器で、自覚症状が乏しいまま進む人がいること。
ここで「構造・神経・感覚」の観点で、同じ現象を3枚の地図にしてみます。
- 構造の地図(肝臓で何が起きる?)
肝細胞に脂肪(主に中性脂肪)がたまり、状態によっては炎症が起き、さらに線維化(硬さ)が進みます。MASHは、脂肪があるだけでなく“炎症”が伴う段階として整理されます。 PMC - 神経・ホルモンの地図(なぜ脂肪がたまる?)
背景に多いのは、インスリン抵抗性、内臓脂肪の増加、脂質異常などの“代謝の偏り”。睡眠不足や慢性的ストレスで食欲ホルモンや血糖の波が乱れると、肝臓は「余ったエネルギーを貯蔵する倉庫」になりやすい。 - 感覚の地図(本人が感じるのは?)
「なんとなくだるい」「食後に眠い」「体が重い」みたいな曖昧な不調は出ても、脂肪肝だけが原因とは限りません。逆に言うと、症状の有無だけで安心・不安を決めないのが大事です。
そして、現実的に強いメッセージがひとつあります。
体重を落とす“割合”が、肝臓の状態と連動しやすいという点です。EASLなどのガイドラインでは、目標の目安として「体重の5%で肝脂肪を減らしやすい」「7〜10%で炎症の改善を狙う」「10%以上で線維化の改善も視野」という整理が示されています。 PMC
“根性論の減量”ではなく、“割合の設計図”として持っておくと、やることが具体的になります。
4. よくある生活パターンと、用語のモヤモヤが増える理由
脂肪肝の話がややこしくなるのは、病名が多いせいだけじゃありません。生活の中で、原因が1本じゃなく“束”になりやすいからです。
たとえばこんなパターン。
- 「忙しくて朝は抜く→昼ドカ食い→夜は遅い」
血糖の波が大きくなり、肝臓が脂肪を溜め込みやすい流れになりがち。 - 「運動不足だけど、体重はそこまで増えてない」
見た目の体重より、内臓脂肪や筋肉量の低下が影響することがあります。痩せ型でも脂肪肝が起きるのは珍しくありません。 - 「お酒は毎日じゃないけど、週末に偏る」
新しい分類(MetALD)の話題が出てきて、さらに混乱しがち。ここは“ゼロか百か”で判断せず、量と頻度を一度だけ見える化すると前に進みます。 AASLD+1
また、検査の話も現実的に触れておきます。脂肪肝は「エコーで指摘」だけで終わりがちですが、重要なのは線維化(肝臓の硬さ)がどの程度か。そのふるい分けに、まず血液検査から計算できるFIB-4のような指標を使い、必要なら追加検査(エラストグラフィ等)へ、という考え方が複数の提言で示されています。 Diabetes Journals+1
Q1. 「NAFLD」と言われた過去があるけど、今は「MASLD」って書かれるの?
多くの場合は同じ流れを指しています。医療機関や資料によって表記が混在する移行期なので、「どちらが正しい?」よりも、自分に代謝リスク(血糖・脂質・血圧・体重など)があるかを確認した方が、次の一手に直結します。 AASLD+1
Q2. お酒を飲むけど「脂肪肝」って言われた。アルコール性なの?代謝なの?
二択にしない方がうまくいきます。新しい枠組みでは、代謝要因がありつつ一定量の飲酒がある場合をMetALDとして扱う考え方があります。目安量(週140g/210gなど)を一度“概算”し、健診データ(肝機能・中性脂肪・血糖)と合わせて、医療者と一緒に整理するのが現実的です。 AASLD+1
Q3. どの程度なら、医療機関で相談した方がいい?
エコーで脂肪肝を指摘されたうえで、肝機能の数値が継続して高い、糖尿病や高血圧などの代謝リスクが重なっている、家族歴がある、などは相談の価値が上がります。特に線維化の評価は“早めに地図を作る”ほど安心材料になります。 Diabetes Journals+1
5. 今日からできる「用語の混乱」を減らす3つのコツ
ここからは、勉強というより生活の工夫です。全部やらなくて大丈夫。やれそうなものを1つ選べれば十分です。
- 健診結果を“翻訳”する:脂肪肝+代謝リスクの有無を見る
ALT/ASTだけで一喜一憂せず、血糖(HbA1c)、中性脂肪、血圧、腹囲などをセットで眺める。MASLDという言葉が言いたいのは、だいたいここです。 AASLD+1 - 体重は「何kg」より「何%」で考える
EASLのガイドラインでは、5%・7〜10%・10%以上という“割合”が目安として示されています。たとえば体重60kgなら、まずは3kg(5%)がひとつの現実ライン。 PMC - お酒は“毎日飲むか”より、週の総量を一度だけ計算する
女性140g/週、男性210g/週という目安が出てきますが、普段の自己申告はズレやすいもの。だからこそ、1回だけでいいのでメモにして見える化すると、必要以上の不安が減ります。 AASLD+1
脂肪肝は、名前が変わっても「生活の現実に落とす」ことが一番効きます。用語を整理できたあなたは、もう半分進んでいます。あとは小さく、確実に。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
