スマートリングを付け始めてから、「睡眠を良くしたくて測ってるのに、スコアが気になって眠れない…」となる人がいます。真面目な人ほど、数字を“答案”みたいに受け取りやすい。けれど睡眠は、頑張り方を間違えると逃げていく性質があります。今日は、スコアと上手に距離をとるコツをまとめます。

1. 睡眠を“見える化”したのに、寝つきが悪くなった話
最近、スマートリングや時計で睡眠を測る人が増えました。年末年始のセールや、健康アプリの普及も後押ししている印象です。私のところにも「睡眠の質を上げたい」「疲れが取れないから原因を知りたい」という相談が増えています。
ただ、同時に増えるのがこのパターン。
- 夜、ベッドに入ってから「今日のスコアどうなるかな」と考える
- 途中で目が覚めて、ついアプリを見てしまう
- 朝、スコアが低いと“失敗感”が残って一日が重い
ここで大事なのは、あなたの意思が弱いからではないこと。むしろ逆で、「良くしたい」の気持ちが強い人ほど、脳が睡眠を“監視対象”にしてしまうんです。
2. 「眠れた感じ」と「スコア」がズレる理由
先に要点だけ置きます。
スマートリングの数字は、睡眠の“目安”にはなるけれど、あなたの睡眠の合否判定ではありません。
特に“起きている時間”や“睡眠段階”はズレやすく、そこで不安が膨らむと、睡眠はさらに不安定になります。
見るなら「一晩の点数」より「1〜2週間の傾向」に寄せると、ストレスがぐっと下がります。 睡眠医学協会+1
スマートリングの多くは、主に「体動(動き)」「脈拍の変化」「皮膚温」などから睡眠を推定します。つまり、脳波を直接測る検査(睡眠ポリグラフ検査)とは別物。睡眠学会側も、民生機器は睡眠障害の診断や治療の代わりにはならないという立場です。 睡眠医学協会+1
ここ、勘違いが起きやすいので整理します。
| 指標(アプリでよく出る) | だいたい何を見ている? | ズレやすいポイント |
|---|---|---|
| 総睡眠時間 | 寝床で動きが少ない時間の推定 | じっとしている“覚醒”を寝ている扱いにしやすい |
| 中途覚醒(WASO) | 夜間の動き・脈の変化 | 静かに目が覚めていると検出が苦手 |
| 睡眠段階(深い/浅い/REM) | 動き+脈のパターン推定 | 段階の判定は「ほどほど」レベルになりやすい |
「起きてたのに寝てたことになってる」「寝てたのに起きてたことになってる」どちらも起こりえます。研究でも、一般に“睡眠を睡眠と判定する感度”は比較的高い一方、“覚醒を覚醒と判定する特異度”が低めになりやすいことが指摘されています。 Nature
だからこそ、数字に引っぱられすぎない設計が必要です。
3. 計測ストレスの正体:脳が“監視モード”になる
睡眠を測ることで逆に眠れなくなる現象は、海外では**orthosomnia(オルトソムニア)**という言葉で語られています。簡単に言うと「完璧な睡眠を追い求めすぎて、かえって眠れなくなる」状態。2017年に、睡眠トラッカーの数値をきっかけに不眠が悪化したケースが報告されています。 PMC
このとき、体の中で起きているのはだいたいこんな流れです。
- 睡眠が“成果物”になる(点数を上げるタスク化)
- 脳が警戒を強める(「眠らなきゃ」が“緊張”になる)
- 眠れない自分を観察する(心拍、呼吸、寝返りに意識が向く)
- 結果、覚醒が保たれる(寝つきや途中覚醒が増える)
そして一番の落とし穴が、スコアを上げようとして寝床に長くいること。寝床にいる時間が増えすぎると、睡眠が薄くなりやすいのはよく知られています。日本の睡眠ガイドでも、長く寝床で過ごしすぎることが睡眠の質を下げうる点に触れられています。 厚生労働省+1
さらに追い打ちになるのが、「起きている時間」の誤判定。リングやアクチグラフィーは、静かに起きている時間を拾いにくいことがあり、そこで数字と体感がズレると不安が増えやすい。 Nature
真面目な人ほどハマりやすいループなので、抜け道は“意思”より“設計”です。仕組みで勝ちます🧩
4. スコアに振り回されない、スマートリングの使い方
ここからは、私が勧める「計測ストレスを増やさない」運用ルールです。全部やらなくて大丈夫。効きそうなものを1〜2個だけでOKです。
スコアの扱いを「毎日採点」から「週の天気」に変える
- 朝イチでスコアを見ない(見るなら昼か夕方に回す)
- “一晩”の点数は捨てる。見るのは「7〜14日トレンド」
- 睡眠段階は、当面非表示や“参考”扱いで十分
睡眠は、努力がすぐ点数に反映されない日があります。体調、食事、運動、ストレス、季節。いろんな要素が混ざるので、日々の点数はブレて当たり前です。
目的を「改善」ではなく「観察」に戻す
おすすめは、リングに求める役割を3つに絞ること。
- 起床時刻が安定しているか
- 寝床にいる時間が増えすぎてないか
- 日中の眠気や回復感と整合するか
この3つだけなら、リングはかなり良い相棒になります。逆に「深い睡眠を何%にする」みたいな使い方は、ストレスを生みやすいです。
“眠れない夜”の対処は、睡眠医学の王道を借りる
慢性的な不眠には、**CBT-I(不眠の認知行動療法)**が第一選択になりやすいことが、睡眠医学会のガイドラインでも推奨されています。 PMC+1
リングユーザー向けに、要点だけ生活語に翻訳します。
- 寝床=眠る場所に限定(スマホ採点会場にしない)
- 眠れないまま粘らない。体感で15〜20分くらいで一度起きて、暗めの場所で静かな作業をして眠気を待つ
- 起床時刻は固定。睡眠は「朝のアンカー」で整いやすい
「眠れないのに横になり続ける」は、リングのスコアを上げるには良さそうに見えて、睡眠の力を削ることがあります。ここが逆効果ポイントです。
Q&A
Q1. 睡眠スコアが低いとき、何を優先して見ればいい?
スコアより「昼間のコンディション」を先に見てください。強い眠気、集中力の低下、イライラが続くなら対策の価値あり。体感が悪くないのにスコアだけ低い日は、機器の推定ズレの可能性もあります。見るなら7〜14日の平均で判断が安心です。 睡眠医学協会
Q2. リングを付けないほうが、睡眠は良くなりますか?
人によります。数字が不安を増やしているなら、一度お休みは有効です。逆に、生活リズムの乱れに気づく目的なら続ける価値があります。ポイントは「毎日採点しない」「段階は参考」「トレンドを見る」。この3点でストレスは減りやすいです。 PMC
Q3. 受診の目安ってありますか?
目安は「週3回以上の不眠が3か月以上」+「日中の支障」です。これは診断の考え方にも沿います。加えて、いびきや呼吸停止の指摘、強い落ち込み、脚のむずむず、急な体重変化がある場合は早めが安心です。 NCBI
5. 今日からできる“計測ストレス”の減らし方
今日からの具体策、3つだけ置きます。
- 「見る時間」を決める
朝は見ない。週に2〜3回だけ。これだけで寝つきの緊張が下がる人が多いです。 - “主観の勝ち”を宣言する
リングの数字より、あなたの回復感を上位に置く。睡眠は「気持ちよく起きられたか」が最強の指標です。厚労省の睡眠ガイドでも、睡眠時間は個人差が大きく、日中の眠気や休養感が目安になるとされています。 厚生労働省+1 - 困ったら「戻す」より「整える」
睡眠を取り返そうとして寝床時間を増やすより、起床時刻を整えて、夜の眠気を育てるほうが上手くいきやすい。焦りが出たら「睡眠は追うほど逃げる生き物だった」と思い出してください。
それでも不眠が続くときは、あなたが悪いわけではなく、体と心の条件が噛み合っていないだけのことがあります。少しずつで大丈夫。今日できる小さな設計変更が、いちばん効きます🌙
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
