はじめに
「寝つきが悪いからグリシンを飲んでみた」「GABAのサプリも気になって買ってみた」。
そんな流れで、ふと夜のテーブルを見たら、睡眠サプリのボトルが2〜3本並んでいる…という方、意外と多いと思います。
最近、私のところにも
- 「グリシンとGABAは一緒に飲むと危ないですか?」
- 「睡眠サプリ、何種類までなら大丈夫なんでしょう?」
- 「飲み合わせで逆に眠りが浅くなったりしませんか?」
という相談が増えてきました。
SNSやネット記事、ドラッグストアのPOPでも「リラックス」「快眠」といった言葉が並び、グリシンやGABAの名前はすっかり定着してきましたが、「グリシン GABA 併用」については、まだ情報がバラバラで分かりにくいのが現状です。
この記事では、
- グリシンとGABAってそもそも何者なのか
- 一緒に飲んでもいいケース・気をつけたいケース
- 日常のクセとの関係と、現実的な付き合い方
を、専門用語をできるだけほぐしながらお伝えしていきます。
読み終わるころには、「とりあえずこれだけ意識しておけば大きく外さないかな」という、自分なりのラインが見えてくるはずです。
肩の力を抜きつつ、一緒に整理していきましょう。


2. いま話題のグリシン GABA 併用って、結局なんなのか?
まず、「そもそも論」を軽く整えておきます。
グリシンもGABAも、どちらも“アミノ酸系”の成分で、「リラックス」や「睡眠の質」に関わると言われていますが、役割や研究のされ方には違いがあります。
グリシンとGABAのざっくり整理
| 成分名 | 何の仲間か | 主な働き(ざっくり) | 睡眠に関する研究でよく使われる量の目安 |
|---|---|---|---|
| グリシン | 非必須アミノ酸 | 体温調整・神経の調整・コラーゲンの材料など | 就寝前に約3 gを数日〜数週間摂取した研究が多いWiley Online Library+2PMC+2 |
| GABA(γ-アミノ酪酸) | 神経伝達物質(抑制系)/アミノ酸 | 脳の「ブレーキ役」として興奮を抑える | 1日あたり75〜300 mg程度の摂取で睡眠やストレスへの効果を見た研究が多いthejcn.com+3PMC+3PMC+3 |
ポイントだけまとめると、
- グリシン
→ からだ全体に広く存在するアミノ酸。就寝前に3 g程度とると、睡眠の質や翌日の疲労感の改善が報告されている。 - GABA
→ 脳の中で「興奮をしずめる働き」を持つ物質。食品由来のGABAを使った研究では、ストレス軽減や入眠時間の短縮などが報告されている。
どちらも、適切な量であれば**「睡眠の質をサポートする可能性がある成分」**として、論文ベースの報告が積み上がってきています。ただし、医薬品ではなくあくまで「サプリメント/機能性表示食品」という立ち位置です。
世の中で語られがちなイメージ
実際の売り場や広告では、
- グリシン=「深部体温を下げてぐっすり」
- GABA=「イライラやストレスをしずめてリラックス」
のような形で紹介されることが多い印象です。
このイメージ自体、研究データとかけ離れているわけではありませんが、「飲めば必ず熟睡できる」「飲めば飲むほど効く」というものではありません。
また、最近は
「グリシンとGABAを一緒に飲むと最強の睡眠コンボになる」
といった表現も見かけます。
ただ、グリシンとGABAを“同時に”摂った研究データはほとんどありません。
あるのは、
- グリシン単体での睡眠改善の研究
- GABA単体、あるいは別のハーブ等と組み合わせた睡眠改善の研究
がそれぞれ別々にある、という形です。PMC+3Wiley Online Library+3PMC+3
ですから、「併用すると絶対に危険」「併用すると劇的にすごい」というどちらの極端な話も、今のところは“言い切りづらい”のが正直なところです。
3. からだの中で起きていること
ここから少しだけ、からだの中に潜ってみます。
構造(どこの話か)・神経(どんな信号が飛んでいるか)・感覚(私たちがどう感じるか)の3つのレイヤーを、難しすぎない範囲で重ねてみましょう。
グリシン:体温と「眠りモード」へのスイッチ
グリシンは、脳や脊髄にも存在しますが、血管・筋肉・皮膚など全身に広く分布しているアミノ酸です。睡眠との関係でよく語られるのが、**「体温調整」と「睡眠を司る神経の調整」**です。
いくつかの研究では、
- 就寝前に3 gのグリシンをとる
- その結果、核心体温(からだの中心の温度)が少し下がる
- 主観的な睡眠の質が改善し、翌日の眠気や疲労感も軽くなった
という報告があります。SpringerLink+3PMC+3Wiley Online Library+3
深い眠りに入るためには、**「寝る前に少し体温が下がること」**が大事だとされています。
グリシンは、体の表面の血管を広げて熱を逃がしやすくすることで、からだを“睡眠モード”に切り替えやすくしていると考えられています。
難しい言い方をすると、
- 視床下部や脳幹の温度調節中枢への作用
- NMDA受容体など、睡眠に関わる神経の調整
などが議論されていますが、生活レベルで言い換えると、
「寝る前に、からだを一歩“ひんやり落ち着いた状態”へ誘導してくれる成分」
とイメージすると近いです。
GABA:脳のブレーキ役としての働き
一方、GABA(γ-アミノ酪酸)は、脳の中で**「興奮をしずめるブレーキ役」**として働く神経伝達物質です。
- 仕事や人間関係のストレス
- 強い不安感
- 寝る直前までのスマホ・PCでの情報シャワー
こういった刺激が重なると、脳の「アクセル側(ノルアドレナリンやグルタミン酸など)」が踏みっぱなしになり、GABAのようなブレーキが効きにくい状態になります。
食品由来のGABAを摂った臨床試験では、
- 75 mgの天然GABAを4週間摂取した不眠症患者で、入眠までの時間が短くなり、睡眠の質も改善した報告PMC+1
- 100 mgのGABAを含む食品摂取で、脳波上、入眠が早まりノンレム睡眠が増えた報告J-Stage
などが出ています。
「GABAのサプリは脳に届かないのでは?」という議論もありますが、少なくとも**“ストレスの感じ方”や“主観的な眠り”への影響は出ている**研究が増えてきています。Frontiers+1
生活レベルに落とし込むと、
「頭の中でワーッと走っている思考や興奮に、少しブレーキをかけてあげる存在」
とイメージすると理解しやすいかもしれません。
グリシン GABA 併用で起きうること(理論上)
では、この2つを一緒にとると、からだの中ではどうなるでしょうか。
- グリシン
→ 体温や睡眠関連の神経を整え、「眠りやすい土台」を作る - GABA
→ 脳内の興奮を抑え、「心を落ち着きやすくする」
という役割を考えると、
「からだ」と「こころ」の両面から、眠りに向かいやすい環境を整える
というのが、理論上のイメージになります。
ただし、ここで大事なのは、
- グリシンとGABAを“同時に”とった臨床研究は、現時点でほとんどない
- どちらも「眠気」や「血圧の低下」などを通じて作用する可能性がある
という点です。
GABAは一部の研究で、血圧を下げる作用や、眠気・頭痛・腹部不快感といった副作用が報告されていますし、摂りすぎでこうした症状が出る可能性も指摘されています。Verywell Health+1
グリシンは比較的安全性が高いとされていますが、長期の大量摂取については十分なデータがあるとは言えません。Health+1
つまり、「一緒に飲んだから即アウト」というより、総量とタイミングが大事だと考えた方が現実的です。
4. 日常のクセとグリシン GABA 併用の関係
ここからは、「生活の中でどう飲むか」「どんなクセとセットになりがちか」を眺めてみます。
グリシンとGABAを一緒に飲んでいる方の多くは、次のようなパターンに当てはまりやすい印象です。
パターン1:生活リズムはそのまま+サプリだけ増えていく
- 就寝は日によって23時〜1時半とバラバラ
- 寝る直前までスマホ・動画
- 夕方以降もカフェインやアルコールが多め
- 「寝つきが悪いから」と睡眠サプリを足していく
正直なところ、一番多いパターンかもしれません。
この状態でグリシンとGABAを併用しても、「一時的に楽になることはあっても、根っこが解決していない」ことが多いです。
研究レベルでも、
- 睡眠時間の不足や不規則な生活リズムは、自律神経やホルモンの乱れを通じて、うつ症状・肥満・生活習慣病のリスクを高めることが知られています。Frontiers
サプリで「眠りの手前」をサポートしつつ、同時に生活リズムを1〜2割でも整える方が、結果としてはからだがラクになりやすいです。
パターン2:不安が強く、「効き目」を求めて量が増える
- 「今日は早く寝ないと明日がつらい」という焦り
- 「効かなかったらイヤだから」と、推奨量以上に飲んでしまう
- それでも眠れないと、「別の睡眠サプリを追加」してしまう
私自身も、薬ではないものに対して「ちょっと多めに飲んでも大丈夫かな」と油断してしまいそうになることがあります。
ただ、グリシンやGABAの**研究で使われている量は、あくまで“その量で安全性と効果を確認した範囲”**です。
- グリシン:就寝前3 g前後
- GABA:1日75〜300 mg前後
を大きく超えて併用すると、
- 朝の強い眠気
- 立ちくらみ(血圧が下がりやすい人)
- 頭痛やお腹の違和感
などが出るリスクはどうしても高まります。Verywell Health+2PMC+2
「睡眠サプリ 何種類まで?」という問いに対しては、
“量の合計”が増えすぎていないか
という視点が、実は一番大事です。
パターン3:薬との飲み合わせが気づかないうちに複雑になっている
- 市販の睡眠改善薬や風邪薬(抗ヒスタミンなど)を夜に飲んでいる
- 血圧の薬や抗不安薬・抗うつ薬を服用中
- そこにグリシン・GABA・メラトニンなどのサプリが重なる
GABAは一部の研究で血圧を下げる可能性が示されており、血圧の薬と重なると効きすぎてしまうケースも理論的には考えられます。PMC+1
また、眠気を強める薬と、眠気を促すサプリを組み合わせると、
- 夜中にトイレに起きたときのふらつき
- 転倒リスクの増加
など、別のリスクが出てくることもあります。
Q&Aコーナー:よくある疑問に答えてみます
ここで、グリシンとGABAの併用について、よく聞かれる質問にお答えします。
### Q1. グリシンとGABA、一緒に飲むときの“量”はどれくらいが目安?
現時点で、「グリシン GABA 併用の最適量」が研究で決まっているわけではありません。
ただし、それぞれ単体での研究量を超えない、というのが一つの現実的な目安になります。
- グリシン:就寝30〜60分前に3 g前後
- GABA:1日75〜300 mg前後(就寝前にまとめて、あるいは分けて)
この範囲で行われた臨床研究では、多くの健康成人で大きな副作用は報告されていません。PMC+3Wiley Online Library+3PMC+3
ただし、
- もともと血圧が低い
- 持病がある
- ほかの薬を飲んでいる
といった場合は、この範囲内であっても注意が必要です。
まずはそれぞれ単独で「推奨量の下限〜中間」を試し、様子を見てから併用を検討するくらいが安心感のあるラインだと思います。
### Q2. 市販の睡眠薬や病院の薬と一緒に飲んでも大丈夫?
ここは慎重にいきたいところです。
- 抗不安薬・睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)
- 抗ヒスタミン(かぜ薬・鼻炎薬などに含まれる)
- 血圧を下げる薬
は、いずれも眠気・血圧・自律神経に関わる薬です。
そこにGABAやグリシンを足すと、
- 眠気が強くなりすぎる
- 血圧が下がりすぎる
- 日中のだるさが増す
といった形で「効きすぎ」の方向に働く可能性があります。
結論としては、「薬と睡眠サプリの飲み合わせ」は自己判断で決めない方が安全です。
かかりつけ医や薬剤師に、「グリシンとGABAのサプリを飲みたいのですが、今の薬と一緒で大丈夫ですか?」と、一度具体的な商品名を見せて相談することをおすすめします。
### Q3. 毎日飲み続けても大丈夫?やめ時はどう考えたらいい?
現時点のデータでは、
- グリシン:数日〜数週間の摂取での安全性はおおむね確認
- GABA:数週間〜数か月までの摂取で大きな問題は報告されていない
というレベルです。SpringerLink+2PMC+2
ただ、「何年も飲み続けた場合のデータ」はまだ十分ではありません。
個人的には、
- 最初の2〜4週間:
→ 決めた量で継続し、睡眠日誌や翌日の体調をメモしてみる - その後1〜2か月:
→ 効果を感じるなら量をキープしつつ、生活リズム・寝る前の習慣も整えていく - 落ち着いてきたら:
→ 週末だけ減らしてみる、量を半分にしてみるなど、「やめたときの状態」も確認する
というステップで、「サプリ依存」ではなく**“自分のからだの戻る力”を確認していく**のがおすすめです。
5. おわりに
最後に、グリシンとGABAの併用と付き合っていくうえで、今日から実践しやすい「小さな一歩」を整理してみます。
今日からできる行動のヒント
| 行動 | イメージ |
|---|---|
| ① サプリの“総量”を見直す | グリシン・GABA・他の睡眠サプリをすべて書き出し、ラベルに書かれた1日量と照らし合わせて、まずは「研究で使われた範囲+商品推奨量」を超えないようにしてみる。 |
| ② 飲むタイミングをシンプルにする | 寝る30〜60分前にまとめて飲み、日中はカフェイン・アルコール・スマホ時間の方を意識して整える。タイミングをバラバラにしすぎない。 |
| ③ 生活リズムに“1〜2割”手を入れてみる | 就寝時間を毎日30分だけ揃えてみる、寝る前のスマホ時間を15分だけ減らしてみるなど、「全部変える」ではなく小さな修正から始める。 |
全部やろうとすると疲れてしまうので、この中から1つだけ選んでみてください。
それだけでも、グリシンやGABAのサプリが「からだの味方」として働きやすい環境に近づきます。
この記事の要点を3つにまとめると…
- グリシンもGABAも、適切な量なら睡眠の質をサポートする可能性がある成分で、グリシン3 g・GABA 75〜300 mg前後の研究データが多い。PMC+3Wiley Online Library+3PMC+3
- グリシン GABA 併用そのものを直接検証した研究はほとんどないため、「一緒に飲めば最強」でも「絶対に危険」でもなく、総量と飲み合わせ(薬・血圧・眠気)に注意しながら使うのが現実的な落としどころ。Frontiers+1
- サプリは“生活リズムを整えるサポート役”。生活の土台(睡眠時間・光・体温・ストレス対策)を少しずつ整えるほど、少ない量でも効果を感じやすくなり、「たくさん飲まないと眠れない」という不安からも離れやすくなっていきます。
眠りは「スイッチ」ではなく、「だんだんと夜に向かう流れ」です。
グリシンやGABAのサプリは、その流れにそっと追い風を送る存在。
自分のからだの感覚を確かめながら、無理のないペースで付き合っていきましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
