『なんとなくだるい』の正体~気温差・気圧と自律神経の関係~

気温差や気圧の変化でなんとなく不調を感じている人が、曇り空を背景にだるそうに肩に手を当てているイメージイラスト(自律神経の乱れと天気・気象病をイメージした画像)
目次

1. はじめに

「なんとなく体が重い」「風邪じゃないのに頭がスッキリしない」「検査では異常なしと言われたけど、やっぱりラクじゃない」。
そんな**“なんとなく不調”**が、季節の変わり目や気温差が大きい時期に強く出る人は少なくありません。

実際、漢方メーカーの調査では、20〜60代の約8割が『なんとなく不調』を感じていると答え、その内容として「疲れ・だるさ」「目の疲れ」「肩こり」「頭痛」「睡眠のトラブル」などが上位に並びます。ツムラ
「病気と言うほどではないけれど、いつもどこかしら調子が悪い」という人が、とても多いということですね。

私のところに相談に来られる方でも、

  • 天気が崩れる前になると頭重感や肩こりが悪化する
  • 朝起きても疲労感が抜けず、一日じゅうエンジンがかからない
  • 検査では問題ないけれど、季節の変わり目ごとにだるさが増す

といった**「なんとなく不調と自律神経のバランスの乱れ」**を疑いたくなるケースは、確実に増えています。

この記事では、
「気温差や気圧の変化があると、なぜ『なんとなくだるい』が増えるのか?」
「どこまでが様子見で、どこから気をつけたほうがいいのか?」
「今日からできる、小さなセルフケア」

を、できるだけやさしく、けれどからだの仕組みにも触れながらお伝えしていきます。
読み終わる頃には、「あ、そういうことだったのか」と少し輪郭が見え、「とりあえずこれを試してみようかな」と思える状態を目指します。


2. いま話題の「なんとなく不調」と自律神経って、結局なんなのか?

「なんとなく不調」は“名前のつかない不調”の総称

さきほどの調査では、「なんとなく不調」として挙げられた症状の上位は、

  • 疲れ・だるさ
  • 目の疲れ
  • 肩こり
  • 頭痛
  • 睡眠トラブル

などでした。ツムラ

つまり「なんとなく不調」とは、検査でハッキリ病名がつく手前の、軽い症状がいくつも重なった状態と考えられます。
しかも、一つではなく**“だるい+頭が重い+肩こり”**のようにセットで現れることが多いのが特徴です。アリナミン健康

“気象病”“天気痛”“寒暖差疲労”との違い

最近はメディアやSNSで、

  • 気象病
  • 天気痛
  • 寒暖差疲労

といった言葉もよく見かけます。これらは厳密な医学用語ではありませんが、「気温差」「気圧の変化」とからだの不調の関係を表すときによく使われます。

ざっくり整理すると、こんなイメージです。

言葉ざっくりした意味よく出る症状の例
気象病天気・気温・湿度・気圧の変化で悪化する不調の総称頭痛、だるさ、関節痛、めまい など
天気痛特に**痛み系(頭痛・関節痛など)**が天候で悪化する状態片頭痛、古傷の痛み、関節痛
寒暖差疲労気温差が大きいことで自律神経が疲れ、だるさが出る状態倦怠感、肩こり、冷え、頭重感
自律神経の乱れ交感神経・副交感神経のバランスが崩れている状態疲労感、動悸、胃の不調、イライラ、眠りの質低下

気象関連の調査では、「気象病」を経験したことがある人が全国平均で6割以上、主な症状として「頭痛」「だるさ」「気分の落ち込み」などが挙がっています。第一三共ヘルスケア
また、気圧や天候による痛み・だるさ(いわゆる天気痛)については、「持っている」「そんな気がする」と感じている人が7割近くにのぼるという報告もあります。ウェザーニュース

つまり、

気温差や気圧の変化で出てくる「頭重感・肩こり・だるさ」は、かなり多くの人が経験している、ごくありふれた現象

とも言えるのです。

キーワードは「自律神経」

「なんとなく不調」と気象病・寒暖差疲労をつなぐキーワードが、自律神経です。

自律神経は、ざっくり言うと

  • 活動モードの「交感神経」
  • お休みモードの「副交感神経」

のバランスをとりながら、**心拍・血圧・体温・消化・血流などを自動で調整している“からだの自動運転モード”**です。

ある調査では、「自律神経が乱れている自覚がある」と答えた人のうち約9割が「季節の変わり目に乱れやすい」と感じているという結果も出ています。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
疲れが取れない、だるさが続くなどの「なんとなく不調 自律神経」の関係は、数字から見ても無視できないレベルになってきています。


3. からだの中で起きていること

ここからは、気温差・気圧の変化があるとき、からだの中で何が起きているのかを少しだけ分解してみます。
カタい話も出てきますが、「からだの中の小さな天気予報士たちが忙しく動き回っている」とイメージしながら読んでみてください。

3-1. 気温差と“体温コントロール中枢”の負担

急に冷え込んだり、日中だけ急に暑くなったりする時期は、体温を一定に保つための調整がフル稼働します。

  • からだを冷やさないように、血管をギュッと縮める
  • 逆に、熱を逃がしたいときは血管を広げる
  • 皮膚の血流を変えたり、汗の出方を変えたりする

これらはすべて、自律神経が自動で行っています。

「寒暖差疲労」と呼ばれる状態は、気温差が大きい日が続くことで、この体温調節システムがずっと頑張り続けて“息切れ”してしまった状態と考えられています。
気温差が7℃以上になると、からだへの負担が大きくなり、疲労感や肩こり、倦怠感などの症状が出やすいと紹介している解説もあります。アリナミン健康+1

3-2. 気圧の変化と耳・脳のセンサー

低気圧が近づくとき、私たちのからだは気圧の変化を内耳(耳の奥)で感じ取っていると考えられています。

  • 内耳には、揺れや傾き・圧力変化を感じるセンサーがある
  • ここからの情報が前庭神経を通して脳へ送られる
  • 脳の血管や痛みを感じる神経に影響し、頭痛やだるさとして現れる

というメカニズムが提案されています。Starter Kit+1

頭痛持ちの人は、こうした気圧変化センサーが敏感なタイプが多く、低気圧が近づくと血管が拡張しやすくなり、頭痛や頭重感として感じやすいことが報告されています。Starter Kit

ここに、仕事や家事のストレス・睡眠不足・スマホの見すぎなどが重なると、脳や自律神経がオーバーワークになり、「なんとなく不調」が一段と強くなりやすくなります。

3-3. 筋肉・関節(構造)に起きていること

気温が下がると、からだは熱を逃さないように筋肉を少し固めて守ろうとします。

  • 首〜肩周りの筋肉が無意識に緊張
  • 猫背気味になり、頭が前に出る
  • 肩甲骨の動きが悪くなり、血流も滞りやすい

その結果として、

  • 肩こり
  • 首のこわばり
  • 頭重感
  • 背中の張り

など、いわゆる**「目・肩・腰」まわりの不調**が出やすくなります。
実際の調査でも、疲れを感じる部位として「目」「肩」「腰」「首」などが多く挙げられており、局所のコリや重さが“なんとなく不調”の中心にあることが分かっています。アリナミン健康+1

「気圧のせいかな」「寒暖差疲労かも」と感じる日ほど、首・肩・背中あたりが固まっていないか、一度そっと触ってみるとヒントになります。

3-4. “感覚”としての不調:脳のとらえ方

同じ気温差・気圧変化でも、「ほとんど気にならない人」と「すごくつらく感じる人」がいます。
この違いには、脳がからだからの情報をどう“評価”しているかという「感覚」の問題も関わります。

  • からだから上がってくる情報(コリ・重さ・痛み・だるさ)
  • 過去の経験や記憶(以前つらくなった時期や状況)
  • 今のストレス状態や睡眠状態

これらを総合して、脳は「ここは危険かもしれない」「休んだほうがいい」と判断すると、だるさや眠気、やる気の出なさといった「ブレーキ信号」を強めて出します。

ある自律神経の調査では、「疲れがとれない・だるさを感じる」などの倦怠感を感じる人が全体の6割以上にのぼり、特に季節の変わり目に自律神経の乱れを感じる人が多いと報告されています。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES+1

これは、

気温差・気圧変化という“外側のゆらぎ”に対して、脳と自律神経が「防御モード」に入りやすい人が増えている

ということでもあります。


4. 日常のクセと「なんとなく不調」の関係

ここまで見てきたように、「なんとなく不調 自律神経」の背景には、

  • 気温差・気圧変化という環境のゆらぎ
  • 自律神経や耳・脳のセンサーにかかる負担
  • 首肩まわりの構造的なこわばり
  • 脳による感覚の“評価のクセ”

が重なり合っています。

ここに、日常のちょっとした習慣が足されると、不調のスイッチが入りやすくなることがあります。

4-1. 「服装・室温のギャップ」が寒暖差疲労を加速させる

  • 朝は寒いので厚着で出かける
  • 日中は暖房や電車の中で暑くて汗をかく
  • 夜はまた冷えて、手足が冷たくなる

このように、短時間のうちに何度も“暑い↔寒い”をくり返す生活は、体温調節の自律神経にとってかなりの負担です。アリナミン健康+1

さらに、

  • 厚手のコート+重いバッグ
  • マフラーやフードで首肩まわりが固定される

といった要素が、首〜肩まわりの筋肉のこわばりを強め、「肩こり+頭重感+だるさ」という組み合わせにつながりやすくなります。

4-2. 「予定パンパン」「ずっと室内」が自律神経の切り替えを邪魔する

仕事や家事・育児が立て込んでいると、どうしても

  • 休憩時間もスマホを見てしまう
  • 1日のほとんどを室内で過ごす
  • 朝から晩まで、頭の中が“タスク”でいっぱい

という状態になりがちです。
こうした生活が続くと、交感神経(活動モード)がオンになりっぱなしになり、寒暖差や気圧変化という外からの刺激に対する耐性が落ちてしまいます。

大規模な疲労調査では、疲れやすさの原因として

  • 睡眠の質の低下
  • 長時間のデスクワーク
  • ストレス負荷

などが上位に挙げられ、特に女性では「季節の変わり目」「天候不順」で疲労感が増す傾向が指摘されています。FNNプライムオンライン+1

4-3. スマホ・PC時間が「頭だけ元気、からだは固まる」状態を招く

私自身もつい、寝る前にスマホを長く見てしまうことがあります。
しかし、

  • 画面の光で脳は昼モード
  • 姿勢は変わらず同じ筋肉に負担が集中
  • 目の疲れ→首・肩こり→頭重感

という流れが起きやすくなります。

「気圧変化でだるい」と感じる日こそ、

  • いつもよりスマホ時間が長くなっていないか
  • 画面を見る姿勢が、前かがみ・うつむき姿勢になっていないか

を一度チェックしてみてください。
目の疲れや肩こりは、先ほどの「なんとなく不調」の代表的な症状でもあります。ツムラ+1

4-4. 完璧に整えなくてよい、「1〜2割の調整」で十分

ここまで読むと、「全部を改善するのは無理」と感じるかもしれません。
大切なのは、生活全体を変えることではなく、「負担が大きいところを1〜2割だけ手当てする」ことです。

たとえば、

  • 朝・夜の冷え込みが強い日は、首とお腹だけは冷やさない
  • 気圧が下がりそうな日は、予定を詰め込みすぎない
  • 寝る前30分だけは、スマホではなく湯船やストレッチの時間にする

といった小さな調整でも、自律神経への負担は少しずつ変わってきます。


Q1. 「なんとなく不調」が続くのは、どこまで様子を見ていい?

A.
「だるさ」「頭重感」「肩こり」などが中心で、

  • 高熱が出ていない
  • 息苦しさや胸の痛みがない
  • 手足のしびれ・麻痺、ろれつの回りにくさがない
  • 急激な体重減少がない

といった強い危険サインがない場合は、気温差や気圧、自律神経の影響で起きる「なんとなく不調」である可能性が高いと考えられます。

ただし、

  • 2週間以上ほぼ毎日つらい
  • 日常生活(仕事・家事・育児)に支障が出ている
  • いつもと違う種類の痛み・めまいがある

場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。
「自律神経のせいだろう」と自己判断で済ませてしまうと、大切なサインを見落とすこともあるためです。

Q2. 検査で「異常なし」と言われました。本当に自律神経だけの問題でしょうか?

A.
検査で重大な病気が見つからないというのは、ひとつ安心材料です。
ただ、「異常なし=何も問題がない」ではなく、

今の検査では、命に関わるような大きな異常は見つからなかった

という意味であることが多いです。

実際には、

  • 首・肩・背中の筋肉のこわばり
  • 姿勢のクセによる血流の滞り
  • 睡眠の質低下
  • ストレスや不安

など、検査では数値化されにくい要素が、「なんとなく不調」をつくっていることも多くあります。

ですので、

  • まずは重大な病気が隠れていないかを医療機関でチェック
  • そのうえで、生活習慣・姿勢・休息のとり方を少しずつ見直す

という二段構えで考えてみると安心です。

Q3. 気候の変化に弱い体質は、一生変わらないのでしょうか?

A.
「天気が崩れると調子が落ちる」という傾向は、たしかに完全にゼロにはならないかもしれません。
ただ、ゆらぎに対する“クッション”を厚くしていくことで、

  • 症状の強さを弱くする
  • 回復までの時間を短くする

ことは十分に目指せます。

ポイントは、

  • 首・肩まわりのこわばりをためこまない
  • 睡眠と休息の質を少しずつ整える
  • 「今日は気圧が下がりそうだから、あえて予定を軽めにする」といった**“先手の一手”**を打つ

といった、日々の小さな選択です。
体質そのものを変えるというより、からだと環境とのつき合い方を更新していくイメージに近いかもしれません。


5. おわりに 〜今日からできる小さな一歩

最後に、「なんとなく不調」とうまくつき合うための具体的な一歩を、整理しておきます。
全部をいきなりやる必要はありません。この中から1つだけ選ぶくらいの気持ちで大丈夫です。

行動のヒントイメージ・ポイント
朝晩の“温度差ケア”を決めておく首・お腹・足首だけは冷やさないルールを作る
天気が崩れそうな日は予定を1つ減らす「気圧の低い日は、頑張りすぎない日」と事前に決める
寝る前30分の“スマホお休みタイム”画面の代わりに、湯船・ストレッチ・深呼吸にあててみる
1時間に一度だけ「肩・首を回す」デスクワークの日ほど、アラームを使って軽く動かす

今日からできることの例

  • 朝起きたらカーテンを開けて、1分だけ外の光を浴びる
    → 体内時計が整い、自律神経のリズムが安定しやすくなります。
  • 雨の日や低気圧の日は、「いつもより1つ予定を減らす」ことを自分に許可する
    → がんばりすぎを防ぐことで、だるさが長引きにくくなります。
  • なんとなく不調な日は、「今日はちょっと天気のせいもある」とラベリングしてみる
    → 単なる根性不足ではなく、環境要因もあると認めるだけで、気持ちが少しラクになります。

「なんとなく不調」は、サボりでも弱さでもなく、
**“今のからだと環境のバランスが少し崩れているサイン”**です。

気温差や気圧をゼロにすることはできませんが、

  • 服装や室温の工夫
  • 予定の詰め込み方
  • スマホやPCとの距離感
  • 首・肩まわりのこわばりのケア

といった日々の小さな選択で、自律神経ががんばりすぎない余白をつくることはできます。

「なんとなくだるい日」が続いているときほど、
すべてを一気に変えようとせず、できそうな一つだけを選んで、そっと試してみてください。
その小さな一歩が、からだにとっては思った以上に大きな“安心材料”になることも多いです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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