1. はじめに
忙しい日の夕方、ふとコンビニで手が伸びるエナジードリンク。
「今日だけは頼らせて…」と思いながら、気づけばそれが「ほぼ毎日の習慣」になっている、という相談をよく受けます。
40代に入る頃から
- 朝起きてもスッキリしない
- 昼食後は強烈な眠気
- 夜はスマホを見ながらエナジードリンクや栄養ドリンクで踏ん張る
こんなサイクルにハマってしまう方は少なくありません。
私自身も、若い頃は夜の仕事の前にエナジードリンクをぐいっと飲んで乗り切る、ということを何度もしてきました。
一時的にはたしかに「シャキッ」とするのですが、そのあとドッと疲れが来たり、夜になっても交感神経が落ち着かず、眠りが浅くなる感覚が残りました。
この記事では、
- エナジードリンクや栄養ドリンクの中身が、からだの中でどう働くのか
- 自律神経や睡眠にどんな影響を与えやすいのか
- 完全にやめるのではなく、「上手に距離をとる」ための現実的な工夫
を、一緒に整理していきます。
「怖いから全部やめましょう」という話ではなく、
「元気の『前借り』を、なるべく少なくしていくには?」という視点で読んでもらえたらうれしいです。


2. いま話題のエナジードリンクと自律神経って、結局なんなのか?
まずは、そもそもエナジードリンクや栄養ドリンクとは何者か、ざっくり整理しておきます。
エナジードリンクと栄養ドリンクのざっくり整理
日本でよく飲まれているものを、大きく二つに分けて考えるとイメージしやすいです。
| 種類 | イメージ | 主な成分 | カフェイン・糖の目安 |
|---|---|---|---|
| エナジードリンク | 炭酸入り、カラフルな缶・ペットボトル | カフェイン、糖類(砂糖・果糖ブドウ糖液糖など)、タウリン、ビタミンB群など | 一般的に250mlあたりカフェイン約80mg前後、砂糖20〜30g程度の商品が多いとされる ユーリック+1 |
| 栄養ドリンク | 小さな瓶入り(100ml前後)、いわゆる「ドリンク剤」 | タウリン、ビタミン、アミノ酸、カフェインなど(医薬部外品のものも多い) | 商品により差が大きいが、1本あたりカフェイン50〜100mg前後のものもあるとされる PMC |
実際の量は商品ごとにかなり違うので、ラベルを確認するのが一番確実です。
ただ、多くのエナジードリンクは「コーヒー1杯分前後のカフェイン+そこそこ多めの砂糖」が入っている、というイメージを持っておくとよいと思います。ユーリック+1
「エナジードリンク=悪者」ではないが…
エナジードリンクは、
- 一時的に集中したい
- 運転や仕事で眠気を飛ばしたい
- 勉強前に気合を入れたい
ときには、たしかに役に立ちます。
問題は、
- 量(1日のトータルのカフェイン・糖の量)
- タイミング(特に「夕方〜夜」に偏っていないか)
- 頻度(「たまに」ではなく「ほぼ毎日」になっていないか)
です。
「エナジードリンク 自律神経」と検索すると、こわい情報もたくさん出てきますが、
大事なのは「ゼロか100か」ではなく、「からだが耐えられる範囲に収める」「睡眠を壊しすぎない」ラインを知ることです。
3. からだの中で起きていること
ここからは、からだの内側で何が起きているかを
- カフェイン
- 糖(砂糖)
- タウリンなどの“おまけ成分”
- 自律神経・睡眠・不安感へのつながり
という流れで見ていきます。
3-1. カフェインと自律神経:アクセル側に偏らせる
カフェインは、脳の中で「アデノシン」という“眠気を感じさせる物質”が働くのを邪魔することで、眠気を感じにくくします。Sleep Foundation
このとき、からだの中では
- 交感神経(アクセル)が優位になり
- 心拍数や血圧が少し上がり
- 集中力や注意力が高まりやすくなる
といった変化が起きます。エナジードリンクを飲んだ直後に「シャキッ」とするのは、このためです。
多くの公的機関や専門家は、健康な成人では1日あたりカフェイン400mgまでなら、一般的に大きな問題は出にくいとしています。U.S. Food and Drug Administration+2Mayo Clinic+2
ただしこれはあくまで「上限の目安」であって、
- 不安感が強い人
- 高血圧や心疾患のある人
- 妊娠中の人
などでは、もっと少ない量でも動悸や不眠が出やすいことが知られています。PMC+1
3-2. 睡眠への影響:「夜まで残るブレーキ外し」
カフェインの作用時間は人によって差がありますが、
血中から半分くらいに減るまでに3〜7時間ほどかかるとされています。
そのため、夕方〜夜に飲んだカフェインは、夜の睡眠時間帯まで残りやすくなります。
研究では、
- 就寝の6時間前にカフェインを飲んだだけでも、睡眠時間や深さが有意に低下した
- カフェイン摂取により、合計睡眠時間が平均45分程度短くなり、深い睡眠の割合が減る
といった報告があります。PMC+1
つまり、
「寝る3〜4時間前だけ気をつければいい」
というより、
「日中にとったカフェインも、その日の夜の睡眠に影響しうる」
と考えておいた方が安全です。
エナジードリンクに限らず、コーヒーやお茶も含めたトータルのカフェイン量と“時間帯”が、睡眠の質を左右します。
3-3. 糖(砂糖)と血糖値スパイク:“元気の前借り”の正体
エナジードリンクのおいしさを支えているのが、たっぷり入った砂糖です。
商品によりますが、1本で20〜30g以上の砂糖が入っているものも珍しくありません。nhs.uk+1
世界保健機関(WHO)は、
- 「自由糖」(いわゆる“添加された砂糖”)を1日の総エネルギーの10%未満
- できれば5%未満(約25g程度)
に抑えることを推奨しています。世界保健機関+1
エナジードリンク1本で、その推奨量の多くを使い切ってしまう計算になることもあります。
砂糖を一気にとると、
- 血糖値が急上昇 → 一時的に「元気になった気がする」
- その後、インスリンが多く分泌され、血糖値が急降下 → 強い眠気やだるさ、イライラ
というジェットコースターのような変化が起きやすくなります。
これが、「飲んだ直後は元気なのに、しばらくすると逆にどっと疲れる」感覚の正体のひとつです。

3-4. タウリンなど“おまけ成分”はどうか
多くのエナジードリンクや栄養ドリンクには、
- タウリン
- ビタミンB群
- アルギニンなどのアミノ酸
が含まれています。
タウリン自体は、心臓や神経の働きをサポートする可能性があるという報告もありますが、エナジードリンクのように高濃度のカフェインと一緒にとった場合、血圧や心拍数の上昇、心電図の変化が強まる可能性があるという指摘もあります。PMC+2MDPI+2
また、エナジードリンクの過剰摂取が心血管系トラブルや不整脈と関連したケース報告・レビューも増えてきています。PMC+1
ここで大事なのは、
「タウリンは悪い成分だ」ということではなく、
“カフェイン+糖+その他の刺激成分”という組み合わせが、自律神経と心血管系に強めの負荷になる場合がある
という点です。
3-5. エナジードリンクとメンタル・睡眠の研究から見えること
エナジードリンクの摂取頻度が多い人ほど、
- 睡眠時間が短い
- 入眠に時間がかかる
- 夜間の中途覚醒が増える
といった「睡眠の質の低下」が見られた、という大規模な調査があります。bmjgroup.com+1
また、
- 不安感の増加
- 気分の落ち込み
- カフェイン依存・離脱(飲まないと頭痛やだるさ)
など、メンタル面への影響を指摘するレビューも増えてきました。PMC
エナジードリンクをたまに飲む程度であれば問題は少ないかもしれませんが、
「眠いときはとりあえず1本」「イライラするときも飲んでしまう」という使い方が続くと、
- 交感神経が過剰に優位な状態が続く
- 副交感神経(リラックス側)が入りにくくなる
- 睡眠の質が落ちて、さらに翌日も疲れる
という“負のループ”に入りやすくなります。
4. 日常のクセとエナジードリンク自律神経の関係
ここからは、日常のよくあるパターンと、自律神経・睡眠とのつながりを見ていきます。
4-1. 「夕方〜夜の1本」が、翌日の自分を削っている
仕事や家事が一段落する18〜20時頃、
「ここからもうひと踏ん張り」というタイミングでエナジードリンクを飲む、という方は多いです。
しかし、先ほど触れたように、カフェインの作用は数時間〜十数時間続きます。PMC+1
たとえば
- 19時にエナジードリンク(カフェイン80mg)を飲む
- 23時に寝ようとしても、交感神経がまだ高ぶったまま
- 寝つきが悪くなり、浅い睡眠が増える
- 翌朝スッキリせず、「またカフェインで誤魔化す」
という形で、**少しずつ睡眠負債が積み重なっていきます。

4-2. 「朝から何本も」は、交感神経の“踏みっぱなし”
中には、
- 朝の通勤前に1本
- 昼食後の眠気覚ましに1本
- 残業前にもう1本
という形で、1日に2〜3本のエナジードリンクを飲んでいる方もいます。
カフェイン400mg/日という上限は、「コーヒーやお茶を含めたトータル」で考えるべき目安です。U.S. Food and Drug Administration+2Mayo Clinic+2
エナジードリンク2本(160mg)+コーヒー2〜3杯で、簡単にこの数字に近づいてしまうケースもあります。
交感神経のアクセルを踏みっぱなしにしていると、
- ふだんの心拍数や血圧がやや高めで安定してしまう
- 「休もう」としてもリラックスモードに入りづらい
- 休日もなんとなく落ち着かない
といった状態が当たり前になりやすく、結果として「疲れているのに眠れない」という相談につながっていきます。
4-3. 「栄養ドリンクなら、むしろ身体に良さそう」という誤解
小さな瓶の栄養ドリンクは、
- 医薬部外品として販売されているものも多く
- テレビCMやドラマのイメージもあって
「身体に良さそう」「サプリメントに近い感覚」というイメージを持たれがちです。
しかし中身を見ると、
- タウリンやビタミンと一緒に
- カフェインがしっかり入っている商品も多く
- 糖分もそれなりに含まれている
ものが少なくありません。PMC
つまり、「エナジードリンクとは違うから安心」とは言い切れず、
睡眠前に飲むとふつうに寝つきを悪くする可能性がある、ということです。
Q&Aコーナー:よくある疑問に答えます
### Q1. エナジードリンク1本くらいなら、毎日飲んでも大丈夫?
「1本なら絶対安全」「毎日は絶対ダメ」と、白黒つけるのは難しいところです。
目安としては、
- 健康な成人で、1日のカフェイン合計が400mg以内
- できれば夕方〜夜(目安として15〜16時以降)にはカフェイン飲料を控える
この2つを守れていて、
- 動悸や不安感が出ていない
- 睡眠の質(寝つき・途中で起きない・朝のスッキリ感)が大きく乱れていない
のであれば、「毎日1本」がすぐに大きな健康被害につながるとは限りません。U.S. Food and Drug Administration+2Mayo Clinic+2
ただ、
- 血圧が高めの方
- 心疾患リスクがある方
- 不安障害やパニック傾向がある方
では、より少ない量でも心血管や自律神経への負担が出やすいとされていますので、主治医と相談しつつ、頻度を減らす方向をおすすめします。PMC+1
### Q2. 栄養ドリンクなら、寝る前に飲んでも平気ですか?
栄養ドリンクにも、カフェイン入りのものが多くあります。PMC
研究では、
- 就寝の6時間前のカフェイン摂取でも睡眠が乱れる
- 高用量(400mg)のカフェインは、摂取から12時間後の睡眠まで影響しうる
というデータがあります。PMC+2OUP Academic+2
そのため、
- 「眠る前に元気を出したいから栄養ドリンク」という選択は、睡眠の質をかなり削ってしまう可能性が高いです。
- 寝る前にどうしても何か取りたい場合は、ノンカフェインの温かい飲み物(白湯やカフェインレスのお茶など)に切り替えた方が、結果的に“翌日の元気”にはプラスになりやすいです。
### Q3. 私はカフェインに強い体質だから、自律神経への影響はあまり気にしなくていい?
「夜にコーヒーを飲んでも平気で眠れる」「エナジードリンクを飲んでも動悸がしない」という方も、たしかにいます。
ただ、
- 自覚症状として「平気」に感じていても、
- 心拍数や血圧、睡眠の深さは客観的には変化している
という報告もあります。サイエンスダイレクト+1
また、「強い」のではなく、
- 交感神経優位の状態が“当たり前化”してしまい、
- それを「普通」と感じているだけ
という可能性もあります。
週に1〜2日は「ノンカフェインDAY」を作ってみると、
- かえってよく眠れる
- 朝のだるさが少し軽くなる
と気づく方も多いので、「自分のからだの本当の声」を確かめる意味でも、一度試してみる価値はあります。
5. おわりに 〜“元気の前借り”を少し減らすためにできること
最後に、「全部やめる」のではなく、現実的に取り組みやすい小さな一歩を整理してみます。
| 小さな一歩 | イメージ |
|---|---|
| ① 16時以降は、エナジードリンクとコーヒーを控えてみる | 「夜の自分のために、夕方以降はブレーキ側(副交感神経)にバトンを渡す」イメージ |
| ② 週に2日は“ノー・エナジーデー”を作る | 「ここぞという日だけ、エナジードリンクの効果がちゃんと効くようにする」感覚 |
| ③ 甘い炭酸系エナジードリンクを“1サイズ小さい缶”に変える | 砂糖の量を半分近く減らしつつ、「飲む楽しみ」は残す作戦 |
| ④ 本当に眠い時は、まず10〜15分の昼寝と軽いストレッチを優先する | カフェインに頼る前に、“からだ本来の回復機能”を一度使ってみる |
全部を一気にやる必要はありません。
まずは**「①か③のどちらか1つだけ」**でも十分です。
エナジードリンクや栄養ドリンクは、
- うまく使えば「ここぞ」というときの助っ人
- 使い方を誤ると「元気の前借り」を繰り返してしまう存在
でもあります。
最後にポイントを三つだけ挙げると、
- カフェインは1日400mg以内を目安にしつつ、できるだけ午後早めまでに。 U.S. Food and Drug Administration+2Mayo Clinic+2
- 砂糖たっぷりのエナジードリンクは、「疲れたときのご褒美」から「毎日の燃料」にならないように。 世界保健機関+1
- 「エナジードリンク 自律神経」で不安になる前に、自分の睡眠と心の調子をモニターして、“飲み方”を少しずつ調整していく。
自律神経は、とても繊細ですが、とても賢いシステムです。
少しだけアクセルを緩めてあげると、「あ、休んでいいんだな」とちゃんと応えてくれます。
エナジードリンクとの付き合い方を見直すことは、
「眠れない自分を責める」のではなく、
「からだのリズムに、もう一度優しく合わせていく」きっかけにもなります。
今日この記事を読み終えたら、
まずは次のエナジードリンクを飲む“時間帯”だけ、ちょっと意識してみてください。
それだけでも、自律神経と睡眠には、じわっと良い変化が出てきます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
