風邪やインフルのとき何を食べる?何を飲む?~風邪のときの食べ物・飲み物と免疫・自律神経の話~

風邪のときに選びたい食べ物・飲み物のイメージイラスト。おかゆやスープ、スポーツドリンク、経口補水液が並び、免疫と自律神経をいたわる食事をイメージできる構図。
目次

1. はじめに

「熱が出てきたからポカリをがぶ飲みしてます」「インフルエンザで寝込んでいて、何を食べたらいいか分からない」「胃腸炎でトイレとベッドの往復…水分さえ怖い」。
そんな相談を、日々たくさん聞きます。

SNSを開くと、「風邪にはこの食材!」「インフルエンザにはこのドリンク!」と、いろいろな情報が流れてきますよね。
便利な一方で、

  • 結局、風邪のときの食べ物・飲み物は何が正解なのか
  • 経口補水液とスポーツドリンク(ポカリなど)、どっちを選べばいいのか
  • 胃腸炎のときに「食べない方がいい」のか、「少しでも食べた方がいい」のか

ここがモヤッとしている方がとても多い印象です。

この記事では、医学的なエビデンスをベースにしつつ、免疫と自律神経を守るという視点から、「風邪・インフル・胃腸炎」のときの食べ物・飲み物の考え方を整理します。

難しい理論を覚える必要はありません。
「具合が悪いとき、これだけ覚えておけば大きく外さない」という“目印”を持っておくイメージです。

2. いま話題の「風邪のときの食べ物・飲み物」って、結局どう考えればいい?

最近は、コンビニに行くだけでも「風邪に良さそうなもの」がたくさん並んでいます。

  • 経口補水液(OS-1など)
  • スポーツドリンク(ポカリスエット等)
  • ビタミンドリンク
  • ゼリー飲料
  • おかゆ・うどん・スープ系のレトルト …など

一見どれも良さそうですが、目的がそれぞれ違うのがややこしいところです。

代表的な飲み物を、ざっくり整理するとこんなイメージになります。

種類目的のイメージナトリウム・糖分の特徴向いている場面
水・麦茶・白湯基本の水分補給電解質は少なめ軽い風邪・普段の水分
スポーツドリンク運動時の水分+エネルギー糖分やや多め、ナトリウムはやや少なめ軽い発熱で少し食べられるとき
経口補水液(ORS)脱水の治療用ナトリウム多め・糖分控えめで吸収効率重視高熱・下痢・嘔吐で食事がとれないとき

経口補水液は、WHOが定めた組成をベースに、**水分と電解質を効率よく吸収させるための“医療寄りの飲み物”**です。スポーツドリンクに比べてナトリウムが多く、糖分は少なめに設計されています。os-1.jp+1

一方で、経口補水液は「脱水症の治療に用いる病者用飲料」であり、日常的にゴクゴク飲むものではないと国の広報でも強調されています。政府オンライン

つまり、

  • 軽い風邪で、多少は食事も摂れている → 水・お茶・スープ・スポーツドリンクで十分
  • 高熱や下痢・嘔吐で、明らかに脱水ぎみ&食事がほとんど入らない → 経口補水液の出番

と考えると整理しやすくなります。

食べ物についても、**「免疫力が上がるスーパーフード」**を探すより、

  1. 消化にやさしく
  2. ちょっとしたエネルギーとタンパク質が入っていて
  3. のどや胃腸を刺激しすぎない

この3つを満たすものを選ぶ方が、現実的で身体にやさしい選択です。たとえば、やわらかいおかゆ、具を少なめにした煮込みうどん、卵とじスープ、ポタージュ、ゼリー、茶碗蒸しなどが典型的な例です。shmc.jp

3. からだの中で起きていること

風邪やインフルエンザ、胃腸炎のとき、からだの中では何が起きているのでしょうか。
食べ物・飲み物の選び方は、この「中の状態」をイメージできるほど納得しやすくなります。

発熱と免疫、そして自律神経

ウイルスや細菌と戦うとき、からだは「少し体温を上げる」という戦略を使います。
熱が出ると、免疫細胞の働きが高まり、侵入者を処理しやすくなると考えられています。

このとき働き続けているのが自律神経です。

  • 体温を上げるために血管を収縮させたり
  • 心拍数を上げて血液をぐるぐる回したり
  • 汗をかいて熱を逃がそうとしたり

交感神経が頑張りっぱなしになるので、それだけでかなりのエネルギー消費になります。

厚生労働省のインフルエンザの資料でも、
「安静にして十分な休養と睡眠をとること」「水分を十分に補給すること」が基本として繰り返し書かれています。厚生労働省

つまり、熱が出ているときは

  • 無理に動き回らない
  • 水分をこまめに補給する

この2つが、免疫と自律神経を支える一番の“土台づくり”になります。

胃腸が「お休みモード」になっている

もうひとつ大事なのが、「食欲が落ちる理由」です。
多くの方が「食べないと体力が落ちる」と不安になりますが、からだ側のロジックで見ると、実はとても合理的です。

  • 発熱中 → 免疫にエネルギーを優先したい
  • そのために、消化に使うエネルギーを一時的に節約したい
  • 結果として、胃腸の動きが落ち、食欲も落ちる

こんな順番で、からだは“防御モード”に切り替わります。

特に、嘔吐や下痢を伴う胃腸炎では、消化管そのものが炎症を起こしている状態です。
日本の消化器専門医の解説でも、「下痢の時は脂肪分の多い食品や刺激の強いものは避け、消化にやさしい食事を選ぶ」ことが推奨されています。タエウス

なので、

  • 量は少なくてよいので、負担にならないものをちょこちょこ
  • 元気になってから、しっかりした食事に戻していく

という流れの方が、結果的に回復がスムーズなことが多いです。

水分と電解質のバランス

インフルエンザなどで高熱が続くと、汗や呼吸からかなりの水分が失われます。
ある解説では、健康な成人で1日あたり約2.5リットルの水分が必要で、そのうち1.2リットル程度を飲み物から摂るのが目安とされています。アイン薬局 お客さまサイト

発熱・下痢・嘔吐が重なると、このバランスが一気に崩れ、脱水になりやすくなります。

  • 軽症 → 水・麦茶・白湯・スープを少量ずつ、こまめに
  • 食欲も水分も落ちてきた → スポーツドリンクやゼリー飲料など「少し糖分のある飲み物」も選択肢
  • 高熱+下痢・嘔吐でほとんど飲めない → 経口補水液を少量ずつ、無理なら医療機関へ

経口補水液は、ナトリウムやカリウムなどの電解質を多く含み、糖分は抑えめ。水分と電解質を一緒に素早く吸収させるための配合になっています。ひろつ内科クリニック+1

ただし、塩分が多いので、高血圧や腎臓病などで塩分制限を受けている方が自己判断で多量に飲むのは避けるべき、と注意喚起もされています。戸頃循環器内科クリニック+1

のど・鼻・胃腸にやさしい食べ物とは

具体的なイメージをもう少し。

管理栄養士の解説などでは、風邪のときの食事として、以下のようなものがよく紹介されています。shmc.jp+1

  • のどが痛い:ゼリー、ポタージュスープ、茶碗蒸し、やわらかく煮たうどん
  • 鼻づまり:温かい汁物(具だくさんの煮込みうどん、雑炊など)
  • 胃腸が弱っている:脂肪を控えたおかゆ、よく煮た野菜スープ、バナナ、ヨーグルト少量

反対に、避けたいものは、

  • 脂っこい揚げ物
  • 唐辛子など刺激の強い料理
  • アルコール
  • 熱すぎる・冷たすぎる飲み物

などです。のどや胃腸の粘膜を刺激し、炎症や痛みを強める方向に働きやすくなります。shmc.jp+1

4. 日常のクセと「風邪のときの食べ物・飲み物」の関係

ここからは、よくある“クセ”とのつながりを見てみます。

パターン1:「具合が悪いときほど何も飲まない」

熱が出ると、動くのもつらくて、枕元のペットボトルに手を伸ばすのもおっくうになります。
その結果、**脱水が進んで頭痛やだるさがさらに強くなる…**というループに入りがちです。

自律神経の視点でいうと、水分不足は血液量の低下につながり、からだは血圧を保つために交感神経をさらに働かせます。
そうすると、心拍数が上がり、ドキドキ感や息苦しさ、不安感が出やすくなることもあります。

「コップ1杯を一気飲み」ではなく、一口ずつでいいので、短い間隔で口を潤すようなイメージを持つと、自律神経の負担も少なくなります。

パターン2:甘い飲み物ばかりに頼る

ゼリー飲料やスポーツドリンク、ジュースは、飲みやすくてエネルギーもとれるので、体調不良のときには頼もしい存在です。
一方で、「のどが渇くたびに甘い飲み物だけ」を続けると、

  • 血糖値の乱高下で、だるさや眠気が強くなる
  • 虫歯リスクや、長引く体重増加につながる

といった面もあります。

基本は水・お茶・スープをベースにして、甘い飲み物は「エネルギーを補う目的で、量と回数を意識して使う」くらいがちょうど良いバランスです。

パターン3:「治したい一心で、いつも通りの食事を無理して食べる」

「しっかり食べないと治らない」と考えて、揚げ物や焼肉など“通常モードの食事”を頑張って詰め込む方もいます。
ですが、胃腸が炎症で弱っているときに無理をすると、

  • 胃痛や吐き気が強まる
  • 下痢が悪化する
  • 眠りが浅くなり、自律神経の休息タイムが削られる

といったことが起きやすくなります。

一時的に量を減らしてでも、消化にやさしい食事に切り替えることで、結果的に免疫と自律神経が回復しやすくなり、トータルの治りは早くなることが多いです。

パターン4:アルコールや刺激物で「汗をかいて治そうとする」

昔ながらの発想で、「熱が出たときはお酒を飲んで布団をかぶって汗をかく」という方法を聞くことがありますが、現在の医学的な観点ではおすすめできません。

アルコールは、

  • 免疫細胞の働きを鈍らせる
  • 脱水を悪化させる
  • 睡眠の質を下げ、自律神経の回復を妨げる

など、マイナスの要素が多いからです。
辛いものを食べて汗をかく方法も、のどや胃腸への刺激が強く、むしろ症状を長引かせる可能性があります。

Q&A|よくある疑問にまとめて答えます

Q1. 経口補水液とポカリ、風邪のときはどっちがいいですか?

A. 「どれくらい脱水しているか」で選ぶのがポイントです。

  • 軽い風邪で、食事もそこそこ摂れている
     → 水・お茶・スープ+必要に応じてスポーツドリンクで十分
  • 高熱が続き、下痢や嘔吐もあり、ほとんど食べられない
     → 経口補水液(ORS)を少量ずつ

経口補水液は、スポーツドリンクよりナトリウムが多く、糖分が少ない「脱水治療用の飲み物」で、国の広報でも「病者用」と説明されています。os-1.jp+2政府オンライン+2

普段からこまめに飲むのではなく、「脱水が心配なときに短期間使う」と覚えておくと安心です。持病がある方は、主治医や薬剤師に相談したうえで使用してください。戸頃循環器内科クリニック+1

Q2. 胃腸炎のとき、食事はいつから再開していいですか?

A. 嘔吐がおさまり、水分が少しずつ飲めるようになったら、消化にやさしいものから少量試してみましょう。

具体的には、

  • 白がゆや柔らかく煮たうどん
  • よく煮込んだ野菜スープ
  • バナナ、すりおろしリンゴ
  • 脂肪少なめのヨーグルト少量

などがよく挙げられます。消化器専門医の解説では、下痢の時は「脂肪分の多い食品や刺激の強いものは避ける」ことが推奨されています。タエウス

水分も食事もほとんど受け付けない、血が混じる下痢が続く、意識がもうろうとするなどの場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。

Q3. 食欲がないとき、本当に何も食べなくても大丈夫?

A. 健康な大人であれば、1〜2日程度「ほとんど食べられない」状態でも、水分と少量のエネルギーが入っていれば大きな問題にならないことが多いです。

ただし、

  • 高齢の方
  • 持病がある方(糖尿病・心臓病・腎臓病など)
  • 妊娠中、授乳中

では、脱水や低栄養に陥りやすいため、早めに医療機関で相談してほしいケースが増えます。

「無理に三食きっちり食べる」よりも、水分+少量の糖分(ゼリー飲料・スポーツドリンクなど)でつなぎながら、食べられそうになったらやさしい食事から再開する
このくらいのスタンスで考えると、自律神経への負担も減り、からだの“戻る力”が働きやすくなります。

私自身も風邪をひいたとき、「食べなきゃ」と焦るより、「今日はゼリーとスープでしのいで、明日元気が出たらおかゆにしよう」と決めた方が、気持ちがラクになることが多いです。

5. おわりに

体調を崩しているときの食べ物・飲み物は、「これさえ飲めば治る」という魔法の一品を探すより、**からだの状態に合わせて選ぶ“組み合わせ”**が大事になります。

最後に、今日からできそうな一歩を、そっと整理しておきます。

行動のヒントイメージ
水分を「一気飲み」ではなく「一口ずつこまめ」に自律神経の負担を減らしながら、脱水を防ぐ
食べ物は“量よりやさしさ”で選ぶおかゆ・うどん・スープ・ゼリーなど、胃腸にやさしいものから
経口補水液は「脱水の非常用」として常備高熱や下痢・嘔吐でつらいときに短期間使うイメージ

全部を完璧にやる必要はありません。
この中から「これならできそう」というものを一つだけ選ぶだけでも、からだの負担は確実に変わります。

風邪やインフルエンザ、胃腸炎は、どうしてもつらい時間が続きます。
その中で、「食べ物・飲み物の選び方」という小さな工夫が、自律神経と免疫の味方になってくれます。

しんどいときこそ、自分に少しやさしい選択を。
それが、回復へのいちばん静かな近道だと私は思っています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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