インフルエンザと風邪の違いと、「いつ病院に行くか」の考え方

インフルエンザと風邪の違いと受診の目安を説明する親子のイメージイラスト(高熱・子どもの発熱・病院受診のタイミング)
目次

はじめに

今シーズンは、ニュースでも「インフルエンザの流行入りが例年より1か月以上早い」といった話題が出ています。実際に、10月の時点で全国的な流行入りが発表され、学級閉鎖のニュースもポツポツ見かける状況です。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES+2ウェザーニュース+2

そんな中で、よく聞く声はこんなものです。

「これはただの風邪なのか、インフルエンザなのか分からない」
「高熱が出たけど、救急に行くべきか、朝まで様子を見るべきか迷う」
「解熱剤を飲んでいいタイミングがよく分からない」

私自身、臨床の現場で冬になると毎年のように同じ相談を受けますし、正直なところ、自分の家族のことになると少し不安になることもあります。数字だけを見て「○度だから大丈夫/危険」と決められるほど、からだは単純ではありません。

この記事では、「インフルエンザと風邪の違い」を整理しながら、

  • どんな症状のときにインフルエンザを疑いやすいか
  • 高熱が続くときの受診の目安
  • 子どもの発熱で「何度で病院?」をどう考えるか
  • 解熱剤を飲んでいいタイミング

といった「日常で迷いやすいポイント」を、怖がらせすぎずに整えていきます。

読み終わるころには、「全部完璧に分からなくても、ひとまずここまでは決めておこう」という自分なりの基準が少し見えてくるはずです。


2. いま話題の「インフルエンザ 風邪 違い」って、結局なんなのか?

まずは、いちばんよくある疑問から。

「インフルエンザも風邪の一種なんですよね?」

医学的にいうと、「かぜ症候群」という大きなグループの中に、インフルエンザも含まれます。ただ、一般的には、

  • インフルエンザ:インフルエンザウイルスによる感染症
  • いわゆる風邪:ライノウイルス、コロナウイルスなど、他のウイルスによる上気道感染

という区別で使われることが多いです。H・CRISIS+1

インフルエンザと風邪のざっくり比較

文章だけだとイメージしづらいので、よく相談されるポイントを表にまとめてみます。

項目インフルエンザいわゆる風邪
主な原因ウイルスインフルエンザウイルス(A型・B型など)ライノウイルス、季節性コロナウイルスなど
症状の出方急にガツンと発症することが多いのどの痛みや鼻水からじわじわ始まることが多い
発熱38℃以上の高熱になりやすい37〜38℃台の微熱〜中等度の熱が多い
全身症状(筋肉痛・関節痛、強いだるさ)強く出やすい軽いことが多い
主な症状の期間高熱は3〜5日ほど、咳やだるさは1週間前後と言われることが多い数日〜1週間程度
合併症肺炎、脳症など重い合併症のリスク(特にハイリスク群)世界保健機関+1合併症は比較的少なめだが、ゼロではない

もちろん現実には、「思ったより軽いインフルエンザ」や「かなりしんどい風邪」もあります。表はあくまで「典型的なイメージ」として捉えてください。

症状のキーワードで見る「インフルエンザらしさ」

公的機関や専門家の解説を総合すると、インフルエンザでは次のような特徴がよく挙げられます。厚生労働省+3厚生労働省+3世界保健機関+3

  • 1〜3日ほどの潜伏期間のあと
  • 38〜40℃の高熱が突然出る
  • 強い頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感
  • そのうえで、咳・のどの痛み・鼻水などの「風邪っぽい症状」も重なってくる

一方で、風邪の場合は、

  • 「のどがイガイガする」「鼻が出る」からスタート
  • 熱は出ても37〜38℃台くらい
  • からだの節々の痛みはそれほど強くない

というパターンが多いとされています。

ただし、最近は「軽めのインフルエンザ」や「解熱剤で熱だけ一時的に下がっている状態」もあり、「高熱=インフル」「微熱=風邪」と単純には言い切れません。

大事なのは、「いつから」「どんなふうに」症状が出てきたかをセットで見ることです。


3. からだの中で起きていること

ここからは、少しだけからだの中の話をします。「構造」「神経」「感覚」の3つのレイヤーを、言葉に出しすぎない範囲で扱っていきます。

3-1. インフルエンザウイルスが体内に入るとき

インフルエンザウイルスは、主に鼻やのど、気管支などの粘膜から入り込み、そこで増えていきます。上気道だけでなく、気管支や肺のほうにまで広がることがある点が、いわゆる風邪との違いのひとつです。世界保健機関+1

粘膜の細胞の中でウイルスが増えると、

  • 細胞が壊れる
  • それを片付けようとして免疫細胞が集まる
  • 免疫細胞が「サイトカイン」と呼ばれる物質をたくさん出す

この「サイトカイン」が、全身のだるさや悪寒、高熱のもとになります。

からだとしては「ウイルスをやっつけるために、体温を上げて戦闘モードに入っている」状態です。

3-2. 自律神経がフル稼働する

高熱が出ているとき、心拍数が速くなる、汗をかく、寒気がしたかと思えば急に暑くなる…。

これらはすべて、自律神経が体温を調整しようとしている反応です。

  • 熱を上げたいとき:血管をぎゅっとしぼって、震えを起こして熱を作る
  • 熱を下げたいとき:血管を広げて、汗をかいて熱を発散させる

インフルエンザでは炎症反応が強いため、自律神経もフル稼働し、脈が速くなったり、寝ても寝ても疲れが取れないように感じたりします。

いわゆる風邪でも同じ仕組みは働きますが、ウイルスによるダメージの範囲が比較的小さいことが多く、自律神経の負担もやや軽いイメージです。

3-3. 「症状はいつまで続く?」という視点

「インフルエンザの症状はいつまで続くのか」は、受診のタイミングを考えるうえで大事なポイントです。

WHOや各国のガイドライン、また小児科クリニックの解説を総合すると、インフルエンザでは多くの場合、発熱は3〜5日ほどで落ち着き、咳やだるさは1週間前後で軽くなってくるとされています。世界保健機関+1

一方で、

  • 38℃以上の高熱が5日以上続く
  • いったん解熱したのに、また高熱がぶり返す
  • 息苦しさや胸の痛みが強くなっていく

といった場合は、肺炎などの合併症を疑って、早めの受診が勧められます。世界保健機関+1

「インフルエンザ 症状 いつまで」というキーワードで検索したくなる気持ち、とてもよく分かりますが、数字だけでなく経過の変化に目を向けることが重要です。

3-4. 重症化リスクが高い人たち

インフルエンザは、多くの人にとっては1週間前後で回復する病気ですが、一部の人にとっては命に関わることがあります。

WHOやCDCなどの公的機関は、次のような人を「インフルエンザの合併症リスクが高い」としています。世界保健機関+2CDC+2

  • 65歳以上の高齢者
  • 5歳未満、とくに2歳未満の子ども
  • 妊娠中・産後まもない人
  • 心臓・肺の慢性疾患(心不全、COPDなど)がある人
  • 糖尿病など代謝性疾患、腎臓病、免疫不全のある人

こうした方々は、「高熱が出てから何日様子を見るか」というより、症状が出たら早めに医師へ相談することが強く勧められています。


4. 日常の迷いと「いつ病院に行くか」の関係

ここからが、多くの人がいちばん困るところです。

  • 「高熱が出たから、すぐ受診すべき?」
  • 「風邪っぽいけど、何日まで様子を見ていい?」
  • 「子どもの発熱は、何度で病院に行けばいいの?」
  • 「解熱剤を飲んでいいタイミングが分からない」

ひとつずつ、現実的なラインを整理していきます。
(どの場面でも、最終判断は医師に任せること、気になるときは早めに相談を、という前提は忘れずに。)

4-1. 大人の場合:「風邪かも」と思ったときの受診の目安

健康な成人で、基礎疾患がない場合、多くのインフルエンザや風邪は自然に回復します。WHOも「大半の人は医療機関での治療なしに1週間ほどで回復する」としています。世界保健機関

一方で、厚生労働省などは、次のような状態のときは早めの受診を勧めています厚生労働省+2厚生労働省+2

  • 高熱が続く(目安として38〜39℃以上が2〜3日以上)
  • 息苦しさ、呼吸が速い、胸の痛みが強い
  • 顔色が悪く、ぐったりしている
  • 意識がぼんやりする、受け答えがおかしい
  • 強い頭痛、嘔吐を繰り返す

逆に、

  • 37〜38℃台の発熱
  • のどの痛みや咳があるが、水分は取れている
  • 息苦しさはない
  • なんとか日常生活はできる

といった「軽め〜中等度」の風邪症状であれば、まずは1〜2日、十分な水分と休養をとりながら様子を見るという選択肢も現実的です。

このとき、「風邪 いつまで様子を見るか」の目安としては、

  • 熱が3日以上続く
  • 下がりかけていた熱が再び上がる
  • 咳や息苦しさが悪化してくる

といった変化が出たら、受診を検討するサインと考えておくとよいでしょう。森のこどもクリニック+1

4-2. 子どもの場合:「発熱 何度で病院?」をどう考えるか

つぎに多いのが、「子ども 発熱 何度で病院?」という悩みです。

ここで大事なのは、**「体温の数字だけで決めない」**こと。日本小児科学会監修の「こどもの救急」などでも、発熱のときは数字ではなく、以下のような様子をあわせて見ることが勧められています。kodomo-qq.jp+2kodomo-qq.jp+2

すぐ受診・救急を検討すべきサイン(子ども)

  • 生後3か月未満で38℃以上の発熱
  • 顔色が悪く、ぐったりしている
  • 呼吸が速い、苦しそう、胸がヒューヒューいっている
  • ずっと眠りがちで、呼びかけに反応しにくい
  • けいれんが続く、もしくは繰り返す
  • 水分がほとんど取れない、尿が極端に少ない

診療時間内に受診を検討したいサイン

こうした目安はあくまで「一般論」であり、最終的には、保護者の方が「いつもと様子が違う」と感じたら受診してよいと考えてください。迷ったときは、「こどもの救急」のようなオンラインのチェックツールも参考になります。kodomo-qq.jp+1

4-3. 解熱剤を飲んでいいタイミング

「解熱剤 飲んでいい タイミング」もよくある質問です。

多くの小児科・救急のガイドラインでは、

  • 解熱剤は病気を治す薬ではなく、「つらさを和らげるための薬」
  • 目安として38.5℃以上の熱があり、ぐったりしている・眠れないなど明らかにしんどそうなときに使う
  • 使用間隔や量は、医師・薬剤師の指示に必ず従う

といった考え方が示されています。southmiyagi-mc.jp+1

「数字が高いからすぐ解熱剤」ではなく、

  • 本人のつらさ
  • 水分が取れているか
  • 呼吸や意識に異常がないか

をセットで見てあげることがポイントです。

また、子どもにアスピリンを含む解熱剤を使うことは原則として避ける(ライ症候群というまれだが重い合併症との関連が指摘されているため)など、年齢による注意点もあります。使用する薬については、必ず医師・薬剤師に相談してください。

4-4. Q&Aコーナー

Q1. 高熱が出たら、すぐインフルエンザ検査のために受診したほうがいい?

これは「場合による」が正直なところです。

発熱からあまりに早いタイミング(数時間〜半日以内)だと、インフルエンザの検査でウイルス量がまだ足りず、陰性になってしまうことがあります。多くの小児科では、発熱から12〜48時間以降が検査の目安として紹介されることが多いです。キッズドクター+1

  • 高熱+強い全身症状があり、インフルエンザが疑われる
  • 受診すると抗インフルエンザ薬の適応になる可能性がある(ハイリスクの方など)

こうした場合には、「発熱から半日〜1日程度」をひとつの目安に、かかりつけ医へ相談してみてください。

ただし、ぐったりしている・呼吸が苦しい・意識がおかしいなど、重い症状があるときは、時間を待たずに救急受診が必要です。ここは迷わなくて大丈夫です。

Q2. インフルエンザの症状はいつまで続いたら受診を考えるべき?

一般的には、インフルエンザの高熱は3〜5日で下がり始めることが多いとされています。厚生労働省+2粉瘤・ワキガ・赤ら顔・形成外科美容皮膚科|アイシークリニック上野院+2

  • 5日以上高熱が続く
  • いったん下がった熱が、再び38℃以上に上がる
  • 咳や息苦しさが悪化している

といった場合は、肺炎などの合併症をチェックするためにも、受診を検討してください。

逆に、

  • 3〜4日目で熱が下がり始め
  • だるさや咳は残るが、少しずつ楽になっている

という経過であれば、「回復モードに入っている可能性が高い」と考えられます。

もちろん、「長引いて不安」「別の病気が隠れていないか心配」と感じたら、その不安ごと相談しに行ってよいと思います。心配な気持ち自体も、からだの負担になりますから。

Q3. 仕事や学校は何日くらい休むのが目安?

これもよく聞かれる質問です。

子どもの場合、学校保健安全法施行規則では、インフルエンザにかかった児童生徒の出席停止期間を

「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」

と定めています。名古屋音楽大学+3e-Gov+3農林水産省+3

つまり、

  • 発症日(熱や咳が出始めた日)を0日目
  • 解熱した日を0日として、そこから2日(幼児は3日)

この両方の条件を満たしたうえで登校・登園する、というイメージです。おぎくぼ小児科+2青い鳥こどもクリニック+2

大人の仕事については法律上の決まりはありませんが、

  • 解熱してから少なくとも2日程度
  • 咳・鼻水が落ち着き、無理なく動ける程度

を目安に、会社のルールや上司と相談しながら決めるのが現実的です。

「自分も休む」「周りにうつさない」という両方の視点から、余裕をもった復帰タイミングを考えてみてください。


5. おわりに 〜今日からできる小さな一歩〜

ここまで読んでくださった方は、おそらく「自分や家族のからだをちゃんと守りたい」と思っている方だと思います。その気持ちだけでも、すでに大きな一歩です 🌱

最後に、「今日からできる現実的な一歩」をいくつか挙げておきます。

行動のヒントイメージ
① 受診の「マイルール」を決めておく例:高熱が3日続いたら受診/息苦しさを感じたらすぐ相談
② 子どもの様子を見るポイントを家族で共有ぐったり具合・水分量・おしっこの回数などをチェックする
③ 解熱剤の使い方を事前に確認するどの薬を、何時間おきに、どのくらいまで使ってよいかを確認
④ 信頼できる情報源のブックマーク厚労省や小児科学会、自治体サイトなどをスマホに保存しておく

全部を完璧にやる必要はありません。

**「この中から1つだけ、やれそうなことを選ぶ」**くらいの気持ちで大丈夫です。

この記事の要点を、最後に3つだけまとめると──

  1. インフルエンザと風邪の違いは、「ウイルスの種類」と「全身症状の強さ・急激さ」が軸になるが、現実にはグラデーションもある。
  2. 受診の目安は「体温の数字」だけでなく、「ぐったり具合」「呼吸」「経過の変化(何日続いているか)」を組み合わせて考える。
  3. 迷ったときや不安なときは、早めに医師へ相談してよい。最終判断は医師に任せて、自分は「気づいてあげる役割」に集中する。

今年の冬も、体調を崩す日がゼロとは言えないかもしれません。それでも、からだのしくみと受診の目安を知っておくことで、「必要以上に怖がらない」「ひとりで抱え込まない」選択肢が増えていきます。

しんどいときほど、少しだけ立ち止まって、「ここまで頑張っている自分や家族のからだ」に優しい目を向けてあげてくださいね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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