1. はじめに
「朝からもうだるい」「夜になっても体温が下がらない感じがする」「エアコンを切ると眠れないけれど、つけっぱなしもなんだかしんどい」。
真夏になると、こんな声が一気に増えます。
外は猛暑日、夜になっても熱帯夜。からだが一日中「暑さとの押し相撲」をしているような状態が続くと、はっきりとした病気ではないのに、ずっと不調がまとわりつく感覚が出てきます。
- 一日中だるい
- 頭が重い、めまいっぽい
- 食欲が落ちる
- 寝つきが悪い、眠りが浅い
こうした「なんとなく不調」の背景には、自律神経の疲れと、睡眠・消化機能の乱れが重なっていることが多いです。
この記事では、
猛暑と熱帯夜がどのように自律神経を疲れさせて「だるさ」につながるのか、
そして、**現実的にできる「夏バテ対策」や「熱帯夜の整え方」**を、できるだけやさしく整理していきます。
全部を完璧にやる必要はありません。
読み終わったあとに「この中の1つだけ、今夜から試してみようかな」と思ってもらえたらうれしいです。


2. いま話題の「猛暑でだるい自律神経」って、結局なんなのか?
ニュースやSNSでは「猛暑で自律神経がやられる」「夏バテでだるい」という言葉がよく出てきますが、厳密な病名ではありません。ざっくり言うと、
高温多湿の環境に長くさらされる → 体温調節に関わる自律神経がフル稼働しっぱなし → 回復する時間が足りない
その結果として、全身のだるさ・食欲不振・睡眠の質の低下などが続いている状態
この「自律神経のスタミナ切れ」が、いわゆる夏バテの正体だと考えられています。夏バテの大きな原因として、「暑さ」「寒暖差」「強い日差しによる疲労」が自律神経に負担をかける、と指摘する報告もあります。養命酒製造株式会社
さらに、
- 外は35℃を超える猛暑日
- 室内はエアコンで一気に冷える
- その出入りを一日に何度もくり返す
こうした「屋外と屋内の気温差」が7度以上になると、自律神経が過剰に働き過ぎて疲れやすい、という解説もあります。大正健康
ここに、次のような要素が足されると、だるさは長引きやすくなります。
- 熱帯夜で寝苦しく、睡眠時間・睡眠の質が落ちる
- 冷たい飲み物や麺類ばかりで、胃腸が弱る
- こまめな水分・電解質の補給が追いつかない
つまり「猛暑でだるい自律神経」というのは、
体温調節・循環・消化・睡眠をまとめて担当している自律神経が、夏特有の負荷でオーバーワークを起こしている状態、とイメージしてもらうと分かりやすいと思います。
なお、
- 強い頭痛
- めまいと吐き気
- 意識がぼんやりする
- 真っ直ぐ歩けない
こうした症状が出ている場合は、「なんとなく不調」ではなく熱中症の範囲になってきます。これは自力で様子を見る段階ではなく、医療機関の受診や救急受診をためらわないことがとても大切です。
3. からだの中で起きていること
ここからは、からだのなかで実際に何が起きているのかを、少しだけ掘り下げてみます。
暑さとの闘い:体温調節と自律神経
人のからだは、外がどんなに暑くても、内側の温度(深部体温)をほぼ一定に保とうとする仕組みを持っています。
その指令塔が、脳の視床下部と自律神経です。
猛暑になると、
- 皮膚の血管を広げて、熱を外に逃がす
- 汗をかいて、蒸発の力で体温を下げる
といった反応が続きます。このとき主に働いているのが交感神経で、いわば「暑さモード」のスイッチです。
ところが、
- 日中は強烈な暑さ
- 移動や通勤で日差しを浴びる
- 室内では冷房で急に冷える
この環境が続くと、交感神経が長時間オンになりやすく、副交感神経(休む側)の出番が少なくなります。その結果、
- からだがずっと緊張ぎみ
- 脈がやや速い
- 浅い呼吸になりやすい
といった状態が続き、だるさや疲労感を感じやすくなります。夏バテの背景に「自律神経の失調」がある、とする解説も複数見られます。養命酒製造株式会社
胃腸と自律神経:食欲が落ちる理由
消化管の動きは、副交感神経が得意とする領域です。リラックスしているときに、腸はよく動き、消化・吸収がスムーズに進みます。
猛暑で交感神経優位の状態が続くと、
- 胃腸の血流が減る
- 蠕動(ぜんどう:食べ物を送る動き)が弱くなる
といった変化が起きやすくなります。そのため、
- 「お腹は空いている気もするけど、食べたくない」
- 「冷たいものなら入るけれど、温かいものは重く感じる」
という“夏の胃腸”になってしまうわけです。自律神経の乱れが腸の働きを落とし、その結果として食欲低下や便秘・下痢などにつながる、という指摘もあります。大正健康
熱帯夜と睡眠の質:深部体温が下がりきらない
人は眠りにつくときに、からだの中心の温度を少し下げることで、脳とからだを休ませます。
そのため、就寝時の室温は少し涼しめのほうが、深い眠りに入りやすいことが分かっています。
- 日本睡眠科学研究所などの資料では、夏の睡眠に適した室温として、おおよそ28℃以下が目安とされています。日本橋西川+1
- 室温が高すぎても、低すぎても質の良い睡眠は得られにくく、25〜28.5℃くらいの範囲が快適な睡眠と関連していた、という国内の調査研究もあります。大阪市立大学リポジトリ
熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上)では、外気温自体が高いため、エアコンなどで工夫しないと、この「少し涼しい環境」をつくるのが難しくなります。結果として、
- 寝つきに時間がかかる
- 何度も目が覚める
- 朝起きても疲れが抜けない
といった“夏の睡眠不足”が起こり、さらに自律神経のバランスが崩れていく、という悪循環になります。睡眠不足が続くと、副交感神経の働きが落ち、血流低下や集中力の低下、だるさを感じやすくなるといった指摘もあります。大正健康+1
水分・電解質と血流
暑さのなかで汗をかくと、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。
厚生労働省の熱中症予防リーフレットでは、「のどが渇く前からこまめに水分をとる」「室温や外気温を測って適切にエアコンを使う」ことが繰り返し勧められています。厚生労働省+1
水分不足が続くと、血液の流れが滞りやすくなり、脳や筋肉への酸素供給も低下します。
その結果として、
- 頭がぼーっとする
- 立ちくらみ・ふらつき
- 全身のだるさ
といった症状が出やすくなります。ここに、前の章で触れた「自律神経の疲れ」と「睡眠不足」が重なると、いわゆる“トリプルパンチ”になる、というわけです。
4. 日常のクセと「猛暑でだるい自律神経」の関係
仕組みが分かってくると、
「じゃあ、日常のどんな習慣が、猛暑のだるさを強めてしまうのか?」
というところが気になってくると思います。
ここでは、よく見かけるパターンを、生活の時間帯ごとに見ていきます。
(1)日中:屋外と屋内の温度差に振り回される
通勤や買い物、送迎などで外に出ると、強い日差しとアスファルトの照り返しで、体温はどんどん上がっていきます。
その状態から、キンキンに冷えた室内へ入ると、皮膚と血管は「急いで熱を逃がさなきゃ」とフル稼働し、自律神経は忙しくなります。
これを一日に何度もくり返すと、
- からだのほてりと冷えを行ったり来たり
- 「なんだか体が重い」「だるい」と感じる時間が増える
といった状態になりがちです。
とくに、外気温との差が大きすぎると「寒暖差疲労」と呼ばれる自律神経の疲れが出ることが知られています。大正健康+1
(2)夕方〜夜:冷たい飲み物・麺類に偏る
暑いときほど冷たい飲み物やアイス、のどごしの良い麺類に手が伸びやすくなります。私自身も、つい冷たい炭酸水ばかり飲んでしまう日があります。
もちろん、たまに楽しむ分には問題ありません。
ただ、「ほとんど冷たいものしか口にしていない」「温かいものをとる回数が極端に減っている」となると、胃腸の動きがさらに低下し、ますます食欲が落ちやすくなります。
- 冷たい飲み物で胃が冷える
- 食事量が減り、エネルギーもたんぱく質も不足気味になる
- からだを修復する材料も足りず、だるさが抜けない
といったサイクルに入ってしまいやすいのです。
(3)就寝前〜熱帯夜:エアコンとの距離感
「エアコンをつけっぱなしで寝ると体に悪いのか?」という質問は、とてもよく聞かれます。
最近の睡眠・環境の研究では、夜間も含めて冷房を使い、25〜28℃程度の室温を保つほうが、熱中症や睡眠不足を防ぎやすいという結果も示されています。大阪市立大学リポジトリ+1
一方で、
- 冷風が直接からだに当たる
- 室温が24℃以下に下がりすぎる
- 空気が乾燥して、喉や肌が荒れる
といった状態になると、冷えによるこわばりや、起床時の体調不良が増えるという報告もあります。日本橋西川+2ハウスコム+2
つまり大事なのは、
- 「つけっぱなし=悪」ではなく、「設定と風向き次第」
- 部屋全体をゆるく冷やし、直接風を当てない工夫
この2つです。
(4)完璧じゃなくていい、「1〜2割変える」だけでも違う
生活習慣の話になると、「全部きっちりやらなきゃ」と思って疲れてしまう方もいます。
そんな方には、
- 外と中の温度差を、できるだけ10℃以上にはしない
- 夕食には、冷たいもの+温かい汁物を1品足す
- 就寝時の室温は、26〜28℃に落ち着くように調整する
このあたりから始めてみるのをおすすめしています。
完璧に整えようとするより、「昨日より少しマシ」を積み重ねたほうが、自律神経には優しいことが多いです。
Q1. 猛暑の夜、エアコンをつけっぱなしで寝ても大丈夫?
条件付きで「むしろつけっぱなしのほうが安全なことも多い」です。
- 熱帯夜でエアコンを全く使わないと、深部体温が下がらず、睡眠不足や熱中症のリスクが高まります。厚生労働省+1
- 一方で、冷風が直接あたる・温度が低すぎると、冷えすぎや「冷房病」と呼ばれる不調につながることがあります。日本橋西川+1
おすすめは、
- 設定温度は26〜28℃を目安に
- 風向きは「上向き」または「風が直接当たらない方向」
- サーキュレーターなどで空気をゆるく回す
といった工夫です。体調や住環境によっても違うので、「自分がいちばん朝ラクに起きられる設定」を探してみてください。
Q2. アイスノンや冷却ジェル枕で頭を冷やして寝るのはどう?
頭や首の後ろを冷やすと、入眠はスムーズになりやすいと言われています。深部体温を少し下げる手助けになるからです。日本橋西川+1
ただし、
- キンキンに冷やしすぎて、首や肩がこわばる
- 一晩中、同じ場所を冷やし続ける
このような状態は、かえって筋肉の緊張や頭痛につながる可能性があります。
個人的には、
- 寝入りの30〜60分だけ使う
- タオルでくるんで冷えすぎを防ぐ
- 首〜肩に負担がかからない形状を選ぶ
といった「ほどほど」な使い方をおすすめしています。
Q3. 夏バテで食欲がないとき、無理に食べたほうがいい?
“全く食べない”よりは、“少しずつ頻度を増やす”イメージがおすすめです。
- 高温環境では、汗と一緒に水分・電解質・エネルギーが失われます。
- 厚生労働省の資料でも、のどの渇きの有無にかかわらず、こまめな水分補給が推奨されています。厚生労働省+1
食欲がないときは、
- おかゆ・雑炊・にゅうめんなど消化の良いもの
- 冷たすぎない経口補水液や具だくさん味噌汁
- 少量のたんぱく質(卵・豆腐・ヨーグルトなど)
を「3食+間食」で小分けにしてとるだけでも、だるさの底上げになります。
「一人前きちんと食べる」ではなく、「一口を回数で稼ぐ」くらいの感覚でOKです。
5. おわりに 〜今日からできる“小さな整え方”〜
最後に、今日からでも取り組みやすい3つの行動を、すこしだけ整理してみます。
| 行動のポイント | イメージ | 目安のライン |
|---|---|---|
| 室温と風向きを「ゆるく快適」にする | 部屋全体を27℃前後でふんわり冷やす | 室温26〜28℃/風は直接当てない |
| 水分・電解質・少量のエネルギーをこまめに | 一気飲みではなく、少しずつ回数を分けて補給 | 1時間に数口+汗をかいたら塩分も |
| 「冷たいものだけ」を減らし、温かい1品を足す | 冷たい麺+温かい味噌汁、冷奴+温かいスープなど | 1日1回は“温かい何か”をつける |
全部を一度に変える必要はありません。
この中から「これならできそうだな」と感じたものを1つだけ選んでみてください。
- 猛暑でだるいのは、からだが弱いせいではなく、自律神経が全力で守ってくれているサイン
- 熱帯夜で眠れないのは、環境のせいで“体温を下げる仕組み”が働きにくくなっているだけ
- 食欲が落ちるのも、からだが「これ以上負担をかけたくない」とブレーキを踏んでいる面がある
そう捉え直すと、自分のからだに対して少し優しくなれるかもしれません。
今年の夏も、完璧を目指さなくて大丈夫です。
「昨日より一歩だけ、自分のからだにとって過ごしやすい環境をつくる」。その積み重ねが、自律神経にとって何よりの休息になります。応援しています🌿
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
