1. はじめに
「筋肉のためにプロテインを始めたのに、なぜかお腹が張る」「飲んだあとに下痢っぽくなって、逆にだるい」──そんな相談がここ数年、一気に増えてきました。
ダイエットやボディメイク、健康維持のためにプロテインドリンクやバーを取り入れる人は増えましたが、その一方で
「合っているのか、からだに負担をかけているのか分からない」
という“なんとなく不安”もセットでくっついてきている印象があります。
実は、プロテインそのものが「体に悪い」のではなく、
- 量やタイミングが合っていない
- 体質と種類がミスマッチ
- 一緒に入っている甘味料や添加物にからだが反応している
このあたりが絡み合うことで、「下痢」「お腹の張り」「だるい」といった不調が出やすくなります。
この記事では、プロテインと自律神経・腸内環境の関係を整理しながら、
- なぜ「プロテイン 下痢 だるい」という状態が起こるのか
- からだの中でどんなことが起きているのか
- 明日からどう選んで、どう飲めば“ちょうどいい”付き合い方になるのか
を、やさしく噛み砕いてお話ししていきます。
「せっかく始めたプロテイン、ちゃんと自分の味方にしたいな」という人のヒントになれば嬉しいです。


2. いま話題の「プロテインを飲むと下痢でだるい」問題、結局なんなのか?
まず、ざっくり整理しておきたいのは、「プロテイン」と一口に言っても中身はかなり違う、という点です。
- 牛乳由来:ホエイプロテイン、カゼインプロテイン
- 大豆由来:ソイプロテイン
- えんどう豆など:ピープロテイン(えんどうたんぱく) など
これに、甘味料・香料・増粘多糖類・ビタミン類などが組み合わさって、「1杯で20g前後のたんぱく質が摂れるドリンク」になっています。
“不調が出る人”が気にしているのはここ
相談を聞いていると、「プロテインで下痢・だるさが出る人」が気にしているポイントは、だいたい次の3つに集約されます。
- 飲んだあとにお腹がゴロゴロする/下痢・腹痛が出る
- 飲んだ日はなんとなくだるい・重い・眠くなる
- 続けているうちにむくみや肌荒れが気になってきた
ここで誤解しやすいのは、
「プロテイン=体に悪い」「腎臓がやられそう」
と、全体を一括りにして怖がってしまうことです。
実際には、健康な成人においては、
体重1kgあたり0.8g程度のたんぱく質摂取が推奨され、それ以上でも1.6〜2.0g/kg程度までは安全とする報告が多いと言われています。www.heart.org+1
また、健康な人が高たんぱく食を続けた場合でも、腎機能に有害な変化は認められなかったとする系統的レビューもあります。PubMed
つまり「適量」であれば、プロテイン=悪者ではありません。
問題は、
- “足りない”から増やすのではなく、「何となく良さそう」で飲み過ぎること
- 自分の消化力や体質を超えるペースでたんぱく質や添加物が流れ込むこと
ここがズレると、腸と自律神経のバランスが乱れ、結果として「下痢・お腹の張り・だるさ」に繋がりやすくなります。
3. からだの中で起きていること
3-1. ホエイでお腹がゆるくなる背景
牛乳由来のホエイプロテインには、乳糖(ラクトース)が含まれている製品が多くあります。
乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」の働きが弱い体質を「乳糖不耐症」と呼び、乳製品を摂ったあとにガス・膨満感・下痢が出やすくなります。Cleveland Clinic
日本人を含むアジア人では、この乳糖を分解する力が弱い人が欧米人より多いとされており、国内の調査でも乳糖不耐の体質をもつ人が一定数いることが報告されています。農林水産省リンク+1
乳糖がうまく分解されないまま腸に届くと、
腸内細菌が「発酵させて分解しよう」と働き、その過程で
- ガスが多く発生する
- 腸の中の浸透圧が変わって、水分が引き込まれる
結果として、お腹の張りや下痢につながります。
3-2. 人工甘味料・糖アルコールの“見えにくい影響”
最近のプロテインドリンクやバーには、「砂糖オフ」「低糖質」をうたうものが増えています。その代わりに使われるのが、
- ソルビトール
- キシリトール
- マンニトール などの糖アルコール
これらは一部が吸収されずに大腸に届き、そこでガスや水分を増やし、膨満感や下痢を起こしうることが報告されています。PMC+2UC Davis Health+2
「プロテインを飲むとおならが増える」「プロテインバーを食べた日はお腹がゴロゴロする」という人は、
たんぱく質そのものだけでなく、甘味料の種類や量にも目を向けてあげると、原因が見えやすくなることがあります。
3-3. 消化・吸収のキャパを超えると、自律神経も疲れる
たんぱく質は、胃酸や消化酵素を総動員して、アミノ酸レベルまでバラバラにしてから吸収されます。
消化にはエネルギーが必要で、「消化に頑張るモード」=交感神経と副交感神経のバランスも変化します。
- 空腹でもないのに一気に大量のプロテインを流し込む
- 食事とプロテインとおやつで、1日のたんぱく質量がいきなり倍増する
こういった状態が続くと、腸は常にフル稼働状態になり、消化管の血流・動き・ホルモンのバランスを調整している自律神経も疲れやすくなります。
その結果、
- 食べたあとに強い眠気が出る
- だるさ・重さ・やる気の低下
- 夜になっても体が休まりにくい
といった「なんとなく不調」につながっていく、というわけです。
私自身も、一時期“筋トレブーム”に乗って急にプロテイン量を増やした時期がありましたが、「からだが喜んでいる感じ」がしないときは、たいてい**量とタイミングが攻めすぎていたな…**と後から振り返ります。
3-4. 腎臓が心配な人へ
「プロテイン=腎臓に悪い」というイメージも根強いですが、
もともと腎機能に問題がない人であれば、通常の食事に加えて適量のプロテインを摂ることが直接のダメージになる、というエビデンスは限定的です。PubMed+1
もちろん、既に腎臓の病気がある方は主治医の指示が最優先です。
「体にいいことをしているつもりが、実は不安材料になっている」という状態がいちばんストレスなので、気になる人は検診の結果なども確認しながら、“安心して続けられるライン”を探していくのがおすすめです。
4. 日常のクセと「プロテインで下痢・だるい」の関係
ここからは、日常のパターン別に「どこでつまずきやすいか」を見ていきます。
大きな悪習慣がなくても、小さなズレが積もって腸と自律神経に負担をかけていることがよくあります。
4-1. 「とりあえず1日2〜3杯」パターン
筋トレ系の情報を見ていると、「体重×2gのたんぱく質を摂ろう」といったメッセージを目にすることがあります。
一方、一般的な健康成人に対する推奨量は0.8g/kg前後であり、運動量が多い人でも1.2〜1.6g/kg程度が目安とされます。www.heart.org+1
ここをよく考えずに、今まで
- 食事で1日50〜60gくらいはたんぱく質を摂れていた人が、
- そこにプロテイン60g(1杯20gを3杯)を上乗せする
となると、一気に2倍近い負荷になります。
消化管にとっては、
「今日から突然、倍の仕事をしてね」
と頼まれているようなものなので、お腹が張る・下痢・疲労感が出ても不思議ではありません。
4-2. 寝る前の“ご褒美プロテイン”パターン
「寝る前にプロテインを飲むと、回復にいい」という情報もありますが、
夜遅い時間に
- 甘味の強いプロテイン
- 牛乳割りや豆乳割り
- プロテインバー+他のおやつ
などをまとめて摂ると、
- 消化に時間がかかる
- 血糖やインスリンがじわじわ上がる
- 夜の副交感神経優位の時間が削られる
といった形で、睡眠の質や自律神経の整い方に影響しやすくなります。
結果として、
- 朝起きてもスッキリしない
- 日中だるい・眠い
- トレーニングの疲れが抜けにくい
といった「だるさループ」に入ってしまうことがあります。
4-3. “お腹の声”を無視して、種類を変えないパターン
ホエイプロテインでお腹を壊しやすい人が、同じ製品を「根性で」続けているケースも少なくありません。
乳糖不耐の体質があり、「ホエイ+乳糖多め+糖アルコール多め」という組み合わせを毎日摂っていると、腸にとってはかなりのチャレンジです。
- 乳糖をあまり含まないホエイアイソレート
- ソイプロテイン
- えんどう豆由来のピープロテイン
などに変えるだけで、お腹の状態が落ち着く人もいます。
ちょっと整理のために、代表的なタイプを表にしてみます。
| タイプ | 主な原料 | 消化の傾向(ざっくり) | お腹が不安な人のポイント |
|---|---|---|---|
| ホエイ(コンセントレート) | 乳清+乳糖多め | 吸収は速いが乳糖に注意 | 乳糖不耐があると下痢・ガスが出やすい |
| ホエイ(アイソレート) | 乳清+乳糖少なめ | 吸収は速い | 「牛乳は少量なら平気」な人に合いやすい |
| ソイ | 大豆 | 吸収はややゆっくり | 大豆アレルギー・大豆でお腹が張る人は注意 |
| ピープロテイン | えんどう豆 | 比較的消化しやすいとされる | 風味が独特/添加物の少ないものを選ぶと◎ |
完璧な正解はありませんが、「お腹の状態」と「プロテインの種類」を対応させて考えると、からだにとって優しい選択肢が見つかりやすくなります。
Q1. プロテインでおなかを下したら、すぐやめたほうがいいですか?
一度おなかを下したからといって、一生プロテイン禁止と考える必要はありません。
ただし、
- いったんその製品を中止する
- 量を減らす(半分〜3分の1にする)
- 牛乳割りをやめて水やぬるま湯に変える
といった「からだを落ち着かせる時間」はとったほうが安心です。
症状が強い場合や長く続く場合は、もちろん医療機関の受診が優先です。
Q2. だるさや眠気が出るのは、腎臓が悪くなったサインでしょうか?
プロテインを飲んだ日にだるさ・眠気が出るからといって、すぐに腎臓病を疑う必要はありません。
消化の負担や血糖の変動、自律神経のバランスの乱れでも、似たような症状は出ます。
とはいえ、
- 以前から検診で腎機能を指摘されている
- むくみ・血圧上昇・尿の異常などもある
といった場合には、プロテインの問題にする前に、一度主治医に相談することをおすすめします。
Q3. 「プロテインバー」だけなら胃腸にやさしいですか?
プロテインバーは「噛めるおやつ」なので、ドリンクより軽く感じるかもしれませんが、
実際には糖アルコールや甘味料が多めに入っている製品も多く、むしろお腹が張りやすいことがあります。
成分表示を見て、
- ソルビトール
- マルチトール
- キシリトール など
が最初の方にずらっと並んでいる場合は、1日1本まで+お腹の様子を見ながらにしておくと安心です。
5. おわりに 〜「からだがホッとするプロテインとの付き合い方」を探す〜
最後に、「今日からできる小さな一歩」を、イメージとセットでまとめておきます。
| やってみること | イメージ |
|---|---|
| ① 量を“背伸びしないライン”に戻す | 体重×0.8〜1.2g/日を目安に、「食事+プロテイン」で無理なく届く量を探す |
| ② 種類を変えてみる | 乳糖が気になる人はホエイアイソレートやソイ/ピープロテインへ試しにスイッチ |
| ③ 飲むタイミングを見直す | 寝る直前ではなく、「トレーニング後」「間食代わりの夕方」など、消化に余裕のある時間へ |
| ④ 成分表示を眺めてみる | 甘味料・糖アルコールが多くないかチェックし、シンプルな配合のものを選ぶ |
全部を一気に変える必要はありません。
「今日は量を減らしてみる」「次に買うときは別の種類を1つ試してみる」
そんなペースで十分です。
ポイントを3つだけおさらいすると…
- プロテインそのものが“悪者”というより、量・種類・タイミングが自分のからだとズレると「下痢・お腹の張り・だるい」が出やすい。
- 乳糖や糖アルコールなど、一緒に入っている成分が腸内環境や自律神経に影響している場合も多い。
- 体重や運動量に合わせて量を整えつつ、お腹の声を聞きながら種類や飲み方を微調整していくことが、いちばん現実的でやさしい対策。
「プロテイン 下痢 だるい」と検索したくなる日があっても、
それは“自分のからだに合うバランスを探す途中”というサインでもあります。
完璧な飲み方を目指す必要はありません。
少しずつ調整しながら、「これなら続けられる」「からだが前よりラク」と感じられるポイントを、一緒に見つけていきましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
