1. はじめに
年末が近づくと、カレンダーの空き枠がみるみる埋まっていきます。会社の忘年会、部署ごとの飲み会、気づけば友人との集まりも「とりあえず年内に一度」と立て込んでくる季節です。
そんな時期に増えてくるのが、
- なんとなく胃が重い
- 夜中に胸やけで目が覚める
- 朝から体がだるい、仕事にエンジンがかからない
といった、はっきり病気とは言いにくいけれどつらい「忘年会シーズンの不調」です。私のところにも、「忘年会が続くと毎年同じように胃もたれとだるさが出てくるんです」という相談がよく届きます。
アルコールそのものだけでなく、「飲み会の時間帯」「おつまみの内容」「寝る前の食べ方・飲み方」が重なることで、胃腸・肝臓・自律神経・血糖値に負担が積み上がっていくのが年末の特徴です。
この記事では、忘年会つづきで「胃もたれ+だるさ」に悩みやすい理由を整理しながら、現実的に取り入れやすい“守り方”をお伝えします。全部を完璧にやる必要はありません。「これはできそうだな」と思うところから、ひとつだけ拾ってもらえたら十分です。


2. いま話題の「忘年会 胃もたれ だるい」って、結局なんなのか?
「忘年会 胃もたれ だるい」という検索ワードには、いくつかの“ごちゃまぜ”が含まれています。
1つは、純粋な「胃もたれ」「胸やけ」「ムカムカ」といった胃の症状です。
もう1つは、二日酔いも含めた「頭が重い」「体が鉛のように重い」「朝起きられない」といった全身のだるさ。
そこに、「睡眠の質が落ちている」「血糖値の乱高下」「自律神経の乱れ」が静かに重なってきます。
忘年会シーズンにありがちなパターンを、ざっくり文章でイメージしてみましょう。
仕事が終わってからお腹を空かせたまま飲み会に向かい、到着してすぐビールを流し込む。前菜は揚げ物や脂の多いおつまみが中心で、締めにラーメンや〆の炭水化物。終電近くまで飲んで、帰宅してすぐにベッドへ。睡眠時間は短く、夜中に何度か目が覚めて、翌朝は頭も胃も重い——。
多くの方が「そうそう、やってるかも」と思う流れではないでしょうか。
ここで大事なのは、「不調の原因が一つではない」という点です。
アルコールそのものの影響だけでなく、
- 胃粘膜への刺激による急性の炎症
- 夜遅い時間帯の高脂肪・高糖質な食事
- 睡眠の質の低下
- 血糖値スパイク(食後の急激な血糖上昇とその後の急降下)
- それらをコントロールしようとして頑張り続ける自律神経
が重なった結果として、「胃もたれ+全身のだるさ」が出ているケースが多いのです。
つまり、「自分は胃が弱いから」だけでは片づけられません。
裏側にあるからだの仕組みを知ると、「全部やめなきゃ」ではなく「このポイントだけ変えればだいぶラクになるかも」と考えやすくなります。
3. からだの中で起きていること
ここからは、同じ出来事を「からだの内側」から覗いていきます。難しい言葉はできるだけ日常語に置き換えながら、胃腸・肝臓・自律神経と血糖値、それぞれの視点で見ていきましょう。
胃腸にとっての忘年会シーズン
アルコールは分子として非常に小さく、胃の表面を守っている粘液のバリアをすり抜けて直接粘膜を刺激します。胃酸の分泌も増やすため、飲み過ぎると胃の粘膜が炎症を起こし、胃痛や胸やけ、ムカムカといった症状の原因になります。エーザイ株式会社のセルフケア製品情報+1
特に、
- 空腹のまま一気に飲み始める
- 揚げ物や脂っこい料理が中心になる
- 辛いもの・味の濃いものが多い
といった条件がそろうと、胃にとっては「刺激のフルコース」になりやすく、急性胃炎の一歩手前の状態まで粘膜が荒れてしまうこともあります。senju-ge.jp+1
胃は、飲み会の場でずっと働き続ける調理スタッフのような存在です。アルコールと脂質の処理に追われているところに、遅い時間帯の炭水化物やデザートが追加されると、閉店時間を大幅に過ぎても片付けが終わらない——そんな状況になりやすいのです。
肝臓で起きている「夜勤」
アルコールは、最終的には肝臓で分解されます。肝臓は、アルコールを「アセトアルデヒド」という物質に変え、さらに無害な酢酸へと処理していきます。この過程で、多くのエネルギーと酵素を消費します。
厚生労働省は、いわゆる「節度ある適度な飲酒量」の目安として、1日あたり純アルコール約20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)を提示しています。ただし、女性やお酒に弱い体質の人、高齢者はさらに少なめが望ましいとされています。酒田市ポータルサイト
忘年会が重なるときは、この目安を超える日が続きがちです。
肝臓は、アルコール処理を優先するため、一時的に「糖を作って血糖値を安定させる」「老廃物を処理する」といったほかの仕事が後回しになります。結果的に、
- 単なる疲労とは違う、内側からじわっとしただるさ
- 食欲低下や、逆に甘いもの欲求の強まり
- 翌日にどっと来る倦怠感
につながりやすくなります。
「休みなく働く夜勤担当の臓器」がいる、とイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
自律神経と睡眠の質の乱れ
お酒を飲むと、眠気が強くなって「よく眠れそう」と感じる方が多いと思います。ところが、アルコールは寝つきを良くする一方で、深い睡眠(ノンレム睡眠)やレム睡眠のバランスを崩し、夜半以降の睡眠を浅くすることが多くの研究で示されています。NCNP
国立の専門機関の解説でも、
- アルコールは夜間の覚醒を増やし、中途覚醒が増える
- 睡眠全体の質が低下し、日中の眠気や集中力低下につながる
といったことが指摘されています。NCNP
自律神経は、心拍数や血圧、体温調節、消化などを24時間体制で調整している「バックヤードの司令塔」です。睡眠の質が落ちると、この司令塔が休む時間が減り、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の切り替えがうまくいかなくなります。その結果、
- 眠ったはずなのに疲れが抜けない
- 朝から脈が速い、息が浅い
- 胃腸が常に重たい、張っている
といった「なんとなく不調」が続きやすくなります。
夜遅い食事と血糖値スパイク
忘年会では、アルコールだけでなく炭水化物と脂質(揚げ物、ピザ、ラーメンなど)が一度に多く摂られがちです。血糖値スパイク(食後の急激な血糖上昇と、その後の急降下)は、近年注目されている現象で、食後1〜2時間で血糖値が急上昇し、その後インスリンの働きによって急激に下がることが特徴です。丹野内科
遅い時間帯の飲食で血糖値スパイクが起こると、
- 一時的に「元気が出た感じ」がする
- その後、血糖がストンと下がり、強い眠気やだるさが出る
- 夜間のホルモン分泌(成長ホルモンなど)にも影響する
といった形で、翌日のパフォーマンスにも響いてきます。
とくに、就寝の直前まで食べ続けていると、眠っている間も胃腸はフル稼働状態が続きます。「寝ているのに、からだの中だけ残業している」状況になり、自律神経や内臓の疲れとして翌日表れてしまうのです。
4. 日常のクセと「忘年会 胃もたれ だるい」の関係
ここからは、年末の飲み会でありがちな“クセ”と、胃もたれ・だるさとのつながりを具体的に見ていきます。「これ、やってしまっている…」と感じるものがいくつあるか、心の中で数えながら読んでみてください。
空腹のまま飲み会に突入する
仕事が忙しくて昼食が軽めになったり、夕方の間食を抜いたりした状態で、そのまま忘年会に直行するパターンはかなり多いです。
空腹のときは、胃の中がほぼ空で、粘膜を守る粘液のバリアも薄くなりがちです。そこに強いアルコールが流れ込むと、粘膜へのダメージが大きくなり、急性胃炎のような状態を起こしやすくなります。senju-ge.jp+1
「少しでも太りたくないから、昼食を削って夜に回そう」という発想は、一見合理的なようでいて、胃からすると逆効果になってしまうことが少なくありません。
揚げ物と〆の炭水化物が定番になっている
から揚げ、ポテト、ピザ、焼き鳥のタレ、チーズたっぷりの料理…。年末のコース料理は、おいしい脂質のオンパレードになりがちです。さらに、最後に麺類やご飯ものの「締め」が入ってくると、
- 脂質で消化に時間がかかる
- 炭水化物で血糖値が一気に上がる
- アルコールで胃粘膜と自律神経に負荷がかかる
という“三重苦”になってしまいます。
高脂肪食は胃の排出を遅らせることが知られており、結果として「いつまでも胃が重い」「朝になっても消化しきれていない感じ」が残りやすくなります。丹野内科
水分はアルコール中心で、ノンアルの一杯が少ない
宴会中の飲み物がほぼアルコールだけになっていると、体内の水分バランスが崩れやすくなります。アルコールには利尿作用があり、飲んだ量以上に水分が体外へ出てしまうからです。
脱水気味の状態になると、血液がやや濃くなり、頭痛や全身のだるさの原因になります。さらに、血液がドロッとすると、胃腸や肝臓への血流も落ちやすくなり、回復のスピードが遅くなります。
「アルコール1杯につき、水かお茶を1杯はさむ」というだけでも、翌朝の体調がかなり変わる方が多い印象です。
寝る直前まで飲み食いして、そのままバタンキュー
終電ギリギリまで飲んで、帰宅してそのまま寝てしまう。年末ならではの光景ですが、胃腸と自律神経から見ると、かなりハードな状況です。
先ほど触れたように、就寝直前の食事は血糖値スパイクや睡眠の質の低下と関係し、ホルモン分泌や自律神経のリズムを乱しやすくなります。丹野内科+1
本来なら、眠っている間にからだは「メンテナンスの時間」に入りたいところですが、内臓がフル稼働していると、その時間が削られてしまいます。結果として、「眠った時間のわりに疲れが抜けていない」「起きた瞬間からだるい」という感覚につながります。
忘年会が“連勤”になっている
週に1回くらいの飲み会であれば、肝臓や胃腸もなんとか回復の時間を確保できます。ところが、「月曜は部署、火曜は取引先、水曜は友人…」といった形で3連続・4連続になると、からだの側は“回復待ちの仕事”をたくさん抱えた状態になります。
肝臓はアルコール処理を優先するため、その間、糖や脂質の代謝・老廃物処理が後ろ倒しになり、疲労感やむくみとして表に出てきます。自律神経もフル回転が続くため、「何となく落ち着かない」「寝つきは良いのに浅い眠りが続く」といった状態になりやすくなります。
Q1. 胃もたれとだるさがある日は、朝ごはんを抜いたほうがいいですか?
一概に「必ず抜いたほうが良い」「必ず食べたほうが良い」とは言えませんが、ポイントは「量と内容」です。
強い胃痛や吐き気がある場合は、無理に固形物を入れず、白湯や少量の経口補水液など、胃にやさしい水分から始めるのも一つの方法です。少し落ち着いてきたら、おかゆや具の少ない味噌汁など、脂質と量を控えた軽い朝食にとどめると、負担が少なくなります。
逆に、「だるさだけで、お腹は空いている」という場合に完全に抜いてしまうと、血糖値が乱高下しやすく、余計に疲労感が強くなることもあります。少量でも良いので、消化にやさしい炭水化物と、少しのたんぱく質を入れておくと、自律神経が安定しやすくなります。
Q2. ノンアルコール飲料にすれば、忘年会シーズンの胃もたれは防げますか?
アルコールによる胃粘膜への直接刺激や、肝臓への負担という意味では、ノンアルコール飲料に切り替えるメリットは大きいです。ただし、「ノンアルだから大丈夫」と言って、糖分の多いジュースやカクテル風のノンアル飲料を大量に飲んでしまうと、血糖値スパイクやカロリー過多につながり、別の形でだるさや体重増加を招くことがあります。
おすすめは、
- 乾杯の1杯だけアルコール、あとはノンアルやお茶に切り替える
- 味付きのノンアルと、水や炭酸水を交互に挟む
といった「ハイブリッド作戦」です。アルコール量を減らしつつ、「場を楽しむ」という部分はキープしやすくなります。
Q3. どんな症状が続いたら、病院を受診したほうがいいですか?
忘年会シーズンの胃もたれやだるさは、多くの場合、数日で自然に落ち着いていきます。ただし、次のようなサインがある場合は、自己判断で様子を見続けず、内科や消化器内科などの受診を検討してください。
- 黒っぽい便や、コーヒーかすのような吐血がある
- キリキリした強い胃痛が続く、または波のように繰り返す
- 発熱を伴う強い腹痛
- 数日以上続く嘔吐や、ほとんど食べられない状態
- 体重が急に落ちてきている
アルコールの飲み過ぎによる急性胃炎や潰瘍、肝機能障害などが隠れている場合もあります。気になる症状が続くときは、「飲み過ぎだから」と決めつけず、専門家の評価を受けることが大切です。
5. おわりに
忘年会のシーズンは、「付き合いだから仕方ない」「全部断るわけにもいかない」と感じる場面が多いと思います。私自身も、つい楽しくなって飲みすぎ・食べすぎてしまうことがあります。
大切なのは、「ゼロか100か」ではなく、「からだにとって致命的な負担にならないよう、少しだけ守りを固める」ことです。最後に、今日から実践できる小さな一歩を、表にまとめてみます。
| 小さな一歩 | イメージ・ポイント |
|---|---|
| 飲み会前に「一口だけでも」軽く食べる | バナナ1本やおにぎり半分など。空腹でアルコールを入れないだけで、胃のダメージがかなり変わります。 |
| アルコール1杯ごとに水かお茶を1杯挟む | 翌日の頭痛やだるさの軽減に直結します。トイレが近くなるのは、からだが頑張っているサイン。 |
| 揚げ物は「全種類1個ずつ」ではなく、「好きなものを2〜3個だけ」 | 胃の負担とカロリーを一気に減らしつつ、満足感はそれほど落とさずに済みます。 |
| 〆の炭水化物は「みんなでシェア」 | 一人一杯ではなく、数人で取り分けるだけでも、血糖値スパイクを和らげやすくなります。 |
| 次の日は「内臓を休ませる日」と決める | 消化にやさしい食事と、いつもより早めの就寝。肝臓や自律神経の回復タイムを意識するだけでも違います。 |
すべてを完璧にこなす必要はありません。この中から、「これなら自分の忘年会シーズンでもできそうだな」と感じたものを、一つだけ選んでみてください。
忘年会は、一年頑張った自分や仲間をねぎらう大切な時間です。胃もたれやだるさに振り回されすぎず、「楽しかった」と素直に振り返れるように、からだの中のスタッフたち(胃腸・肝臓・自律神経)にも、少しやさしくしてあげてくださいね。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
