1. 「気づいたら今日もほぼ座っていた」という日が続いていませんか?
在宅勤務やオンライン会議が増えてから、「一日じゅうほとんど椅子の上」という生活が当たり前になってきました。
外に出るのは通勤ではなく、ゴミ出しとコンビニくらい。目の前にはパソコン、その合間にスマホ。気づくと時計の針だけが進んでいて、からだはずっと同じ姿勢、なんて日も多いと思います。
その結果としてよく聞くのが、こんな声です。
- 午後になると頭が重い、ぼーっとして仕事が進まない
- 座っているだけなのに、夕方には全身がだるい
- 肩こりや首こりもセットでついてくる
- 眠いのに、夜はなぜか寝つきが悪い
座りすぎている自覚はあっても、「具体的に何がよくないのか」「どこまでならセーフなのか」は、意外とわかりづらいところです。
この記事では、「座りすぎ(長時間座位)」が頭の重さ・だるさ・眠気とどうつながっているのかを、
血流・筋肉・自律神経といったからだの中の変化から整理していきます。
全部を一度に変えなくても大丈夫です。
読み終わったときに、「ここだけなら今日から試せそうだ」というポイントを、ひとつでも持ち帰ってもらえたらうれしいです。


2. 「座りすぎはよくない」と言われるけれど、どのあたりから“座りすぎ”なのか?
テレビやネットでも「座りすぎは新しい喫煙」などと言われますが、
実際のところ、どのくらい座っているとリスクが高くなるのか、イメージしづらいですよね。
研究の世界では、「一日の中でどれくらいの時間を“座ってじっとしている状態”で過ごしているか」を “セデンタリー行動(座位行動)” と呼びます。
日本を含む複数の研究をまとめた解析では、一日の総座位時間が 10〜11時間を超えてくると、心血管疾患や死亡リスクが有意に高まるという報告があります。PMC
また、約48万人を平均13年追跡した大規模研究では、
「主に座って仕事をしている人」は、そうでない人に比べて
全死亡リスクが16%、心血管疾患による死亡リスクが34%高かった というデータも出ています。ジャマネットワーク
もちろん、これは「座った瞬間に危険になる」という話ではありません。
ただ、「“座りっぱなし”が長く続くライフスタイルそのもの」が、
からだ全体にジワジワと負担をかけていく、という方向性ははっきりしてきています。
世界保健機関(WHO)は、健康のために
週150~300分の中強度の運動、または75〜150分の高強度の運動 を推奨していますが、同時に「座りっぱなしの時間を減らすこと」も大切だとしています。世界保健機関+1
ポイントは、「完璧に運動する」よりも
座っている時間をちょっと細切れにして、からだをこまめに動かす
という発想です。
「座りすぎ 頭が重い だるい」と感じている方は、単に筋肉のコリだけでなく、こうした“座位行動”の積み重ねが背景にある可能性も考えておくとよいでしょう。
3. 座りっぱなしで変わる血流・筋肉・自律神経の話
では、一日じゅう座りっぱなしだと、からだの中では何が起きているのでしょうか。
ここでは「血流」「筋肉」「自律神経」という3つの視点から見てみます。
3-1. 血流:脚だけでなく、脳のめぐりにも影響が出る
長時間座っていると、太ももやお尻で血管が圧迫され、
重力の影響もあって血液は下半身にたまりやすくなります。心臓に戻ってくる血液が減ると、結果的に脳へ送られる血流も少しずつ落ちていきます。
近年の研究では、途切れなく座り続けると脳血流が低下し、注意力や実行機能(計画したり切り替えたりする力)が落ちる という報告が増えています。PubMed+1
また、座りっぱなしの途中で、短いウォーキングや軽いスクワットを挟むと、
主観的な疲労感が下がる というデータもあります。BMJ Open
「午後になると頭が重い」「会議の後はやたらとぼーっとする」という感覚には、
こうした 脳への血流の揺れ も関わっていると考えられます。
3-2. 筋肉:同じ姿勢を支える“じっとした緊張”が続く
座っているとき、脚を使っていないように見えても、
首・肩まわり、腰まわり、お腹の奥の筋肉たちは、ずっと姿勢を支えています。
とくに、少し前かがみでパソコンに向かう姿勢が続くと
- 首の後ろ
- 肩甲骨まわり
- 腰からお尻にかけて
の筋肉が「静かな力こぶ」のような状態で固まりやすくなります。
動かずに力だけ入っている状態が続くと、筋肉の中の血流が悪くなり、
乳酸などの代謝産物がたまりやすくなります。
これが「重だるい」「鈍い痛み」「じんわりしたコリ」の原因のひとつになります。
私自身も、原稿を書き続けていると、気づかないうちに肩や首にギュッと力が入っていることがあります。
そのまま数時間たつと、頭の後ろがじんわり重くなってくるので、「そろそろ一度立とう」のサインだと受け取るようにしています。
3-3. 自律神経:活動モードと休息モードの切り替えが鈍くなる
座りっぱなしの生活は、自律神経にも影響します。
本来、からだは
- からだを動かす → 心拍数や血圧が少し上がる → 交感神経優位(活動モード)
- 休む・眠る → 心拍数や血圧が下がる → 副交感神経優位(休息モード)
という揺れを一日の中で繰り返しています。
ところが、ほとんど動かないまま長時間座っていると、
「ほどよく動いて、ほどよく休む」というリズムが作りにくくなります。
- 日中はじんわり交感神経が優位なまま“張りつめている”
- でも、運動による良い疲れが足りないので、夜になってもスイッチが切り替わりにくい
結果として
- 日中:頭が重い・だるい・眠い
- 夜:疲れているのに寝つきが悪い、眠りが浅い
という、もやもやした状態にはまりやすくなります。
長期的にも、座位時間が長い人ほど心血管疾患や糖尿病、死亡リスクが高まるという報告が増えており、
「座りすぎ → 自律神経や代謝の負担 → さまざまな病気の土台になる」という構図が見えてきています。J-STAGE+1
「座りすぎ 頭が重い だるい」という日常のサインは、
将来のリスクの“手前の段階”として、かなり大事なメッセージかもしれません。
4. 典型的な“座りっぱなし”の一日と、からだの感じ方
ここからは、よくある一日の流れと、からだの中で起きていることを重ねてみます。
4-1. 朝〜午前:通勤も仕事も、ほぼ座ったままスタート
- 朝食を急いでとって、電車や車で座ったまま通勤
- 着いたらすぐPCを立ち上げてメール確認
- 気づいたら、午前中はトイレ以外ほとんど立っていない
この段階で、脚の筋肉はまだほぼお休みモード。
ポンプ役として働いてくれないので、下半身の血流はやや滞りがちです。
脳への血流も、じわじわと“省エネモード寄り”になっていきます。
4-2. 昼〜午後:食後の眠気+座りっぱなしで、一気に“頭が重い”ゾーンへ
お昼を食べた直後は、消化のために血液が胃腸に集まりやすい時間帯です。
ここでそのまま座りっぱなしが続くと、
- 食後の血糖値の上下
- 下半身への血液の滞り
- 筋肉のこわばり
が重なり、頭の重さや強い眠気として感じやすくなります。
研究でも、長時間座っている途中に数分の軽いウォーキングやスクワットを挟むと、
主観的な疲労感が下がったり、注意力の低下が和らいだりすることが報告されています。PubMed+1
「午後イチの会議で、内容は理解したいのに頭がついていかない」という感覚には、
こうした“座りっぱなし+食後”の組み合わせが大きく関わっています。
4-3. 夜:仕事後も座る時間が続き、脳もからだも“切り替え”が苦手に
退勤後も、
- 電車の中でスマホ
- 家でご飯を食べたあと、ソファで動画やSNS
- 気づいたら今日も、ほとんど立っていない
という日が続くと、からだは一日中「じっとしているのに、情報だけは大量に入ってくる」モードになります。
こうなると、
- 昼間:頭が重い・肩首が固まる・だるい
- 夜 :疲れているのに、目も頭もさえてしまう
という状態がクセになり、自律神経も“座りっぱなし仕様”に慣れてしまいます。
「座りすぎ 頭が重い だるい」という組み合わせは、
こうした生活パターンの結果として、とても自然な現れ方なんですね。
Q&A:よくある質問にまとめてお答えします
Q1. どのくらい座っていたら“座りすぎ”と考えたほうがいいですか?
はっきりした境目があるわけではありませんが、
研究ベースでは 一日の総座位時間が10時間を超えてくると、心血管疾患や死亡リスクが上がる という報告が多くなります。PMC+1
とはいえ、いきなり座る時間を5時間減らすのは現実的ではありません。
「連続して60分以上座りっぱなしにならないように、1回は立ち上がる」
くらいの小さな目標から始めるのがおすすめです。
Q2. 立ち仕事やスタンディングデスクに変えれば、すべて解決しますか?
立ちっぱなしも、今度は脚や腰に負担がかかります。
座り仕事をすべて立ち仕事に置き換えるよりも、
- 座る
- 立つ
- 少し歩く
をミックスして、一日の中で 姿勢と筋肉の使い方に変化をつける ほうが現実的です。
スタンディングデスクを使う場合も、「午前中の1〜2時間だけ」「30分ごとに座り直す」など、
“立ちっぱなしを避ける工夫”をセットにしたほうが、からだにはやさしくなります。
Q3. 頭の重さやだるさがあるとき、どのタイミングで病院や専門家に相談すべきですか?
- しびれ・ろれつの回りにくさ・急な激しい頭痛
- めまい・ふらつき・視界の異常
- 胸の痛みや息苦しさ
などがある場合は、座りすぎかどうかに関わらず、早めに医療機関を受診してください。
単なる「だるさ」「頭が重い」だけに見えても、
・長く続く
・日常生活に支障が出ている
・不安が強い
といった場合は、一度医師に相談しておくと安心です。
そのうえで、「座りっぱなしの見直し」や「姿勢・筋肉のケア」を専門家と一緒に整えていく、という順番もおすすめです。
5. 座りっぱなしから抜け出すための、小さな工夫
最後に、「全部は無理でも、これだけならできそう」というヒントをいくつか挙げてみます。
| やってみたいこと | イメージ |
|---|---|
| 60分に1回だけでも立ち上がる | タイマーやアプリで「1時間に1度、立つ」リマインドをセットする |
| 立ったついでに30〜60秒だけ脚を動かす | その場足踏み・かかと上げ・トイレまで早歩きなど、なんでもOK |
| 午後イチだけ“立ちミーティング”にする | 短い会議ほど、椅子を使わず立ったままサクッと終わらせる |
| 席を立つ「きっかけ」を決めておく | 電話が終わったら必ず一度立つ、メール3件送ったら立つ、など |
大切なのは、「運動らしい運動」を頑張ることよりも、
座りっぱなしの時間を、細かく分断していくこと
です。
WHOのガイドラインにあるような週150分の運動ができれば理想的ですが、
そこを目指しつつも、まずは「今日より明日、座りっぱなしの時間を10〜15分だけ減らしてみる」くらいで十分です。世界保健機関+1
頭が重い・だるい日は、「自分がサボっているからだ」と責めてしまいがちですが、
実はからだの仕組みから見ても、とても自然な反応です。
少しずつ座り方を変えていくだけでも、
「夕方の一番しんどい時間帯が、昨日より少しラクになった」
という変化は積み上がっていきます。
自分のペースで、一緒に“座りすぎ社会”との付き合い方を整えていきましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
