1. 「17時になると甘いものスイッチが入る…」そんな経験ありませんか
仕事や家事がひと段落して時計を見ると、だいたい16〜17時。
そのあたりから急に、
- 甘いコーヒーが飲みたくなる
- チョコやクッキーを「ちょっとだけ」のつもりでつまみ始める
- 気づいたらお菓子の袋が空っぽになっている
そんなパターン、心当たりはないでしょうか。
現場の感覚としても、
「夕方になると甘いものが欲しくてたまらない」
「夕方のおやつをガマンすると、イライラして仕事にならない」
という相談はここ数年かなり増えています。
単に「自分の意志が弱いから」「ストレスがたまっているから」と
性格の問題で片づけてしまう方も多いのですが、
からだの中で起きていることを見ていくと、
- 血糖値の波
- 自律神経やホルモンのリズム
- 睡眠不足やストレスの影響
といった、わりとはっきりした理由が見えてきます。
この記事では、
「夕方になると甘いものが欲しくてたまらない」状態を、
からだの仕組みと生活パターンの両面から整理しながら、
今日から試せる小さな工夫までまとめていきます。
「私もこれ、まさに自分のことだな…」と感じる部分があったら、
全部を変えようとせず、「1つだけやってみる」で十分です。


2. 「甘いものを欲しがる自分」をどう捉えるか
まず、世の中では甘いものを欲しがる自分に対して、
少し厳しめのラベルが貼られがちです。
- 砂糖中毒
- 意志が弱い
- 食べ過ぎ・だらしない
こうした言葉を目にするたびに、
「やっぱり自分はダメなんだ」と落ち込んでしまう方もいます。
ただ、からだの仕組みだけを見ると、
夕方に甘いものを欲しくなるのは、ある意味とても自然な反応でもあります。
夕方はもともと「集中力が落ちやすい時間帯」
研究でも、人間の体内時計(概日リズム)は
昼〜午後にかけて覚醒のリズムが少し落ち込みやすいことがわかっています。
このタイミングで眠気やだるさを感じる、いわゆる「午後の落ち込み」は
ごく普通の現象とされています。疾病管理予防センター+1
そこに仕事や家事のストレス、睡眠不足、運動不足などが重なると、
頭のエネルギー不足を手早く埋めるために「甘いもの」が候補に上がりやすくなります。
「甘いもの=悪」ではなく、使い方の問題
砂糖やお菓子そのものが即NGというわけではありません。
WHOや各国のガイドラインでも、「総エネルギーの10%未満に自由糖を抑える」など、
量と頻度のバランスを意識する方向で整理されています。日本生物資源情報センター
つまり大事なのは、
- どのタイミングで
- どんな種類の甘いものを
- どのくらいの量でとるか
この「設計」の部分です。
「夕方の甘いもの欲求には意味がある」
と一度受け止めたうえで、からだの中で何が起きているのかを
もう少し具体的に見ていきましょう。
3. 夕方の甘いもの欲求の裏側で、からだに起きていること
ここからは、からだの中の流れを
「血糖値・ホルモン」「自律神経」「感覚」の3つの視点で整理していきます。
3-1. 血糖値のジェットコースターが起きていないか
甘いものを欲しくなる背景でよく見られるのが、
血糖値の上下動が大きくなる「血糖値スパイク」と、その後の反動です。
- 昼食で炭水化物中心・早食い
- 甘い飲み物やデザートがセット
- 仕事が立て込んで、ほとんど動かずPC作業
こんなパターンが重なると、食後の血糖値が急に上がり、
それを下げるためにインスリンが多く分泌されます。
その結果、食後2〜4時間経ったころに
血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。
これを「反応性低血糖(リアクティブハイポグリセミア)」と呼び、
- 強い空腹感
- イライラ
- 動悸や手の震え
- 甘いものへの強い欲求
といった症状が出ることがあると報告されています。Mayo Clinic+1
夕方の「お菓子に一直線モード」は、
この反応性低血糖が一因になっているケースも少なくありません。
3-2. 脳はブドウ糖が足りないと、判断力より“即エネルギー”を優先する
脳のエネルギー源はほぼブドウ糖だけです。
血糖値が下がってくると、
- 集中が続かない
- 考えるのが面倒になる
- 判断が雑になる
といった変化が起きやすくなります。
このとき、脳にとっては
「長期的に健康的な選択かどうか」よりも
「いま目の前で手に入るブドウ糖」が重要になります。
結果として、
- デスクの引き出しのお菓子
- コンビニの甘いパンやスイーツ
など、「すぐに血糖値が上がるもの」に
意識が向きやすくなるわけです。
私自身も、原稿に追われて夕方の食事を後回しにしているときに、
チョコレートに手が伸びそうになることがあります。
「これはからだのSOSだな」と気づけるかどうかで、その後の選択も変わってきます。
3-3. 自律神経・ストレス・睡眠不足も甘いもの欲求を後押しする
血糖値だけでなく、
- 長時間のストレス
- 睡眠不足
- 慢性的な疲労
なども、夕方の甘いもの欲求を強くします。
ストレスが続くと、
コルチゾールなどのホルモンの影響で血糖値が変動しやすくなり、
甘いもの・脂っこいものを求めやすくなることがわかっています。
また、睡眠時間が短い人ほど、
高カロリー・高糖質の食べ物を好みやすいという研究も多く報告されています。risescience.com+1
夕方の甘いもの欲求は、
「血糖値の日内リズム × ストレス × 睡眠不足」が重なった結果として
表に出やすいサイン、と捉えることもできます。
4. 生活パターンと「夕方の甘いもの」のつながり
ここでは、よく見られる生活パターンと
夕方の甘いもの欲求のセットを、いくつかのタイプに分けてみます。
4-1. パターン①:朝食を抜いて、昼食ドカ食いタイプ
- 朝はコーヒーだけ、もしくは何も食べない
- 昼は13〜14時ころに一気に食べる(丼もの・麺類・パンなど)
- 間食はほぼなしで、夕方まで集中して仕事
こうした場合、
- 空腹状態が長く続く
- 昼食で血糖値が一気に上がる
- インスリンがたくさん出る
- 食後数時間後に血糖値が下がりすぎる
という流れが起こりやすく、
夕方に「強い空腹感+甘いものへの渇望」が出やすくなります。Mayo Clinic+1
4-2. パターン②:昼食は軽め・甘い飲み物でつなぐタイプ
- 昼はサラダとパンだけ、時間がなくて早食い
- 午後は甘いカフェラテやエナジードリンクで乗り切る
- 水やお茶は意外と飲んでいない
一見「ヘルシーにしている」感覚があっても、
糖質を飲み物でとると血糖値の上がり方が急になりやすく、
その反動で夕方に一気に甘いものが欲しくなることがあります。
液体の糖質は咀嚼がほとんどない分、
満腹感も得にくいことが知られています。
4-3. パターン③:一日中座りっぱなし・動かないタイプ
- 通勤・仕事・家でもほとんど座りっぱなし
- 歩数は一日3,000歩以下
- 夕方になると足がむくみ、頭もぼんやりする
筋肉をあまり使わない時間が続くと、
血糖値を処理するための「受け皿」が働きにくくなり、
血糖コントロールが乱れやすくなります。
日中の軽い運動やこまめな歩行は、
血糖値の安定や食欲のコントロールにも役立つと報告されています。厚生労働省
Q1. 夕方に甘いものを欲しくなるのは、糖尿病予備軍のサインですか?
夕方の甘いもの欲求「だけ」で、
すぐに糖尿病予備軍と決めつけることはできません。
ただし、
- のどが異常に渇く
- 体重が急に減ってきた
- 尿の回数が増えた
といった症状が続く場合は、
血糖値の検査を一度受けておくと安心です。
家族に糖尿病の方がいる、肥満がある、
運動習慣が少ない、などの要素も重なる場合は、
早めにかかりつけ医に相談しておくとよいでしょう。
Q2. 夕方のお菓子は完全にやめるべきでしょうか?
完全にゼロにする必要はありません。
むしろ「一切食べない」と決めるほど、
反動でドカ食いにつながることもあります。
ポイントは、
- 毎日ではなく“頻度”を調整する
- 量を小分けにしておく(個包装や小皿に出す)
- 糖質だけでなく、たんぱく質や脂質・食物繊維も一緒にとる
といった「設計のし直し」です。
たとえば、ケーキ1個よりも、
小さめのチョコ+ナッツ+無糖ヨーグルトの組み合わせの方が
血糖値の上下動は穏やかになりやすいです。PubMed+1
Q3. 夕方に動悸や手の震えが出るときは、受診した方がいいですか?
夕方になると、
- 動悸が強くなる
- 手の震え・冷や汗・ふらつきが出る
- 何か食べると落ち着くが、またすぐ同じことをくり返す
といった症状がある場合は、
反応性低血糖や別の病気が隠れている可能性もあります。Mayo Clinic+1
頻度が多い、症状が強い、
仕事や日常生活に支障が出ていると感じたら、
自己判断で我慢せず、一度医療機関に相談してみてください。
5. 今日からできる「夕方の甘いもの」とのちょうどいい付き合い方
最後に、全部を完璧に変えなくてもできる、
現実的な工夫をいくつか挙げてみます。
5-1. 昼食の「質」と「スピード」を少しだけ見直す
- 白いパン・丼もの・麺類だけで済ませない
- たんぱく質(肉・魚・豆・卵)を必ず一品
- 野菜や海藻・きのこなど、食物繊維を先に食べる
- 早食いではなく、よく噛んで食べる
こうした食べ方は、血糖値の上がり方を穏やかにし、
食後の眠気や夕方の血糖値の落ち込みを
和らげる効果が期待できます。PubMed+1
5-2. 夕方の“お助け間食”を、甘さ+αの組み合わせにする
「夕方に何も食べない」よりも、
むしろ「質の良い間食を少しとる」方が
血糖コントロールが安定しやすいこともあります。
おすすめのイメージは、
| 間食の例 | ポイント |
|---|---|
| 無糖ヨーグルト+果物少し | たんぱく質+カルシウム+ビタミンC |
| ナッツ+小さめのチョコ | 脂質と食物繊維で血糖値の上昇をゆるやかに |
| 小さめおにぎり+味噌汁(インスタントでもOK) | 「甘いもの」ではなく、次の食事を前倒しするイメージ |
「甘いものだけ」ではなく、
たんぱく質や脂質、食物繊維も一緒にとることで、
血糖値のジェットコースターをやわらげることができます。Frontiers+1
5-3. 15〜20分だけでも「立ち上がって動く時間」を入れる
夕方の「頭が回らない+甘いものが欲しい」状態のときこそ、
5〜10分でいいので席を立ち、軽く歩いたりストレッチをしてみてください。
- 血流が良くなる
- 筋肉がブドウ糖を使ってくれる
- 気分転換になり、ストレスも少しリセットされる
これだけでも、「甘いもの一択」だった選択肢が
「ちょっと一呼吸おいてから考えよう」に変わることがあります。
「夕方になると甘いものが欲しくてたまらない」
そんな自分を責める必要はありません。
からだはからだなりに、
「エネルギーが足りないよ」「ちょっと無理が続いているよ」と
サインを送っているだけです。
そのサインの意味を知り、
昼食のとり方や間食の選び方、動くタイミングを
ほんの少し整えていくことで、
夕方の甘いものとの距離感は、ぐっとラクなものに変わっていきます。
今日できそうなことを、ひとつだけ選んで試してみてください。
それだけでも、からだの中では確実に変化が始まっています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
