「急に味がしない」「何を食べてもおいしくない」「そもそも食欲がわかない」。
風邪やコロナのあと、こんな状態が続くと「このまま食べられなくなったらどうしよう…」と不安になりますよね。この記事では、味覚・嗅覚が乱れている時期に「どこまで様子を見てよくて」「どこからは注意したほうがいいか」、そして食べられないなりに守りたい“最低ライン”を、一緒に整理していきます。

1. 「味がしない」「香りがしない」ときに起こる心配ごと
ここ数年、「風邪をひいてから味が変」「コロナのあと、香りの感じ方がおかしい」という相談はかなり増えました。
2025年現在、以前ほど“典型的な”味覚障害は減ってきたものの、「風邪っぽい症状のあとに、なんとなく味がぼんやりして食欲が出ない」というケースは今もよく聞かれます。
味や香りのトラブルが続くと、こんなモヤモヤが重なりやすくなります。
- 「またコロナだったのかな?」という不安
- 「栄養が足りなくて回復が遅れるのでは?」という焦り
- 「このまま味覚が戻らなかったら…」という将来への心配
不安そのものがストレスになり、自律神経や消化の働きも落ちやすくなるので、さらに食欲が落ちる…という悪循環にも入りやすいところです。
ここで大事なのは、「ほとんどの味覚・嗅覚の変化は時間とともに良くなる」という事実と、「それでも注意が必要なサイン」がある、という2つを分けて考えることです。この記事では、その境界線をなるべくわかりやすく言葉にしてみます。
2. 風邪やコロナで味覚・嗅覚が変わるのはめずらしくない
まず、「味がしない」「香りがしない」は、決して特殊なトラブルではありません。
とくにコロナでは、世界中の研究で3〜4割前後の人が味覚の変化を自覚したという報告があります。JAMA Network
味覚と嗅覚はセットで働いている
よく言われる「味がしない」の多くは、実は“嗅覚”の問題です。
- 甘い・しょっぱい・酸っぱい・苦い・うま味 → 主に「舌」の味覚
- カレーの香り・コーヒーの香り → 主に「鼻」の嗅覚
風邪やコロナで鼻の粘膜が炎症を起こしたり、嗅覚の神経がダメージを受けると、「香り」の情報が脳に届きにくくなり、「全部同じ味」「紙を食べているみたい」と感じやすくなります。
回復の目安
- 新型コロナ関連の研究では、味やにおいの障害は多くの人が1〜3週間ほどで改善するとされています。ACS Publications+1
- ただし一部では、3か月以上〜2年ほど長引くケースもあり、嗅覚障害を経験した人の5〜10%前後は、2年後も完全には戻っていないという報告もあります。Frontiers
ここだけ読むと不安になるかもしれませんが、大多数は数週間〜数か月のスパンで少しずつ回復していくことも同じ研究の中で示されています。
2025年の流行株では、初期の頃と比べて「急に完全に味がゼロになる」ケースは少なくなり、「においが弱い」「味がぼんやりする」といった“軽め〜中等度”の変化が中心という印象です。
3. 食欲がなくなるとき、からだの中では何が起きているか
味覚・嗅覚の乱れと「食欲がない」は、からだの内部ではつながっています。
炎症と自律神経のモードチェンジ
風邪やインフル、コロナなどの感染症では、ウイルスと戦うために体内で炎症反応が起こります。このとき、免疫細胞から放出される「サイトカイン」という物質は、脳に
- 「だるい」「眠い」
- 「食べたくない」
といったサインも送ります。これは**からだを休ませて回復に集中させるための“防御モード”**と考えるとイメージしやすいかもしれません。
同時に、自律神経も「活動モード(交感神経優位)」から「休息モード(副交感神経優位)」へ揺れ動き、消化器の動きが落ちて「少し食べただけでムカムカする」「お腹が空いた感覚がこない」といった状態になりやすくなります。
嗅覚が落ちると、「おいしさ」が減る
嗅覚が弱くなると、脳が「ご褒美」として感じる部分も減ってしまうので、心理的にも「食べる楽しみ」がガクッと下がります。
- いつものコーヒーの香りがしない
- 好きなカレーの“香り立ち”が弱い
- ごはんの湯気から感じるにおいが薄い
こうした小さな“がっかり”が積み重なると、「食べても満足感が少ない → なおさら食べたい気持ちが起きない」というループにも入りやすくなります。
「食べられない不安」そのものが、からだを固くする
心理面も大事です。
「食べなきゃ」「栄養を取らなきゃ」と自分を追い込むほど、体は緊張し、胃腸もぎゅっと固まりやすくなります。呼吸も浅くなり、ますます自律神経のバランスが乱れ、食欲が戻りにくくなります。
なので、
- 「食欲が落ちるのは、からだが戦闘中だから」
- 「ある程度までは自然な防御反応」
と知っておくことが、一歩引いた視点を持つ助けになります。そのうえで、「完全に食べない・飲まない状態が続かないように、小さな工夫で底を支える」イメージが大切です。
4. 「食べられない不安」と付き合いながら守りたい2つのライン
ここからは、典型的な生活パターンを思い浮かべながら、「ここだけは意識しておきたいライン」を2つに絞ってみます。
ライン①:水分ライン(脱水にならないこと)
多くの医療機関や公的な情報では、「風邪やインフル、コロナのときに最も大事なのは“何を食べるか”よりも“水分をどう確保するか”」と繰り返し強調されています。Cleveland Clinic+1
目安として意識したいこと
- 1日に「透明〜薄い黄色の尿」が2〜3回は出ているか
- 24時間を通して、少しずつでも水分(お茶・スープ・経口補水液など)がとれているか
逆に、
- 尿の回数が極端に少ない
- 尿が濃い茶色で量も少ない
- 立ち上がるとフラッとする・強いだるさや頭痛がある
といった状態は、医学的にも脱水のサインとして挙げられています。nhs.uk+1
こうした症状が強いときは、「食べられない」よりも「水もほとんど飲めていない」こと自体が危険信号です。早めに医療機関への相談を検討してよい状況です。
ライン②:エネルギー・たんぱく質ライン(“少しでも”を積み重ねる)
理想はバランスの取れた3食ですが、風邪やコロナで味覚・嗅覚がおかしい時期にそこを目指すと、かえって苦しくなりやすいです。
**「1日トータルで、ちょっとずつ栄養を足していく」**くらいの感覚が現実的です。
| 食べやすいものの例 | ポイント |
|---|---|
| おかゆ+卵・豆腐 | 香りが弱くても“とろみ・温かさ”で安心感が出やすい |
| 具だくさん味噌汁・スープ | 水分と塩分・ミネラル・少量のたんぱく質を同時に補給しやすい |
| ヨーグルト+バナナ・きな粉 | さっぱり食べやすく、エネルギーとたんぱく質を少しずつ足せる |
| ゼリー飲料・プリン類 | 「どうしても食欲がゼロ」のときの“つなぎ”として活用 |
よくあるクセ
- 「ちゃんとしたごはんを食べなきゃ」と、大皿の食事を無理に詰め込む
- 口当たりが楽だからと、菓子パンや甘い飲み物だけで済ませてしまう
- 味がしない不満から、刺激物(辛いもの・アルコール)に走ってしまう
こうしたクセは、一時的に満足感が上がっても、胃腸への負担や脱水を招きやすく、回復を遅らせることにもつながります。
「水分+少しのエネルギー・たんぱく質」のセットが、細々でも1日のなかで何回かとれていれば、多くの人では数日〜1週間ほどで“底”は守りやすくなります。
Q1. 風邪で味がしないときも、無理にでも3食きっちり食べたほうがいいですか?
「毎食しっかり」は、元気なときの目安と考えてよいです。
味がしない・食欲がないときに大事なのは、
- 水分がとれているか
- 1日のどこかで、少しでもエネルギーとたんぱく質が入っているか
という“トータルの底”です。
1日3回に分けなくても、
- 朝:経口補水液+ヨーグルト
- 昼:おかゆ+卵
- 夕:スープ+バナナ
のように「小分けに3〜4回」「半量ずつ」でも十分意味があります。むしろ無理して一度に詰め込むと、胃もたれや吐き気で逆効果になることもあります。
Q2. コロナ後、1〜2か月経っても味覚がおかしいときはどうしたらいいですか?
コロナに伴う味覚・嗅覚の変化は、多くの人で数週間〜数か月のあいだにゆっくり改善していきますが、一部では長引くことも報告されています。Frontiers
- 1〜2か月たっても「まったく変化がない」
- 「焦げ臭い」「変な味がする」など、違和感が強く生活の質が落ちている
といった場合は、耳鼻咽喉科などで一度相談してみる価値があります。
そのうえで、においのリハビリ(香りを決まった順番で毎日かぐ訓練)や、香り以外の情報(温度・食感・見た目)で“おいしさ”を感じる工夫を取り入れていくと、生活のしんどさを少し軽くできることが多いです。
Q3. 水もほとんど飲めない・フラフラする日は、どのタイミングで受診を考えるべきですか?
次のようなサインがあるときは、「様子見をやめて、医療機関に相談」を検討してよい目安です。
- 水分がほとんどとれず、尿の回数・量が明らかに少ない
- 強いめまい・ふらつき・意識がぼんやりする
- 息苦しさ、胸の痛み、ぐったりして起きていられない
- 高熱が3日以上続く・悪化している
世界保健機関(WHO)や各国のガイドラインでも、こうした症状は「受診を急いだほうがよいサイン」とされています。世界保健機関+1
不安なときは、「行くほどではなかったらどうしよう」と悩みすぎず、電話で相談してみるだけでも気持ちがラクになることがあります。

5. 今日からできる、“味が変”な時期の小さな工夫
最後に、味覚・嗅覚が乱れている時期でも取り入れやすい、現実的なアイデアをいくつかまとめます。全部やる必要はなく、「これならできそう」と思えるものを1〜2個選ぶくらいで十分です。
1)温度と食感で「おいしさ」を取り戻す
味そのものよりも、
- 温かくてホッとする
- つるっと飲み込みやすい
- 口当たりがなめらか
といった感覚から「心地よさ」を感じることがあります。
- ほんのり温かいおかゆやうどん
- とろみのあるスープ類
- 冷やしたゼリー飲料やプリン
など、“口の中での感覚”を大事にしてみてください。
2)においが弱いぶん、見た目と“安心感”を大事にする
香りがわかりにくいときは、**見た目と「食べ慣れ感」**が安心材料になります。
- いつも食べている銘柄のヨーグルト
- 昔から馴染みのある味噌汁の味
- 子どもの頃から慣れているおかゆの塩加減
新しい食べ物にチャレンジするよりも、「自分のからだが覚えている味」を少しだけ口に運ぶ方が、緊張せずに済むことも多いです。
3)「完璧な食事」ではなく「底を支える一口」を意識する
味覚・嗅覚が落ちている時期は、「バランスのいい完璧な食事」を目指すほど、現実とのギャップに落ち込みやすくなります。
- 今日はスープとヨーグルトが入ったからOK
- きのうはゼリー飲料だけだったけれど、今日はおかゆも食べられた
そんなふうに、「一歩分の前進」をちゃんと自分で認めてあげることも、回復のエネルギーになります。
味や香りの変化は、どうしても不安を連れてきますが、からだはじわじわと“戻る力”を持っています。水分とちいさな一口を積み重ねながら、その力が働きやすい土台を整えてあげるイメージでいきましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
