“また眠れないかも”が頭から離れない夜に更年期世代のための「不安スパイラル」抜け出しガイド

更年期世代の女性が夜中に目を覚まし、「また眠れないかも」と不安を抱えながらベッドで横になっている様子をイメージしたイラスト

「また眠れないかも」「明日つらくなるかも」が頭の中をぐるぐる回る夜。
眠りたいのに、時計ばかり見てしまって、余計に目が冴える。そんな“考えごとの渦”に飲み込まれている方は少なくありません。この記事では、更年期世代に多い「ホットフラッシュ+不安+睡眠トラブル」の中でも、とくにやっかいな“考え方のスパイラル”に焦点をあてて、抜け出すヒントをまとめていきます。


目次

1. 「また眠れないかも」と身構えてしまう夜が続くとき

更年期の相談で多いのは、「寝つきよりも“途中で目が覚めてから”がしんどい」という声です。

たとえば、こんな流れがよくあります。

  • 夜中にホットフラッシュやトイレでぱっと目が覚める
  • 「また起きちゃった…」とがっかりする
  • 「ここで眠れないと明日つらい」「また仕事に支障が出る」と不安が膨らむ
  • 頭が冴えてきて、結局1〜2時間眠れない

いわゆる「不眠症状」を少しでも感じる40〜60代女性は、日本の調査で5割を超えると言われていますし、強く感じる人も1〜2割いると報告されています。joseikenko.com
特に更年期以降の女性では、睡眠時間が足りていない人の割合が増え、質的にも「途中で何度も目が覚める」「早朝に目が覚めてしまう」といった訴えが多くなります。J-STAGE

その背景には、ホルモンの変化やホットフラッシュもありますが、もう一つの大きな要素が「考え方のクセ」です。

  • 「眠れなきゃダメだ」
  • 「◯時間寝ないと、明日は最悪になる」
  • 「ちゃんと眠れない私はおかしいのかも」

こんな“きびしめのルール”が頭の中にあると、睡眠そのものがプレッシャーになり、布団に入るだけで緊張してしまいます。この記事では、この「考え方のクセ」に光をあてていきます。


2. 更年期の「眠れない不安」とはどんな状態なのか

「更年期で眠れない」と聞くと、多くの方は「ホットフラッシュで汗だくになって目が覚める」イメージを持ちます。もちろんそれも大事な要素ですが、実際にはこんなパターンが混ざり合っています。

  • 寝つきは悪くないが、夜中に何度も目が覚める
  • 目が覚めた後、「眠らなきゃ」と焦って、そこから眠れなくなる
  • 起きている時間のほとんどを「眠れない不安」で埋め尽くしてしまう

実は、ホットフラッシュのような更年期症状を持つ女性は、そうでない女性に比べて「寝つきの悪さ」や「途中で目が覚めやすい」といった不眠症状を2倍ほど経験しやすい、という報告もあります。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

ここで整理しておきたいのは、

  • 「眠れない夜」が時々あること自体は、誰にでも起こりうる
  • つらさを強めているのは、“眠り”そのものだけでなく、眠れないことに対する不安や自己批判

という点です。

「不安スパイラル」が起こっているときの頭の中

不安が強くなっている夜の思考を、少しだけ言葉にしてみると、こんな流れになりがちです。

目が覚める
→ 「まただ…」とがっかりする
→ 「今日は絶対に寝ないとダメな日なのに」と焦る
→ 「このままでは倒れてしまうかも」と最悪の想像が走る
→ 心臓がドキドキして、体も熱くなる
→ ますます眠れない

このように、「眠れなさ」そのものだけでなく、それに続く解釈やイメージが不安を増幅させている状態を、ここでは「不安スパイラル」と呼ぶことにします。


3. からだと心で起きていること|ホルモン・自律神経・思考のつながり

更年期の「眠れない不安」を理解するには、からだの変化と心の動きをセットで眺めることが大切です。

ホットフラッシュと睡眠の関係

女性ホルモン(エストロゲン)がゆっくり低下していく時期には、体温調節を担う脳の部分がゆらぎやすくなり、急なほてりや発汗が起こりやすくなります。

国内の調査では、中高年女性のホットフラッシュ有症者は、不眠症状(寝つきの悪さや途中で目が覚める)を経験する確率が、そうでない人の約2倍だったと報告されています。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
海外の研究でも、閉経前後の女性のうち、ホットフラッシュや寝汗といった症状を持つ人の半数以上に睡眠障害がみられた、というデータがあります。Lippincott Journals+1

つまり、
ホットフラッシュそのものが睡眠を邪魔する
という“物理的な要因”は、たしかに存在します。

自律神経と「警戒モード」

もう一つのポイントは、「自律神経の警戒モード」です。

  • 「また眠れないかも」と身構える
  • 「ちゃんと眠れないと、仕事や家事が回らなくなる」と考える
  • 「このまま不眠がずっと続くのでは」と将来を心配する

こうした思考は、体にとっては「危険が近づいている」というサインとして受け取られます。
その結果、交感神経(活動モード)が優位になり、

  • 心拍が速くなる
  • 体温が下がりにくくなる
  • 筋肉がこわばる

といった変化が起きます。

眠りは本来、「警戒をゆるめて、からだと脳のスイッチを切る時間」です。そこに「今日こそきちんと寝なくては」という強い義務感と不安が乗ると、スイッチを切りたいのに、同時にブレーキも踏んでいるような状態になってしまいます。

不安スパイラルを支えている「頭の中のルール」

認知行動療法では、こうした不安スパイラルの背景にある「頭の中のルール」や「無意識の前提」に注目します。たとえば、

  • 「大人なら毎日7〜8時間きっちり眠れないとダメ」
  • 「一晩眠れないだけで、健康に大きなダメージが出る」
  • 「他の人はちゃんと眠れているのに、自分だけおかしい」

といった考え方です。

もちろん、慢性的な睡眠不足が続けば、高血圧や糖尿病、うつなどのリスクが高まるという報告がありますし、長津田レディースクリニック(産婦人科・乳腺外科)+1
成人が心身の健康を保つには、質の良い睡眠を6時間以上確保することが望ましいという研究もあります。J-STAGE

ただ、「一晩うまく眠れなかった=すぐに大きな病気になる」というほど、からだは脆くはありません。
問題なのは、“睡眠不足そのもの”よりも、「眠れない夜=終わりだ」と受け取ってしまう極端な解釈の方だと考えられます。

認知行動療法が「不眠の第一選択」とされている理由

慢性的な不眠に対しては、薬だけでなく「考え方と行動のトレーニング」で改善を目指す認知行動療法(CBT-I)が、海外のガイドラインで第一選択の治療とされています。acponline.org+2睡眠医学アカデミー+2

CBT-Iでは、

  • 「眠れなきゃダメだ」という極端なルールを少し柔らかくする
  • 布団の中で不安を育ててしまう行動(時計を見る、スマホを見るなど)を手放す
  • 眠りやすい生活リズムを、からだに再教育していく

といったアプローチを続けていきます。
更年期の不眠も、「ホルモンの変化+このような思考と行動のクセ」が合わさって起こっていることが多い印象です。


4. 夜の「クセ」を少し整える|不安の棚卸しと再入眠ルーティン

ここからは、認知行動療法の考え方をベースに、実際の“夜の過ごし方”を組み立てていきます。完璧を目指す必要はなく、どこか1〜2か所だけでも変えてみるイメージで読んでみてください。

寝る前に「不安の棚卸し」をしておく

眠ろうとしたときに頭がフル回転してしまうのは、「考えごとが夜まで持ち越されている状態」と言えます。

おすすめは、寝る30〜60分前に、あえて「不安タイム」を先に済ませておくことです。

やり方はシンプルです。

  1. 紙かノートを準備する
  2. 「いま気になっていること」を、どんな小さなことでも箇条書きにする
  3. それぞれを、次の3つに分ける
    • 今日の自分にできることがある
    • 明日以降の自分に任せること
    • 今の自分にはどうにもできないこと
  4. 「今日の自分にできること」があるなら、簡単な一歩を書いておく
    • 例:「明日の朝、5分だけスケジュールを整理する」
  5. 「明日以降」と「どうにもできないこと」には、短い一言を添える
    • 例:「これは明日の私にパス」「これはいったん手放す練習」

ポイントは、不安を頭の中に置きっぱなしにせず、「紙の上にいったん預ける」イメージを持つことです。
私自身も、考えごとが多い日は、あえてメモに書き出してから布団に入るようにしています。

夜中に目が覚めたときの「再入眠ルーティン」

次は、「ホットフラッシュやトイレで起きてしまった後、どうするか」です。

ここで役に立つのが、自分なりの**“再入眠ルーティン”**を決めておくこと。

たとえば、こんな流れです。

  1. 時計を見ない
    • 「あと◯時間しか眠れない」と数える行動は、不安を増やします。
  2. からだの感覚に意識を向ける
    • 足先→ふくらはぎ→太もも…と、内側から順番に「今ここにある感覚」を感じていく(ボディスキャン)
  3. 息を少し長めにはく
    • 「4秒で吸って、6〜8秒で吐く」を目安に、5〜10呼吸だけ行う
  4. 自分への一言を決めておく
    • 例:「眠れなくても、横になっているだけで体は休めている」
    • 例:「きょう無理なら、あした少しペースを調整すればいい」

あらかじめ「この流れでいこう」と決めておくと、夜中に迷う時間が減ります。
**“不安に巻き込まれるのではなく、やることを淡々とこなす”**ほうへ、意識を少しずつ切り替えやすくなります。

「やってしまいがちな行動」をやさしく減らす

一方で、「ついやってしまうけれど、不安を育ててしまいやすい行動」もあります。

  • ベッドでスマホ検索を始める(「更年期 不眠 最悪」など)
  • 「眠れない 病気」などのワードで深夜に調べ込む
  • 布団に入る時間が日によってバラバラになる
  • 寝る直前まで仕事や家事を詰め込む

これらはどれも、「脳を覚醒させる」「不安な情報だけを拾いやすくする」という点で、睡眠には逆風です。
全部をやめなくてもかまいませんが、**「寝室でのスマホ検索だけはやめる」「布団に入る時間だけは、できるだけ一定にする」**など、1つだけルールを決めてみると良いことが多いと感じます。


Q1. 一晩ほとんど眠れなかったら、翌日は仕事を休むべきでしょうか?

からだの状態や仕事内容にもよりますが、一晩眠れなかっただけで、すぐに重大な健康被害が起こることは少ないとされています。
もちろん注意力や集中力は落ちやすくなるため、運転や危険作業はできるだけ避けた方が安心です。PMC+1

どうしても休めない場合は、

  • いつもより「完璧」を求めない
  • 重要度の高い作業を午前中に集中させる
  • 昼休みに10〜20分の仮眠をとる

など、「その日をなんとかやり過ごす工夫」にシフトしてみてください。

Q2. 眠れないときは、すぐ睡眠薬に頼った方がいいですか?

睡眠薬が必要になる場面もありますし、医師の指示のもとで使うこと自体が悪いわけではありません。
一方で、慢性的な不眠に対しては、先ほど触れた認知行動療法(CBT-I)が第一選択とされており、薬だけに頼らないアプローチも強く推奨されています。acponline.org+2睡眠医学アカデミー+2

  • 「ここ数週間、ほぼ毎晩眠れない」
  • 「日中の生活に大きな支障が出ている」

と感じる場合は、薬のことも含めて、医療機関で相談してみるのがおすすめです。

Q3. どのくらいつらくなったら、医療機関に相談した方がいいでしょうか?

目安としては、

  • 眠れない状態が3週間〜1か月以上続く
  • 日中の仕事・家事・対人関係に、明らかな影響が出ている
  • 気分の落ち込みや意欲低下も同時に強くなっている

このような状況では、一人で抱え込まずに受診を検討してよいタイミングといえます。
更年期の不眠は、婦人科・心療内科・睡眠外来など、複数の窓口で相談することができます。


5. 眠れない夜があっても大丈夫だと思えるために|今日からの小さな一歩

最後に、「不安スパイラル」から少し離れるための具体的な一歩を、いくつか整理しておきます。

行動のヒントイメージしてほしいこと
寝る前の「不安の棚卸し」を5〜10分だけする不安を頭の中に抱えたまま布団に入らず、紙にいったん預けてから眠りのモードに入る
夜中に目が覚めたときの再入眠ルーティンを決めておく迷う時間を減らし、「やること」に意識を向けることで、不安の渦に飲まれにくくする
眠れなかった翌日は“リカバリーの日”と位置づける完璧を求めず、こなせる仕事量を2〜3割減らして、翌夜にバトンを渡すイメージを持つ

とくに大事にしてほしいのは、

  • 「眠れない夜=すべてがダメになる夜」ではない
  • からだには、本来「戻る力」が備わっている

という視点です。
一晩や二晩うまく眠れなくても、からだは案外タフです。
「きょうはうまくいかなかったけれど、この一つだけはやってみた」と、自分に○をつけられるポイントを増やしていけると、少しずつ不安スパイラルの勢いが弱まっていきます。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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