「このまま注射を続けるのかな」「そろそろマンジャロを卒業したいけれど、リバウンドが怖い」
そんな揺れる気持ちを抱えたまま、誰にもはっきり相談できずにいる方もいると思います。この記事では、マンジャロ(チルゼパチド)を卒業するとき・卒業したあとに起こりやすいからだとメンタルの変化を整理しながら、「何が起きているのか」「どこに気をつけていくと良いのか」をやさしく言葉にしていきます。読み終わるころには、「全部完璧じゃなくていいけれど、このあたりだけ意識してみようかな」と思えていたらうれしいです。


1. 「卒業したら全部戻るのでは?」という不安が増えています
ここ最近、「マンジャロをいつまで続けたらいいのか」「いったんやめたら体重も血糖も一気に戻りそうで怖い」という声が世界的に増えています。
体重が落ち、血圧や血糖、コレステロールなどの値が改善した人ほど、「やっとここまで来たのに、また元に戻るのでは」という不安が強くなりやすいからです。
実際、マンジャロの有効成分であるチルゼパチドを用いた臨床試験では、多くの人が20%前後の体重減少を経験しています。PubMed+1
一方で、一定期間の治療後に薬を中止すると、体重がゆっくりと、あるいはかなりの割合で戻っていく人も少なくありません。
そのため、
- 「やめたいけれど、やめたら終わる気がする」
- 「一生打ち続けないといけないの?」
- 「少し体重が戻るだけで、ものすごく失敗した気分になる」
と、からだ以上に心が揺さぶられやすくなります。
この記事では、
「リバウンド=ダメな自分」という見方から少し離れて、
「慢性疾患に対する治療を、どう長く・上手につき合っていくか」という視点で、マンジャロ卒業後の世界を見直してみます。
2. マンジャロ卒業後、からだにどんな変化が起こりやすいのか
まずは、世の中で言われている「マンジャロをやめた後」の話を整理しておきます。
2-1. 研究では「体重がある程度戻る」ことが確認されている
肥満や2型糖尿病の人を対象にしたSURMOUNT-4試験では、36週間チルゼパチドを続けて体重が10%以上減った人を、その後も継続する群と、プラセボ(偽薬)に切り替える群に分けて1年間追跡しました。
その結果、薬を継続した人は体重減少を維持・さらに進めたのに対し、途中でやめた人の82%は、減らした体重の25%以上を再び増やしていました。The Guardian+1
さらに解析では、体重が戻るにつれて、悪玉コレステロールや血圧、血糖など、良くなっていた項目の一部も「元に近い値」に戻っていくことが報告されています。The Guardian
また、別のメタ解析では、GLP-1受容体作動薬などの減量薬をやめてから1年以内に、平均で「減らした体重の約6割が戻る」という傾向が示されています。SpringerLink
数字だけ見るとショックですが、「戻る可能性がある」こと自体は、ある程度予測しておいた方が心の準備がしやすいポイントです。
2-2. 「食欲が戻ってくる」のはからだの自然な反応
マンジャロを使用しているあいだ、多くの人が「食欲が落ちた」「食べ物のことばかり考えなくなった」と感じます。これは、腸から出るホルモン(GLP-1やGIPに似た働き)を利用して、
- 胃の動きをゆっくりにする
- 満腹感を高める
- 脳の「食べたい」という信号を弱める
といった仕組みが働いているためと考えられています。ClinicalTrials+1
マンジャロを卒業すると、この“抑えられていた食欲のブレーキ”が少しずつ弱くなり、
- 前より空腹を感じやすい
- 以前好きだったお菓子や揚げ物の誘惑が強くなる
- 「食べ物のことを考える時間」が増える
といった変化が起こりやすくなります。
これは意志が弱くなったわけではなく、「薬のサポートがなくなり、もともとのからだのセッティングに近づいている」という見方の方が、しっくり来るかもしれません。
2-3. 「肥満は慢性疾患」という前提が、卒業後の見方を変える
カナダや国際的な肥満診療ガイドラインでは、「肥満は、単に体重の問題ではなく、長くつき合っていく慢性の病気」として位置づけられています。PMC+1
また、糖尿病診療ガイドラインでも、肥満・糖尿病の治療は、血糖や体重の目標だけでなく、長期的な心血管リスクや生活の質の改善を重視する必要があるとされています。糖尿病ジャーナル+1
「風邪薬のように、良くなったら飲み切って終わり」というより、
- 高血圧の薬を続けながら血圧を管理する
- 喘息の吸入薬を使いながら発作を予防する
といったイメージに近いのが、現在の標準的な考え方です。
そう考えると、
「マンジャロをやめたらすべて終わり」ではなく、
「今後も一生続く“体重・代謝の管理”というテーマに、どんな形で向き合っていくか」
という長い旅の中で、「ある期間、マンジャロの力を借りた」と捉えることもできます。
3. マンジャロ卒業後、からだの中で何が起きているのか
ここからは、少しだけ仕組みの話です。
マンジャロを卒業したときに起こる変化を、「ホルモン」「代謝」「感覚とメンタル」の3つの面から眺めてみます。
3-1. 体重が減ったあとのホルモンの揺り戻し
体重が大きく減ると、多くの研究で
- 満腹ホルモン「レプチン」が低下しやすい
- 空腹ホルモン「グレリン」が増えやすい
という傾向が知られています。Wiley Online Library
これは、からだが「元の体重に戻ろう」とする防御反応のようなもので、
- 省エネモードに入る(消費エネルギーが下がる)
- 少しの食事でも脂肪をため込みやすくなる
といった変化が、数か月〜1年以上続くことがあります。
マンジャロを使っているあいだは、GLP-1/GIPの作用でここがある程度“上書き”されていますが、卒業後は少しずつ「もともとの設定」に近づくため、
- 同じ量を食べても満腹感が得にくい
- 以前より、ちょっとした間食で体重が動きやすい
と感じることがあります。
3-2. 基礎代謝と筋肉のバランス
体重が減ると、脂肪だけでなく、ある程度は筋肉量も減ります。
いくつかの減量薬の試験では、体重減少のうち約3割前後が除脂肪量(筋肉や臓器など)という報告もあります。PubMed
筋肉が減ると、安静時に消費されるエネルギー(基礎代謝)が下がるため、
- 以前と同じ食事量でも、エネルギー過多になりやすい
- 体重が戻るとき、脂肪が中心になりやすい
という「ちょっと損をした状態」でスタートすることがあります。
卒業の前後で、軽い筋トレや身体活動量を増やす意義が語られるのは、このあたりの背景があるためです。
3-3. 脳の「食べたい」スイッチとメンタルの揺れ
最近の小さな研究では、チルゼパチド投与中に脳の報酬系(特に側坐核)の「食べ物に対する反応」が一時的に静かになる様子が観察されています。Reuters
この“フードノイズの静まり”は、食べ物のことで頭がいっぱいだった人にとって、大きな救いになりえます。
一方で、薬の効果が弱まったり中止されたりすると、
- 食べ物のことを考える時間が増える
- 「抑えられていた欲求」が一気に戻ってきたように感じる
という現象が起こります。
これに「せっかく頑張ったのに」「自分はダメだ」というラベリングが重なると、自己嫌悪からのやけ食い・スリップに繋がりやすくなります。
ここで大事なのは、
「食欲が戻った=失敗」ではなく、
「薬のサポートが減った分、自分の感覚と向き合う段階に入った」
と視点を変えてみることです。
4. よくある生活パターンと、リバウンドのつながり方
では、日常生活の中では、どんなクセが「リバウンドしやすい土台」をつくってしまうのでしょうか。いくつか代表的なパターンを挙げてみます。

4-1. 「薬があるから大丈夫」と、生活を変えないままゴールまで来た場合
試験の解析でも、「薬を使っているあいだに、生活習慣がほとんど変わっていない人ほど、やめたあと体重が戻りやすい」という指摘があります。The Guardian+1
- 食事の質は変わっていない
- 運動は増えていない
- ストレスや睡眠のパターンもそのまま
この状態でマンジャロを卒業すると、「からだは元の生活パターンにあわせた形に戻ろうとする」ので、どうしてもリバウンドの風が吹きやすくなります。
4-2. 「目標体重=ゴール」になってしまうパターン
心理学的には、「数字のゴール」を達成した瞬間、人は燃え尽きやすいといわれます。
目標体重を達成したあと、
- ご褒美のつもりで外食・スイーツが増える
- 「もう制限しなくていい」という解放感から、少しずつ食事が元に戻る
- 体重計に乗る頻度が減り、変化に気づきにくくなる
といった流れが、ゆっくりと積み上がっていきます。
「マンジャロ卒業=テスト合格」ではなく、
「ここからは、自分の生活でこの状態を維持していくフェーズ」という見方に切り替えられると、ゴール後の行動が変わってきます。
4-3. 些細な増加を「全部ダメ」ととらえてしまう思考のクセ
1〜2kg体重が戻っただけで、
- 「やっぱり自分は続かない」
- 「どうせ全部戻るなら、今食べてしまおう」
と極端な考えに振れてしまうのも、よくあるパターンです。
行動療法の視点では、
「ゼロか100か」の白黒思考や、「一度の失敗=すべて台無し」という考え方は、リバウンドスパイラルを強める要因になります。
ここまで読んで、心当たりのあるところはあったでしょうか。
完全に当てはまっていなくても、「このあたり、ちょっと修正できそうだな」という場所が見つかれば十分です。
Q&A:マンジャロ卒業とリバウンドの素朴な疑問
Q1. マンジャロをやめたら、必ずリバウンドしますか?
必ずしも「全員が元通り」になるわけではありません。
ただ、複数の研究で「体重がある程度戻りやすい」ことは確かで、
- どのくらい戻るか
- どのくらいのスピードで戻るか
は、生活習慣・もともとの体質・合併症の有無などによって大きく変わります。SpringerLink+1
重要なのは、「戻る可能性があることを前提にしつつ、どこでブレーキをかけるか」を一緒に考えてくれる医療者を持つことです。
Q2. マンジャロは、一生続けないといけないのでしょうか?
現時点では、「必ず一生続けるべき」とも「必ず途中でやめるべき」とも言い切れません。
肥満や糖尿病を「慢性疾患」と考えると、長期的な治療が必要になる人もいますし、途中で他の治療法(運動・栄養・行動療法・他の薬など)にシフトしていく人もいます。PMC+1
「合併症の状態」「薬の効果と副作用」「経済的な負担」「ご本人の価値観」などを主治医と一緒に整理したうえで、継続・減量・中止の方針を決めていくのが現実的です。
Q3. 自分の判断で急にやめても大丈夫ですか?
自己判断での急な中止は、基本的にはおすすめできません。
特に、2型糖尿病の治療として使っている場合、血糖コントロールが急に悪化するリスクがありますし、血圧や脂質の値も変動しやすくなります。The Guardian+1
- やめたい理由(費用・副作用・生活の変化など)
- 現在の検査値や体調
- 他に使える選択肢
を主治医に正直に伝えたうえで、「どう減らしていくか」「他の治療とどう組み合わせるか」を一緒に決めていくのが安全です。
5. 今日からできる、「マンジャロ卒業後」との付き合い方
最後に、完璧を目指さず、それでも地味に効いてくる小さな工夫をいくつか挙げてみます。全部ではなく、「これならやれそう」と感じたものだけ拾ってもらえれば十分です。
5-1. 体重ではなく「幅」を決めて見守る
「◯kgを1mmも超えてはいけない」と考えるほど、1〜2kgの増加で心が折れやすくなります。
例えば、
- いまの体重±2kgくらいを“自分の許容ゾーン”と決める
- その範囲から明らかに外れたときに、生活を少しだけ見直す
といった“幅のある目標”に変えてみると、リバウンドの不安が少し和らぎます。
5-2. 「食欲が戻ったらダメ」ではなく、「合図」として扱う
卒業後に食欲が戻ってきたとき、「やっぱり自分はダメだ」と責めるのではなく、
「からだが、薬なしでの状態に慣れようとしている合図なんだな」
とラベリングしてみるだけでも、行動は変わります。
- 空腹感が強い時間帯をメモしておく
- その時間だけ軽いタンパク質や野菜を足す
- 一口食べる前に「いま本当にお腹がすいてる?」と自分に尋ねる
こんな小さな“観察と調整”を積み重ねることが、長い目で見ると大きな差になっていきます。
5-3. 「ひとりで頑張る前提」をやめてみる
ガイドラインでも、肥満治療は「チームで支える慢性疾患ケア」として位置づけられています。PMC+1
- 主治医
- 看護師・管理栄養士・薬剤師
- 信頼できる家族や友人
誰かひとりでも、「いまこういう不安があってね」と言える相手がいるだけで、リバウンドへの恐怖はかなり軽くなります。
私自身、完璧な生活が送れているわけではありませんが、「からだの変化をひとりで抱え込まない」という視点だけは、大人になってから特に大事だと感じています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。
