便秘・立ちくらみ・気分の落ち込みが続くときに ~内科だけで語り切れない「パーキンソン病」という背景~

便秘と立ちくらみ、気分の落ち込みが重なって不安そうに椅子に座っている中年女性のイメージイラスト

「ずっと便秘気味」「立ち上がるたびにフラッとする」「ここ最近、気分も沈みがち」。ひとつひとつはありふれた不調ですが、長く続いたり、いくつか重なってきたりすると「これって、歳のせい?ストレス?それとも何かの病気?」と心配になる方も多いと思います。
この記事では、内科だけでは語り切れない「パーキンソン病」という背景の可能性を、“不安をあおらず” ゆっくり整理していきます。自己診断ではなく、「組み合わせのサインに気づいて、専門医に共有するための視点」として受け取ってもらえたらうれしいです。


目次

1. 便秘・立ちくらみ・気分の落ち込み…バラバラに見える不調たち

慢性的な便秘があって、
たまに立ち上がるとフラッとすることがあって、
ここ最近やる気が出ない日が増えている。

こんなとき、多くの方はまずこう考えます。

  • 便秘 → 食物繊維不足かな?
  • 立ちくらみ → 貧血かも?血圧低いし…
  • 気分の落ち込み → 仕事や家庭のストレス、更年期かも?

どれも「よくある原因」ですし、もちろん実際にそういう場合もたくさんあります。

一方で、臨床の場でお話を伺っていると、

  • 「健康診断では大きな異常はない」
  • 「内科でも“様子を見ましょう”と言われた」
  • 「自律神経失調症か、更年期でしょうと言われた」

それでも、なんとなく不調のピースが増えていく……そんな方が一定数いらっしゃいます。

たとえば、こんな組み合わせです。

  • 便秘が長年続いている
  • 急に立つとフラッとする・血圧が下がりやすい
  • 汗のかき方が変わってきた(やたら汗をかく/ほとんどかかなくなった)
  • ここ数年で、匂いに鈍くなった気がする
  • 気分の落ち込みや不安感が続いている

これらは「自律神経」「ホルモン」「メンタル」のどこから見ても説明できる、一見バラバラな不調です。
ただ、線で結んでみると、パーキンソン病の“非運動症状(動き以外の症状)” と重なる部分があることも、近年の研究で分かってきました。e-jmd.org+1

もちろん、「こういう症状がある = パーキンソン病だ」と言いたいわけではありません。
むしろ逆で、

「こういう組み合わせ方をしている不調があったら、内科だけで完結させず、神経内科などにも一度相談の窓口を広げてみてもいいかもしれない」

そんな“選択肢を増やすための視点”として知っておいてもらえたらと思います。


2. 世の中で語られる「自律神経失調症」「更年期」とパーキンソン病のグレーゾーン

よくあるラベリング:「自律神経失調症」「更年期」「ストレス」

便秘・立ちくらみ・汗の変化・気分の落ち込み。
これらがそろうと、まず疑われやすいのが、

  • 自律神経失調症
  • 更年期障害
  • ストレス性の体調不良
  • 不安障害・うつ病

こうした診断や説明自体が間違っているわけではありませんし、実際にその通りのケースもとても多いです。

ただ現場感として、「自律神経失調症」という言葉が、**“原因の箱”というより、“よく分からない症状の置き場”**になってしまっていることもあります。

パーキンソン病は「震えの病気」だけではない

パーキンソン病と聞くと、

  • 手が震える
  • 歩きにくくなる
  • からだが固くこわばる

といった「動きの症状」をイメージされる方が多いと思います。

ところが近年、「診断がつく前の何年も前から、“動き以外のサイン”が静かに進んでいることがある」とわかってきました。
具体的には、

  • 便秘
  • 嗅覚低下(匂いを感じにくい)
  • うつ症状・不安
  • レム睡眠行動障害(夢の中の動きを実際にしてしまう)
  • 起立性低血圧(立ち上がったときの血圧低下)

などが、「前駆症状」「プロドローム(前段階)」として現れることがあると報告されています。SpringerLink+2Neurotorium+2

「グレーゾーン」を知っておくメリット

ここで大事なのは、

  • 便秘や立ちくらみがある人、皆がパーキンソン病になるわけでは全くない
  • ただ、組み合わせや経過によっては、別の角度からからだを見直すきっかけになる

という点です。

「自律神経失調症」「更年期」「ストレス」のラベルがついた状態でも、

  • 数年以上続くつよい便秘
  • それほど年齢が高くないのに続く起立性低血圧
  • 抗うつ薬を飲んでもスッキリしない気分の落ち込み
  • 匂いの感じ方の変化

などが重なっている場合、**パーキンソン病を含めた「神経の病気の可能性」**にも、少し視野を広げておく価値があります。


3. 腸・自律神経・脳で何が起きているのかを、やさしく分解してみる

ここからは、からだの中で起きていることを少しだけ覗いてみます。
難しい言葉はなるべく噛み砕きながら、「構造」「神経」「感覚」の3つの面から眺めてみましょう。

3-1. 便秘はなぜ「パーキンソン病のサイン」のひとつになりうるのか

パーキンソン病では、便秘が非常に多いことが、国内外の研究で繰り返し示されています。
報告によって幅がありますが、患者さんの6〜9割に便秘がみられるとするデータもあります。Spandidos Publications+2MDPI+2

ポイントは、

  • 脳だけでなく、「腸を動かす神経」自体にも変化が起きる
  • その結果、腸の動きがゆっくりになり、便がたまりやすくなる

という流れです。

とくに、診断がつく10年以上前から便秘が始まっていたという報告もあり、「腸は“第二の脳”どころか、“最初にサインを出してくれる場所”かもしれない」とも言われています。SpringerLink+2Neurotorium+2

3-2. 起立性低血圧と立ちくらみ:血圧を支える自律神経の疲れ

立ち上がったときにフラッとする、目の前が暗くなる。
いわゆる「立ちくらみ」の一部は、起立性低血圧と呼ばれます。

これは、

  • 立ち上がった瞬間、血圧をグッと持ち上げてくれるはずの自律神経
  • その反応が弱くなり、脳に十分な血液が届きにくい

といった状態です。

パーキンソン病では、こうした 心血管系の自律神経症状(起立性低血圧など)がよくみられ、病気の比較的早い段階から現れることがあるとされています。PubMed+3PMC+3サイエンスダイレクト+3

もちろん、貧血や脱水、薬の影響、単純な血圧の低さでも立ちくらみは起きます。
ただ、

  • 「水分や食事に気をつけても、立ちくらみが続く」
  • 「血圧の薬を調整しても、なかなか良くならない」

といった場合は、自律神経そのものの調子も一緒に見ていく必要があります。

3-3. 気分の落ち込み・不安感が“脳の変化”と関係することも

パーキンソン病では、うつ症状や不安障害も頻度の高い「非運動症状」のひとつです。PMC+1

ここで大事なのは、

  • 生活上のストレスで落ち込んでいるだけ
  • 病気の診断を受けてショックだから落ち込む

という“心の反応”とは別に、

脳の中で、気分や意欲に関わる神経伝達物質のバランスが変わることで、うつっぽさが生まれている可能性もある

という点です。

パーキンソン病というと「ドーパミン」という物質が有名ですが、それ以外にも、

  • セロトニン
  • ノルアドレナリン

など、気分や意欲に関係する神経系が広く影響を受けることが分かってきています。e-jmd.org+1

そのため、

  • 「心理的にはそこまで思い当たるストレスがない」
  • 「抗うつ薬を飲んでいるが、なんとなくしっくり良くならない」

といった場合には、「心」と「神経」の両方の側面から状態を見ていく必要があります。

3-4. 汗のかき方・嗅覚の変化も“静かなサイン”

自律神経は、腸や血圧だけでなく、

  • 発汗
  • 体温調節
  • 膀胱のコントロール

なども担っています。

パーキンソン病では、汗のかき方の変化(多汗・発汗低下)や排尿トラブルなどが、自律神経症状として多くみられることが知られています。とくしま医療センター西病院+3PMC+3e-jmd.org+3

また、嗅覚低下(匂いが分かりにくい)が、診断よりも前に現れやすい非運動症状のひとつとされています。SpringerLink+2Parkinson’s Foundation+2

「最近、香水や柔軟剤の匂いがきつく感じなくなった」
「家族が“変な匂いがする”と言っているのに、自分だけ分からない」

こういった変化も、“一緒に線で結んであげたいサイン”の一つです。


4. 生活の中で出やすいパターンと、「どこまで様子見か」の目安

ここまで読んで、「当てはまる部分があるけれど、どこまで気にしたらいいの?」と不安になった方もいるかもしれません。
ここでは、日常でよく見かけるパターンを、少し整理してみます。

4-1. よくある生活パターンと、不調の“組み合わせ方”

例えば、こんな経過をたどる方がいます。

  • 10年以上前から、便秘ぎみ。下剤が手放せない
  • ここ数年、立ち上がるときにフラッとしやすい
  • 仕事や家庭の状況は特に変わっていないのに、気分が晴れない日が増えた
  • 年齢の割に、匂いに鈍くなった実感がある
  • 夜中にトイレに何度も起きる・眠りが浅くて疲れが取れない

このように、自律神経・腸・気分・睡眠のサインが少しずつ積み上がっていくケースです。

一方で、

  • ここ数か月のストレス増加
  • 睡眠不足や夜更かし
  • 食生活の乱れ

など、明らかな要因があって一時的に便秘や立ちくらみが悪化している場合は、生活改善とともに落ち着いてくることも多いです。

大切なのは、

「ひとつひとつの症状の強さ」よりも、「どれくらい長く続いているか」「いくつ重なってきているか」

という視点です。

4-2. こんなときは、内科だけで完結させない方が安心

あくまで目安ですが、私が相談を受けたときに「一度、神経内科などにも相談してみてもいいかもしれませんね」とお伝えしたくなるのは、次のようなときです。

  • 便秘が数年以上続いていて、生活改善や市販薬でもほとんど変わらない
  • 起立性低血圧(立ちくらみ)が長く続き、そのせいで外出や家事がつらい
  • 気分の落ち込みや不安感が続き、精神科・心療内科での治療だけではスッキリしない
  • 匂いの感じ方の変化や、睡眠中の異常な動き(夢の中の動きをしてしまう)を家族に指摘される
  • こうした非運動症状に加えて、「歩きにくさ」「からだのこわばり」「動作の遅さ」なども少しずつ気になってきた

こうした場合、内科だけでなく、神経内科・脳神経内科など「神経を専門に診る医師」に一度話を聞いてもらうと、見える景色が変わることがあります。

4-3. 医療機関に相談するときに、伝えておきたいポイント

受診のときに、「うまく説明できるかな」と不安になる方も多いと思います。
そんなときは、以下のような項目を事前にメモしておくと役に立ちます。

チェックしておきたいこと具体的なポイントの例
症状の種類便秘、立ちくらみ、汗の変化、気分の落ち込み、嗅覚低下、睡眠のトラブルなど
いつから続いているか何年前からか、おおよその時期
強さと生活への影響「仕事に支障がある」「外出が怖くなった」など
これまでの診断・治療歴自律神経失調症、更年期、不安障害などと説明されたかどうか、飲んでいる薬

「パーキンソン病かどうか自分で決める」のではなく、

「こういう症状の組み合わせが長く続いているので、パーキンソン病を含めて、神経の病気の可能性も一度検討してもらえませんか?」

と、“視点”として共有するイメージです。


Q&A:よくある疑問にお答えします

Q1. 便秘だけでも、パーキンソン病を心配した方がいいですか?

便秘は本当に多くの原因で起こるので、「便秘がある = パーキンソン病」と心配する必要はありません。
ただし、

  • 長年続くつよい便秘
  • 生活改善・薬でもほとんど変化しない
  • そこに立ちくらみ、嗅覚低下、うつ症状などが“セット”になっている

といった場合は、「腸と自律神経、神経の病気」という視点も少し意識しておくと安心です。

Q2. まずは何科にかかればいいのでしょうか?

スタートは、かかりつけの内科や消化器内科でも構いません。
そのうえで、

  • これまでの経過
  • 症状の組み合わせ

を丁寧に伝え、「神経内科・脳神経内科への紹介も検討してもらえますか?」と相談してみると良いと思います。
すでに心療内科・精神科に通っている方は、そちらの主治医に「身体の症状の変化」もあわせて話してみてください。

Q3. パーキンソン病かもしれないと伝えると、先生に嫌がられませんか?

「ネットで見てきました」「パーキンソン病だと思うんですが」と言うのが気まずい、という声もよく聞きます。
実際には、

  • 「こういう症状が何年も続いていて、最近“パーキンソン病だとこういう症状が出ることもある”と知りました」
  • 「自分で決めたいわけではなく、可能性としてどうかを一度見ていただきたいんです」

という伝え方なら、むしろ診断の役に立つ情報になります。
医師もすべてを把握できるわけではないので、「情報を共有する仲間」として遠慮なく伝えて大丈夫です。


5. 今日からできる「不調の線をつなげる」小さなステップ

最後に、「じゃあ、何をしておけばいいの?」というところを整理しておきます。
すべてを一度にやる必要はありません。できそうなものから、ひとつ拾ってもらえたら十分です。

5-1. 症状の「日記」をつけてみる

便秘・立ちくらみ・気分・睡眠。
どれも毎日変動しやすいので、記憶だけに頼るとあいまいになりがちです。

  • いつから続いているか
  • どのくらいの頻度か
  • 生活への影響度(10点満点で何点つらいか)

などを、スマホのメモや紙に軽く書き留めるだけでも、診察時の情報量がぐっと増えます。

これは、パーキンソン病に限らず、どんな病気の診断・治療にとっても大きな助けになります。

5-2. 「立ち上がり」と「排便」の環境を少しだけ整える

自宅でできる範囲の、自律神経への負担軽減も大事です。

  • 立ち上がる前に、足首を軽く動かす・ふくらはぎを少し動かす
  • 朝いちばんにたっぷりの水分をとる(持病で制限がある場合を除く)
  • トイレの時間をゆっくり確保し、排便を我慢し続けない工夫をする

といった小さなことでも、「からだに優しい環境づくり」になります。
起立性低血圧や便秘への具体的な治療は、必ず主治医と相談のうえで行ってくださいね。

5-3. 「ひとりで抱え込まない」ことも立派なセルフケア

不調が長く続くと、「こんなことで病院に行っていいのかな」「家族に心配かけたくないし」と、つい我慢してしまいがちです。

でも、本来、医療は **「重症の人だけのもの」ではなく、「ちょっとした違和感を一緒に整理する場所」**でもあります。

便秘・立ちくらみ・気分の落ち込み・汗や匂いの変化。
この中で、ひとつでも「これは長く続きすぎているな」と感じるものがあれば、それだけでも相談する理由になります。

「組み合わせに気づいて、専門医と一緒に考える」
それ自体が、あなたのからだを守る大切な一歩です。

全部を完璧にしようとしなくて大丈夫です。
今日、「気になっている症状をメモに書き出す」「次の診察で一つだけ質問をしてみる」――そんな小さな行動でも、未来の自分を助ける種まきになります。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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