「病名がこわい」家族にどう切り出す? ~パーキンソン病かもしれないと感じたときの声かけノート~

歩き方や表情の変化が気になる家族を心配しながら、パーキンソン病の可能性や病院への伝え方に悩んでいる人のイメージイラスト

「歩き方が小股になってきた気がする」「なんだか顔の表情が減った」「でも本人は『年のせいだよ』と言って取り合ってくれない」。そんな“うっすら不安”を抱えたまま、家族の変化を見守っている方もいると思います。ここでは、パーキンソン病の可能性が頭をよぎったときに、どんなふうに声をかければいいのか、心の負担をできるだけ軽くしながら、一歩先に進むためのヒントをまとめます。


目次

1. 「おかしいかも」と気づいても、すぐに病名は出しづらいもの

家族のちょっとした変化に気づくのは、いつもそばにいる人だからこそです。

  • 歩き始めがモタモタしている
  • 片側の腕だけ振りが小さい
  • 以前より便秘が続いている
  • 表情や声のトーンが前より淡々としている

こうしたサインは、加齢でもよく見られますし、パーキンソン病の初期・その前段階でも起こりうるとされています。特に、便秘や嗅覚低下、睡眠の乱れ、抑うつ気分などの「非運動症状」が、運動症状より前から出ているケースが多いことが、近年の研究で繰り返し示されています。PMC+2Neurotorium+2

一方で、いきなり「パーキンソン病かもしれない」と切り出される側に立つと、その言葉の重さはかなりのものです。

  • 「もう元には戻らない病気なんじゃないか」
  • 「介護が必要になる未来が決まってしまうんじゃないか」
  • 「自分の人生計画が壊れてしまうかもしれない」

そんなイメージが一気に押し寄せてきても不思議ではありません。なので、多くの人が「歳のせいだから」「大したことない」と言い張りたくなるのは、ごく自然な心理反応です。

この記事では、病名で“勝負”をしかけるのではなく、「日々の困りごと」や「今できる検査・相談」から階段を登るイメージで、家族としてのコミュニケーションを整えていく視点をお伝えしていきます。


2. パーキンソン病という言葉が、どうしてこんなに重く感じられるのか

パーキンソン病は「ゆっくり進行する、神経の変性による病気」です。根本的に治す薬はまだありませんが、症状を和らげる薬やリハビリ、生活調整の工夫によって、長く自立して生活している方もたくさんいます。AAFP+2Cleveland Clinic+2

それでも「パーキンソン病」という言葉が重く感じられる理由には、いくつかの背景があります。

病名=“先の未来まで確定してしまう”ように感じる

ネット検索をすると、進行した段階の情報や、重たい話にどうしても目が行きがちです。本人からすると、

  • 「今はまだそこまで困っていないのに、将来の姿を見せつけられた気がする」
  • 「今の自分と、ネットに書いてある重い症状が結びつかない」

といった違和感や拒否感が生まれやすくなります。

「震え」のイメージに引きずられやすい

パーキンソン病と聞くと、多くの人が「手のふるえ」を真っ先に思い浮かべます。ただ実際には、震えより先に、便秘・睡眠の乱れ・嗅覚低下・気分の変化などの“非運動症状”が現れているケースも多いと報告されています。MDPI+2Parkinson Canada -+2

震えがないから「自分は違う」と感じてしまうのも、よくあるパターンです。

「介護」の話に一気に飛びがち

家族側も、「もしパーキンソン病だったら、将来は…」と一気に介護・お金・同居などの話を想像してしまいがちです。すると、会話のトーンがどうしても重くなります。

  • 「今のうちにちゃんと検査しておかないと、あとで大変になるよ」
  • 「◯◯さんのところだって、早くから準備していたって聞いたよ」

悪気がなくても、“先回りの不安”を本人にそのままぶつけてしまう形になり、かえってシャットアウトされやすくなります。

ここで大事なのは、「病名をはっきりさせること」だけをゴールにしないことです。
むしろ

  • 今、日常生活で困っていることを少しでも軽くする
  • 変化の理由に“納得感”を持ってもらう
  • 必要なサポートにつながる“入口”を作る

この3つを、ゆっくり整えていくイメージのほうが、本人にとっても家族にとっても負担が少なくなります。


3. からだの中で起きていることを、やさしくイメージしてみる

ここで少しだけ、からだの中で何が起きているのかを、専門用語をかみ砕きながら整理しておきます。細かい仕組みを全部理解する必要はありませんが、「なぜ動き・気分・自律神経が一緒に変わるのか」を知っておくと、本人への説明もしやすくなります。

「動き」がぎこちなくなる背景

パーキンソン病では、脳の中でも「黒質(こくしつ)」と呼ばれる部分の神経細胞が少しずつ減っていき、ドパミンという物質が不足していきます。ドパミンは、筋肉をスムーズに動かすための“潤滑油”のような役割をしており、これが減ると

  • 歩き始めが遅くなる
  • 歩幅が小さくなる
  • 方向転換がもたつく
  • 片側の腕の振りが減る

といった変化が出やすくなります。AAFP+1

年齢による筋力低下とも重なりやすいので、「歳だからかな」で片づけられてしまうことも多いところです。

「気分」が落ち込みやすくなる理由

ドパミンは、やる気や楽しさとも関わる物質です。また、セロトニンやノルアドレナリンなど、気分を安定させる物質に影響する神経の変化も、病気のかなり早い段階から起こることが分かってきました。www1.racgp.org.au+1

そのため、

  • 特に理由がないのに気分が沈む
  • 好きだった趣味に手が伸びない
  • なんとなく未来に希望を持ちづらい

といった「うつ」や不安に近い状態が、“動きの症状より先に”出ている人も少なくありません。

「自律神経」の不調が先に目立つことも

自律神経は、血圧・心拍・消化・体温などを24時間コントロールしているシステムです。パーキンソン病では、この自律神経を支える神経細胞にも変化が起きやすいことが知られており、

  • 便秘が続く
  • 立ち上がるとフラッとする(起立性低血圧)
  • 夜中に何度もトイレに起きる
  • 眠りが浅く、夢の中で大きな動きをする(レム睡眠行動障害)

といったサインが、運動症状に先行することもあります。PMC+2Cleveland Clinic+2

もちろん、これらの症状がある=必ずパーキンソン病、というわけではありません。
ただ、「歳のせい」だけで片づけず、一度整理しておく価値のあるサインであることは確かです。

家族としては、「動き」「気分」「自律神経(便秘・血圧・睡眠など)」の3つの領域で、どんな変化がいつ頃からあるのかを、ざっくりメモしておくだけでも、診察時の情報としてとても役に立ちます。


4. 責めずに伝えるための“階段設計”と、言い方の工夫

ここからは、実際のコミュニケーションの話です。
ポイントは、「病名をズバッと当てること」ではなく、「一緒に状況を整理して、必要な検査につなぐこと」をゴールに置き直すことです。

ステップ1:病名ではなく「困りごと」から話を始める

いきなり
「パーキンソン病かもしれないから病院に行って」
と言われると、誰でも身構えます。

代わりに、

  • 「最近、歩き始めでつまずきそうになることが増えた気がするけど、自分ではどう感じてる?」
  • 「前より便秘がしんどそうだけど、薬以外で相談してみたことある?」

といった、「具体的な行動・症状」を入口にした問いかけが役立ちます。
“あなたのことを責めたい”のではなく、“一緒に整理したい”というスタンスが伝わりやすくなります。

ステップ2:本人の「説明」を一度受け止める

多くの方は

  • 「歳だから」「運動不足だから」
  • 「天気のせい」「最近忙しかったから」

と、すでに自分なりの説明を持っています。ここでそれを否定すると、会話が止まりがちです。

  • 「そういうふうに感じてるんだね」
  • 「たしかに歳を重ねると出やすいところだよね」

と、一度は受け止めたうえで、

  • 「ただ、気になっているお医者さんの記事で、似たような症状が“念のため相談していいサイン”って書いてあって。ちょっとだけ一緒に確認してみない?」

と、“情報を一緒に見る提案”へつなげていくと、少し空気が和らぎます。

ステップ3:病名ではなく「検査」へのハードルを下げる

「病名をつけられる」ことへの抵抗は強くても、

  • 「今の状態を確認してもらう」
  • 「薬以外の対策があるか聞いてみる」

といった“検査・相談”レベルであれば、受け入れやすい場合があります。

たとえば、

  • 「今すぐ何かを決めなきゃいけないというより、“今の状態の棚卸し”みたいな感じで、一度診ておいてもらったほうが安心かなって思ってる」
  • 「もし心配していたような病気じゃなかったら、それはそれでホッとできるしね」

と、「どちらに転んでもメリットがある」形で提案してみるのも一つの方法です。

ステップ4:受診後の“いきなり介護モード”を避ける

仮に、パーキンソン病の可能性があると言われたとしても、多くの方はすぐに介助が必要になるわけではありません。近年のガイドラインでも、「運動症状だけでなく、非運動症状を含めた生活の質(QOL)を改善していくこと」が治療の大きな目的とされています。AAFP+1

受診後は、

  • 「今の段階でできることを、主治医と一緒に少しずつ決めていこう」
  • 「全部を今日決めなくてよくて、生活や薬の調整も“試しながら”で大丈夫だよ」

と、“段階的に考えていい”ことを繰り返し伝えるだけでも、本人の心理的負担はかなり変わります。


Q&A:よくある家族からの質問

Q1. 病院の話をすると怒りだしてしまうとき、どうしたらいいですか?

怒りは、多くの場合「こわさ」の裏返しです。
感情が高ぶっているときに話を続けるよりも、いったん

  • 「そこまで嫌な気持ちになっているとは思わなかった、ごめんね」

と気持ちにフォーカスしてから、後日に仕切り直したほうがうまくいくことが多いです。
そのうえで、「病院に行くかどうか」の前に、「最近困っていること」を一緒に紙に書き出すなど、“話題のハードル”を下げる工夫も役に立ちます。

Q2. 離れて暮らしていて、久しぶりに会ったら歩き方が変わっていました。どう関わるのがいいですか?

久しぶりに会うと変化が際立って見えるので、「なんでそんな歩き方してるの?」とストレートに言いたくなるかもしれません。
そこで一呼吸おき、

  • 「久しぶりだから余計にそう感じるのかもしれないけど、前よりちょっと歩きづらそうに見えて心配になったんだ」

と、「自分の感想」と「心配している気持ち」をセットで伝えると、受け止められやすくなります。
そのうえで、動画を一緒に撮ってみて「自分ではどう見える?」と問いかけると、本人の気づきにつながることもあります。

Q3. どのタイミングで「パーキンソン病」という言葉を出してもいいのでしょうか?

本人がすでにテレビやネットで情報を見ていて、「もしかして自分もそうかな?」と口にしたタイミングは、一つのきっかけになります。そのときは、

  • 「私もそう感じていて、心配していた」
  • 「でも、実際に診てもらわないと分からないから、一緒に確認してみようか」

と、“一緒に確かめる”流れに乗せていくのがよいと思います。
本人がまったく病名を口にしていない段階では、無理に言葉を出さなくても構いません。「動き」「気分」「自律神経」の具体的な困りごとから、少しずつ階段を上るイメージで関わっていければ十分です。


5. 今日からできる、小さな声かけと準備のアイデア

最後に、「今できる小さな一歩」をいくつか挙げてみます。全部やる必要はありません。やれそうなものを1つだけ選んでみるイメージで読んでみてください。

① 気になるサインを「メモ」レベルで残しておく

  • いつ頃から歩き方が変わったと感じるか
  • 便秘・夜間頻尿・立ちくらみなど、自律神経のサインはあるか
  • 気分や意欲の変化はどうか

これらをカレンダーやノートに軽くメモしておくだけで、診察のときに「話すことが整理されている状態」になります。医師側から見ても、経過が分かる情報は診断の助けになります。

② 「一緒に確認したいから」という言葉を用意しておく

病院に誘うときの“決めゼリフ”を、あらかじめ自分の中で決めておくのもおすすめです。

  • 「あなたのことを責めたいわけじゃなくて、一緒に安心材料を増やしたい感じなんだ」
  • 「行くかどうか迷っているなら、今回だけ付き添わせて?それで様子を見て決めてもいいと思う」

こうしたフレーズを、あなたらしい言葉にアレンジして、頭の片隅に置いておくと、いざというときスムーズに口に出しやすくなります。

③ 家族側も、“正解探し”を手放していく

パーキンソン病の診断や経過は、とても個人差が大きいことが分かっています。非運動症状の出方やタイミングも人それぞれで、「これさえやっておけば絶対大丈夫」というマニュアルはありません。MDPI+1

だからこそ、家族が「完璧な声かけ」「100点のタイミング」を目指しすぎると、かえって苦しくなります。

  • 「話し方を失敗してしまったかも」と感じたら、そのこと自体を素直に伝える
  • 「前は強く言いすぎた気がするから、今日はもう少し穏やかに話してみたい」と、やり直してみる

コミュニケーションもからだと同じで、“やりとりを重ねながら調整していくもの”と考えてみてください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
難しいことはできるだけやさしく。
読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

目次