脂肪肝は放置していい病気じゃない?~肝臓がんを遠ざける検査と生活の現実策~

健診で脂肪肝と言われ不安な人が、検査と生活改善のコツを知って安心するイメージ

健診で「脂肪肝ですね」と言われても、痛くもかゆくもない。だから、つい棚に上げがちです。
でも脂肪肝の本体は“脂”そのものより、肝臓がじわっと硬くなっていく(線維化)流れ。ここを早めに押さえると、怖がりすぎずに済みます。

目次

1. 「脂肪肝ってよくあるやつでしょ?」が一番の落とし穴

現場でも、「脂肪肝はあるけど放置でいいですよね?」という相談は多いです。
たしかに脂肪肝は珍しくありません。日本でも“脂肪肝の患者数は2,000万人以上”とされていて、かなり身近な健診所見です。日本消化器病学会

ただ、ここでポイントになるのが“脂肪があるか”ではなく、“硬くなり始めているか”。
脂肪肝を放置してしまう人は、だいたいここを誰にも教わらないまま時間だけが進みます。

2. 「脂肪肝=軽い」は半分だけ正しい

脂肪肝は、ざっくり2層構造で考えると整理しやすいです。

ざっくり分類体の中で起きがちなこと大事な見どころ
脂肪がたまる段階(脂肪肝)脂が増える“硬さ(線維化)”が進んでいないか
炎症が絡む段階(脂肪肝炎)脂+炎症で傷つきやすい線維化が進みやすい

最近は名称もアップデートされていて、従来の「NAFLD/NASH」は「MASLD/MASH」という言い方が広がっています(代謝の問題が土台にある人が多い、という整理)。AASLD+1
呼び名が変わっても、あなたがやることはわりとシンプルで、「硬くなるルートに入っていないか」を見分けることです。

3. 脂肪肝→肝硬変→肝臓がんは、どこで分かれるのか

肝臓は沈黙が得意です。多少の炎症があっても、日常の感覚は「なんか最近だるい」くらいで済んでしまう。
でも内部では、脂肪が増える→炎症が続く→傷を修復しようとして線維(=硬さ)が増える、という“静かな工事”が起きます。

そして脂肪肝で一番大事な研究的な共通見解は、**予後(将来のリスク)に一番関係しやすいのは「線維化の程度」**だという点です。J-STAGE
つまり、怖いのは「脂があること」ではなく、「硬さが進んでいるのに気づかないこと」。

ここまで聞くと不安になりますよね。大丈夫。
線維化は“早めに見つけるほど、選べるカードが増える”タイプです。体感としては、症状より先に「検査の設計」で勝てます。

4. 要注意な人は?検査・受診の目安を“現実路線”で整理する

脂肪肝が進みやすい人の共通点は、だいたいこの辺に集まります。

  • 体重が増えやすい/お腹まわりが気になる
  • 血糖値(糖尿病・予備軍)や中性脂肪が高い
  • 血圧が高め
  • お酒の量が「週の合計で考えるとまあまあ」
  • 健診でAST/ALTがじわじわ上がってきた

ここで役に立つのが、血液検査から計算できる FIB-4 index(線維化リスクの目安)です。日本のガイドラインでは、1.30未満/1.30〜2.67/2.67以上で低・中・高リスクの目安を置き、**1.30未満だと高度線維化を否定しやすい(陰性的中率99%という報告)**ともまとめられています。日本消化器病学会

フォローの頻度も、ざっくり設計できます。

  • 低リスク寄り:血液検査+線維化評価のフォローを1〜2年ごとが目安
  • まずは見失わない:血小板数・FIB-4を2〜3年ごとに確認、という考え方も整理されています日本消化器病学会
  • 高リスク寄り(例:FIB-4が高い、血小板が減ってきた等):消化器(肝臓)専門の評価(エラストグラフィや必要なら肝生検の検討)へ日本消化器病学会

そして「肝臓がんの監視」は、基本的に高リスク層で“定期エコー”が軸です。
日本のガイドラインでは、肝硬変なら6か月ごとの超音波+腫瘍マーカー
、線維化が進んだ層でも6〜12か月ごとの超音波を考慮と整理されています。日本消化器病学会
海外の肝がんガイダンスでも、リスクのある人に対して6か月間隔(semiannual)の監視が推奨されています。EASL-The Home of Hepatology.

Q1. 健診で脂肪肝だけ。ALTも正常なら、本当に放置でいい?

“放置”というより、“見失わない設計”がちょうどいいです。体重・血糖・脂質が絡むタイプの脂肪肝は、肝臓だけでなく心血管系のリスク管理ともセットになりやすいので、血液検査やFIB-4のような線維化目安を定期的に確認しておくと安心が増えます。日本消化器病学会

Q2. お酒はどのくらいまでならセーフ?

「量の上限」を一言で決めるのは難しいですが、脂肪肝がある人は“お酒が線維化ルートの追い風になる”ことがあるので、まずは頻度と量を可視化するのが第一歩です。肝硬変が疑われる段階では、ガイドライン上も禁酒が強く意識されます。EASL-The Home of Hepatology.

Q3. 受診の目安は?どのタイミングで消化器内科に行くべき?

「数値が高い」より、「硬さが怪しい」が受診の合図です。FIB-4が高め(例:2.67以上)や血小板が減ってくる、エコーで気になる所見がある、糖尿病などの土台が強い。こういうときは早めに専門評価へ、が効率的です。日本消化器病学会

5. 脂肪肝を“戻す”は現実的。勝ち筋は3つだけ

脂肪肝の生活改善は、根性大会にすると続きません。私は「効く確率が高い順」に整えるのが好きです。

① 体重の7〜10%を目標にする(いきなり完璧じゃなくていい)
過体重の脂肪肝では、7〜10%の体重減少が肝機能や肝組織の改善につながりやすい、という整理があります。EASL-The Home of Hepatology.
“3kg落とす”ではなく、“体重の1割を静かに目指す”くらいが長期戦向きです。

② 週150〜200分の中強度運動+軽い筋トレ
ガイドラインでは、中強度の有酸素運動を週150〜200分(3〜5回)、筋トレも有効とされています。EASL-The Home of Hepatology.
コツは「汗をかく日」より「途切れない週」。10分を刻んで合計してもOKです。

③ “甘い飲み物・加工食品”を優先的に減らす
食事は細かい正解探しより、肝臓に追い風になりやすい要素(高糖質飲料や加工度の高い食品)を先に減らすほうが効率がいい。地味に効きます。EASL-The Home of Hepatology.
余裕が出てきたら、地中海食っぽい方向(野菜・豆・魚・オリーブ油寄り)に寄せると続けやすい、という考え方もあります。EASL-The Home of Hepatology.

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。

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この記事を書いた人

からだトレンドラボを運営している、理学療法士のテラサワです。
病院やクリニックでのリハビリに長く関わる中で、
「もっと早く知っていれば楽になれたのに」という声を
何度も聞いてきました。

このブログでは、からだや健康にまつわる“トレンド情報”を、
医学的な視点でていねいに噛み砕いてお届けします。
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読み終わったときに、ちょっとだけ不安が軽くなっていたら嬉しいです。

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